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「生涯の伴侶になってください」
meikon
00年にクリスタル文庫から出た原作を元にマンガになったものだそうです。
原作は読んでないのですが、コミカライズによくある端折った感や、急激な転換は感じられず、スムーズなストーリー運びで、充分にマンガとして楽しむ事が出来ました。
自分的に”人形”というのは萌えキーワードなので、そんな点も楽しめました。
この主人公は小児科の研修医ですが、10年前の小説なんで、現在の医師不足とか激務とかそんな部分はもっていません。
主人公・貴志の担当患者が手術を前に人形が欲しいというので、あげる約束をしてしまいます。
買いにでかけたところで出会ったのが長髪で和服姿の人形師の久世偲。
子供の希望する人形はなく、験が良いからと別の人形を手渡されますが、それはまじないがかった法外な値段のものでした。
付き返そうとする貴志に偲は、賭けを持ちかけ、子供が助かって人形が壊れたら偲の勝ちだというのです。
その通りになった結果に貴志が偲の元へ出向くと「貴方と私は運命の伴侶」と言われ、身体を奪われてしまうのです。
そして、段々と明らかになる貴志と偲の関係と人形の秘密。
偲の外見・黒髪の長髪に和装というのがビジュアル的に好み。
無理矢理貴志を奪ったり強引で不遜な性格と思えば、それは執着であると思うのですが、反面貴志に嫌われるのを怖がっているような部分も持ち、隠れワンコ的性格なのでは?
貴志は医者という職業もあるかもしれないが、最初は子供の為、次は原因不明の病の友人の為と、結構人の為に何とかしたいと思っている人で、ちょっとヘタレの優しい人だと思う。
偲が言う”運命”と一言で片づけるには深い因縁が実は貴志と偲の間にあって、その関係を知ることによって、”運命”を受け入れることになるのですが、偲の家という人形師の仕事の部分は、滅茶ファンタジーな部分です。
それがあるから、急激な展開が現れるのですが。
偲の義兄の猛という男が、貴志の友人の病気に関係して出てきます。
一体どんな人なんだろう、偲に振られて大陸へ渡ったという設定だそうで、大人の男を連想したら、予想を裏切る若者でビックリしました!
猛によって、偲の秘密が明らかになり貴志にとって、本当の運命の相手であることがわかるのですが、それは業の深さともいえるのかもしれません。
ラストが人の命を左右するほどの人形の力というのを見せておきながら、あっけなく愛のハッピーエンドになってしまったことで、ちょっとあっけなかったなとは思いますが、、
おいてきぼりくらった猛、どうなるんだろう?
あんな、結構重くない普通の人が人形をね~と、そのギャップがいいのかもしれない。
しかしながら、人形をテーマにして、なかなか面白い設定をつけていて興味深かったです。
冥婚と言うと、中国で行われる死者同士の結婚というくらいの知識しかありません。
昔、それを題材にしたイケメン兄弟が活躍する海外ドラマか、映画を観た記憶があるのですが、この作品での「冥婚」はちょっと違っていました。
自分と同年同日同時刻に生まれた人間の魂を込めて作る冥婚人形。
主に降りかかる災害を代わりに受けてくれる、いわば「身代わり人形」です。
代々人形作りをしている久世家に、幼い孫を病から救う人形を依頼したのは貴志の祖父で…、というミステリアスな話。
独特な世界観を描いた作品は、細かい設定まで作り込んでいないと粗が出て台無しになってしまうものですね。
この作品は元が小説なので、そこはガッツリと作り込んであります。
前半は小児科医の貴志(24)が、人形師の久世偲(19)に「運命」と言われ、付きまとわれ、根負けするまでが、後半では久世家の血を引く人間のみが中国由来の術を使った冥婚人形を巡って、貴志の友人を巻き込んだ偲の義兄(20)との対決が描かれていました。
偲がどういう人物なのかがだんだん明らかになって、若すぎる年齢のことも「そういうことだったのか!」となるのですが…。
最後の最後、偲の思いの強さを語る見せ場で「14年かけて自分という人間を作りあげてきた」という台詞が。
ん?
読んだ方なら14年ってどこから出てきたんだろう?って思いませんか?
この「14年」がどこから出てきたのか探るために、読み落としがないか4回読み直しましたが、これ、おそらく原稿に書かれた「9」を「4」と間違えたんじゃないかと。
こういうところですよ。
小説家が作り上げた世界を作家さんがビジュアルをつけて表現して、そうやって出来上がった作品を、誤植で足を引っ張るという。
あの場面で「ん?」と現実に引き戻されてしまった。無念です。
最後に本当に些細な引っ掛かりを。
貴志は「小児科医」を名乗っていますが、年齢が24才。
基本的に飛び級制度が認められていない日本で教育を受けたなら、ストレートで医学部に入学→卒業したての年で、専門が決まる前の前期研修医のはず。
「小児科医」と名乗るためには最低でも26才からなんだよなあ。
と、どうでもいい重箱の隅をつついていきます。