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kono te hidari
実質上の上巻です。下巻にあたる「このて 右」は、9月下旬あたりに発刊されるようです。
すっっごく続きを欲する状態で終わりました。
「このて 右」での回収を既に待ち焦がれています。上巻は謎多き設定と状況に困惑しっぱなしでした。
"消えろ"と念じたものを消す力を持った青年と、昔飼っていた猫の"ハナ"を名乗る少年との出会いから始まる物語。
この作品は2つの場面に分かれています。
前半は一人(かずと)視点。後半は歩和(あお)視点。
前半部。
かずとのアパートの前に、かずとが昔飼っていた猫の"ハナ"を名乗る少年が座っていました。身なりはボロボロでワケありそうな彼を保護します。他人との関係を極力避けているかずとは、少年に早く出ていくように促すけれど彼は出て行こうとしません。
本当に"ハナ"なのか?ハナを想起させる細かな情報や、自分のことを色々と知っている少年に対して疑問に思う一方で、次第に情愛の気持ちを傾けていくかずと……。
そんな中、猛犬に襲われそうになった少年を守ろうと、かずとは猛犬を消します。罪悪感に苛まれている彼に、少年は「大丈夫。自分もかずとに消されて、今も生きているから…」と。そして自分の名前は歩和だと名乗ります。
後半部。
同じバイト先の大学の先輩とその友人にレイプされ倒れていたところを、かずとに保護された歩和。かずとの優しさに惚れ込み、好きだとアピールし続ける歩和……かずとと過ごす日々や交わすメールに励ましをもらいながら、度重なる同僚たちのレイプ行為に耐えています。
歩和に冷ややかな態度をとっていたかずとは、歩和の性被害のことを知り親身になっていく内に、歩和に次第に惹かれていきます。2人は恋人同士になり、婚約…明るい未来が待っているはずでした。幸せの中、歩和を狙っていたレイプ犯たちに襲われてしまう。そして、その現場を見たかずとに、レイプ犯たちは消されるのです。
かずとはレイプ犯たちの殺人容疑がかけられ、2人はあることを決意しますーーー。
ハッキリ言いますと…上巻を読んだだけでは、時系列を含め何がどうなっているのか全く分かりません!!!勘の良い方、推理力の長けている方は目星が付いてるのかも知れませんが、私には全然です。
今ある状況情報の点と点を線で繋ぐ作業が出来ませんでした。この物語の謎と伏線を理解するのに脳みそフル活動させていましたが、やはり読み解くことは出来ませんでした。
これはだいぶ深いストーリーになりそうだと、読んでいてゾクゾクしました。とても丁寧に描写された人物像、家族との関係、心理描写……情感や情景もすごく詳細で緻密で隙がありません。読み応えのあるページ数なのに、どっぷりとハマってしまいました。
読んでいて胸を抉られるシーンもあります。歩和のレイプシーンやレイプ犯たちからのゲスいメールの内容……目を覆いたくなるほど気持ち悪かったです。反吐が出ました。でもこれもこのストーリーの肝の部分なので、不快な気持ちを抱きながら読みました。
歩和がとても心根が強い。性被害に遭っているにも関わらず強くて前向きで男前。継父の職業が弁護士であることを配慮して耐え続ける健気な子です。それを支えるかずととの関係がすごく良い。かずとは最初、歩和のことをウザそうにしていたのに、徐々に歩和との距離を縮めていって、歩和に心を開いていきます。恋人同士になるまでの過程がじっくり描かれていて、胸がじんわりしました…。
婚約し歩和の継父にも認めてもらったシーン。2人で一緒に一軒家を購入して暮らそうと構想をしているシーン。温かいキス、愛に溢れた初めてのセックスシーン…幸せに満ち満ちていて最高でした。どうかこのままこの2人に何も障壁がありませんようにと祈りながら読んでいましたが、そうはいきませんでした。
2人の決意の行き先と、前半部のハナ少年との関わりが下巻で回収されることでしょう。もう続きが気になって仕方がありません!
前半でのかずとの年齢は27歳、後半は28歳だったことの謎(過去に戻った?)。
かずとの記憶は無くなっていたのに、歩和は覚えていたこと。
かずとが"消した"ものの行方。
……分からない部分がたくさんありました。
両親からの虐待を受けて母親のお腹に宿っていた弟を"消して"しまった罪悪感とトラウマを抱えているかずと。彼は不思議な力を持ったが故に他人との距離をとって生きてきました。そして、母親からのネグレクトのせいで他人を信頼することができずにいた歩和。お互いにとって安らげることができて、信頼できるパートナーにようやく出会えたんです。
幸せなエンディングが絶対に見たい!
"残酷すぎる掌でたったひとつの光に触れた。"
これが意味するものは何なのか。
どうか、この2人にとって掌の力が素晴らしい結末への導きになりますように。と、大いに期待して神評価にしました。
作家買い。
朝丘先生の新刊は、あらすじからもわかるようにファンタジーもの。
そして、とっても切ないお話でした。
タイトルは、「このて 左」ですが、来月(2022年9月)に続編の「このて 右」が発売になります。今巻読み切りの作品ではないので、完結してから読みたい派の腐姐さまは今しばらくお待ちください。
ということでレビューを。
普段ネタバレ上等でレビューを書いていますが、今作品はあまりネタバレしてしまうと面白さ半減だと思いますのでなるべくネタバレなしで書こうと思います。
人と慣れあうことが苦手な一人(かずと、と読む)が仕事から帰ってくると、玄関のドアのところに見知らぬ一人の青年がいた。放っておけずにその青年に声をかけた一人だったが、その男の子は自分を、一人がかつて飼っていた愛猫のハナだと名乗る。
そんな話を当然のように信じられない一人だったが、ハナのようなもの(一人は彼を「ハナ」だとは認めたくない)は、一人と、一人の祖父母しか知らないようなことを知っていた。他人と慣れあわずにひっそりと生きていこうと思っていた一人に、ハナの存在は少しずつ馴染んでいって―。
一人は祖父母のもとに家出して、それ以来ずっと両親とは疎遠。
人と慣れあわないが、それはなぜなのか。
「ハナのようなもの」は、本当にハナなのかー。
そういったものが少しずつ見えてくる。
まるで、パズルのピースが少しずつハマり、全景が見えてくる。そんな感じ。
で、ですね。
今作品はハナは本当に一人が飼っていた猫のハナなのか?
という部分を軸に進むストーリー。
ではないんです。
朝丘作品は厚さのある作品って結構多いですが、今作品も同じ。めちゃめちゃ分厚いです。自立します。そして、その厚さに見合った内容がきちんと盛り込まれている。
「ファンタジー」の部分がこんなに多い作品てあまりない気がします。
二転三転するストーリーに引き込まれる。序盤、読み始めたときには思いもしなかった終盤に、いったいどうなってしまうのかと気になってページが捲る手が止められませんでした。最後良いところで終わってるんだ、これが…!続きが気になる―!
登場人物たちの感情が、緻密に、繊細な文章で紡がれていて、かなりシリアスですし切ない物語なのですが、それ故にどんどん感情移入してしまいました。
あ、あと。
あまりネタバレしたくありませんが、地雷の方がいらっしゃったらよろしくないので、これだけ。
性暴力の描写があります。
しかもかなり痛い描写です。
何でもござれのワタクシですが、可哀想で斜め読みしました。
苦手な方は注意されてください。
次巻の発売を、今から正座してお待ちしております。
朝丘戻先生のデビュー20周年記念だし、2ヶ月連続の上下巻刊行と知り買わないわけがありません。
想像通りに面白いのは流石だと思いましたが、予想外にしんどい内容でした。
上巻にあたる「このて 左」は、かずと視点の「一人とハナ」と、歩和(あお)視点の「一人と歩和」の2部構成になっています。
「一人とハナ」ではかずとの前に現れた死んだ飼い猫「ハナ」だと名乗る少年との交流が書かれていました。
他人が知るべくもないかずと自身の事など、どうして彼が知っているのか?。言葉の端々から受け取れるかずとへの好意や、かずとを肯定してくれる数々の言葉。人付き合いを避けて来たかずとも心を開いて、やがてハナが掛け替えのない存在になって行きます。
そして最後にハナの正体が明かされる所で終わっていました。
そして読むのがしんどかった「一人と歩和」ですが、歩和がかずとに助けられたところから始まっています。
ここでハタと気になったのが、「一人とハナ」とでは時系列はどうなってるのか?でした。
こちらでは既にかずとの両親が離婚を決めていました。そして前章では離婚したいと母親がかずとに相談してるんです。
こちらでは起こらなかった出来事が前章ではハナによって起こされていました。
幼少期に親の愛を知らずに育った2人が出会って、お互いに足りない物を補って愛を育てて行くシーンが感動なんですよ。かずとのおかげで歩和は継父との蟠りが解けたし、かずとは人を愛する事を知りました。
2人の未来は希望に満ちた明るいものになりそうと思った所で事件が起きて、2人は追い詰められて行きます。
2人が選んだ道が「一人とハナ」に繋がってるんだと思いました。
既に「このて 右」のあらすじが出ているので、下巻は「一人とハナ」の続きから始まるのかなと思うのですが、では「一人と歩和」で起きた事件の関係者はどうなっているのか?とか、歩和の継父との関係はとか、歩和にあの災いが再び降り掛かるのかとか謎はつきません。
下巻のあらすじにも凄く気になる部分があるので、楽しみに発売を待ちたいと思います。
朝丘先生のお話を全て読んでいる訳では無いですが、高頻度で孤独、切なさ、寂しさ、もどかしさ…みたいなものと向き合わないといけなくなるように思います。とっても苦しいです。でも、多分そこを味わいたくて読んでしまうのだろうな、とも。
須賀一人が仕事帰りに家の前にいたのは見知らぬ少年で、昔祖父母と飼っていた黒猫のハナだと名乗る。追い返すものの家を出ていかず、不思議な共同生活を始める。その中で一人は自分と両親の関係、自分が過去に消してしまった弟への贖罪として、自身へ課している人生について、ハナに語るようになり、客観的に自分の過去や未来と向き合うようになる。
ハナに対する恋心を自覚した矢先、ハナを守るために近所の家で飼われている犬を消してしまう。ハナを守るためとはいえ、生きている犬を「消して」しまう自分の力を呪い、死のうとする一人にハナは告げる。犬は生きているかもしれない。自分も一人に消されたのに生きているから、と。そしてハナは自分の名前を花井歩和と名乗った。そして一人は歩和との過去を思い出していく。
その後に続く歩和の過去はとても壮絶でした。一人も自分で重い十字架を背負い、幸せになってはいけないと自分に呪いをかけながら生きてきた人でしたが、歩和は実母から愛されることなく、継父からの愛情も感じられず、バイト先の先輩とその仲間から集団でレイプされて辛い日々を送っていた。それでも一人と出会い、表面では歩和を拒絶しながらも突き放さない一人に惚れた歩和はバイトを辞め、継父とも向き合うようになる。
展開としては2人が希望を持ち、幸せに暮らすために前進していくのに、歩和が一人に消してもらったという発言が頭にあるので、ずっとハラハラしながら読む羽目になりました。そしてこの巻の最後にその事件は起きてしまい、最悪の結末を迎えてしまう…のですが、そこで終わってしまうんですね~。
きっとこの続巻でそんな辛い過去を踏まえ、やり直し編になるのだろうと期待をしていますが…一筋縄ではいかないんだろうな…とまだハラハラを引きずってしまいます。もし読むことを検討されている方がいるのなら、左右(巻)揃えて読むことをオススメします。ここで次巻を待たされるのはとんでもない生き地獄だと思うので。
BLアワードの得点今日までだということにさっき気づきました!!!
なので一言だけ!
かずとと歩和(あお)、ふたりの人生がぎゅっと800ページに詰まった作品です。もっとたくさんの人に出逢って欲しい!!!
大好きだーーーー!!!!!
朝丘先生のこれまでの作品と、新しさが詰まった作品です。10年間先生の作品を読んでいて、なんだろう、新境地を感じた。
少しでも気になったら、ダリアさんのホームページで試し読みできるよ︎左の半分くらい読めるのでとても良き!
この作品は、本当にネタバレなしで読んで欲しいので、一つだけ私が好きな場面を。
左で、ハナ少年がお風呂を沸かす時、給湯器パネルの自動音声に向かって「お願いします!」って言う場面があるんです。
小さい頃、誰もがナビだったりぬいぐるみだったりテレビに向かって会話したことあるじゃないですか…?
そんな些細な日常を描く場面がたまらなく好きで。
読んでいる中で心がきゅっとなる場面ももちろんあるんですが、こういうきゅんとした場面に
「あぁ、彼らってこの世界で生きてるんだな…」ってオタクは思うわけです。なんて幸せなんだろう。
そんな何気ない日常を描く朝丘先生が大好きなんだなと思いました。
それと、言葉にも注目して欲しい。
例えば、登場人物の「かずと」は一人って書いてかずとと読むのだけど、
はな少年や歩和(あお)は「かずと」と、でも母親は「一人」と呼ぶ。
「歩和」は「あお」「アオちゃん」「歩和」みっつの呼び方がある。
それぞれの距離感や関係性を示しているので、是非読んで欲しいなと。
このストーリ展開、そしてボリューム、素晴らしい作品だと思います。
攻めは、サラリーマンだけど秘密を持った一人。受けはちょっと不思議な、飼っていた猫の「ハナ」だと言う歩和(あお、と読む)
彼らの不思議な力と、それ故に起こる出来事、繰り返すパラレルワールド。どう表現したら良いのかはわからないくらい上手く作られています。
ネタバレというか、中身を語れば語るほど読んだときの楽しみがなくなると思うので難しい。
このて左、は上巻に当たるわけですか、主に一人と歩和が惹かれ合うところが詳細に描かれています。
一人の正直さ、それの原点、この辺りが物語の主軸になっているのだろうなと思いますが、如何せん…
萌が無い。(個人の感想です)
BL小説として、どうなんだろうなって思うところがありますが、この辺は右(下巻にあたる)を読んでみないとなんとも言えないかな。
色々な伏線はあるように見えるので、下巻を読んでみたいと思います。