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とうとう1巻冒頭のシーンに繋がる経緯を知ってしまいましたね。あの僅かなシーンの台詞だけで十分予測できてしまうので、心の準備はできていると思っていましたが、やはり実際にジェルミの行動を追いながら読むと、とても緊張せずにはいられない、痛ましさと深い悲しみに胸を突き刺される展開でした。本当に、運はいつも彼に味方をしてくれない。どうして、サンドラまで…。でも、たとえ相手が大罪人であっても、人を殺すことを計画した人間に、安穏が約束されることはないというこの世の不条理を思い知らせてくれる、ただただ現実的な展開でもありました。
不安定を極めたジェルミは、自棄になって殺人を図ったことをほとんど告白したかと思えば、いいやと思い留まって自分はやっていないと言い張ったりする。殺人の動機を正直に話せば、誰しも彼への同情は少なからずしてくれるはずだけれど、彼にとってはきっと、捕まる捕まらないとか、自分の罪が重いか軽いかとかは問題ではなくて、計画は失敗したという事実と、唯一何も勘付いておらず、対等な目線で見てくれていたイアンに知られることへの怖さ、それらが比重を占めているんでしょうね。
そもそも誰かに告白する以前に、彼自身の中で今まで受けたグレッグの仕打ちを微塵も整理できていない。そこにサンドラを殺した事実と、彼女の裏切りの可能性までのしかかった。もはや彼が生きていることが奇跡としか思えないほどの、深い絶望。これ以上悪くなることがあるのでしょうか。もし今後グレッグの悪行がイアンに知られたとしても、もはや当人はこの世に存在せず、断罪されることもありません。殺す、という行為は裁く機会も失ってしまう。それでも自分の心を守るために行動したジェルミを、私は一切責める気はありません。いろんなもやもやを抱えながらも、ジェルミの心が救われるまで彼に寄り添いたい。そう強く願った4巻でした。