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丸ごと1冊表題作です。笹色の目線で進んでいきます。
笹色(受け)は高校時代に先輩・成川と部室で初H中に、もう一人の先輩・弓削(攻め)に乱入されたのがトラウマになり、恋愛ができなくなりました。それから歳月は流れ…、26歳になった笹色は友人・穴沢に頼まれてネコの世話をするために穴沢の家に住むことになります。その隣に住んでいたのは弓削で…。
本を読み慣れている人には、序盤でキーである穴沢の考えが分かり、引いては弓削の気持ちや筆名にもつながり、オチが読めるかもしれません。それでも、脚本家と編集者という仕事を絡めた展開にし、飽きることなく最後まで読ませる筆力はすごいなと思いました。
ただ、ちょっとこれが欲しいな、と思うところのある作品でした。
題名に「唇」とつけるのなら、内容をもう少し唇に関連させて欲しかったです。あの唇が動くのが怖い、とか。あと、弓削は寡黙とはちょっと違うような…口下手の方かなって思いました。題名にインパクトがなくて、聞いてもぱっと内容が浮かばないのは残念です。
あと、成川が笹色に謝る場面。手出しした理由に、誰とまでは示さなくても「いつも可愛いと聞いていてから」などと言ってくれたら、個人的にもっと成川の好感度が上がりました(笑)
弓削も、襲ったとはいっても暴力はないし最後までしていないので自分では許容範囲でしたが、告白された後の場面で、その時の言い訳が足りないのは不満でした。弓削は友人(成川)に好きな人(笹色)が手出しされたのがトラウマになっていて、穴沢にもそれがリンクしてしまい、それくらいなら自分が…というような説明の方が納得できました。あとこれだけ尽力している穴沢には失礼な話なので謝れっ!とも思いました。穴沢は、セフレがいるということさえ気にしなければ、最初から最後まで惚れてしまいそうないい男でした。ぜひイラストで見たかったところです!
とはいえ、ちょっとした不満はあれど、イラスト効果もあって弓削は男前です。「やっと笑ったな」には、非常に萌えました。笹色は真面目で人を責めない男で、ネコに話すのが可愛らしかったです。ぶっきらぼう先輩攻め、後輩受け、恋だけじゃなく友情も欲しい、ネコ大好きな方にはお勧めです。するりと読むのに良いと思います。
イラストを描かれた奥貫先生のあとがきとオマケ漫画2ページがあります。穴沢のネコ・ジャックLOVEな内容でした。