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愛を乞う男たちの物語
Illuminations
爱照亮了爱
ここに集められた作品は、昨今のBLとちょっとちがう文脈で描かれています。
男×男ファンタジーの要素を取っ払った、萌えの要素をあまり含まない一般人向けの内容です。
全編を通してリアルな世界に近づいているというか、BL的なご都合主義のラストはありません。むしろはっきりしないで終わる文学作品的要素があります。
痛い系というより苦い系。私はこの作品、よいと思います。
決して最後はハッピーというわけじゃないですが、(そして表題作イルミナシオンは希望があるというわけではない)すがすがしさがあるのです。
わかりやすい安易なエンドじゃなくて、こうした余韻を持たせた終わらせ方ってある意味、作者のセンスが問われるところですし、才能そのものだと思うのです。
この作品はうまくできていると感心しました。ただはっきりオチのないストーリーが好きじゃないタイプには合わないと思います。
またこの作品でもヤマシタさんらしい小気味よいいいまわしも健在です
ノンケの隆氏をめぐって取り合いをする幼馴染と新恋人候補のゲイくん。そのゲイ君が隆氏とどういう関係なのか聞かれたときに
「…これから仲良くなる予定のヒト」
と答えたのはおもしろかったです。3人の関係がコミック半分の長さで微妙に変わっていく様を描ききったのもすばらしい力量。私の中では、ヤマシタトモコさんの代表作と思っています。ただBL的な意味ではもっと別の作品があると思います。
「ばらといばらとばらばらのばらん」と「あの人のこと」もBLっぽくないですが、
とても心に残る作品です。
公務員の幹田隆氏(ゲイかも)
幼なじみの小矢直巳(ノンケ)
バーテンダー州戸清寿(ゲイ)
幹田隆氏は小矢直巳を想っててゲイかもしれないって悩んでるところ
州戸清寿にナンパされて抱かれてしまう。
誰が主人公で、誰がお相手で、誰が当て馬でっていうキャラ分けで
物語がすすまないんですよ。
三者三様で世界は回っているというか・・・
そうやって、誰かが笑ったり泣いたりの繰り返しで世界はつくられてきたという
一文があるのだけども・・・
初恋が成就して幸せになる人もいたり
何度も何度も失恋する人もいたり
その違いは何なんだろう?
「イルミナシオン」は
世界中の小さな恋のひとつひとつが“灯り”という意味なのだろうか?
今もなお、誰かの恋が
チカチカと灯ったり消えたりしてるんだ・・・
幹田隆氏も小矢直巳も州戸清寿あと何回繰り返したら
幸せになれるのだろう・・・なんだか泣けた。むちゃくちゃ泣けた。
でもさ、灯ったり消えたりするから美しいのかもね。せつねーっ。
【ラブとかいうらしい】
ベランダでゲイがノンケの友達に
ビクビクと自分の片思いを話して泣いちゃうの。
恋をすることは、悲しいことじゃないんだけど
うまく言えなくてみんな泣いちゃうんだ><
【ばらといばらとばらばらのばらん】
BLなのに女子が主人公なんだよ。
中久さんは、恋をしてるの。
そして恋敵は十亀っていう男子なんだよ。
同じ男子が好きなんだよ。
中久さんも十亀も、ただ見つめているだけなの・・・
でも先に勇気を出して告白したのは十亀
んでも十亀の恋は“ホモ”だから拒絶される
中久さんは、どんな気持ちだったんだろう?
恋敵に先を越された思いとか、恋敵が拒絶される様を自分に重ねてみたり
ただ見ていただけの自分より十亀のほうが、かっこよく見えたんじゃないだろうか?
見ているだけの恋じゃ胸張れないんだぞっ!
駆け出して手を差し伸べた中久さんがめちゃくちゃ男前で
ラスト1ページで、ズキュン!何かが突き刺さったよ。
【あの人のこと】
あの人というのは七辺洋平と、七辺洋平に関わった5人の男女のこと。
男女5人の目線でオムニバスで語られる七辺洋平のこと。
全部すげぇ些細な出来事じゃない?
リストに名前を書かれた5人がいいか
リストに5人も名前を書ける七辺洋平がいいか
どっちが幸せなのかそんなんわかんないけど
誰かにとって一生わすれられない出来事、一生忘れられない人間でいれるだろうか?
【神の名は夜】
これ、オヤジ×オヤジ893モノ。
不眠症の三ヶ島ことミカは
狂犬・須賀に抱かれないとよく眠れないの。
眠りをもたらす須賀が神なのかっていうより
ミカが須賀にとって“カミ”なんじゃないかと思ったよ。
自己啓発度★5 おちゃめ度★3 BL度★1 心の闇と光度★5
男:女=8:2 光:影=8:2
ちょっとだけ悩みを抱える人達が、ちょっとだけ成長する短編集。神推ししたい気持ちでいっぱいですが、表紙の隆氏が「BLではない。たまたま主人公が男だっただけだ」という表情なので萌×2にとどめました。
その表紙の隆氏が暗いせいで作品も暗いかと思われがちですが、影を見せて光を感じさせるような明るさと救いがあります。ヤマシタキャラ的な表現をするなら、文学的な分かりにくい表現で曖昧さを残した心情が、複雑な形のすき間に染み込んで心が悦ぶ感覚。です。
◆幹田隆氏29歳公務員
幼馴染の小矢に寄せる想いを長年隠していたが、居酒屋で出会った洲戸に抱かれ、隠せなくなり。「心も体も誰ともつながりたくない。神様おれをひとりにしてください」この台詞に世界が大号泣しますが、次の瞬間にはみんな普通に生きていくという話。
◆洲戸清寿24歳バーテンダー
要領良く生きているようで一番要領が悪い洲戸。「世界はおれを置いて進む。世界が俺を拒む」この台詞に世界に激震が走りますが、やっぱり何事もなく進んでいくという話。
◆小矢直巳29歳八百屋家事手伝い
趣味合コンのアホな男。突然現れた洲戸の存在に焦り、幹田との心地良い関係が壊れたことにダダをこねるアホな男。「神様。もしも世界にふたりきりなら」…アホな男。
◆ラブとかいうらしい
大事にしたい気持ちがある。おもしろいとか悲しいとかじゃない、大事な気持ち。
◆ばらといばらとばらばらのばらん
2つの片想い。いじめ。どうしたら良いか分からない気持ちをどうにかしたい気持ち。
◆あの人のこと
大人になって途切れていたものが突然繋がる話。強くないけれど確かにある糸。
◆神の名は夜
唯一BL全開な話。台詞は極道なのにやってることはラブラブというとても萌える話。
◆「イルミナシオン」「ばら」「神の名は夜」の後日談。
それぞれの光の面をチラ見せ。純粋に明るく幸せな気持ちになれる後日談。
新装版が2018年8月に発表されています。今から読む方はそちらをどうぞ。
本作は2008年発表。
ヤマシタ作品らしく(?)、BLと非BLの狭間のような空気感、恋愛の当事者ではない脇の人物からの視点、また当て馬・ライバルの立ち位置ではない女の子。
冒頭の表題作は、痛々しい片道通行の想いが行き交う。
愛されたい、ではなく、愛する人をください、という祈りのような。
次の「ラブとかいうらしい」でもノンケの友達に片想いしてる子が出てきます。表題作の隆氏も、この子も、恋愛よりも友情が大事なんだね。友情の方が続くから。それはデビュー作の「神の名は夜」でも繰り返されます。
オリジナリティを感じるのは、何と言っても「あの人のこと」。
ある男の死によって、周辺の証言から少しづつその男の辿ってきた日々、気持ちが浮かび上がる…
エロはごくごく薄い、もっと感情の繊細さを感じられる作品集で、なんか純文学系の短編小説を読んだような気分になります。
あ、ヤマシタ女子も1人いますよ。イキのいい子で、読んでて気持ちいい。
タイトルの作品は3話あったんですが、せつない、ああ、せつないよ!って感じでしたね。
コレを含め、ハッピーエンドでなければ!というタイプの人には薦めづらい感じのラインナップ。
短編集なんで、色んなテイストが入っててそれはお得なんですが、微妙に傾向がばらばらで、唯一共通してるのが「エロ少なめ(~標準)」「イラッとくるくらいに切ない」って所ですからね・・・。
表題作の主人公は政客には3人です。微妙な三角関係のお話。
公務員の幹田は、幼馴染の同級生・小矢の事が昔から好きなんだけど、小矢は女好きで、サイクルが早いいい加減な男。
そんな相手に恋心を隠し続けてるうちに、一体自分は小矢が本当に好きなのかどうなのか、わからなくなるほどに枯れてしまい、今では言い寄る女も抱く気になれないほどの枯れっぷり。
そんなある日、偶然居酒屋で出合った人懐っこい男に、冗談交じりで男が好きかもと言ったら、「じゃ、試してみますか」と言われ勢いで寝てしまう。
この男、バーテンダーの洲戸と名乗り、その後、押しかけで何度も幹田を口説き始めます。
この3人、三様の悩みや葛藤を抱えてて、それのどれにもそれなりにうなずける。
特に、何だか恋心を隠してるうちに全てが億劫になってしまったという幹田の気持ちが一番「ああ、ねぇ・・・」と共感できた。
そして、幼馴染の小矢の気持ち、BLにはありがちで、小矢がそこに気づいたら、普通はハッピーエンドになるはずなのに、ここではならない。
だけど、その方が普通なのだろうか?という気さえする、なんかこう、全員「生きてる」感があるんですよね。
だからこそ好みが分かれてしまって、薦めづらいってのもありますね。
さて、表題作以外も個性的な話ばかり。「ばらといばらとばらばらのばらん」は、終始女子目線で語られてます。これも好みが分かれるところだなと。
これはお話そのものもおもしろいんですけど、最後の書下ろしがたまらんかったんで、オススメ。
唯一ハードながら萌えと言う言葉が少しは使えそうなのが「神の名は夜」ですね。
ヤのつく自由業、しかもかなりえげつない系なんで、これまた好みが分かれそう。
しかし私は二人の関係性にちょっとぐっと来ましたね。
総じてどのお話もBL的甘さがなく、無理やりにでも「隣の町ででも起こってそうな出来事」にされちゃう感がありまして、スイートな夢に浸れなくしてあります。
絵柄的にもかなり地味というか、こう、ホントその辺にいそうな雰囲気の人たちですからね。姿かたちも格好も。
ゲイっぽいのとまた違う、妙な泥臭さがあるお話ばかりです。あまりかっこよくありません。
・・・私は好きなんですが、人にはどうか、ちょっと自信がないと言うのが正直な所ですね・・・。
ヤマシタトモコさんの作品は全部読んでいないけれど、
自分が読んだ作品のほとんどに、作品が中途半端に終わっている印象を感じました。
内容が中途半端という意味ではなく、作品の内容がこれからも続いていきそうな場面で終了してしまっているように感じるという意味です。
続きがありそうな終わり方と言うのかな。それとも、どこが終わりか分からない場面で終わっているのか。とにかくそんな印象です。この作品も同じことを感じました。
かといってヤマシタトモコさんの作品は、内容を途中でやめて読者にその後を丸投げするタイプとも違う。何かしら作品の中で言いたいことは描かれた上で、途中で終わっているというか。
表題作もまさにそれでした。登場人物の三人の想いがそれぞれに決着を見せず、三人の関係はこの先どうなるのだろうという所で終わっているけれど、決して中途半端というわけではないのです。
高度なテクニックだとは思うけれど、完結しない作品には勢いがそのまま残るという効果を狙っているならすごいと思います。たいがいこういうやり方すると読者はちゃんと最後まで描いて欲しいと思って不満が残ることが多いですし。
でも何かしら読者に効果を与える終わりかたをしていると思います。
表紙に惹かれて購入。まあ、地味な感じな表紙ですがキラキラしてないところに惹かれたというか。
で、告白するならば、読むの一度挫折してます(汗
淡々とした暗さに遣りきれなかったなかったというか。でもまあ、それはリアルであることの裏返しなんでは、と。言い訳めいております。
表題作は、ノンケの幹田が幼なじみの小矢に恋をしつつ、バーテンダーの州戸となりゆきでヤってしまい、州戸は幹田に執着し、でも幹田は誰も好きじゃないと言い張る……ぐるぐるしております(笑)
恋愛は誰かの思惑で動くモノではないということっすかね。
「ラブとかいうらしい」は、ベランダで友人同士が昼間の月を見上げながら話をするというものなのですが、ゲイだと周囲に知られている男の子は、本当は隣でフリースの膝掛け巻いてる男の子が好きなんだけど、気持ちが通じてない’と思っているのはゲイの男の子だけという。主人公の名前がでてこないのでわかりにくい表現でゴメンナサイ。共通の友人や元カレの名前は出てくるんすけどね。
トーンは全体的に暗めながらも私個人としては結構好きなタイプ。後日談で笑わせていただきました。
BLのような違うような…
ヤマシタトモコさんらしい作品だと思いました。
あえて結末を出さない、友人止まり、みたいな感じが考えさせられて好きです
なかでも、
ばらといばらとばらばらのばらん
好きです
題名も好きなのですが、十亀がかっこいいのと、(ライバルの)女の子目線で書いている作品で、新鮮さが良い
あの人のこともBLらしくないが、話としてすごく好きっ
神の名は夜は、この中でもっともBLらしい作品でなお、素晴い設定で話っ
書き下ろしも全部良いっ
話の展開も、終わり方もすごく好きでした!
ヤマシタトモコさんといえば、「くいもの処明楽」を読んだときは、前評判を聞いて期待しすぎてしまったのもあったのですが、正直あんまり、普通?かなって感じでした。
だけどこれはツボにきましたねー。
切ないストーリーだけど、こういう切なさは好き。
微妙にうまく説明しづらいんですが、ドロドロ痛い切なさじゃなくて日常をちゃんと描いた淡々とした切なさって感じでしょうか。
が少女マンガ的な文体では全く訪れない、作品ばかりの作品集。
ヤマシタさんって、後書きでご自身がチラッと書いているように、作品が少女マンガの文体じゃなかったりする。
大抵のBLマンガは「最終的に恋愛の成就を目指す」少女マンガの文体でお話が展開されるわけだけれど、この本の中では、だれ一人、何一つとして、少女マンガ的な恋愛の成就は訪れない。
「誰かが誰かを恋している」のだけは確かだけれど、描かれているのは「恋の苦しさ」だ。
作品内では「この恋が成就される事はあるのだろうか?」という点しか描かれず、その関係の結末は、全く何も、示唆もされないまま。
少女マンガとしてはあるまじき不親切さだ。
でも、こんな作品を許容する世界は、やはりBLならではなんだろうし、
この少女マンガの文体をはずしている所が、ヤマシタさんの魅力であり、わかりづらさでもあり、人気の所以なんだろうなと思う。