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毛人は王子と何度も深い繋がりを持ったけれど、結局最後まで相容れない関係のままでしたね。こうなることは分かっていたような気がしますし、私は王子よりも毛人に共感することの方が多かったので、辛さは感じませんでした。毛人は確かに鈍感だったかもしれないし、狡い態度もとったかもしれない。でも、彼の布都姫を愛する心はたとえ一時は王子を愛する気持ちと併存していたとしても本物で、自分の都合を無理に人に押し付けたり、他人を傷付けたりしないところは、政の才覚がなくても人間として出来た人だなと思いました。
一方で王子は、先の先を読む類い稀な賢さと異形のものや他者の心を操る力を持ちながら、孤独に飲み込まれ、自分本位な愛を手に入れるために物事を歪めて画策したり、挙げ句には何の罪もない他人を手にかけようとまでした。もちろん、一番愛して欲しかった母に見捨てられ、自分から欲したわけでもない、誰とも共有できない異能を1人で抱え込む運命に生まれた彼には心底同情します。
けれど、愛する人の心まで決めつけようとした彼は、やはり毛人が言うように結局は自己愛だったのではないかと思ってしまうんです。自分を怖がらず、なぜかは分からないけど己の異能にも触れられた上で理解してくれた、自分を孤独にしない毛人が好き。それに対して毛人の愛は異なります。最初は布都姫の美貌に惹かれただけだったかもしれないけれど、徐々に本気で彼女の辛さを取り除いてあげたいと望み、その結果自分はどうなろうと構わないと思い始める。他者愛ですね。だから彼は、布都が亡くなっても、彼女は最期を愛する自分に看取られて愛されながら死んでいって幸せだったと分かっているから案外しっかり立ち直れたのかなと。彼女が幸せだから自身はさほど凹まない。自己愛の王子とくっつけば愛されるのは王子のみ、他者を愛することのできる布都姫となら真に互いに愛し合える。毛人は無意識にそれを悟っていたんじゃないかなとも思いました。