ロマンチックバージョン

romantic version

ロマンチックバージョン
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神13
  • 萌×24
  • 萌1
  • 中立0
  • しゅみじゃない0

58

レビュー数
5
得点
84
評価数
18
平均
4.7 / 5
神率
72.2%
著者
安西リカ 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
羽純ハナ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
電子発売日
価格
ISBN
9784403526312

あらすじ

玉砕覚悟でした告白をあっさり受け入れられ、綾瀬の恋人になった淳史。不思議とうまくいっていたけれど、誰とも長続きしないと言う彼と付き合って一年、タイムリミットが気になり始め……? 付き合ってるのに、片思いみたい――。切ないロマンス。

表題作ロマンチックバージョン

26歳、フリーのITエンジニア
23歳、医療部品メーカー社員

その他の収録作品

  • FORELSKET(書き下ろし)
  • あとがき

レビュー投稿数5

ダメもとの告白から始まる恋物語

今回はITエンジニアと医療部品メーカーの会社員のお話です。

受視点で受様の恋の告白から攻様が恋を自覚するまでと
攻視点で本編裏事情を絡めた後日談を収録。

受様にはイケメンな彼氏がいます。
彼が今回の攻様です♪

攻様は大学進学したものの友人と起業した
フリーのITエンジニアです。

出会いは
大学近くので攻様の母の友人が営む喫茶店で
攻様はバイトとして、受様は所属する映画鑑賞サークルが
よく利用するたまり場だったことによります。

受様は初めて見た時からカッコいいなと思っていましたが
サークル仲間が攻様が"奇麗な男子"とのデート現場を
目撃したと話した事でさらに気になりだします。

その日、偶然大型書店で攻様と出くわし
思わず声を掛けた受様が胡散臭げに見られるほど
攻様には印象が薄かったのですが
それをきっかけに喫茶店でも話すようになります。

やがて仕事が忙しくなった攻様はバイトをやめますが
上手くいかない就活中にバイトの代打としてきた攻様の
アドバイスを活かすと内定をもらえるよになり
就職先は最初に内定を暮田医療部品メーカーします。

そして卒業を控えた春休みに
4年生全員で喫茶店のオーナーと呼んでもらった攻様に
お礼を言いに行った日

攻様との縁も最後とダメもとで告白するのですが
攻様は先週彼女と別れて「今はフリーだよ」と言われ
「付き合う?」と続けられるのです Σ( ̄。 ̄ノ)ノ

冗談ではなさげな攻様に
受様は「付き合いたい、です」と応え連絡先を交換して
卒業式の2日後には待ち合わせをするのですが

待ち合わせに現れた攻様に開口一番
「どうする?とりあえずホテル行く?」と言われます。

そうして攻様ペースで始まった交際は1年続き、
恋人と長く続かないという攻様にとっては
最長記録の恋人となりますが・・・

雑誌掲載作のタイトル作に書き下ろし短編をつけての文庫化で
恋人と長続きしないイケメンな攻様と凡庸な受様の
恋物語になります♪

恋愛強者な攻様に惚れた受様の告白で始まるお付き合いは
受様は攻様に好きな人ができるまでの恋人のつもりでいて
ちょっと受け身すぎるのかなと思ったのですが

受様の会社に入った中途採用者の存在が
攻様に受様との関係を考えさせる展開となっていて
とても楽しく読ませて頂きました。

受様は自分に自信がないという訳でなく
大勢の中にいると埋没する地味な人間と思っている感じで
仕事でも目立たず、でしゃばらず、ひたすら地味な業務を
無難にこなして当たり前と思っている良い子なのですよ。

ただそんな良さのありがたみって
いつもの日常の中では埋没して意識されず
攻様もライバル登場でやっと意識したって感じで
実に楽しかったです (⁎˃ᴗ˂⁎)

続く描き下ろし続編が本編と逆の攻してとなった事で
受けには絶対見えない攻様のいろいろが
さらに楽しめて最高でした♡

フェア店舗でいただけるペーパーがさらに
攻様の様子の変化が如実で楽しいので
これからならペーパー付の店舗でのご購入をお薦めします。

0

切なさの先の幸福感、たまらん

電子発売まで待とうと思っていたのですが
安西先生のXにあがっていたウェブCMを観て
もう待ちきれない…!という気持ちになり紙本で購入。
ものすごく好みのお話だったので、衝動に従って大正解でした。

最初から綾瀬との関係に敦史は"終わり"を想定していて、付き合って1年経ってもその考えは変わらず。
告白にOKをもらえると思っていなかったところからの始まりなので仕方がないことかもしれないのですが、
どこか心を開ききれていない様子に言いようのない切なさが募ります。
綾瀬の本心が見えないのが一番の原因ではあるけれど
ふたりの日々が順調だからこそ、ひとつの綻びからバランスが崩れてしまうのではないかと本当にヒヤヒヤしました。

でもよくよく見てみれば、綾瀬の敦史への想いが
刹那的ではないのは明らかなんですよね。
これまで「来るもの拒まず去るもの追わず」のスタイルでたくさんの人と付き合ってきた綾瀬ですが、敦史と付き合ってからは彼との時間を大切にしているし
人間的にチャラいわけでも倫理観がゆるいわけでもないし。
ですが自分自身のことを表現する術を知らない不器用さが敦史を不安にさせていたのは事実なので、
はじめての危機的状況でそれが解消してくれて良かったなと心から思いました。

後半で綾瀬視点になると彼の印象はまた変わって、
日々の小さな出来事からも敦史への愛が伝わってくる感じが本当に素敵。
すれ違ったり喧嘩したりという『恋人同士だからこそ』のアレコレを経験して、
ふたり揃ってステップアップしていくのを見れたのがすごく嬉しかったです。
綾瀬が何を考えているか?というのをしっかり理解してから読み返すと
また違う萌えがうまれそうで、もう一周する楽しみができました!

2

くー

先生買い。雑誌掲載作とその続きという構成で、雑誌で読んでいたんですけど、やっぱりいいですねえ。普通なんだけどその普通が自分にとってはかけがえのないもので・・というやつです。いつまでも覚えている自信ないので神にはしなかったですが、途中読み止められず一気に最後まで読んで、読み終えた瞬間に「はあ♡」と桃色ため息つくお話だと思います。タイトルは、攻めが使う「受けの呼び方」。ふふ。可愛い。ファンタジー要素一切なし、現代日本もの。

大学のサークルで入り浸っていた喫茶店で知り合った二人。大学卒業時に駄目もとで!と告白したら、「今フリーなんだよね」と言われて付き合い始め、社会人1年目が終わるころには、週末を攻めの家でほとんと過ごすようになっていて・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
リツコさん(喫茶店オーナー、攻めの親族的存在)、小宮山(攻めの仕事仲間)、湯沢(受けの会社の中途採用者♂)ぐらいかな。小宮山が良い~。

++好きだったところ

圧倒的に後半!前半も好きだったんですけど、後半の「ぎゅーーーーーーーーっ」とくる感じが圧巻でした。堪らんです。

攻めの「今フリーなんだけど」という一言で始まったのと、受けが自分のことを「全く普通で特筆するものがなにもない」と思っていることから、受けはセフレみたいなものだ、捨てられないように頑張ろうと考えています。(悲惨な空気感なし)「くー」って呼ばれて寒いといってベッドに引っ張り込まれ、暖かそうに抱き着かれる仲なのによ?甘い感じ、愛されている感あるよ?と思うんですけど。

全く悲惨な感じはなく、でもあれこれあって、攻めが「やばいやばいやばいやばい」と必死になるんです。あんなに大事な受けを失っちゃうの!?とめちゃ焦ってます。その必死さが沁みて、至福感に変わってですね、桃色のため息になりました。

サブキャラの恋模様も色を添えてくれて、ほわわんと幸せな気持ちになれる一冊でした。先生、また新しいお話、楽しみにお待ちしています♡

2

一番近い場所にいるのに、一番遠く感じる心の距離感に浸るすれ違いラブ

最初に好きになった者の不安感
好きになられた者の鈍感力

これが上手いこと絡み合って、すれ違いや思い違いを生んでいく切なさをピンポイントに攻めるストーリーはさすが安西先生です。
ご自身の作品を、いつも"地味"だと評している先生ですが、地味は日常にあるリアリティの象徴みたいなものですし、私たちが生きるこの現実の世界の延長線上に彼らも同じように息をしているのではないかと思わせてくれる気持ちの昂りは、決して"地味"だとは思いません。


今回の作品も"地味な"現代日常ものとしての良さがたっぷりで、派手さはないけど心理描写で魅せてくれるストーリー。"地味"の良さをめちゃくちゃに堪能させてもらいました^ ^
思い違いやすれ違いの渦中にある交際歴1年のカップルのお話となっており、恋人同士なのに片想いをしているような感情が切な苦しいです。

"恋人同士"というガワの部分は順調ですが、その中身は……というのがこの作品の見どころ。というのも、元々好き同士で付き合った2人なわけじゃなく、淳史(受け)の方が綾瀬に告白をして付き合うに至った関係で、淳史からすると"たまたまタイミングが合ってたから付き合ってもらっている"という認識の下、交際をしている2人だからです。
攻めの綾瀬がイケメンでモテモテなのに対し、淳史は地味めっていうキャラ性からしても不安感を完全に煽ってきてますよね(笑)淳史がいつか綾瀬に捨てられるかもしれないという、いつかくる別れの時を頭に置きながら付き合っているのが、順調そうな交際の裏の顔です。

注目すべきは、2人の恋愛のベクトルが一方通行なのか双方向なのか…といった部分。前半の淳史視点では判断がつきにくいですが、セリフの言い回しやその反応、目には見えにくい微妙な変化を感じ取ることができれば自ずと答えが出てくるでしょう。
結果ではなく、過程の注視をぜひ。2人のすれ違う感情の奥にあるものを見極めながら読み解いて欲しいなと思います。
一応、後半の書き下ろしは綾瀬視点のストーリーとなっていて、答え合わせはバッチリできるので、そこまで身構えずとも大丈夫です^ ^

その綾瀬視点では、彼の何を考えているか分からない感情の真相がボロボロと出てくるので、この視点描写はとても有り難かったです。淳史が不安に思っていた初エッチのシーン……そんなこと考えてたんならハッキリ伝えてやれよとプチ怒りです。
圧倒的言葉不足と恋愛センサーの感度が低いこの男は、恋愛下手なだけなんだなと思ったし、淳史とのことは縋ってでも関係を繋ぎ止めたくなったことに、ああ…この男は恋愛に無頓着なのではなく、本当の恋や愛を知らなかっただけなんだなと思いました。
綾瀬の平坦だった感情に起伏がついてくる振り幅の広さは必見です。
追われる方だった綾瀬が追う側に転じる変化には、拍手喝采でした♪


恋人同士という一番距離が近い関係なのに、一番遠く感じる心の距離感に、感情が揺さぶられっぱなしのすれ違いストーリーでした。見える部分と見えない部分の対比を始めとして、心理描写も設定もキャラもとても良かったです。
お互いの感情が同じ色、同じ濃度に染まりゆく恋愛模様は素敵な読後感でした。

5

”特大に特別”だと気付いた、「地味」と評される愛しい人

安西リカ先生×羽純ハナ先生という、夢のようなタッグ!
楽しみに楽しみに待っていた新刊です。

小説ディアプラス、休刊前最後の24年ハル号に掲載されていたこちら。

誰とも長続きしない年上モテ男子×一途健気な会社員というカプの
お話です。

”地味”と評されがちな”くー”こと栗原淳史(受け)の、
健気一途で切ない想いに心打たれ、とても印象に残っていました。

本誌でも拝読し、じーん…としたのですが、
この本誌掲載分だけだったら正直なところ、「萌2」かな..?
なんて思っていたのです
(他にも、大好きで激しく萌える安西先生の御本が多いため...)

がーーーー!!!!!

書き下ろしの攻め・綾瀬視点のお話に、
見事にがつんとやられました...

恋人関係が始まった時点では7:3、いやもしかしたら8:2ぐらいかも。。
とも思えた愛情比率(受:攻)が、後半見事に逆転します。

絶対”くー”を手放せない、と自分の中の恋心を自覚し覚醒し
初めて自ら動き、想いを伝える攻めの姿。
心震え、胸打たれました。

何より素敵なのが、その書き下ろしのタイトルにもなっている、
”FORELSKET”という言葉の意味。

作中でも説明がありますが、こちらの言葉は
淳史の所持本『翻訳できない世界のことば』
(↑自分も持っていて、密かにテンションアップ..⤴︎)
の中に紹介されているノルウェー語で、

「恋に落ちた時に感じる、言葉にできないほどの幸福感」という意味だそう。
(なんて素敵な言葉...)

このページに紙を挟んでおいた淳史の気持ち、
それを見た綾瀬が感じたこと、
そしてこれが攻め視点の書き下ろしタイトルになっていることの意味...

そんなことを色々考えると、
どうしたって胸が熱く、たまらない気持ちになります。

と、1,000文字以上かけて既につらつら語ってしまったのですが、
以下、簡単なあらすじと感想(続き)を...

大学生の時に出会った、3歳年上のフリーのITエンジニア・綾瀬に
一途に片思いしていた受け・淳史(攻めからの呼び名は”くー”)。

玉砕覚悟の告白があっさり受け入れられ付き合い始めたものの、
”いつこの関係に終わりが来るのか”と
不安な気持ちをずっと抱えています。

いつか自分よりずっと素敵な相手が
綾瀬の前に現れてしまうかも、、と思っていた矢先、
”第三者”が現れ、アプローチを受け始めたのは
なんと思いも寄らぬ自分の方でー

と続く、受けの恋心の方が大きいところから始まる、
アンバランスな恋物語。

受け視点の前半部分は、幸福感や甘さを感じる描写ももちろん
あるのですが、常にどこか切なさが漂っています。

それはひとえに、淳史の中に「この恋はいつか終わるもの」という
思いがあるため。

自分の方が圧倒的に相手を好いていることを
理解し受け入れながらも、少しでもこの幸せな日々が長引くようにー

と祈るような思いでいる淳史の描写、
付き合っているはずなのに「片思い」状態にある切なさに
胸がきゅーーっと締め付けられます。

そして安西先生、すごいなあ...さすがだなあ...と
思ってしまったのが、そんな淳史の気持ちが作中で
「コートを羽織る」ことに例えられていること。

自分は色もデザインも地味なコートだけれど、
人を暖める、という最低限の機能は持っているコートとして、
そばにいられる限り綾瀬を暖めていたいー

もーーーー健気が過ぎる!泣けてきてしまう( ; ; )


で。そんなふうに一途に思われている攻め・綾瀬って
どんな冷たい人物なの?と思うのですが、
これが偉そうとか、傲慢とか、冷たいとか、
そういったことは全くないのです。

”くー”という綾瀬だけがする呼び名にも
何か特別なものが込められているように感じるし、
自由人ではあるけれど、恋人に向ける眼差しは優しい。

だからこそ余計に、想いの比重の差が切なく
胸に迫ってくるのですよね...

と、最高に切なくなったところでの、
受けの前に現れる”第三者”の存在。

こちら、ただの”三角関係”ではないー
というところが肝となります。

雑誌で拝読していて顛末は知っていたものの、
単行本で読んでもドキドキ・ハラハラ。

綾瀬に対して持っていた
「もーーーお願いだから”くー”の気持ちに応えてあげてよ!」という思いが、
この事件の顛末によって見事に昇華されます・:*+.

”くー”を守ろうと初めて声を荒らげる綾瀬、
かっっっっっこ良かったー…!!

第三の男・湯沢にどんなに粉をかけられても
揺らがなかった淳史にもまた、グッとくるところでした。

その後の攻め視点の書き下ろしは、
先述したとおり素晴らしく愛に満ちたもの。

自分にとって”くー”の存在が特大に特別だったことに気付き、
初めてのすれ違い&ケンカに焦り、
初めて自分からメッセージを送り(!!)、
今は自分の方がより淳史のことを好きだ、
と伝えてー

”淳史は絶対に失いたくない”という綾瀬の独白を読んだ時、
やっとやっと気付いたのか…!という思いが込み上げ、
うるっときてしまいました。

受け視点の前半ではかなり控えめな描写だった
二人のセックスが、この書き下ろしでは甘く甘く描かれているのも
最高に素敵。

羽純ハナ先生のイラストの美しさ、
特にハーフアップの綾瀬の男前っぷりにも惚れ惚れしました(*´◒`*)

あと!
忘れちゃいけない、名脇キャラ・小宮山。
綾瀬の幼馴染で、現在の仕事のパートナーです。

書き下ろしで明かされる彼の意外な一途さ、
年上子持ち彼女に対する真剣な想いを知り、
一気に好感度アーーーーップ!!✧

そして綾瀬×淳史の出会った大切な場所であるお店を営む
リツコさんの、二人に注ぐ優しい眼差し。

そんな脇を固めるキャラクターも個性が光り、
強く印象に残った物語でした。

”誰と出会うかは絶対的に運だけれど、
その関係をどう繋いでいくかは自分次第”

最後の最後のこの一言がじーんと沁みる。。

「ロマンチック・バージョン」というタイトルもまた秀逸な、
何度も読み返して味わいたい、と思える一冊でした・:*+.

8

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