眠る兎

nemuru usagi

眠る兎
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神44
  • 萌×230
  • 萌28
  • 中立2
  • しゅみじゃない4

--

レビュー数
33
得点
426
評価数
108
平均
4 / 5
神率
40.7%
著者
木原音瀬 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
車折まゆ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
価格
¥552(税抜)  
ISBN
9784344816367

あらすじ

冗談で書いた手紙をきっかけに、高校生の浩一は年上の男と付き合うことになってしまった。お互いに嘘で固めた付き合いだったが……。
出版社より

表題作眠る兎

高校二年生
高校教師

同時収録作品春の嵐

サラリーマン
サラリーマン

その他の収録作品

  • 冬の日

レビュー投稿数33

嘘も 弱さも 恋のうち

たまたま拾ったゲイ雑誌の文通欄にイタズラ心で出した手紙が元で出会ったふたり。
興味本位の好奇心 ―― 若さというのは時にコワいもの知らずで残酷だ。
里見はノン気で好きな女子だっていたりするのだが、手紙の相手・伊藤(仮名)に本当のことが言えずズルズルと会ううちにいつしか惹かれていく。
ついこの間までは、自分だってそう思っていた中の一人だったはずが、男同士の恋愛なんておかしいという友人に腹を立てる里見。
けれど、「嘘」から始まってしまった恋は、やがてしっぺ返しを喰らうことになる。

タイトルの「眠る兎」 ―― これって、里見のことなんだろうな。
お伽話の「ウサギとカメ」の、あの兎。
「嘘」がばれてしまってからの里見を見ていて、ふとそう思った。

木原さんの(ご本人曰く「たぶん」)デビュー作。
キレイごとだけではすまない、人の、狡さとか弱さとか、そういうどちらかというと目を逸らしたくなる部分を、この作家はきっちりと描く。だからこそ、読み手に肉迫するものがある。人が人を恋う、その想いの深さが胸に沁みる。
今回イラストを担当された車折さん、私は初めて目にしたけれど、すごくパワーのある絵だと感じた。ビブロス版の西崎さんのやわらかい絵とは、また印象が異なって新鮮。

10

しなやかであるがゆえに

さすがルチル文庫(親会社のずさんな編集と比べるとしっかり仕事をしているという意味)と手放しにほめても誰も文句が言えません

眠る兎というタイトルに妙なデジャブを覚えつつも、一読して甘酸っぱい記憶がうっすらとですが、よみがえってくるようなものを感じました。

木原さんいわくデビュー作に近い作品。でも最新作と言っても通じてしまうしっかりとした描き方。だからといってデビュー作にありがちな肩肘張ったものは無いという自然さ・しなやかさ―作品に一貫しているすべての事柄が、一読した人にいろんなものを与えているような気がしてなりません(そしてそれは、異性愛主義の再生産しかできない同業他者の作品との明白な差異となって表面化する)。

ここまで落ち着いたそしてしっくりくる―ましてやデビュー作という意味において―作品はあまり例が無い。他人様に勧めたくなるそんな作品。

9

生徒×臆病な先生

その場のノリで、ゲイ雑誌に載っていた文通相手募集にでたらめな手紙を書いた高校生の浩一と、過去の実らなかった片想いを引きずって臆病になっている高校教師高橋の物語です。
女の子が好きなくせに、ゲイのふりをして手紙を書き、なりゆきとはいえ女の子と一緒にその相手を盗み見しようとした浩一はかなりしょうもない奴です。
心底悪い奴ではなくて、ちゃんと断ろうと思いながら、でも相手が自分に会って喜んでいるのを見るとなんとなく言えなくなって、結果振り回してしまうという、まあ優柔不断な奴。
でも最初はゲイの気持ちなんて全然わからないと思っていた浩一ですが、相手の一途さに罪悪感を感じ、そのうちに少しずつ気持ちが変わっていきます。
高橋の方は、5歳年下である浩一を好きになってしまい、(本当は10歳下ですが)きっとこの恋は実らないだろうと思いながらも、会いたいと思う気持ちが抑えられない。
お互いに強く思い合ってから、高橋が本当のことを知ってしまい、修羅場がやってきますが、これは高橋のショックは大きいです。
たった5歳年下だというだけで、あんなに腰が引けてたのに、実際は10歳年下で、しかも自分の勤める高校の生徒だなんて・・・ねえ。
面白かったです。

書き下ろしの『冬日』は彼らの8年後の話です。
よかった。しょーもなかった浩一が、かっこいい大人になってました。
高橋は・・・あんまり変わってなかったかも。

もう一つの書き下ろし『春の嵐』は、浩一の友達柿本の話。
これもすごくよかったです。
もっと読みたいっていう感じ。
お勧めの1冊です。

8

わかりやすいタイトルとわかりやすいハッピー

ふざけてゲイ雑誌の恋人募集欄に手紙を書いた高校生が
待ち合わせにやってきた年上の男に嘘をつく
年上の男は、自分の高校の教師なんだけどそいつも嘘をつく

二人とも嘘で、ガチガチに自分を固めて
恋をするんですよー。

そんで嘘が剥がれたときには、ズクズクに恋に堕ちてんのっ!

また、どーしょーもない酷い攻めキターっ!
って思いましたら、とっても愛しいお話でした。

酷い出会いをしたのに、運命の人に巡り合ってしまったみたいな?

出会いは文通。携帯電話もなく家電。
このはがゆさっ!

木原作品としては相当ロマンチックなシナリオだと思いますが
恋に堕ちてしまった者の浅ましさ傲慢さ狡猾さ、そして臆病さ
読者の胸を切りつけるような筆力は健在。

それでも、わかりやすいハッピーに、素直にうっとりしましたv

挿絵。
受けが靴下だけ履いた状態で、座位。
よかったっす。

7

切なく甘い余韻

ノンケの高校生・浩一がゲイの高校教師・高橋に惹かれていく心の動きが繊細に自然に描かれていて、とても共感しました。
初めて会った別れ際には地味で内気な高橋の中に思いやりを感じ、二度目は自分とは違う視点でものを見る面白さを感じ、三度目は手に触れたくなって指先だけ握り合い、四度目は怒る高橋に自分への好意を感じて恋心に火がついて。
携帯で気軽にやり取りできない時代だったからこそ、一人で悩んだり、余計に会いたい気持ちが募ったり。会わないと相手を知ることができない。会う時の想いの密度が、とても濃いように感じました。

浩一が同じ高校の生徒と知ってからの高橋の逃げる態度が極端で、タイトルの兎から脱兎のごとく…という言葉を思い出すほどでした。どうしようもなく臆病で弱いけれど、だから浩一は守ってあげたくなるのでしょうね。最後は浩一の親友・柿本の計らいで仲直りできましたが、柿本は二人の生々しい姿を見せられて気の毒でした。

八年後の話「冬日」。高橋は帰省した折、中学時代の想い人で親友だった一ノ瀬と地元で再会します。
片思いが辛くて黙って去った高橋に一ノ瀬が傷つきずっとこだわっていたことを知り、高橋は自分がゲイであること、一ノ瀬を好きだったことを告白します。
その告白の場面よりも、別れ際、一ノ瀬が高橋を抱きしめてキスしたことに、胸が熱くなりました。離婚し、恋愛感情なんて5年くらいしか持たないものだと投げやりに考えていた一ノ瀬にとって、一途な高橋がかつて自分を何年も好きだったことは、温かく胸に沁みたことでしょう。それに、一ノ瀬にとって高橋は、ほかの子と仲良くしてほしくないと思うほどに、特別だったわけで。限りなく恋に近かったのだと、高橋の告白で気づいたのではないでしょうか。一瞬だけ、淡い恋心が一ノ瀬の中にも芽生えたから、高橋に口づけたような気がします。

「春の嵐」は、浩一の親友・柿本の話。浩一と高橋の何年も続く熱愛ぶりにあてられた柿本は、情熱とはどんなものなのか知りたくなって、自分に想いを寄せるゲイの同僚と好奇心で寝てしまいます。頭が良くて切れ者の柿本が、おかしな行動に走った挙句に隠れていた欲望を引き出されてしまい、戸惑うさまが面白いです。恋愛初心者の柿本がどんなふうに変わっていくのか。きっと恋に発展するのでしょうね。

恋の切なく甘い余韻が残る作品でした。

7

やっぱり大好き

COLDシリーズを読んだ後に読んだので読み終えた後の余韻はすごく心地いものとなりました。

ゲイ雑誌を通しての文通。冗談で書いたはずだったのに互いに嘘で身を守り2人は合うことになります。攻の高校生・里見はその場で本当のことを話すつもりだったが、受の高校教師・高橋と話すうちにどんどん本当のことも言えなくなります。
そして、最初は「ゲイの気持ちなんてわからない」といいながらも、高橋の優しさに触れて行くうちにどんどん惹かれて行きます。

しかしながら、互いに嘘で固めた付き合いが幸せな時間が長く続くわけではない。少しずつ嘘が剥がれ、2人の関係に亀裂が入っていきます。2人が本当に結ばれるまでの過程はすごく切なくて胸が締め付けられました。

高橋の親友・柿本のキャラも良かったです。ゲイってことをそんなに簡単に理解できるわけじゃないし、親友として度々高橋に注意したりする感じもリアルで良かった。なんだかんだ言って2人の関係に口をはさめながらも2人の危機の時にはちゃっかり恋のキューピットになってたり…。

ノンケ×ゲイの設定はもちろん、攻が受を傷つける感じとか、すべてが私好みでした。文句なしの神です。心に残る大好きな作品になりました。

6

この良作が雑誌のデビュー作とは ε-(。・∀・。)ノ...サスガ

私はハマるととことん嵌るタイプ。ゆえに作家買いは、一旦中止するつもりでおりました。もっと沢山の作家先生のいろんな作品に触れたい、そう思い、この一年は何とか乱読に成功しつつありました。ところがここに来てとうとう木原作品にのめり込み、元の木阿弥です。元来、好きな作家先生には傾倒するタチ。ただ今木原作品に夢中で、ちょっと止まらない勢い c(´ー`*)

本作品は木原音瀬先生のデビュー作品(1995年)だそうです。したがって今よりももっとゲイにとっては周囲の目が厳しかった頃の、またケータイもあまり普及していなかった頃の、先生(受)と生徒(攻)のお話。ということで大変楽しみに手に取りました。

目次
・眠る兎(攻め視点)
・冬日(受け視点)
・春の嵐(攻めの親友:柿本視点)

あらすじ
クラスメイトが駅で拾ったゲイ雑誌。みんなで面白半分に鑑賞。文通募集にノリで手紙を書いた里見(攻)。冗談のつもりが「会いたい。待っています」と返事が届きます。親友の柿本に「関わるな」と諭され、無視するつもりでいました。が、まさかの展開でつきあいが始まります。その男は、里見(攻)の通う学校教師の高橋(受)。お互い素性を隠したまま会ううちにだんだんと惹かれ合い…。

面白かったです。とっても可愛らしいお話です。切なく、ちょっぴり泣けますが、痛みはさほどなく、あるとすれば甘酸っぱい痛みでしょうか。「木原作品は痛いから嫌」と敬遠されている方にもお勧めです。

ノンケの里見(攻)が徐々に高橋(受)に惹かれ始め、ゲイになっていく過程の心の動きが、実に丁寧かつ丹念に描かれ、思わず「上手いなぁ…」と呟いてしまいます。最初のうち里見(攻)は、クラスメイトの女性に気がある風でしたが、高橋(受)と付き合い始めてからは全く見向きもしなくなりました。よって女性の描写に抵抗のある方も難なく読めると思います。

里見(攻)は最初から、高橋(受)が職業や名前を偽っていることを知っていました。ところが高橋(受)の方は、里見(攻)が社会人だと思い込んでおり、かつ5歳差を嘆いていました。本当は5歳差どころか10歳差なのに。それゆえ里見(攻)は本当のことが言えませんでした。嫌われたくない一心で。

でもバレてしまうんですねぇ。かくして亀裂が生じました。やっぱり教師と言う立場上、同じ学校の生徒に手を付けたとなると問題ですもんねぇ。ただ問題はそれだけではなく、高橋(受)の自信のない落ち込みやすい性格にもあり、ゲイである高橋(受)をからかい、弄んだと勘違いします。怒り、里見(攻)を拒絶します。

でも里見(攻)は、「本当に」高橋(受)を好きになっていました。すれ違いラブです。若さゆえに里見(攻)は、嫌がる高橋(受)を組み伏せ強引に体を重ねます。この後、いよいよタイトルの「眠る兎」の意味が分かる記述が。
「男はシーツにしがみついて、鼻を啜る。泣きすぎて腫れあがった瞼は真っ赤で、まるで兎が眠っているみたいだった」
そうです!眠る兎とは高橋(受)のことでした。このようにタイトルの意味を探るのも小説を読む上での醍醐味。

仲直りのSEXって言うのはよくあることですが、この場合の高橋(受)には効力がなく、二人は衝突したまま。ハラハラしつつも、最後はハピエンでした。ちょっぴり短かく物足りなかったけど、ご安心ください。まだまだ続きがあります。

高橋(受)視点の「冬日」。8年後のお話ですが、地元に帰省、昔好きだった親友に偶然会った際、カミングアウトをするシーンが良かったです。ゲイだったこと、好きだったこと、苦しくって逃げ出したこと。ノスタルジーを感じました。涙がホロリ。もう一つ、養子縁組をして家族になろうという辺り、目頭が熱くなりました。

最後の里見(攻)の親友、柿本視点の「春の嵐」も面白かったです。最初は、里見(攻)と高橋(受)を柿本の視点で語る恋のお話でした。ところが後半、里見(攻)以上にノンケ中のノンケと思っていた柿本が、後輩の志田に想いを寄せられ陥落。とうとう自身がゲイの道に。あんなに親友と先生の関係を気持ち悪いと思っていたのに…。でも意外と萌えました。何ならもっとずっとこの二人のお話を読み続けたいと思うくらい、本当に楽しかったです。

6

文通と家電、いいですねぇ

さすが木原音瀬さん、という一冊でした。

文通欄から始まる恋。
携帯電話がないので、連絡手段は家電のみ。
ノスタルジーに溢れたお話ですが、みなさまが書かれてる通り、古くささはまったく無いです。
むしろ、逆に新鮮さを感じながら読みました。

同じ学校のゲイの教師とノンケの生徒の恋です。
生徒の側がイタズラ半分で文通欄に手紙を出したことで、出会います。
最初から、お互いにたくさん嘘をついてます。
嘘だらけのままで始まった恋に、二人とものめりこんでしまう。
そして薄皮を剥ぐように、一つ、また一つ、嘘が剥がれ落ちてゆく。そのたびに結びつきが強くなるのが心地よかったです。

なにがイイって、イケメンと美人じゃないところがイイ。性格も欠点まみれなところがイイ。
親友が物分かりの良すぎないところもイイ。
木原音瀬さんの描く人物は、等身大なのだ。
木原音瀬さん好きだー!!

で、その親友ですが。
『春の嵐』の続編が読みたいッス。
この親友、めちゃくちゃ屈折してますやん。
屈折の仕方が私好みなので、もっとじっくり読みたい。

5

私的に理想的カップル。

すごく面白かった。

何より登場人物がとても魅力的でした。遠藤という女子は嫌な女子って感じですが、それもまたリアル。

遠藤さんはもともと里見をちょっと気にしていたんでしょう。だから待ち合わせ場所に見に行きたいという口実を作って自分に気がある風である事を確かめていたのではないかと思いました。
柿本は里見に対して、高橋の初恋の一ノ瀬と同じ様な気持ちを持っていたのではないかと思います。
無自覚のようですけど。

確かに人をからかうような事はしてはいけないんですが、里見は高橋の脆いところと自分への好意を表す姿、そして同世代とは違う世界にどんどん嵌っていってしまう。
里見は根がとても思いやり深い男だと思います。でなければ、突き放してしまったと思います。
罪悪感だけでは高橋に惹かれることは無かったはず。
そして、とても優しく包容力のある人だと思いました。
里見は高橋が自分の事をとても好きな事が解っていたから、何とか引き留めようとしたのだと思うし、この人を守るために強くなりたいだなんてすごい覚悟だと思います。
音楽室でも高橋の本音を言わせてあげる為にあえて酷い事を言ったように思えました。
もともとそういう気質の里見だからこそ8年後の大人の里見が本当に素敵な大人の男になったんだと思います。

高橋が里見が自分の高校の生徒だと知った時のショックは大きかったと思います。ただでさえ、ゲイである事に負い目を感じていて、初恋の友人が結婚した事を知って一生一人じゃないかと寂しい気持ちだったところ知り合えた好きで好きでたまらない恋人が年齢を偽っていておまけに自分の事を知っていたなんて分ったら騙されたような気にもなったと思います。ここで救いは里見が本当に高橋を好きだった事。
それをちゃんと里見が(ちょっと手段は強引すぎますけど)伝えた事、そしてそれを高橋が信じた事。

柿本に音楽準備室に2人で監禁されてその時の高橋可愛すぎます。
「好き」「あんな子供に君を渡したくない」
このちょっとの素直さが相手の心を救うんですよね。
そうして自分自身も救われるんだと思います。

誰かと共に幸せになるというのは、お互いが共に生きる覚悟が必要なのだと思いました。
男女でももちろんそうですけど、男同士ともなればなおのことです。
高橋も里見もその8年後も共に居てお互いを大切に思い共に生きる覚悟ができていました。
もちろん里見だけでなく高橋も強くなっていました。
人を愛する事で強くなる。とても素晴らしい二人でした。すごく好きな二人です。

みなさんのレビューを見て知りました。これがデビュー作だなんて知らなかった。
びっくりです。

ただひとつ、挿絵がイメージと合わない。里見がえらいおっさんぽくて。
高橋先生に色気がないです。
あくまで、私個人の感想です。

5

ノスタルジック

もっと早く読めば良かったと思った作品。
最初はなんとも思わなかったのに、段々と相手が気になっていく描写が秀逸。
最初は木原先生の作品に良くある、胸くそ悪い話(悪意はないです。むしろ好きです)かと思いきや、こんなにキュンとくる話とは思わなかった…!油断してた。
痛さ控えめな話なので、初心者にもおすすめできる作品。
ノスタルジックな雰囲気が最近の作品ではあまり見られない温かさを感じさせる。
何回も読みたい作品。

3

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