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心に深い闇をもった男の過去とは? 心の救いを描いたヒューマンラブストーリー。
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
木原作品ということは大前提で、いまさらそこに関しては書きませんが思いっきりネタバレありなので注意してください。
この話は手(特に右手)がキーワードですよね。
作中で河瀬(攻)が柴岡(受)に「俺のこと、好き?」と問いかけるのに対して柴岡が「君の右手が、一番好きだ」と答えるシーンがあるんですが、なぜ右手なんだろうと思いながら先が気になりそのまま読みすすめたんです。
確かにそれまでにも右手の甲にキスをするシーンはありました。
そしてラストシーンにきて柴岡の「いつも君は私の手を引く。だから…助けてもらえるんじゃないかと勘違いする」ではっとしました。
読み終わってから急いで読み返すと、最初にあるじゃないですか!手を引いてもらうシーンが!
それまでも健康的でうらやましい(?)という気持ちはあったようですが、このシーンで柴岡が恋に落ちたとわかって絞り出すように涙が出ました。
その後も探せば出てきます右手が。
最後の最後でも、右手の下の砂をさらうという状況が何かを表しているんでしょう。
それにしても木原先生の作品にしては珍しくずっと河瀬だけの視点だったのが印象に残りました。
この作品は柴岡視点を書いてしまうと成り立たない話なので必然ですよね。
ちなみに河瀬が柴岡を好きになるのも当然な流れだと私は思いました。
ですが河瀬から気持ちが返ってくることなど微塵も期待出来なかった、勘違いすることさえ自分で許せなくなってしまうような柴岡のこれまでの人生がとても辛かったです。
追いかけてくれる河瀬に出会えて本当に良かった。
死ぬほど続きが読みたいけれど、まずはハッピーエンドで良かった。
木原音瀬さん、何を読んでも最後にう〜んんん、と唸ってしまう作品がほとんど。
こちらの作品も重い方に唸りました。
(軽かったり、萌があったりする作品もあるけれど、それでも“やられた!”って唸っちゃうんですよねw)
萌ドコロはオヤジ、でしょうか。でも普通じゃないんですよね、このオジサン。
そして、人間の情ってどういうものなんだろう、って。
河瀬がはまり込んでしまった迷宮というか逃げられない袋小路と言うか。死ぬか、抱えるか、の究極の選択が自分に課されたら?そして抱えることで自分にも拠り所が出来てしまったら?
その関係を断ち切ることが出来るのかな。難しい。わかんないですね。
だから、河瀬の行動を普通じゃないとか、有り得ないとか思えない。
そして、柴岡も少年時代に母との関係や、母を愛してしまっていた(それは単なる情だったかも知れないが)、なのに裏切られたという壮絶な人生を歩いてきただけに、こうなっちゃったのかもな、って。
母親に対してもっと拒否できていたら、違う人生だったのかも知れない。
父親宛の遺書を読まなければ、通り過ぎた愛を糧に次の恋人を見つけられたのかも知れない。
「だから…助けてもらえるんじゃないかと勘違いする」
柴岡も死ぬと決めながらどこかで足掻いてたんですよね。
最後には河瀬が柴岡を好きになったことで救われるお話には成ってはいますが、なんとも言い難い気持ちになりました。久しぶりにガッツリ来た木原音瀬さん作品でした。そして、日高ショーコさんのイラストがハマり過ぎててヤバい。
映像を書き起こしたかのような情景描写と、細やかな心理描写で終始描かれた作品でした。小説というよりも手記のようなスピード感で、自分はいったい何を読んでいるんだろうと途中で我に返ってしまいました。
萌えも特になく、明らかに「しゅみじゃなかった」のですが、評価確定済みだったので「萌」の評価になっています。(多分昔は柴岡に深い人間性を感じたのだと思う)
気になった点を書き留めておきます。
1. 河瀬という都合の良い人物
この作品の主役は受けの柴岡です。攻めの河瀬は、柴岡の説明役です。柴岡は理解不能な人物である、しかしそれには理由がある、ということを説明するために用意された人物が河瀬なのです。
そのため仕方がないのですが、簡単に柴岡に翻弄される河瀬に「おバカすぎない?」となってしまいました。柴岡の挑発にすぐにイラついて、嘘を簡単に信じて、うまくいかない状況に思い悩む河瀬。もう少し学習能力がほしいなと思いました。
それに加えて、もう見限ってもいいだろう場面で思い直すスイッチが入る(サイレンの音で怒りが収まる場面とか)ので、「いやいや都合が良すぎるって」となりました。
また河瀬が柴岡に好意を抱く変化も強引に映ってしまいました。自分の体を再び差し出したあと、柴岡に対してすぐに好感を持っており、素直な性格に変わっています。彼女には尽くすタイプという説明がここでなされていますが、そんな人物にはとても見えなかったので、もろもろお粗末だなと感じました。
2. ラッキーな柴岡
柴岡は本当に面倒くさい人物です。申し訳ないですが、私には臆病で性悪の死にたがりなメンヘラにみえました。「もうそのまま一人で閉じ籠もっていればいいじゃん」と思ってしまいましたが、河瀬は本当に良い人でした。
柴岡のような訳アリの人にとって、河瀬はとても有り難い存在だったと思います。厄介な自分を諦めないでいてくれて、いつまでも気にかけてくれる。重い人生を背負おうとしてくれる。
柴岡のために用意された人物ですが、それでも柴岡は救われただろうなと思うと、良かったなと素直に思えました。
作家さんは過酷な人生を柴岡に歩かせていますが、救いも用意している。そのギャップで希望を描きたいのだろうと解釈しました。
3. 柴岡の強靭なメンタル
柴岡は15歳で母親と関係を持ってしまいました。「普通」でなくなった柴岡は、そこから約30年もの間、「普通」に憧れてきました。大抵どこかで吹っ切れるでしょうに、こだわり続けたそのメンタルは強靭だと思いました。ある意味、子どもの頃から何も成長してこなかったのかもしれません。
また、「普通」に見せようと真面目に取り繕ってきた律儀な柴岡。その点も素晴らしいと思いました。柴岡はもっと自分を認めてあげてもいいと思います。
4. 子どもと親の会話
同棲中の柴岡と河瀬の会話。
自分の世話を焼く河瀬に対して、柴岡は「面倒を見てくれと頼んだことはない」「君が勝手にしていることだ」と言います。
ここのやり取りは、まるで「あんたが勝手に産んだんじゃん!」という反抗期の子どものようでした笑
そう簡単に見限れるわけがないのに挑発してくる。河瀬は柴岡の親でもないのに、親が子の命を背負っているのと同じくらい、柴岡の命を背負ってしまっていて、自業自得なんですけど可哀想でした笑
柴岡はそんな無鉄砲な人に出会えて本当に良かったですね。河瀬とどうなるかわからなくても、もう十分救われたような気がします。まだ48歳ですし経歴も十分ですから、未来は明るいです。
5. ラストシーンが秀逸
二人が初めてむき出しでぶつかり合い、心を通わす場面には心を揺さぶられました。この場面における柴岡のか弱さと、河瀬のまっすぐさが好きでした。早く話し合えば良かったんだよ。。ここまで長かったな。。
この作品で新しい扉を開いてしまった…。
最初のしっかりした印象からのギャップが激しくて、後半は痛々しいのに萌えてしまった。
面倒な男ではあるが、とても魅力的な人物だと思う。
放って置けない危うさがあって、河瀬が気にするのも無理もない。
何回も繰り広げられる○○騒ぎにヒヤッとした。
かなり長い話なのに、続きが気になって一気に読んだ。
柴岡ではなく「男」と表記しているのがとても印象的。
二人の微妙な距離感がよく表れていると思う。
何回も読みたい作品。
「じゃあ、本当の話をしようか」
めっ
っっちゃ面白かった!すごかった…!!
「ラブセメタリー」を読んでからであれば更に怖さが増すと思います。今作は恐怖や人の奥底がよりリアルに緻密。主人公河瀬への問いかけはそのまま読者にゾクゾクと刺さりまくり、読んでいてその臨場感と作品の濃厚さに泣けました。
木原さんの作品はほぼ外れなく面白いのですが、今回はことさら畏敬の念を抱かずにはいられません。
多くの作品で彼女は、社会的に取り残された者、平凡に社会生活を送る者、みすぼらしい中年、エリートやマイノリティや障害者を、BLを保ちつつ立体感をもった生々しさで描きます。
固定観念や一般的なイメージから抜け出したその人達の豊かな風合いが彼女の作品の魅力の一つです。40代アルバイトの谷地さんも、前科3犯の百田も、腕はいいけど性格最悪の谷脇も、神様の新も。
それは小説だけでなく日常での他人を見る目への問いかけでもあります。
柴岡の心中や人生は、多くの人にとって気持ち悪い、理解し難い、可愛そうや悲劇という感情を伴うであろうものなのですが、木原さんはそんな色を付けずに描いていると思いました。作中に出てくるように、彼らにとってはそれが普通であるからなのですが。
彼女の文章にその立場の人達への誠実さと真剣さ、眼鏡の透明さが表れていて、あぁこういう人だからこの人の本はどれも面白いし、クズ中のクズでも愛しくて笑えるんだよなぁ、と思いました。そして書かれるサインも丁寧。
だから「ラブセメタリー」も、あれだけ深刻で闇深く胸糞悪い題材と内容でも、自分の甘さにどれだけ責められているような気持ちになっても、それだけではない空気と後味が残るのです。今作とキーワードが少しリンクしているため、しつこいほど作品名を出し長々偉そうに語ってしまいました。
このお話のキーワードは「普通」「擬態」「本当と嘘」
「心の中に闇なんてないんだよ。自分は自分でしかありえない。」という台詞が素晴らしいです。そして自分とは全く違った生き方考え方をしてきた男が何を言い出すか分からない。
柴岡が本当の事を話そうとする時の緊張感と恐怖、そして飄々と嘘をつかれ混乱して、どんどん河瀬は巻き込まれて悪い方へ向かっていく。
話が進めば進むほど主人公の河瀬の生死に関係なくなっていくのにこのスリルは凄いです。それだけ思考への直撃は恐怖を禁じ得ません。
最初の異動願い取引云々は「そんな会社辞めちゃえよー!」だとか思うしお話の強引さも目立ちました。その“取引”はBLなら通常、『それでも快感が…』とか言いそうな所、今回は気持ち悪さと恐怖に覆われているのが強烈にリアルで、その後延々と続く罪の意識は全く地獄で圧巻でした。
散々おどろおどろしい展開で読み応えが半端なく、「これはBLじゃない!一般だ!」と大海原を感じた途端に、魔性が現れます(笑)
中年の色っぽさと滑稽さを描かせたら木原さんは一等です。
河瀬が聞きたい時だけ話す事を許可するのも、すぐ死のうとするのもシュールなロボット(そしておじさん…)みたいで可笑しい。あんなに有能な上司で支社長だった男なのに。
食欲が死欲に替わった3大欲求のみで生きる柴岡、そこから情がわくのは少々体が良い気もしなくもないですが、それが柴岡の本質の一つなのだとすれば河瀬が認められたのはこのお話の救いですし、こちらも認めないといけません。
自分が触れられたようにしか触れられない不器用さ、諦めとやり切れなさどうしようもなさ、最後まで救いがあるようで気休めかもしれない。本当に人は複雑で容易くて且つなかなか変えられなくて、心の底から愛が欲しい生き物だなぁと思いました。
生きることに対して私もさほど熱望も絶望もないので、柴岡があの後生きる気持ちを持てるのか思いつきませんが、彼も今までの考え方以外を河瀬から得られるといいですよね。そうすれば次第と整理整頓されていくかと。
一気に読んでしまいました。
魔性のおじさま受け……。
彼の本性が分からずなかなかに惑わされました。
平気な顔してそれっぽい嘘吐くわわざと怒らせるようなことまで言って非常にややこしい男性なのですが、どうにもこうにもリアルな人間らしい欠陥のようなものが愛おしく見えて仕方ないんですよね…。
こういう男性に会えるから木原先生作品はやめられないんだ。
ずっとしがみつかせてほしい。
おじさん受け苦手だったはずがいつしか魅力を知り堪能できるようになりました。
これも先生のおかげ。
食品会社で営業の仕事に嫌気がさしていた河瀬は、上司・柴岡に企画部に異動したいと相談します。柴岡は見返りに体の関係を強要し、河瀬は一度だけと応じますが、企画部に異動したのは別な人間。怒った河瀬は夜道で柴岡を殴り、柴岡は車にはねられ大けがを負います。数か月後、河瀬は企画部に異動。柴岡が約束を守っていたことを知り、自分の未熟さと羞恥心に打ちのめされます。
6年後、河瀬は新商品のテストのため訪れた北海道支社で、柴岡と再会。柴岡の完璧な仕事ぶりとは裏腹な異常な面を目の当たりにします。暴走運転、汚れ切った家、言葉で煽り自分を崖から突き落とさせようとするなど、柴岡は河瀬を翻弄します。
その後、東京に来た柴岡はこともなげに死ぬつもりだと言い、放っておけず河瀬は柴岡を自宅に連れ帰ります。柴岡は自殺を阻まれたストレスなのか目が見えなくなり、手を焼いた河瀬は精神科医の叔父に相談。偶然にも柴岡の自殺した母親は叔父の元患者で、母子は夫婦として暮らしていたことが分かります。柴岡のこれまでの行動に垣間見える河瀬への好意。母との壮絶な関係。柴岡を死なせたくなくて、河瀬は柴岡と体を重ねてしまいます。体だけの関係でも、次第に柴岡を可愛いと思う河瀬。しかし、好きだと告げた翌日、柴岡は突然視力を取り戻し北海道に返ってしまいます。河瀬は後を追いかけますが…。
河瀬が柴岡に一歩二歩と踏み込んでいくうちに、気持ちが嫌悪、同情、愛情へと変化していく描写に引き付けられました。特に、柴岡の言動に苛ついた河瀬が喋るなと命じて体を重ねるうちに、柴岡の素の面を知っていくころが、とても面白いと感じました。言葉で擬態していた柴岡。本当は甘えたがりで、素直で、恥ずかしがり屋で、そんなところに河瀬は惹かれていったのでしょう。
行為の最中、柴岡が「君の右手が一番好きだ」という場面が、とても好きです。昔、初めて一緒に夕食を食べた帰り、暗がりで立ち止まった柴岡の手を河瀬が引いてやったことがありました。このとき柴岡は河瀬を好きになったのだなあと深く納得し、嘘つきな男が胸の奥に何年も恋心を隠していたことに、すごく切なくなりました。
河瀬に好きだと言われて柴岡の視力が戻ったのは、愛する人に愛されたことがなく、逃げ出したくなったからなのだろうと思いました。
柴岡が海に入って死のうとした後、河瀬に最初の時「好きだ」と言わなかったのは「何も言わない方が、君もすぐ忘れると思ったんだ」と話す場面があります。柴岡はどうしようもなく不器用なのでしょう。
心に闇を抱えていても、人は救いを求めずにはいられないのかもしれません。柴岡が最後に救われて、本当によかったと思いました。タイトルの中の「月の船」は、柴岡にとっての河瀬のことなのでしょうね。暗いトーンの物語だからこそ、最後の救いが月のように鮮やかに印象に残りました。
オヤジ受けは初めてだったけれど、はじめてがこの作品で、もうすっかりその魅力に引き込まれてしまった。オヤジ受けだからというか、オヤジであることと受の持つ事情が相まってというか。とにかく圧倒的存在感の受と、比較的普通な攻がどうなるのか、読み始めたら手が止められませんでした。
受になる柴岡は、見た感じは普通のおじさんで良い上司であったけど、その中身がとんでもなかった。不安定で嘘つきでいくら手を伸ばしても届かない。心の中の闇、過去は想像以上に壮絶。
最初、攻の河瀬は異動をしたいならと柴岡に体を求められそれはもう嫌っていたけど、別れてまた再会して少しずつ気持ちが変わってくる。
柴岡の心に巣くう母親が大きすぎて、その人生を母に支配されてるような、そんな柴岡を河瀬が救い上げる。静かなのに強烈な印象を残すお話でした。
個人的な萌の話ですが、目が見えるようになる前のやりとりやイラストに描かれた二人の姿がとっっっても萌えた。そしてなにより、全編を通して不思議な柴岡という存在にどきどにはらはらさせられてるうちに彼の魅力にどっぷりはまってしまいました。
日高ショーコ先生の素敵なイラストと、美しいタイトルに惹かれて手に取りました (⌒-⌒*)v
読み終えてまず思ったことは、ハピエンで良かったなあと言う事 ( *´艸`) 決してバッドエンドが嫌というわけではありませんし、「救いのない終わり」と言うのもありだと思うのです。
でもこの小説の柴岡(受)は心に深刻な闇を抱えています。年は40代後半。このまま放っておけば必ずや自殺あるいは孤独死するのは間違いなく、それではあまりにも悲しすぎます。だからラスト近くになって、ようやく柴岡(受)を理解し始めた河瀬(攻)が、柴岡(受)の頑なな心を突き崩そうとぶつかっていく姿が頼もしく、嬉しい気持ちになりました。
実は物語の序盤・中盤とも、河瀬(攻)が柴岡(受)を大層気持ち悪がっているため、この二人が最終的には恋人同士になることなど有り得ないのではないかと懸念しておりました。また終盤では柴岡(受)の自殺願望が強すぎて、河瀬(攻)が自身の気持ちの変化に気づく前に、柴岡(受)がこの世を去ってしまうのではないかと冷や冷やしました。
読後は収まるところに収まったとホッとしながらも目尻に涙が浮かび、柴岡(受)の境遇や自殺願望に至った経緯などを思いやっては、いつまでも鼻をグズグズいわせておりました。甘々のハピエンも好きですが、本書のようにしっとりと余韻のある終わり方も大好きです 人*´ー`*)スキスキ♪
本書は全編通して河瀬(攻)視点でした。よって柴岡(受)が何を考え、何を欲し、何をしようとしているのか皆目分かりません。柴岡(受)の行動も言動も謎ならば、なぜ死にたいと思うのかも謎です。受けの心の行方すべてがミステリアスで、そこが面白く夢中になって読みました。
通勤電車内で読むのが常ですが、幾度か下車駅を通過しそうになり、慌てて降車するということを繰り返しました。それほど私にとっては興味をかき立てられる作品でした。オジサマ受けが地雷というのでなければ、いえ地雷であっても是非多くの方々に読んで頂きたい作品です。
まあ、それにしても!河瀬(攻)があれ程までに柴岡(受)を嫌い、「気持ち悪い」を連発するのには驚かされました。確かに河瀬(攻)の気持ちは分かるのです。人事異動を楯にセックスを強要されたのですから。でも単に「嫌い」とか「嫌な奴」くらいなら、その後の展開で恋愛として十分成り立つと思うのです。が、そこまで気持ち悪がられると、BLとして成立するのだろうかと心配になりました (・・;)
でも柴岡(受)はナイスミドルで見た目は若いのです。そして「嫌よ嫌よも好きのうち」と言う言葉があるように、河瀬(攻)は柴岡(受)を嫌悪し殺したいとまで思いながら、無視することが出来ません。無関心ではいられない、つまりは関心があると言う事。これって大きな意味での「好き」の一部分。惚れた腫れたで結ばれた後、徐々に相手の悪いところを知り嫌悪感を抱くカップルよりも、最悪な部分を知りつつも好きになる方が、長続きすると聞いたことがあります。
もしも河瀬(攻)が柴岡(受)を嫌いなまま、何の接点もなく遠く離れ離れのままだったなら、そこで終わりになっていたことでしょう。でも一時は離れ離れになった二人が6年後には再会を果たすのです。そして、偶然な成り行きとは言え何度も接触していくうちに、嫌いが好きに変化していく。その様は読んでいて楽しい展開でした。
まず再会して驚いたのが、柴岡(受)の髪の毛の色。染めるのが面倒だからと真っ白なまま。次に凍り付いたのが運転の速度。高速道路でもないのに120キロ超えで走ろうとするのですから。そして唖然としたのは汚部屋。柴岡(受)のきっちりと清潔そうな外見からは想像出来ない散らかりよう。これらは皆、柴岡(受)の心の底からの「救って欲しい」という訴えだったのかなあ、と全てを読み終えた今は感じています。
魔性系オジサマの柴岡(受)は、河瀬(攻)を傷つけるような酷い言葉ばかり吐くし、ホント可愛くない。それなのにラスト近く、だんだん可愛いと思えてくるようになるのです。河瀬(攻)の言葉に顔を赤くしてみたり、恥ずかしがったりと、柴岡(受)が意外な一面を見せるせいかもしれません ギャップ萌ぇ――――(p〃д〃q)――――!!
河瀬(攻)はあらゆる面で翻弄されっぱなしでしたが、最後はようやく主導権を握ります。どうか河瀬(攻)が柴岡(受)を甘やかし、心の闇の部分を忘れるお手伝いを一生かかってして下さいますように、と祈るような気持ちで最終のページを捲りました。もっともっと小説の続きを読みたいと放心状態になりながらも、物語の終わりを飾る日高ショーコ先生の挿絵イラストが素晴らしく美しく、あたかも二人のその後の未来の姿が見えるようで救われました (ノд・。)
何回も読んでいるので初心でレビュー出来なくなっているのですが・・・。
一番初めに読んだ時は終盤号泣した記憶があります。目が腫れるほどに(恥)
先が気になって②ちゃんと読んでいるようで読んでいないような・・・そんな感じだったのか、読み返してなるほどなあと思うこともありました。
今回再読して、やっぱり涙が出ました。
雨の中、柴岡が1人で出て行ったのを後から河瀬が追いかけて引き戻すあたり。
ソファーまで河瀬を探しにいって居なかった時の柴岡。
「君の匂いがするから」「犬のように紐で引っ張られたくない」
最後の目が見えてるのに目隠しするといつもの柴岡になるところ。
言い出したらキリがないですが。
お話の中で何度も置かれている立場が(精神面でも)逆転している?!のに最終的には河瀬が追いかける方に!
想い合った後に別れがくるこの感じ。木原節炸裂ですね(勝手に言ってます(笑))
あとエチシーンがあんまりエグくないと言いますか、セクシーではあるんですが、サラッと読めてしまうのも木原さんならではなのかな?とも思います。
この作品は木原さんの中でもエチ回数かなり多い方では?!
最後に「月の船を拾いに」というセリフがあるんですが、タイトルの中にある言葉が出てくるとなぜか「タイトルきたーーーー」ってちょっとテンションあがるんです(笑)
初回はあまり思いませんでしたが今回はきたーーーってなりました(笑)
初めから最後まで重めで暗いお話ですが私にはこれが最高なのです。
怖い〜怖い〜!これはBLなの?ホラーではないのですか?
一切の事前知識なく読んでしまいました。
仕事ができて話のわかる素敵上司、柴岡。何度か食事などして自分が「お気に入り」の部下のような気がして、微かに優越感を感じていた河瀬だが…
唐突に!希望部署への異動をエサにセックスを強要され。選択肢がないような強迫観念に駆られて、セックスする。挿れる側だけど、紛れも無くこれはレイプ。誰にも相談できず、の性的暴行の被害者です。
しかも、約束の異動が叶えられず柴岡の異動だけが決まり、送別会の夜、後を追いかけて殴りかかる!よろけた柴岡が車に轢かれる!河瀬は逃げる!
この辺りの、河瀬の強迫観念に急き立てられるような異常心理というか、切迫感の描写が怖い怖い。
河瀬の感じる恐怖感以上に怖いのが、何事も無く北海道支社長になった柴岡。
家は超汚部屋で、この男のとっちらかった内面がうかがえる。上っ面は清潔だけど、誰にも本心を明かさない底知れなさ。これぞホラー。
この男は内面が壊れています。そこに否応無く巻き込まれてしまった河瀬の受難劇。
途中で柴岡がどうしてこんな風になってしまったのか分かってしまいましたが、余計に業の深さや異常性が際立って、その上河瀬の逃げ場もどんどん無くなって、この話一体どうなんの?という不安感が高まっていく。
死にたがる柴岡と、見捨てられずに構ってしまう河瀬。のらりくらりする柴岡のキモチ悪さ。
その上、なんで河瀬が柴岡を抱くようになってしまうのか。常識的見地からは何も正解は見えてきません。ひととひととの不可解な結びつき、内側に閉じている以上、外からは計り知れない関係性。
この密室内でのセックス三昧の描写も、凄まじくホラー(というより不条理)で、でも目を離せない。
ラスト、それでもまだ死にたがる柴岡の、心に浮かぶ光景は月の船…綺麗なものに導かれて救われたい、という叫び……
自分が助けてあげられる、と思う河瀬は「共依存」の檻の中にはまり込んでしまったのでしょうか?……
未来を予想できないこの二人の行き先は、一体どこなのでしょう。
ミドル受大好きだけど、受けの芝岡さんが痛すぎ。
イタイの通り越してクソすぎて………そう、なんか可愛いんだけどクソでした。
河瀬君は、巻き込まれすぎ。
死にたがる芝岡さんも、それが気になってしょうがなくなっちゃった河瀬君もよくわからん。でも、可愛い芝岡に気づいちゃった河瀬ブラボーっっ!ハピエになるってわかってなきゃ読めないよ、このカップリングは。
河瀬君は芝岡さんを気にし過ぎてそのままも〜、頼むからそのまも〜ぉ、まっすぐ行けばいってほしいと思う。
心底【WELL】を読んだ後にこれ読まなくて良かったと思いました。
そうじゃないと、この暗闇ループの衝撃に耐えられなかった。
そこはかとなくダークな展開で、ちょっと読むのが途中耐えられなくなり、完読するのに3日を要しました。
それでも挫折できないというか……挫折させてくれないっていうか。
結局、怖いもの見たさで最後まで読んでしまいました。
後味の悪さは木原作品の中でも屈指だと思います。
一応はハッピーエンドなんでしょうが、後半急ぎすぎた感があり、まったく主人公達に感情移入できませんでした。
河瀬が柴岡に惹かれていく過程も、柴岡が河瀬を好きになった理由も、なんだかどのあたりもいまいちピンとこず、ちょっと無理あるんじゃないかなーと違和感が。
何かがカチっと嵌れば神評価になったのではないかと思うんですが、何かが嵌らず、その何かが自分でもよく分からないので上手く言えないのですが、数年してから再読するとまた違った評価が出来るかもしれません。
小説でのオヤジ受けの最高峰だと思ってます。なお、コミックでは未散ソノオ様の「KOH-BOKU」です。どちらの作品も、年齢より若く見えるとか、無自覚色気があるとかでなく、外見は普通で仕事のできるオヤジという点が、より私の中でポイントが高いです。日高ショーコ様の描く柴岡がカッコイイようでも老けたオヤジであり、オヤジ好きにはたまりません。
河瀬史(攻め)の目線でストーリーは進んでいきますが、柴岡(受け)が頑なで腹が立つくらいです。河瀬史は、自分が手を離すと死んでしまう男を相手にした一般的な人間がとる態度であり、その言動に違和感は感じませんでした。少しずつ明らかになる柴岡の過去、そして柴岡が河瀬史に求めたものとは…。
柴岡にイラついていたはずなのに、読み終えてからもう一度、今度は柴岡の目線に立って読み直したくなる作品です。オヤジ好きにはお勧めです!
思い切り後味の悪い作品を読みたいと思い、レビューに軽く目を通しショック緩和の為の美しいことと共に購入しました。
もっと暗くて痛い話だと思っていましたが、考えていたよりも甘い話で拍子抜けしました。
正直中盤辺りまでは、受けの柴岡のやることは微妙に手ぬるく攻めの河瀬は嫌がってばかりで甘い話にしても痛い話にしても物足りなく感じていました。
ですがこのお話、後半が本番です!
48歳の白髪のおじさんが、喋れないから行動で甘えまくるのがとても可愛いんです!
本当は河瀬に好かれたいのに、最初から諦めて後で嫌われるより今嫌われようとする。
本当は河瀬に甘えたくて仕方が無かったのに、甘え下手で喋れなくなってやっと甘えられる。
死にたがるのも、河瀬が助けてくれるのではないかとどこか期待しての行動なのでしょう。
淫乱襲い受け、すぐ死のうとするおじさん、だらしない人、BL基準で少々性格が悪く酷い攻め(現実では普通の人)等に特に抵抗の無い人ならば大体の人が楽しめる話のような気がします。
神評価と迷いましたが、中盤辺りまでのBL的な楽しさの薄いストーリーで1つ評価を下げ萌え2とさせていただきます。
ただでさえ人の心は分かりやすい形ではないのに、普通ではない柴岡のことを河瀬は本当に全て分かっているのでしょうか。
とにかくこれからも河瀬は苦労しそうです。
◆あらすじ◆
食品会社に勤務する河瀬(表紙絵右 30歳)は、過去に一度だけ肉体関係を持ったことのある上司・柴岡(表紙絵左 48歳)と再会し、彼の、有能で容姿端麗、誰からも一目置かれる会社での姿からは想像もつかない心の闇を知ることに。
自ら会社を辞め、隙あらば死のうとする柴岡を放っておけず、柴岡と2人で暮らすハメになった河瀬。
死なせるわけにはいかないという義務感で柴岡の世話をし、セックスするうちに、次第に柴岡に溺れていく河瀬ですが――
◆レビュー◆
前半はともかく、後半からが神!
前半は柴岡の行動が不可解過ぎて、少し冗長に思えてしまいましたが、後半、特に柴岡と母親との関係が明らかになって以降、俄然前のめりに読みました。
やはり母親との異常な関係性こそが柴岡という人間を規定する最大の要素で、これが分かって初めて柴岡という人間が見えてくるので――しかも、あまりにも衝撃的な事実!
前半の内容は大半吹っ飛びました。
そんなわけで、物語は河瀬の目線で進行するものの、ストーリーの重心は断然柴岡側に置かれている気がしています。
河瀬は柴岡のパートナーというよりも、「母親によって狂わされた柴岡の人生に巻き込まれた男」というポジションに近いでしょうか。
母親の愛に応えるため彼女に半生を捧げた挙句、母の愛を見失った柴岡は、表向きは完璧な会社員を擬態していますが、会社を出れば生きる屍。
ただ、医者にも本当の顔を見せない柴岡が、河瀬にだけは「死にたい」と訴えます。
といって、河瀬に死ぬのを止めてほしいわけでもない。
柴岡にとって「死にたい」とは、唯一彼の知る、愛を乞う言葉なのかもしれない(彼の母がそうであったように)――そんな気がします。
けれども、つかの間体を貪り合う愛し方はできても、河瀬が愛を確かなものにしようとすれば、柴岡はまた擬態を始め、それを頑なに拒む・・・幸せを自ら遠ざけようとするかのような柴岡の心の闇の深さに絶望させられ、もどかしさと切なさに胸を抉られる終盤。
そして、その柴岡の底知れない心の闇を、まさに象徴的に描き出した、海辺のラストシーン。
闇の中で柴岡をいざなう光の先にあるものは、やはり死しかないのか、それとも――
波にさらわれる砂のように、脆くて壊れやすいままの2人の関係。
確かなものは何一つない中で、ただ今この刹那2人の間にある、研ぎ澄まされた愛の一形態(それは愛なのか性愛なのか分からないけれど、紛れもない純粋な魂の結びつき)を描こうとした作品のように、私には思えました。
それにしても、柴岡の纏う、ぞわぞわと鳥肌立つようなエロス・・・何なんでしょうね?このオヤジは。
自ら全てを捨て、視力も失い、暗闇の中で河瀬の体だけを求め続ける柴岡の姿には、48歳のオヤジにはありえないほどの儚さと色気があって、不覚にもゾクゾクさせられます。
それは、彼が30年近くも「母親の夫」を演じていた(彼の「擬態」の原点はここ?)という、背徳の過去を背負っているせいなのか、それとも眼の見えない柴岡に庇護欲をそそられている河瀬の目線がエロいのか、はたまた48歳の容色褪せた体が、逆に彼に唯一残された淫欲の業の深さを際立たせるのか。
柴岡が食事をしている時の表情さえ「発禁並みにいやらしい」と感じてしまう河瀬の感覚にも、すんなり共感できる・・・白髪頭のオヤジなのに。
ああ、また木原マジックにやられた! 悔しいような、有難いような(笑)
しかも、河瀬の帰りを裸で待つ柴岡、その柴岡に喘ぎ声以外の声を出すことを禁じる河瀬・・・って、当人同士は無自覚でも、やってることがSMプレイめいてるんですがw
これってやっぱりオヤジ萌えが裏の主題なんじゃないかと、ひそかに思ってしまいます(笑)
ラストシーンでの河瀬の決めゼリフも、オヤジ受け仕様・・・かどうかはともかく、冒頭の頃の河瀬からは想像もつかない温かい言葉に不意を打たれて、涙がこぼれました。
河瀬の温もりに縋って生きたいという想いが、柴岡の中に芽生えてくれることを祈ります。
壊れた柴岡は普通を擬態して生きてきた。その裏で、「心の闇」なんてない。そこにはその人自身があるだけだと言う。ならば、柴岡の行動の中に柴岡自身がある。そのことに気づいた河瀬は少しずつ柴岡を理解していく。
破綻して見える柴岡の行動は、かつての恋人に対する深く複雑な思いとそれに反する河瀬への思いがタナトスとエロスとして軸をなして、もつれながら柴岡という人と物語を構成している。
普通でない自分自身を禁忌として深く深く擬態の奥に押し込めて生きている柴岡。擬態の部分しか知らない人たちは柴岡を高く評価する。反して唯一柴岡自身に一瞬触れた河瀬はその正反対の評価をする。それでも柴岡は、認めてくれる人々ではなく容赦なくひどい扱いをする河瀬にのみ執着する。
この一筋縄ではいかない柴岡という人物が非常に魅力的だった。BLではないと思って読むとキャラとしてはほぼ完全に悪役、敵役である。河瀬に対する仕打ちは本当にひどい。が、彼は壊れているから、そうするほかないのだ。目の見えなくなった彼のみじめな姿が、本当の彼なのだろうと思う。
河瀬は何度も彼を打ち捨てたいと思うが、罪悪感に縛られて打ち捨てることができない。哀れな人を見捨てることができない。そうして、読んでいるこちらも柴岡の行く末が気になって読むのをやめることができない。河瀬とシンクロしながら柴岡がどこかに着地することを願って柴岡の姿を追ううちに、彼に浸食されていた。
繰り返される旋律とめまぐるしく変わる明暗の波、オルガンの金属質の鋭さ、続いていくこともどこで終わることも可能な展開。最後にさす光。バッハの曲のような話だと思いました。
木原さんは凄まじい執着心や理不尽さを描くのはとても上手くて引き込まれるんですけど、それらは狂気的であってもやはり狂気とは似て非なるものではないかと思います。それこそ人間らしい生活をしなくなった柴岡は「狂ってしまった」と言えるのでしょうが、私個人的にはこの場面はあまりしっくりきませんでした。柴岡の経歴的には説得力があるかもしれないけど、物語の進行的に説得力に欠けると感じました。好きな場面は柴岡が外に落ちてしまいそうなほどの窓際ぎりぎりに悠然と腰を掛けながら「君にキスしたい」と言うシーン。柴岡の危うさをさり気なく印象的に描く木原さんは凄いと思います。
この作品の評価は萌にしていますが病んでる度が神です。
私がこの作品に神をつけないのは木原先生の他の作品で不動の神作品があるのと、キャラは趣味ではないので中をとって萌にしています。
木原先生の「痛い系の作品」ってこちらのサイトさんの指標で測れない内容な気がします。
というのも、面白いとかお話が良かったとか、そういう単純な評価ができない作品が多いからです。
あ、もちろん分かりやすい萌える話や萌えるキャラのいる作品もありますが。
それにしても何回読んでも病んでるもんは病んでいるとしか言いようがないですね、この作品^^;
柴岡(受)は、ここには書かないけど立派な病名がついちゃう人ですね。
知的にはおそらく水準より高い人だから擬態して生きて行くだけの処世術は身につけることが出来たんだろうけれど、思春期に育てるべき情操部分を破壊されてしまったために、とんでもないものを抱えたまま大きくなってしまった人。
彼は重度の精神疾患を抱えているんだけれども、でもこれは彼自身のせいではないです。
とんでもない過去を与えられた可哀想な人なんです。
あんなこと、私ならば耐えられないです。
興味深いのは受けさんを振りほどけない攻めさんです。
河瀬(攻)は普通の感覚を持った普通の人だろうと思います。
けれど、河瀬本人も自覚していないようですが、河瀬は人を振り切れない情というか、やっかいな人の良さを持っているようなんです。
だからこそ魔性のオジサン柴岡にハマっていくんだろうと思います。
なぜ柴岡(受)はセックスの相手に河瀬(攻)を選んだのか?という疑問があると思うんですが、
不思議と柴岡タイプの人間は依存できる人間をより分ける能力が優れています。
ものっすっごい噛み砕いていうと、柴岡は人を選ぶ病んでるかまってちゃんで、そして河瀬はかまってちゃんの罠にかかった可哀想な人です。
おそらく河瀬は柴岡に出会わなければ普通に結婚して普通に家庭を持っていた男だろうと思います。
柴岡は恐ろしい嗅覚で河瀬を選んでいるなぁ…と思いました。河瀬は柴岡が嗅覚で選んだとおり、柴岡に執着するようになる。放置しておけば良いのに、それが出来ない。
よくヤンデレ系の漫画にいますが、
「かまわないで~でも死んじゃうから~あは~」みたいなイラっとするキャラw
あれのおじさんバージョン…いや~こういうの好きな人は好きですよね~。
病んでる作品に耐性のある方、お好きな方にはお勧めします。
キャラクターの精神構造は一般の人にとても理解できるものではないと思いますので、苦手な人は興味本位で読まないほうがいいと思います。間違いなく気分が悪くなると思います。
個人的には興味深い部分があったので萌評価にしていますが、受けさんのキャラは趣味じゃないですね~(汗)
変態系・病んでる系がお好きな人にはたまらん作品です。
ここまでの、どこまでもノンケで、ドノーマルで、そして、どちらもお互いに底が見えないって言う感じは初めてです。
このおっさんはなにものだー、なにものなんだ、何を考えているんだ、って、気まずさとか、そういうの全くなく、ただただ穏やかにって、怖い。気持ち悪いのに、この気持ち悪さこそが、萌えの材料で、だんだんと、この気持ち悪さが癖になるというか、もっとくれ、もっともっと、と読むうちになるのが凄くいいです。
木原先生もあとがきでおっしゃっていますが、この魔性のおじさんがどこまでも嘘つきで動かないし、何度手を変え品を変えしても、って、河瀬大変だよなあ、と、思いましたね。
最後まで一人でいいんだ、夢だったから、見えないから幸せだったんだ、みたいな感じで、目を塞いだら素直になるって、見えなければ小さな世界で幸せなのに、見えないから面倒見てもらえてかまってもらえるんだ、って、かたくなになってる感じが、可哀想でかわいいなあ、と思います。
かわいそうでかわいいの、大好きです。
ただ、小説を読みつけてない人にはお勧めできないです。
ちゃんと読みつけていて、裏を想像して読む、ということに慣れていない人は、本当に理解が及ばないと思います。
木原さんの作品を読むぞ。読む。読むんだからね。と覚悟して読み始め、ものの5ページで決心は挫けそうになりました。体調も万全だったのに。
約1年半振りに読む木原作品ってのもあると思う。
いくら覚悟はしてても、そうだ、こういう感じだわよ。と、忘れてる部分も多かったですもの。
パンチが重くて、喰らったときにも相当な衝撃があるのに、あとからまたじわじわボディブローのように効いてきて、どうしようもないです。
結局最後まで救いがなかったなあ。
どうしてBLなのに、こんな作品を読まされなきゃいけないんだろうと思いながら、いつも進んで読んでしまう。なんなんでしょうかこの常習性。
こんな世界、知りたくないと思いながらも、最後までノンストップで読まずにはいられない。
コールタールが胸に溜まってしまったようになるってわかってんのに、また新しい作品が出ると、読まねばと思うのですよ。悔しい(笑)
そして、木原作品のいちばんすごいところは、キャラを忘れられなくなるというところです。日頃3歩進むと物事を忘れる私が。
この二人もずっとこれから心の中に棲み続け、なにかの折に思い出すんだわ~。
でもそれが不快というわけでは、けっしてないんですよ。
やっぱり麻薬なんでしょう。甘い毒です。
それとね、この作品は、一人称を使わずに主人公を河瀬にするために、柴岡のことを「男」と表記していて、その手法がかっこいいな~と思いました。
人は皆狂うものなの。
ほんのちょっとの出来事で
埋められない穴がぽっかり開いちゃうものなのよ。
人間は誰だって弱い生き物なの。
もうこれ以上はダメだ~助けてくれ~って心から叫ぶ日だってあるわ。
このオジサマだけじゃないはずよ。
ずるい気持ちが相手の気持ちを動かす時だってあるわ。
私はこのオジサマの気持ちがイタイほど共感できる。
誰にも自分の気持ちが解ってくれず
「死にたい」って何度思ったかわからない。
でも きっといつかいい事が待っているわよ!
オジサマを必ず愛してくれる人が助けてくれるわ!
帯文句を見た時、なんちゅうステキな言葉をばらまくんだ!!!と驚喜しましたが、読んでみてさらにびっくり。
はっきり言って、この本で初めてオヤジが大好きになってしまいました。
最後の最後まで、主人公の相手、おっさんは心の内を小説の中で心を書き表せません。それが見たいい、聞きたい、虐めたい、の読み手を煽り続け、新手の「エロエロナンセンス」か!!!!!とも思いました。少なくとも、嗜虐的な性を好む私としては胸が高鳴り続ける物語でした。
中盤、うっきうきなエロもてんこもりですが、BLに欠かせない過去の線引きもありえない物語の最後に出てきます。同情も受ける余韻もない頃合いにそれが公示されて、「ほんまか」とぽかん、と口をあけてしまうくらいです。
オヤジ嫌いにはキツいお話かもしれませんが、昭和初期の推理小説並みの気持ち悪さはバツグンです。
エログロナンセンス、虚無への供物が大好きな方には、おすすめ意外の何も思いつきません。どうぞ、ライトな中井でおすすめです。
帯『殺してくれないか』・・・あとは、海でも山でも適当に捨てればいい。
木原さんお得意の痛い系で、柴岡[受]は深い心の闇を抱えたトラウマ持ち。
部下×上司(元上司)のオヤジ受けです、はい。
きっかけは仕事が出来て部下の評判も良い柴岡が、セクハラもしくはパラハラめいた取引を河瀬[攻]に持ちかけ、結果的に河瀬はその取引に応じて望まないままに柴岡を抱きます、というか抱かされます。
その後急遽、柴岡は北海道へと移動となり、一度は騙されたかと怒る河瀬ですが結果希望通り企画部に配属される。
柴岡との事は過去として忘れようとしていた河瀬ですが、北海道の出張先で柴岡と再会し、さらにその後に成り行きで自宅に柴岡を置く事になってしまう。
そして次第に柴岡の心の闇があきらかになっていく訳ですが、読み終えて思ったのはこの話に果たして希望はあるのかなーーと。
柴岡はずっとこのままなのか、それとも希望はあるのか、それともやはりずっとこのままで河瀬と生きて行くのか。河瀬はどこまで柴岡の傍にいる事が出来るのか。
自分的にはこの話は希望がない様に感じました。
あるとしたらそれは望みのままに柴岡が死ねる事かもしれない。
この話に希望はあるのか、そう感じさせる作品でした。
木原作品を大量に買い込んで読み漁ろうと手に取り、口絵の日高ショーコさんの絵のあまりの綺麗さに驚き、このプラチナブロンドの青年はだあれ?と期待に胸躍らせて読んでいったら、……痛い目に遭いました。
あの一瞬にして目を奪われた青年は、生活能力ゼロの受けオジサンだったのですね。
おまけにプラチナブロンドだと思っていたものは白髪で。
読み進めても読み進めても一向に出口が見当たらず、どんどんと深みへはまっていくばかり。
一言で言えば底なし沼のような小説でした。
あまりに苦しくレビューをアップしようと思い至るまでに、だいぶ時間がかかりました。
人の人生というのはこんなにも長く誰かに支配されると、もう取り返しがつかないどうしようもないものになってしまうのかと。
ただただ切ない、柴岡さんが切なくて涙が出ました。
それと同時に柴岡さんが何故に汚い手まで使って河瀬に抱かれたがったのか、その理由がまた切ない。
自分の身分証明するもの何もかもを持たず死に行く姿はため息が出ます。
河瀬もギリギリのところで柴岡さんのお世話をしているのはよく分かる。
柴岡さんをそんな姿に育て上げ、さらに自身が死ぬまで柴岡さんのことを支配し続けた彼の母親に怒りが止まらない。
最後やっと、本当にやっと微かな小さい光が見えてどれだけ救われたことか。
木原作品なので『嫌な奴』を読んだあの衝撃はもう嫌だと思っていたので、すごいドキドキしました。
でも本当にこの作品は弱ってる時に読むと大変なことになります。
睡眠をいっぱいとって、ご飯をいっぱい食べて、余力十分で読まないと本当にきついです。
営業をしている河瀬の上司、柴岡は人当たりもよく仕事もできる男だ。
ふとしたことから柴岡と個人的に親しくなったことにこっそり優越感を感じていた河瀬だが、ある日そんな彼をどん底に突き落とすようなできごとが起こる。
柴岡が河瀬の人事異動をたてに体の関係を要求してきたのだ。
そんなこと到底受け入れられるはずもない。そうは思うものの、ほんの少し我慢すれば手に入る未来に負け、嫌々男を受け入れる。
しかし、河瀬の異動は叶えられず……
とりあえずBLだと思って読まない方がいいと思います。
人事をタテに体の関係を迫る上司というイメージからはかけ離れた儚げで壊れ系の魔性のオジサマと、そのオジサマを憎んで憎んでいるうちになんだかよくわからない情をはぐくんでしまった哀れな青年の話。
色々なものに対する嫌悪感や介護疲れなど、負の感情がかなりしっかり書き込まれているので読んでいてちょっと消耗する。
しかし未だかつてこのジャンルでメインキャラが介護疲れするのをを見たのは初めてかもしれない。介護BL。何それ新しい。
愛でも恋でもないけれど、捨てることのできない不思議な情。
根本的に壊れてしまっている柴岡がもう少しまっとうな生活と幸せを手に入れられるといいよね。
ラストシーンはとにかくは印象的で幻想的でした。
内容は色々アレですが(笑)木原作品にしてはかなり救われていると思います。
柴岡は何回も暗闇が怖いと言っている,有沢に嘘の将来設計を話すときに夜になっても太陽が沈まない場所(暗く無い場所)に行きたいと言ってしまう程なのだから本当に怖くてたまらないのだろう。河瀬に両目を塞がれたらおとなしくなったのも暗闇が怖いからだろうし,柴岡にとって心の闇は無いのではなくて存在してほしくないものなんじゃないだろうか。毎晩のように暗闇がやって来るのに,心の中にまで暗闇が出来てしまったら彼の世界は今以上の恐怖に満ちてしまうからね。そして暗闇=死だとしたら,死ぬ事は柴岡にとって凄く怖ろしい事なんじゃないだろうか。
柴岡が河瀬に真実を話したがらなかったのは自分は普通じゃないと思い続けていたからなのだろう。普通の人々が普通じゃない自分を理解したり受け入れたりするはずが無いと思っていたら,口が裂けても真実は話せないし助けなんて求められない,普通じゃないと見なした人に対して普通の人々は本当に冷たいからね。ひょっとすると,母親との関係が無かったら柴岡は河瀬とは違った形の平凡な人になっていたのではと思えてきた(根拠は無いが)。多分,柴岡には現状を恥じるだけの神経があり過ぎるぐらいあって,だからこそ彼は普通じゃない自分を巧妙に隠す事で,自分の事を守っていたのだろう。
柴岡は母親のために「あなた」になろうとしたが,それが不可能だと言う事を彼は十分に自覚していたのかもしれない。身分を証明できるものを持たずに死のうとしたのもその自覚からで,柴岡は自分を柴岡保弘と証明するもの,死んだ男が母親の愛した「あなた」では無く「代用品」であると示すものは,たとえどんなに些細なものであれ彼には耐えられなかったのだろう。
自分を普通じゃないと否定し続けてきた柴岡は,だからこそ何の根拠も無く自分を肯定できる河瀬にひかれたのかな。
柴岡の相手ができる河瀬は,彼ほどじゃないにしろ十分絶倫だと思うんだけどなあ。
後日P196の柴岡のセリフを読んで,(確か)強制的に電気ショックを回避できない状態にされた犬は,たとえ自力で回避できる状況になっても回避する事が著しく困難だった,というのを思い出した。
受・攻のキャラのほり下げが深く、二人の関係性についても恋愛というより、必然性、運命みたいなものを感じさせる設定になっていて面白かったです。ただもう少し日常の細やかな描写や情景をじっくり味わえる雰囲気であったり、他のキャラのつくりこみががあったりするとよりリアルな感じがでていいのかなと思いました。萌え度は少し低めですが、リアルさとのバランスを考えるとこれ以上は難しい気もします。良作。
皆さんのレビューで全部言い尽くしたので、特に補充なしただ、強いて言えば番外編が欲しかった。普通のラブラブわ期待してないが、もうチョット二人が一緒にいる時間を描いてほしい、東京に戻ってからの。名前で呼び合うのが見たい、おじさんにはハードルが高いが…
あらすじは皆さんの読んでいただければわかると思うので私は割愛させていただきます。
これこそまさにノンケという感じでした。
ノンケ設定のわりにたいして葛藤もないお話が多いですよね。
まぁBLはある主ファンタジーですからね。
ノンケ作品は数あれど、ここまで露骨な不快感を書く人は滅多にいないと思います。
男を抱くという概念のない人間が突然そういう状況に陥れば、嫌悪感を抱くのは当然の事。
常に張り詰めた空気がただよっており一体この二人はどう転ぶのか、はらはらしながら読みました。
しかしながら受けの柴岡の情緒不安定具合ときたら類を見ないですね。
正直彼の過去話はすごく胸糞悪い。けれその過去がなければこのように病んだ人格が形成されてしまった事を納得できなかったと思います。
最初に河瀬が柴岡の手を引くシーンがあるのですが、何気ないそれが最後に大きな切なさをもたらしました。
萌えと言うより人間ドラマとして面白かったです。
ものすごーいヤンデレのオッサンが受けでした。
ここまで可愛げなくイッちゃってる受けって、私はじめて読んだかもw
まったく先の読めないストーリー展開にワクワク、いや、ゾクゾクしながら読みました。
いやはやこれは、キモいというか怖いというか、とにかくヤバいよアブナイよ。
萌えはなかったんですが、「お話」としてとても面白かったです。
後半、駆け足になっちゃったのだけが残念でしたね。
改めて、ノンケが同性相手にセックスするときのハードルの高さについて考えました。
いちばん最初の、嫌悪感まみれの悲惨極まりないセックスに、思わず笑っちゃいました。
そうそう、このぐらいハードルの高さを示してくれてる小説があっていいはずなんだよ!と思いました。
だってこの業界、「ノンケ」という設定を生かしきれてない作品が多いでしょ。設定上だけのノンケだらけなんだもの。軽くハードル飛び越えてホモっちゃうノンケだらけで、「これ、ノンケ設定必要あったのかしら?」みたいな。
そういう意味で、この作品の攻めは、「ザ・ノンケ」です。
同性相手にはじめてセックスしたときに、攻めの感じた生理的嫌悪感。それが、ダイレクトに痛いぐらいに伝わってくる。伝えちゃいけないってぐらいに伝わってくる。
そうなんですよ、本来BLでは、ここまで伝えちゃいけないんですよ!w
で、私はそれを書いてくれる木原音瀬さんが好きなんですよね。ここまで書いて、きちんと「成立」させてくれるのが凄いなと。
でもそれは、万人にオススメできない理由ともなっちゃうんですけどね。
やっぱ後半が残念だな。
伏線は回収されてるし、辻褄が合ってて納得のいいクライマックスではあるんですが、キレイにまとめすぎたような気がしました。
ぶっちゃけ期待してたんですよ、壮絶なバッドエンドを!このヤンデレ受けに相応しい、圧倒的に怖くてキモい、悲惨極まりないバッドエンドを!w
バッドエンドだったら神評価してた気がします。
バッドエンド萌えするへんな性癖でスンマセン。
孤独な母の下へ逝きたい孤独な柴岡。
そこに食い込んでくる一人の男。
ハハ
おもしろかった。
私的見所は、河瀬が決して実直で誠実な人間ではない、ということだ。
最初に柴岡と身体の関係を要求された時点で、逃げ道はあったにも関わらず、自分の損得勘定に流されてしまったわけだ。
その後も河瀬自ら、よく知りもしない他人の人生に勝手に突っ込んで行ったように思う。
その人の人生を背負うほどの覚悟がなければ、無闇に手出し口出ししていいことではないだろう。
柴岡のような複雑さを増した人間ならなおさら。
まぁ目の前での絶命を放っておけるほど非道にもなれず、矜持・モラルの間で板ばさみになっている河瀬は何てありふれた人間なのか。
ああ耳が痛い。
柴岡は心の闇と称した死にたがりだけれど、一途さの方向を間違えた純なおっさんにしか見えなかった。
一度でいいからどうあっても肉体関係を持とうとしたり、無意識にも河瀬の忠告に従ってみたり、性欲の捌け口で構わない、とかね。
結果として、絡めとられるように柴岡に侵食された河瀬の人生だけど、そんな彼の一番の非凡さは、柴岡に惚れてしまったあたりじゃなかろうか。。
一々柴岡の行動に悪感情しか持てず、彼の思考が理解できない河瀬が、振り回されながらも好きになってしまう。
この情は同情なのか愛情なのか。
どちらにせよ恋愛とは不可思議なものだ。
河瀬の鈍さや矮小さ、他人の在り方を認められないほど自分の価値観を絶対だと信じてやまない性格にイラッときてしまったのは、
要所要所おじさん側にシンクロしていたためかもしれない。
何はともあれ、生命力希薄な柴岡とどこにでもいそうな男・河瀬の人間臭さ溢れる押し問答が、神にしたいくらい面白かった。
が、木原音瀬という厳しめフィルターを通してしまうと、この評価、です!
受・攻のキャラのほり下げが深く、二人の関係性についても恋愛というより、必然性、運命みたいなものを感じさせる設定になっていて面白かったです。ただもう少し日常の細やかな描写や情景をじっくり味わえる雰囲気であったり、他のキャラのつくりこみががあったりするとよりリアルな感じがでていいのかなと思いました。萌え度は少し低めですが、リアルさとのバランスを考えるとこれ以上は難しい気もします。良作。
木原音瀬はBL作家である。 妙にコアでファナティックなファンを擁する彼女の作品を、 私は学生時代から金に糸目をつけずに集めている。 とにかく、癖になる作家なのだ。
私にとって木原音瀬はこのニッチなジャンルに無限の可能性を感じさせてくれる作家、
BL小説らしからぬBL小説を書きながら、
BL小説でしか辿りつけない境地に達している異端な作家である。
さて、同作品は帯の惹句からしておかしい。
黒字に黄色くブチ抜きで『殺してくれないか』と来た。
『心の闇を描いたヒューマンラブストーリー』とのキャッチコピー。
ど、どんなだー!? と恐る恐るページを読み進めると、
なるほど実は本文に忠実なコピーだった。
これはラブはラブでもヒューマンラブ・ロマンスなのだ。
主人公の河瀬が上司の柴岡に人事異動をたてに性行為を強要される
ところから物語が始まる。 実はこれ、 BL小説ではよくある話なのだが、
そう簡単には問屋が 卸さないところが大変木原音瀬である。
二転三転する展開がサッパリ読めない。 物語の落としどころが 最後の一行まで分からない。 だが、柴岡のキャラクターだけでも充分読ませる力がある。
「仕事が出来て、優しくて、信頼できる」完璧な上司。
しかしその内面は破壊しつくされている男。
なんなんだろう、こいつ…と、引き込まれているうちに、
河瀬と同じくかわいそうでたまらなくなってしまった。
純然たる情が、性欲ともつれ合って終いにはそれらしきものへと
姿を変えていくプロセスが良い。 河瀬にとっては柴岡は運命の男なんだろうが、
柴岡の人生に巻き込まれて全く気の毒なことである。
普通の、どこにでもいそうな男のひとである河瀬が
時折ぽろっと殺し文句をこぼすのがたまらん。
「もうあんたは何も喋らなくて良い」 「俺が良いって言うまで何も喋るな」
という下りで正直痺れたよ…普通言えないってこんな台詞。
救いがあるんだかないんだか よく分からん結末に向かってひた走る二人。
メルヘンチックなタイトルに騙されてはいけない。
薄暗くて痛々しくて容赦が無い、いつもの木原音瀬だった。
ラストシーンの二人のやりとり、俺はアンタの何、と河瀬に
訊かれた柴岡の衒いの無い答は、確かに納得のいくものではあるが、
果たしてそれが恋愛なのかというと考え込んでしまう。
とはいえ、何が恋愛かなんて分かったもんじゃないが。
挿絵の入るタイミングが上手い。 最後まで読み終えた後、
最初に挿入された挿絵を見たとき、何かがストンと落ちて来る。
日高ショーコ、良い仕事してます。
ボリュームも読み応えも抜群の一冊。もちろん明るいお話じゃないので、苦手な方にはNGだとおもうんですが、今回も楽しく読ませていただきました。
始まりは、ひとつの取引。行きたいと願った企画部への異動と引き換えにしたのは自らの身体。年上の上司は、自らの腹の上で自らのものをくわえ込み腰をくねらせる。恨み・憎しみ。そして時を経て再会した先に・・?!
殺伐とした雰囲気から、どう恋愛に進展するのだろうと、最後までドキドキしながら読ませていただきました。本当の最後の最後のほうまで、本当に恋愛モノとして行き着くんだろうか・・?!と思ったほどでしたww
しかし、いきついたところは、哀れみから始まった恋愛ににた感情。どうしようもなく受のことがかわいくなってしまう攻。結構このパターンが木原さんの作品多いと思うんですが、やっぱり上手いなと思うのがこういう場面だったりします。へらずぐちが多くて、しゃべるとどうしようもなくかわいくない。嘘つきで本当の自分を見せない死にたがりな受。けれども、しゃべることを制限すると、ふと見せる表情、摺り寄せるからだがかわいくて仕方がなくなってしまう。自分のことが好きかと聞けば、好きだとうなづき、エロい身体を摺り寄せてくる。赤くした耳たぶがかわいくて仕方がない。ダメだダメだと思っても身体は興奮し・・という表現がすごく読み手としても興奮しました。世間一般の常識を逸脱した行為。しかしそれも二人きりの世界では関係ない。異常とも思える過去と現在。上手く表現されてたかなとおもいます。
目が見えるようになったら夢が覚めてしまう~のラスト。これも良かったですね。目が見えるようになっていなくなってしまうという部分は、あ~基本やっぱり変わってないんだなというのが、他の作家さんの作品と違っているところで妥協がないことを感じました。
読み終わって一番キュンときたのは、好き好き・・好きといった受。
汚い部屋を「掃除しろ」といわれて、シャツ一枚で朝まで掃除していた場面。これを読み終わって一番に思い返しました。なんか好きな相手に言われたために無意識にでも動いていたのかと思うと妙にキュンとした。異常な世界で過ごしたためにわからないでいた不器用な感じがなんだかカワイイのです。きっともう一度読み返したら違う感想がみれるのかも
恋とか愛なのか・・・私には微妙。
目を瞑り・・・出世のために浅はかにも河瀬は
柴岡に身体を差し出す
6年後に再会し
柴岡という人物の本質を見ようとする河瀬
河瀬が見ようとすればするほど
柴岡は、目を閉ざす
柴岡という個人を誰も見てはくれなかったから
柴岡は、世界を見ることを放棄してしまったのかなと思いました。
誰も見てくれないなら、自分も見る必要がないのかもしれない・・・
思春期のような危うさを秘め
狡猾で頭の良い中年おやじを魅力的と感じるかどうかは
正直、私にはさっぱりわからなかったのです。
柴岡の病の元凶を後半で、つらつらと説明してくれるのですが
正直これがあると、恋とか愛ではなく同情になってしまうんじゃないかと。
柴岡のことを知りたいと動いた時点で河瀬は柴岡に
なんらかの想いが芽生えてはいたんだろうけど
そういう境遇なら仕方ないかなって思えてしまうような説明はいらないと思う。
特別な何かがなくても人間は、たやすく歪むだろうし病むものなので
そこで恋愛を語ってくれたほうが私は好きだな。
不幸自慢なお話って、もう勝てないって感じするし、わからない。
表紙カバーを見ると受け攻めがどっちなのか、想像がついたのですが、読んでいるうちに、あれあれ?もしかして逆なの?と思ってしまいました。
読み始めたら、オヤジが攻めなの?と思いました。(違ったけどね)
ん~、不思議だったのは、実の母親を長年ずっと抱いていた受け(オヤジ)が、何でいきなり部下の上に乗っかっちゃったのか理解できませんでした。
乗っかるまで、いや乗っかってからもまさか自分に入れちゃうと思わなかった。
攻めも入れられるのは、自分だと思っていたぐらいだし。
26年間もの長い期間、一人の女(母親)を抱いてた人が、いくら好きになったとしても若い男に抱かれたいって思ったのが理解できなかった。
普通あなたが抱く方でしょ?とつっ込みを入れたくなりました。
萌えはね…無かったな。(木原先生ごめんなさい)
評価は神で。
最初攻めが受けを嫌いまくり、徐々に巻き込まれ、ほだされていく木原先生のオヤジ受け・年下攻めの王道たるストーリーでした。
これは受けが死にたがりという点、木原先生の前作「情熱の温度」を彷彿とさせました。
何をしでかすかわからない柴岡を自分の家に連れ込んで始まった二人の生活は、主人と犬のにおいをぷんぷんとにおわせるもので。柴岡にごはんを食べさせてあげたり、風呂でからだを洗ってあげたり、そういった描写がなんとなくエッチ。
この作品の冒頭にあるように、心に暗闇はないと言い切る人間こそ自分でも気づかない根深い暗闇を抱えあがいているのではないかと、その暗闇からさらってくれる人の存在が必要で、必然と思わせる作品でした。
HOLLYでは初めて(?)の2段組みで、ぎゅっと凝縮された1冊。
でも思ったより早く読めてしまいました。
愛だね。笑
木原作品はやっぱり、痛い。
もはやBL枠を飛び出しているくらいに感じますけど、現実としてノンケが男に惚れられた場合に感じるであろう嫌悪がすごく心に刺さってくる。
今作もかなりかわいそうでしたね……悪夢見たりとか…。苦笑
だからか人間自体の生存が危ぶまれるレベルでのギリギリ崖っぷち恋愛(刷り込み?)が多いんですよね。
恋愛なんて思い込んだもん勝ちだけど……えっ、そんなに!?ってぐらい強引な男たち。
しかも社会的には異常者(ダメ男)。
でも「一般」から見て「異常」であっても、当事者にしてみれば「異常」かどうかなんて意味を成さない。
案外そんな境界なんて簡単に、あっけなく越えてしまっていたりするんだよ。
この話ではそこがチラチラと覗いて胸に刺さりました。
終わり方が物足りないように感じましたが、また時間が経ってから読んだら違う感想が出てきそうです。
[あらすじ(一部引用より)]
・商品企画部に行きたいなら私とセックスしてほしい
・自分は騙された誰にも相談できない死にたい
・擬態して生きてきたからもうどれが本当かわからないよ
・出ていけと言えば男は勝手に死ぬだろう
・いつも君が手を引いてくれるから救われると勘違いするんだ
単純な努力家新人・河瀬×40代魔性な元上司・柴岡
(でも精神的に食われているのは河瀬)
考えなしの若者が、おじさまで痛い目見ちゃうシリーズ…?
「NOW HERE」のおじさまも、何考えてるかよくわからない人だったけど、
こちらのおじさまはもっと上を行く、
15歳で秘密を抱えた日から、「擬態」してずっと生きて来た柴岡
そんな柴岡に翻弄される河瀬
人間の、弱さや、狡さを、これでもかと詰め込んだ2段組
でも、思いの外痛くはなかったし、「擬態」は身近な言葉だし、結構ぐいぐいと一気に読めてしまった。
さあ、河瀬と一緒に、魔性のおじさま・柴岡に翻弄されましょう。
でも、私はむしろ、柴岡に同調して読んでいたけどな、、、、
歳が近いせい?
木原氏の新刊が出ると知り待ち遠しく思っておりましたが、表紙の絵に”え?老人、手首包帯って自殺未遂?”とかあれこれ想像がふくらんでおりました。
そして読んだ感想は・・・やられました!!
壊れた男・・・柴岡・・・何だよー、愛おしいじゃないか、本当は捨てておきたいのに!!気分は河瀬になってしまっていました。
部署移動をエサに体の関係を強要した柴岡。
頭がキレて、能力もあり、人当たりもよく人気者の柴岡。
実の母親と近親相姦の関係にあった柴岡。
死にたいと言う割に、河瀬に見せつけるように、わざと河瀬の前で死のうとする柴岡。
目が見えない時は従順になり、ただの性欲の塊の依存症に近い様相を見せる柴岡。
目が見えるようになると、とたんに元に戻ろうとする柴岡。
彼の発する言葉はどれも嘘なのかもしれないが、どれも真実であるかもしれない。
これらの柴岡にどれだけ自分も翻弄されたことか。
最後の最後で題名の言うところの月の船なる存在となるのは河瀬だということがわかり、柴岡の新しい未来が見えるのかもしれないというラストシーン。
河瀬は本当にどこにでもいる、ごくごく普通の男だった。
15歳に母親と関係してから普通でなくなった柴岡には、その河瀬がうらやましかったのだと思う。
しかし、絶対柴岡は亡くなった母親を愛していたのだ。
なのに、河瀬を好きだという。
この好きと愛してるの違いは柴岡にとってどんな位置づけなのだろう。
いつも死にたいと思っていたのに、どうして6年もたって河瀬と再会したとたんに、わざと見せつけるような行動に出たかといえば、それは河瀬の気をひきたかったから?
柴岡は、亡くなった母親と同じ道をたどろうとし、また嫌いだった父にも母の為になろうとし、そして河瀬を自分にしようとしたのだろう。
この河瀬は読者自身なんだと読みながら思った。
「心の闇なんてない。自分は自分でしかありえない。それを理解できない他人が、便利な名前を付けただけだ」
という柴岡の指摘は、その通りだと共感しました。
できうれば、この壊れた擬態男の柴岡と、彼を受け入れることにした河瀬のその後の姿を知りたいものだと切に願う。
発売前に発表になった日高さんの表紙で「おじいさん??」とびっくりし
発売後、先に読んだ方の感想で「愛がない」とか「救いがない」というのが多くて
ちょっと構えてしまいつつ、期待と不安を抱えて読み始めました。
上司の柴岡部長と親しくなり
たまに夕食を共にするようになった河瀬。
普段から大らかで、部内の采配に長けた好人物の柴岡から
ある日突然、希望の部署への転属を約束する代わりにセックスを強要されるが
結局その約束が果たされないまま柴岡は北海道支社へ転勤に。。。
そんな、憎しみしか生まれなかった関係が
どの様に変化していくのか。。。
しかし、いつまで経っても
そこに愛を見つけられずにイライラさせられます。
柴岡が自分以外に見せる「擬態」した態度と
自分にだけ見せる「だらしなさ」「投げやりな態度」に
振り回されつつも、柴岡から目を話す事ができない河瀬。
でも、そこにも愛はないように見えます。
一方の柴岡も
「死ぬこと」しか考えていないように見えて
その実、河瀬に死ぬことを止められるのを待っているような
それを喜んでいる様な態度も見えたりするのですが
やはりそこに、普通の「愛」は見つける事ができません。
でも
そんな相容れない2人の間に何か特別な感情が生まれていたのでは?
と思わせるラストシーンに
ストンと腑に落ちるような感覚を感じることが出来ました。
でも、それが愛なのか、と言われると
人によっては違う、と感じるかも、としか言わざるを得ませんが。。。
全体にダークで、萌えもなくて(誘い受けオヤジに萌える人は別かもしれませんがw)
明確な愛も恋もない、ただ身体の欲求を満たすだけのセックス、と
かなり読者を選ぶ作品かな?とも思いますが
木原さんの、物語の中に引き込む筆力は健在で
私はかなり好き。
時間を置いて再び読み返してみたい作品でした。
評価は、かなり迷いましたが
小説としては、個人的には神評価です。
少なくとも「萌」という言葉の当てはまらない作品だと思ったので。。。
萌萌萌。(MAX:萌萌萌:神に近い)
非の打ち所のない上司が突然、部下にセックスを強要する。
体から始まる恋愛。そんな色っぽい展開を予想しそうだけど全く違い、心の深淵が描かれた重い1冊です。
この話は、柴岡という男に尽きると思う。
部下に乗っかり、翌日には平然とした態度。厚顔無恥とはちょっと違う。頭の回転が早く冷静で人当たりも良い、でもどこかおかしい。
やがて河瀬は柴岡の「擬態」を知る。さらりと嘘を並べて人を躱し、プライベートでは無気力、そして死にたがり…。
河瀬を通して柴岡という男に少しずつ近付いていくのですが、真意がどこにあるのか中々分かりません。
深淵は深く、救われたがっているようにも見えないし、救いたいと思える可愛げのあるタイプでもない。
でも仮面を剥いだ、その複雑極まりない人間造形に引き込まれます。
これほど病んだ人間の相手に、河瀬のような小市民的なキャラクターを据えるところが凄いと思う。
河瀬は浅慮というか…良くも悪くも自分に正直で、理解の範疇に及ばない事柄に関しては反発したり切り捨てることの出来る単純さがあります。
柴岡への気持ちも、セックスの相性の良さからくる思い込みという印象が拭えないし…。
でも一見不純な動機なようだけど、ある種健康で真っ当だと言えるんじゃないかなと思います。BL的にはおいオマエって感じだけど。
心絞られる恋愛話でもなく希望が見える救済話でもない。
二人の不毛なやり取りに着地点が見えず、鬱々としながらもとにかく目が離せませんでした。
柴岡の人生をなぞるような河瀬の選択。
でも決定的に違うのは、柴岡が他人本位(って言葉はありませんが)なのに対し、河瀬は自分本位であるという点だと思います。
求められて満足を得る人間と、自分が求めて満足を得る人間。
そう考えると二人は合ってるのかも…と言い切れない雰囲気ですが。(…)
冒頭で印象的なシーン。
食事の帰り道、公園のジャングルジムの傍で柴岡が佇む場面。
周囲は外灯が切れて暗く、手前にはぼんやりと道が見えるが、河瀬は柴岡が夜目がきかないのだと思い、柴岡の手を引いて公園から抜け出します。
『暗闇が怖くないのかい?』
『暗い場所が怖いなんて、子供じゃないんですから』
そんな科白を返した河瀬は、水面に浮かんだ月の船を何の躊躇もなく叩き壊し、かつてと同じように手を引いて柴岡を引っ張ります。
そしてその右手に何度もキスしていた柴岡。
それが、捻くれていて素直じゃない男の精いっぱいのサインだと思うと、胸が痛い。
BLどころか恋愛物といっていいのかすら分からないけど、いつまでも心に残りそうな作品。
纏りがないレビューですが、個人的にはかなり好き。
怖いものみたさで続きが読みたいな。
一気に読みました。引き込まれて読んだし、評価は「萌え」になっていますしが、引き込んだものは萌えとは別のものでした。
攻めの河瀬は人間が小さい奴でした。
商品企画部への異動を餌に上司柴岡に体を要求され、シャワーを浴びながらの「ホモの変態。クソ野郎ッ」の悪態も小声で、聞こえないように気を使いながらという。(^^;)
まあ、本当に嫌なことを我慢して、自己嫌悪にまみれながらそれ以降も過ごしたというのに、結果異動したのは別の人だったというのは気の毒ではあるけど、柴岡を殴りとばして(ここまではよし)車道によろけたところを車にひかれたのを見て、逃げてしまう。(これはアウト)
結果的には柴岡は死なずに3ヶ月後に退院しますが、その直後に河瀬は商品企画部への異動を告げられます。
「君は若くて実績もないけど、前部長の強い推薦で決まった」と。
合わせる顔もない河瀬ですが、北海道に転勤になっていた柴岡と再会。
やがて会社をやめるという柴岡と東京で再び会い、柴岡の病んだ心を知ります。
健康保険証やカードをみんな捨てて、身元不明で死のうとする柴岡を、どうしても放っておけない河瀬。
死のうと決めていた日に死ねなかった柴岡は、目が見えなくなり、ますます放り出せなくなってしまいます。
嫌だけど一緒に暮らす日々の描写がリアルで、木原さんらしさに溢れてました。
柴岡は最初から河瀬を好きだったんでしょうが、河瀬の方は結局ひどくやっかいな病んだ男に絡め取られたような気がしてなりません。この後も結構苦労しそうな気がします。
擬態した状態でお付き合いするにはいい人なんですが、本性はかなり恐い人ですから。
ホント人の内面をえぐるような、底意地の悪い人物を書いてくれます。
三人称でも常に河瀬の視点で話が進むので、柴岡に振り回されて嫌な気分にさせられます。
柴岡の方を主人公にしてくれたら、すごく哀しく切ないお話になったと思うのですが。
基本的には矛盾を抱えた複雑な人物って好きですね。
何もかもあきらめているような柴岡ですが、本当はずっとずっと救いを求めていました。
河瀬なら救ってくれるのではないかと考えた。
恋っていうものは、錯覚や思い込みから始まったりもしますからね。
そして母親にされたことと同じことを河瀬にした。
でも母親が真実好きだったのは父親のことだったようですが、柴岡が好きになったのは母親だけではありません。
「好き」と言われた時の反応を見ると、ちゃんと河瀬のことを好きですよね。
嘘ばかりついていましたが、ラストの告白は本心ですよね。
いびつな形であろうとも、愛はありますよね。
死なずに両思い=ハッピーエンドという定義なので、私の中では充分ハッピーエンドです。
ただ、ページは足りない。
もう少し先まで書いて欲しかったです。
あと一言柴岡に語らせてくれたら良かったのに。
やっとまともに治療を受けてくれそうなところまできたと断定してもいい状態なのか、もうひとつ微妙なんですよね。
どちらにも転ぶ可能性は残しています。
スタートラインに立ったばかりの二人の明るい未来を、勝手に想像することにします。
日高さんの挿絵、キレイで好きなのですが、シワは目の下だけでいいです。
法令線があると一気に老けるよー。
最初らへんは意気揚揚と読んでいたんですが、途中からの展開がもう、どうにも・・・
正直、この作品は「神」「萌」「中立」「趣味じゃない」のどれにも評価としてつけられないです。
最初はあらすじそのまま、信頼していた上司・柴岡に異動希望の代わりに自分とセックスするように強要される河瀬。
悩みながらも柴岡とセックスしてしまいますが…
結局柴岡は、河瀬が異動になる前に北海道へ栄転。
自分はセックスしたのに、それを無下にされたと逆上した河瀬はある行動に出て…
そして、その6年後二人は再開することになるのですが、もうここからが鬱展開。
柴岡はとんでもない化けの皮をかぶったオッサンでした。
死にたがりの鬱。それもかなりの重症。
何かにつけて河瀬の前で自殺しようとします。
そしてそれに振り回される河瀬。
この柴岡という男は実に腹の立つ男です。
それをわざとやっているのですから、本当にどうしようもない男なんですが…
柴岡が死にたがっているのを知っている河瀬は、柴岡に死なれると自分が罪悪感に苛まれる、という
いわば“自分のために”柴岡が死なないように見守り、助け、世話をします。
柴岡はもういわずもがなトンデモナイ人間ですが、この河瀬もなかなか人間のドス黒い部分が出てますよね
受も攻もこの個性…やはり木原さんです。
そのうち河瀬は柴岡をペットのように扱います。
でも柴岡は生ける屍のような存在であったし、私は河瀬はよくやったと思います。
後半、二人の心が一瞬通い合うように思えますが、それは河瀬の思いこみでした。
河瀬はどんどん柴岡に執着していきますが、柴岡は過去から逃れられない。
何の問題解決にもならないセックスの日々。
河瀬は次第に柴岡に愛を語り始めますが、それこそ、本当に愛だったのかと問いたい。
愛ではなかったと思う。性欲と、それに溺れていった若者の戯言。
ペットに投げかけるような愛だったように思います。
河瀬も結局は、柴岡とその母親のしていることと同じことをしていました。
結局全てが負の連鎖であるように思うのですが…
ラストも、…救いようのないカンジがしました。
鬱という病気はちゃんと病院に通い、薬物療法を受けなければ治ることはありません。
また、治ったと思っていても治っていなかったり、または再燃したり…
何の知識もない人間にはどうしようもない病気なんですよ。
ましてや柴岡の心の闇は凄かった。
このままいくと、多分柴岡はそのうち死ぬと思う。
そして河瀬もこのままだと鬱になるよ。
どっちが先に死ぬか、わからないかもしれませんね…
ちなみにタイトルの「夜をわたる月の船」。最後のほうにそれらしき描写がありますが、
それは絶対に乗ってはいけない船だったのではないでしょうか…(苦笑)
なんとも感想の言いづらい作品です。はっきり言って私、このお話には「萌え」は一切ありませんでした!!その分、木原さんお得意の人間の嫌な面が、不安定で不確かなものとして描かれていました。人の心なんてわかるものじゃない、ということをまざまざと感じました。木原さん、もうBLって枠じゃないです。
主人公の河瀬は、かつて商品企画部への人事異動と引き換えに、上司である柴岡とセックスをしました。そのことを通じて、河瀬は一見仕事の出来る優しい上司だった柴岡の、奇妙に歪んだ部分に触れ怖ろしく思いますが、柴岡は北海道へと栄転していきます。
数年後、商品企画部で主任となった河瀬は、北海道の支社への出張で柴岡と再会します。相変わらず職場では周囲に信頼される仕事ぶりの柴岡ですが、柴岡は河瀬の目の前で死のうとし、それを止めても皮肉っぽく飄々としているような二面性を持っていました。
出張のしばらく後、辞職の挨拶にやってきた柴岡が、飲み会のあとで本格的に自殺しようとしたのを止めたことをきっかけに、河瀬は柴岡の面倒を見るようになります。精神的な問題から失明した柴岡を、河瀬は精神科医をやっている叔父の元につれていきます。叔父は彼を「冷静すぎる」と言い、そこから徐々に彼の母親との関係、それが引き起こした柴岡の『心の闇』が紐解かれていきます。
柴岡の『心の闇』についての話・・・だと思うのですが、いかんせん柴岡が『心の闇』の存在を認めてくれず、常に皮肉っぽく飄々として心の内を見せてくれないので、河瀬ばっかり、というか読んでいる自分ばっかりが「あーもーこの人はなんなんだよー!!」と振り回されてしまうような感覚でした。柴岡というキャラクターは本当に奇妙で、レビューを書こうとしておいてなんですが「読まないとわからない」としか言いようがないです。
ラストも、とりようによっては救いがあるのですが、「同じことの繰り返しなのでは?」と思ってしまう面もあり、もやもやした気持ちが残ってしまいました。なので、読んだあとにもやもやしていいときに読むべき作品だとおもいます!
とりあえず表紙の白髪の柴岡に、「まさかの老人受か?!」と期待したのですが、若白髪(といっても50近いわけですが)でした。残念。
帯に不穏なことが書いてあった気がするが私は何も見ていない、と自分に言い聞かせ、もちろん裏のあらすじも見ず、口絵を無視して本を開きました。まさかの二段組に衝撃を受けつつ、先へ先へ。
…まだ整理がつかないので、箇条書きのような感じで。ネタバレありです。
とにかく柴岡が性悪すぎる。嘘はつくし口が悪い。死にたがり。けれど愛されたがり、なのだと思う。真っ当な愛され方をした経験が無いから(母親との関係はかなりキツい、倫理的にというより自分を見られていなかったのは絶望なんてものではないだろう。)、好意を示す意味も求め方も分からない。肉体的なねだり方しかできない男。それが淫乱と映る。実際絶倫である。
河瀬は、新人の頃はまあ若干考えは甘かったかもしれないが(企画部行きの強い希望と努力が見合っていなかった)、その後現実を知って励み、相応しい評価をされた人間。酷く厄介な男・柴岡に気に入られ、関わってしまったのが運のつき。毒を食らわば皿までか。憎い男の世話に苦しみながらも面倒を見てやるのが根はお人好しだと思う。一度は殺意を抱き、暴行も加えるわけだが気持ちの理解はできる。基本的には、柴岡が言うように健全な精神を持った『真っ当な』男だろう。…ただし運は悪いかな。
本当に上手く言えない。リハビリテーションがテーマなのではと思っているけれどどうなのだろう。
50近くの捩くれ男(あとがきによれば『魔性系のおじさま』)の誘い受けに萌えない訳は無いのだけど着地が見えなくて落ち着かず、ようやくたどり着いた最後のシーンはピースがはまるようで、最初から決まっていたのだろうな、と思うけれど、難しい。うんうん唸りながら(心の中で)読んでもやもやして、まだ気持ちがまとまらない。書いたらまとまるかと思ったのに…。
それでも、柴岡には生きることの意味を見出して欲しいと思う。河瀬の側にできるだけ長くいたい、と思えるようになれたらいい。
そしてそうした彼の変化が河瀬を幸せにするといい。
ただ二人が静かに寄り添う、そんな短いエピローグが欲しかった。
評価は変えるかもしれません。その時は変えたことを書きます。
読まれた方、拙いレビューで申し訳ありません。