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先日出た新刊(グラン・ギニョール)を読んでる時に自分の中にこの作品のことが比較対象としてずっと浮かんでたので、こちらもこの機会にレビューしてみます。
内容も結末も「グラン・ギニョール」以上に万人受けとは程遠い作品ですが、私にとってはどうしたって神評価以外は考えられない1冊です。
怖いもの見たさで手にとって、まんまと取り込まれてしまいました。
未完のまま休筆となってしまっているシリーズの途中作ですが、この巻自体はこの1冊で完結していますので、こちらだけ読んでも十分面白いと思います。
母親が男達にレイプされている現場を目撃し、その後首を吊って自殺している母の姿まで目撃してしまった兄弟〔テツ〕と〔ヒロ〕。
その数年後、今度は兄が同じ方法で自ら命を絶ってしまう。
兄にもまたレイプされた痕が残っていた。
兄はなぜ自殺してしまったのか───
本編にあたる「飼育係・理伙」(上/下)の前日譚です。
本巻の主人公は兄の〔テツ〕。
母親のレイプを目撃した少年が取り込まれてしまった「闇」について描かれています。
その闇は10代の少年がたった独りで取り込まれるには、深く、暗く、救いようがない。
これが漫画でなく小説であれば純文学にも引けをとらなさそうな、かなり文学的なストーリー体裁はこれぞ本仁作品の真骨頂かもしれません。
ページをめくればめくるほどどんどん救いがなくなっていくストーリーは息が詰まりそうな閉塞感ばかりで、しかもその先にある結末は最悪のバッドエンドであることが先に分かっている。
最後の数ページで襲われる絶望感たるや…
テツが自分を「保つ」にはもうこの道しか無かったのかと思うと、やるせない涙でいっぱいになります。
先に「たった独りで」と書きましたが、テツは“道連れ”を必死に探しているのですよね。
最初は弟を道連れにしようとするのですが、彼は自分と同じ人種ではないことに気付く。
替わりに見付けたのが〔理伙(リカ)〕。
2人は一目で恋に落ち、最初こそ高校生らしい穏やかな恋人ごっこに興じていますが、次第に2人の想いにはすれ違いが生じ始めます。
テツは、リカに「ママ」を重ねて、レイプされ死んでいった母親に対して自分が抱いた感情が何だったのかを知ろうとする。
リカは、テツが欲しいのは「自分」ではなく自分の中にある「ママ」の部分であることに気付き、必死に「自分」に繋ぎ止めようとする。
思い通りにならないリカに対してどんどんサディスティックになるテツ。
愛とはほど遠い暴力で痛ましく傷付けられるだけの日々なのに、それでもリカがテツに執着するのを止めないのは、テツが初めて「自分」を見てくれた相手だから。
ここでテツがリカの想いを受け入れて過去に決別出来れば良かったのだけれど、テツの「闇」の正体はもっともっと果てしなく深いところにあったのです……
レイプされて死んでいった母親の最期の姿を見て射精してしまったテツの「闇」。
自分がレイプされる立場になって初めて、自分の心の中にずっと巣食っていた「闇」の正体=自分の望みが何だったのかを知ることになる。
そして彼は自分の母親と同じように首を吊る───
悲しいとしか言いようがないラストです。
母親の死の真相なんてそれこそテツの思い込みも多分に入っているでしょうし、自ら選ぶ「死」に肯定の余地なんてありません。
そもそも父親は何をしているのかと腹立たしくなる。
10代の少年が独りで追い込まれるには余りにも過酷な人生です。
弟〔ヒロ〕を“聖域”とし、道連れにしなかったことだけが偉かったと思うけれど、残されたヒロは兄の死に囚われ、本編のストーリーに至るわけですから、やはり兄の死は独りよがりでしかなく、残るのは言いようのないやるせなさのみ。
死ぬ以外にテツが救われる道はなかったのだろうかと、何度読んでも問いたくなります。
冒頭で「グラン・ギニョール」を読んでこの作品のことが浮かんだと書いたのは、どちらも同じ「破滅」への憧れのようなものを描いた作品だから。
けれど「グラン・ギニョール」にはあるロマンティックさが、こちらの作品には一切ない。
同じ題材で対極のような2作品。
でも間違いなくどちらにも本仁さんの作品だなぁと感じる本質のようなものがあって、この本質に「ブレ」がないからどんなに悲しい結末でも本仁作品は好きだ‼︎と叫びたくなるのです。
迷いのない「神」作品です。
「飼育係・理イ火」の続編で、テツを中心とした短編を集めた作品集。テツが自殺した経緯が描かれている。殺伐としていて、救いがない。
テツは弟のヒロに執着している。兄を拒めないヒロの優しさに付け込んで肉体関係を持つ。後にテツは全寮制の男子校に進学し、そこで自分と同じように人をたぶらかす蜜のようなものを持つリカと出会う。ふたりは一目で恋におちた。だが、穏やかな日々は長く続かなかった。リカがレイプされているときに言った言葉がテツのトラウマを刺激し、テツが暴力を振るうようになる。
テツとヒロの母親はレイプされて自殺している。そのことがトラウマとなり、話全体に関係してくる。異常な愛であふれているけれど、萌えはない。近親相姦、レイプ、暴力、マザコン、ナルシズムなどなんでもありで、モラルなんてあったもんじゃない。けれど作品としては神です。
『飼育係理火』の第2部になり、ヒロの兄・テツのお話になります。
ここで明らかになるあの「タスケテ」「ママ」の言葉の意味。
衝撃的なテツとヒロの母の自殺とテツの過去。
それが根深いトラウマとなるのですが、すでに母の自殺の時点で壊れている?
テツが唯一求めたもの、それは「ママ」
テツが「アレ」を使えば・・・という「アレ」とは一体?
11歳にして大人の女性をよがらせるその魔性。
弟との禁忌の関係から逃げるようにして入った学園での「アレ」を使った君臨は、ヒロを聖域にするためのものだったのか。
理火にママを見て、その身体を思う存分傷つけ、「タスケテ」の言葉を引き出そうとするテツのサディスティックな嗜好は、理火を「ママ」であると認めさせたいからなのか?
テツに訪れる凄惨で、かつ清らかな最後。
病んでいる。心も身体も蝕まれ、誰にも救えなかったテツの心。
彼の生はただ死へと一直線に向かっていたのだと思う。
こんな余りに壮絶な生きざまを見た後では、他のほのぼの学園ものが幼稚園に見えてきてしまうくらいのインパクトが大きい。
いくら特殊な世界とはいえ、そこまで人を壊すことができる人の力は恐ろしいのだと、テツは身をもって教えている。
本仁作品渾身の作品のシリーズ、第3部いつか再開してほしい。
テツの魂を救ってほしい。
BL、という言葉だけで語れない、素晴らしい作品だと思います。
痛さ、辛さ、苦しさ、そんな気持ちが至るところに描かれ、そこに狂気が重ねられています。打ちのめされそうになりますが、一度ページを開いてしまったら、読み続けられずにはいられません。
明らかに絶望に向かって進んでいく話なのに、こうも惹きつけられるのは何故なんでしょう…
リカやヒロ、そしてジルのその後も気になります。一体どういう結末が待ち構えているのか。
続き、はやく書いてくれないかなあ…
胸が痛いです。これは、確か。
この話を、初めて読み終わった時、びっくりして
「えっ」と思って、そのまま二回目を読み始めました。
少しでも理解したくて隅々までを読み返したが、いまだ、
自分の中で、まとめきれてないお話であります。
会話してても、笑っていても、暴力を振るっていても、
主人公達の、見えているものが、私には、想像もできない。
違う次元の話をしているよう。それでもまた読みたいと思ってしまう
何故でしょうかね、もう本仁戻先生に聞きたいよ~(笑)
久々にすごいものを読んだ…!と暫く放心状態でした。『飼育係』本編の方ではストーリー自体は面白くても、そこまで萌えを感じなくて萌評価にしたのですが、スピンオフのこちらは神一択でした。萌えとストーリーと心情描写がすべて秀逸。本編では各々のキャラの回想から想像するしかなかったテツという存在が、これほどまでに凄まじく激しい人間だったとは。想像の遥か上を行ってくれました。
彼と彼の母親、弟であるヒロ、そして後に出会う理伙との関係は、感覚で語られる部分も多く、正直常人の理解できる範疇を超えています。母が強姦される瞬間を目の当たりにし、彼女の自殺という業を背負った兄弟。ただし、テツはそんな母を見て欲情した。母亡き後、彼がヒロに執着し関係を持ち出したのは、母や自分と同じ存在を欲しているようでもあり、共犯者とのセックスに興奮しているようでもあり、己の欲望の本質を知りたいという好奇心のようでもありました。どれも違うのかもしれないし、全部当てはまるのかもしれない。ただ搾取されるしかなかったヒロが本当に可哀想だと思う一方で、私のようにそこに萌えを感じた読者もいるでしょう。
永遠の共犯者にはなれなかったヒロの代わりに、テツは理伙と出会う。あらゆる人間を虜にしてしまう、自分と同じ存在の理伙。だからこそそこに母を重ねて甘えようとした。でも、理伙は自分という人間の本質を一瞬でも見てくれたテツにこそ、惹かれた。本質的には仲間なのに平行線のままの2人。最後、初めて犯される側になったテツは何を感じたのでしょうか。母に欲情する気持ちと同じくらい、彼自身が母になりたかったようにも見えました。自分を想ってくれる者の前で他者に乱暴され、そんな彼らに欲情され、愛する者を置いて人生を断ち切り、生きる者の心に永遠に君臨する罪悪、背徳、ただ1人のためだけに誂えられる甘美な地獄。どこまでも激しいエゴイズムに、悔しいけれど、周囲の人間は誘われてしまうのかもしれない。いろんな解釈があると思いますが、1人の人間の濃くて儚い人生を見れたことにとても満足しています。
「飼育係・理火」の原点、ヒロの兄・テツの物語、開幕。
テツとヒロのお母さんは、2人の目の前でレイプされ、自殺。
2人の心にはトラウマが植えつけられ、ヒロは「タスケテ」という言葉を聞くと咳が止まらなくなって自分がわからなくなってしまう。
テツは心が歪んで、小さな弟のヒロを愛する。間違ったやり方で。
近親相姦というより、明らかに「近親による性的虐待」。
何もわからず濃厚キスを受けていたヒロ。
布団の中で「いろんなところ」をくすぐられるヒロ。
寝たふりをして、覚えてない、何もなかった、としようとするヒロ。
自分が何をされているのか薄々気付き、酷い咳の発作を起こすヒロ。
一方犯す方のテツの心象風景は、100パーセントの純度でヒロを愛してる…
だから罪深いし、だから酷いし、だから怖い。
テツは父親に送り込まれた学校で、性的な駆け引きを利用してトップヒエラルキーである「サロン」の会長になっていた。
そんな時、学内ですれちがったリカにお互い恋し合う。そして地獄へ道連れ。
この「テツとリカ」は、暴力とレイプ、支配と服従、精神の崩壊に満ちています。
リカとの関係でサロンとの軋轢が生まれ、テツは会長の座を追われてリンチとレイプの罰を受ける…解放ののち自ら首を吊るテツ。
そして残ったリカとヒロの物語が、「飼育係・理火」の上下巻に綴られています。
怖くて、エグくて、不幸で。
絶望しかないラスト。
何の救いもない。
この世界観、覚悟して読んでください。
みみみ。
迷宮のリコリスさん
ふふ、また一緒に祭りですね(*´艸`*)
耽美主義ももちろん手元に引っ張り出してきましたよ〜!
やっぱこういう暗いのが好きなんだなぁと実感しております。
私もしばらく本仁ワールドに浸かろうと思います。
迷宮のリコリス
みみみ。さん
みみみさんはこっちでしたか!
私は『グラン・ギニョール』から『耽美主義』を本棚からチョイスしました。
どちらにしろ本仁作品は麻薬のような中毒性がありますね。
私もしばらくはあれこれ読み返してしまいそうです。