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sensei yoake ni soba ni itai
初読みの作家さま。
表紙とタイトルにつられてお買い上げしましたが、今作品がデビュー作なんですね。そして台湾の作家さまなのかな?登場人物の名前とかが日本人のそれではありませんが、ほかには特に引っかかる点はなくすんなり読めました。
主人公は高校で美術を教える教師の一平。
明るく生徒や同僚の先生たちからも慕われている教師だ。が、彼にはうちに抱える秘密があってー。
という出だしで物語はスタート。手首にはリスカの跡があったり、「普通」でいることに腐心している様子がうかがえます。そんな一平の抱える「もの」は一体何なのか、を追う展開で物語は動いていきますが。
一平の教え子の中に非常に絵が上手な生徒がいる。晨倪という名の男の子だ。
晨倪に、描いた絵をコンクールに出さないか、と指導を始めることから二人の関係は始まっていきー。
ということで、「何か」を抱える一平を、晨倪がスパダリ感あふれる深い愛情で救済していくお話かな?と思いつつ読み始めましたが、晨倪にも実は抱えている「もの」があって。お互いに過去のトラウマから「自分」を許容できない。赦すことができない。そんな孤独な二人が出会い、そしてそこから紡いでいく過程がじんわりと心に染み入ってくる、そんなお話でした。
一歩間違えれば共依存の関係にもなりがちな危うい関係でつながっている二人ですが、彼らはお互いを糧として少しずつ成長していく。先生と生徒という関係でありながら、そこを一歩乗り越えて晨倪と一平という一人の男としての交流が始まる。そのやり取りが、切なくも温かいストーリーで描かれていてとても素敵なお話でした。
一平と晨倪の抱えている「もの」はかなりシリアスで、描き方によってはドシリアスにも振り切れる内容ではあるのですが、この二人のキャラがたっている、っていうんでしょうか。シリアスで切ない内容になりすぎず、けれどその「何か」を軽視した展開にもなっていないので共感しやすく話に入り込みやすい。最後はきちんと希望が見える終わり方になっていて、そこもすごく良かった。
一平と晨倪は教師と生徒という関係、だからなのか?
2人の間に身体の接触はありません。キスシーンすら描かれていません。おそらく一平が受けさんだと思いますが、そういった描写はないので「濡れ場がなければBLではない」と思う向きの方にはやや不向きな作品かもしれません。が、身体の接触がないからこそ、一平の教師としての矜持とか、晨倪の「年下だけど一平を守れる男になりたい」という男気がきちんと見えてくる気がしました。二人の中で筋が通っています。
内容はシリアスベースですが、絵柄があっさりとした綺麗な絵柄なのでそこも良かった。絵柄があっさりしているので、ドロドロな感じが薄まったような感じがします。
内容としては既視感ありありな展開ではあるのですが、言い方を変えると王道なストーリー。そして、良い意味でその「王道の良さ」が生きている、そんな作品だったように思います。次回作も楽しみな、そんな作家さまでした。