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とにかく毛人が周りに振り回されていたという印象の強い巻でした。もちろん、王子の気持ちを察せずに彼自身に布都姫を自分にくれるよう頼むのは鈍感で酷いと言えるのかもしれませんが、この状況で王子がまさか同性で身分も下の自分を恋愛的な意味で好いてくれているとは余程の人間でなければ気付けないと思うのです。王子と夢を行き来した経験があったり、特別な関係であることは毛人も自覚はあるでしょう。でも、そこから思考が恋愛的好意に繋がらないのは、彼も根っからの異性愛者のようだし当然だろうと。戦国時代のように周りに1人でも男色を嗜む人がいれば、まだ思い当たったかもしれませんが。
それよりも王子や刀自古の行動の方がずっと罪深いと思いました。毛人も布都姫もけっして誰かを貶めたりせずにただ熱心に相手を想っているだけで、しかも両想いなのに、それを邪魔する2人。布都姫はいつも待っているだけ、流れに身を任せるだけで、王子の方が行動している。そういう見方もできるかもしれません。でも、女で斎宮の布都と、男で王子の厩戸では、育ち方も今の環境も180度違う。凡人の布都が毛人との逢瀬を決断したこと、彼女ができうる範囲での人生最大の選択だったのではないでしょうか。たった1日の機会だったのに、2人の想いを踏み躙った王子と刀自古の好感度は下がってしまいました。物部宅で乱暴された刀自古の方はまた複雑なのは分かるのですが…。皆不幸だから毛人だけ普通に幸せになるのは許さない、そういう物語なんですかねこの作品は。