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sumi to yuki
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
「墨と雪2」で、上巻と同時発売された下巻になります。
雑誌掲載の続編が160ページ程度。
他、神宮寺が主役になる短編が一編に、二人の過去のエピソードを語った短編が一編、更にその後の二人を語った短編とSSが二編書き下ろされての、とってもお得で盛り沢山の内容になってます。
個人的に、遠藤が好きで好きで仕方ないんですよね。
そして、宮津との漫才としか思えないアホなやりとりも大好き。
書き下ろしでそれが読めて、めちゃくちゃ喜んでます。
本編がかなり重いだけに、はぁ、楽しい!と。
ちなみにですね、作者さんが、当初はシリーズの予定も無く書き始めた為に人間関係が一部ねじれてる(矛盾がある)とおっしゃられてまして。
ただ、このシリーズが大好きで全部繰り返し読んでるんですけど、その矛盾点がどこか全然分からないですよ。
どこもおかしくないように見える・・・。
こう言う時、アホは幸せですな。
矛盾点に気づいてる聡明な姐さん方は、そこにそっと蓋をしといていただきたいとの事です。
で、内容です。
黒澤の献身により、心身の傷を癒しつつある篠口。
長期の入院を経て、元の生活に戻るべく努力を重ねているんですね。
そんな中、いよいよ職場への復帰が決まりますがー・・と言うものです。
えーと、前巻までが救出から黒澤との関わりを経て、自分を取り戻すまで。
今巻が日常を取り戻しと社会への復帰と並行して、長らく身体だけの関係であった二人が、本当の恋人になるまでー。
これが語れます。
で、こちら、少しは明るい内容になってるかと思いきや、実は前巻同様、非常にしんどくて重いものになります。
こう、犯罪被害者としての篠口の心情をしっかり掘り下げ、丁寧に語られるワケですが、今度は前作から一歩前進。
社会復帰する。
しかし、それ故の苦悩だったり葛藤だったりが語られて。
篠口ですけど、その優しげな見た目に反して、かなりのプライドの高さだし負けず嫌いでもありますよね。
刑事である彼にとって、職場への復帰はまさにトラウマを直接刺激するものなんですよ。
犯罪や暴力事件に向き合いと言った具合に。
その上、同僚は皆、自分の身に起きた出来事を知っているー。
こう、少し調子を取り戻したと思いきや、フラッシュバックに苦しむ・・・。
作者さんが文章力に優れているだけに、パニック発作に苦しんだりする主人公の描写が非常にリアルです。
読んでて、こちらまで苦しくなってくる。
ただこれ、しつこいですが、寄り添い続ける黒澤の姿がとにかく素敵で。
こう、シリーズの他作品を読まれてる方はご存知でしょうが、彼はかなり得体が知れないと言うか、怖い男って印象だったんですよね。
でも、懐に入れた相手に対しては、ここまで献身的だし甘い男だったんだなぁと。
そして、ちゃんと弱い部分も持っていた。
篠口ですが、スーパーマンのような黒澤のサポートにより、劇的に立ち直って過去を克服する!とは行かないんですよ。
黒澤はスーパーマンじゃなく人間だし、篠口は篠口で過去を払拭とは行かない。
でも、確かに希望は見えて、前に進む事が出来る。
自分を全て受け止めてくれる相手がいるならー。
前巻のレビューでも書いたんですけど、篠口が黒澤に問う「もし自分に延命措置が必要になったらー」の答えがですね、本当に限りなく優しいんですよ。
私はこのシーンを読んだ時、ブワッと涙が出ちゃいましたよ。
とてもあたたかい、ラストでも。
薄墨色の寒く辛い冬を経て、ようやく季節は春なんだね。
ちなみにその後の二人が語られる書き下ろしで、甘さが補給できます。
保護犬を引き取って飼っている二人になりますが、もうすっごく甘い。
そして、アダルト。
二人の艶っぽいやりとりに悶絶ですよ。
そうそう、篠口ってこういうとんでもないタマだったわ。黒澤の言うとおり。
犯罪や犯罪被害者をネタにしていいものかってお声はあったりするかも知れないんですけど。
ただ、BLとしてウケる為じゃなく、篠口と言う一人の人間の人生を真摯に追った結果、こういう題材になったんだろうと思うのです。
本当に、とても素晴らしい作品だと思う。
たっぷりとボリュームのある上下巻ですが、それでも終わってしまうのが惜しくて、一ページずつ大切に読み進めました。6年という時の流れは待つ身には永遠のようでも、こうして続巻を手にすることさえできれば、一瞬でまた物語の世界に戻ってゆけるのです。世界は大きく変わり、おそらく誰にとっても多難なこの時代に、たゆまず書き続けてくださったかわいさんにまず感謝です!!
篠口が心身に負った深い傷。目に見える部分は時とともに癒えても、心の奥底はまだ鮮血を流し続けている。とりわけ、自ら「生きるため犯人に体を差し出した」記憶が、彼を苛む。周囲の誰も、もちろん黒澤も、あの極限状況にあった彼の選択を責める者はいないのだけれど、ただ彼自身が自分を許せないのだ。
事件前の彼は、その上品で清潔な外見とは裏腹に、ベッドの上ではかなり奔放な一面もあったけれど、それはあくまで自分の意思で選んだ相手と楽しむことが大前提で、理不尽な暴力で踏みにじられて平気なはずはない。いくら現職の警察官で犯罪被害者の心理に造詣が深くても、わが身に起こったこととなると理屈では処理しきれない。
荒れて自棄に走ったり、心の不調に再び身体も引きずられたり、不安定な篠口を、黒澤は実に辛抱強く見守り、寄り添う。超多忙なはずなのに時間も労力も惜しみなく差し出して、傷も痛みも丸ごと、篠口の人生を引き受けるという強烈な意思表示をしてみせる。これまで「公安の切れ者」のイメージが強すぎて、「目的のためには手段を選ばない」「人を駒としか思ってない」酷薄な人物像が出来上がっていた彼ですが、元妻との関係性も含め、ひとたび思い定めた相手には徹底的に尽くし倒したいタイプだったんですね。いい意味で裏切られました。
「苦しいなら助けてやるって言っただろう」繰り返し彼が篠口にささやいた呪文。それは掛け値なしの彼の本音だったのに、そうと気づくまでずいぶんかかってしまった。そういえば彼のファーストネーム「一誠(かずなり)」も、まさに名は体を表してるよね。出し惜しみせずにせいぜい呼んであげてほしいわ、篠口さん。(黒澤が陰でこっそり篠口を「雪巳さん」って呼んでるのも萌える。これまたいつか直接本人に向かってそう呼んでもらいたい)
まあ黒澤が周囲にいい印象を持たれてないのはこれまでの自業自得でもあるんでしょうけど。個人的には「Zwei」の山下クンが黒澤と一緒にいた篠口を見かけて「弱みをつかまれたり脅されたりしてないですか?」って慌てて安否確認に来るのがおかしくてかわいかった。黒澤が篠口に歌う激甘な子守唄を、山下にも聞かせてやりたい。さぞ仰天することでしょう。
黒澤の献身もあり、日にち薬で篠口は一時は到底無理かと思われた職場復帰を果たす。はかなく脆い部分もありながら、内側に強靭なオスのプライドも秘めている、一筋縄ではゆかない、そこが篠口の一番の魅力でもあると思います。そしてここまで、篠口とともに長くつらい道のりを歩んできた読者(とかわい先生?)に、円陣さんから最高のご褒美がっ!! 篠口のアサルトスーツ姿。この人の繊細な美貌が機能重視で武骨な衣装に映える映える!! 隣に描かれたのがまたオス感全開の神宮寺なのでさらに効果倍増。本作のイラストは表紙から裏扉までどこをとっても絶品揃いで、絵師さんの気合のほどがうかがえるのですが、特にこの一枚はヤバい。私が警視総監なら絶対新卒採用のポスターにする。
墨と雪計3冊だけで結構な分量あるのでアレなんですが、まだお読みでない方には、最低でも「甘い水」、できれば「Zwei」「天使のささやき」など寮シリーズを読破の上で本作にチャレンジしてもらいたいです。篠口の生きる警察という特殊な世界や、彼を取り巻くさまざまな人々の想いが、きっと生々しく立ちあらわれてきてより強く物語の沼に引きずり込まれることでしょう。
上下巻一気読みでした。読み出したら止まらなかったです。私がBL小説を読み始めた頃に好きだった世界がここにある。スピンオフ作も含め事件の事や警察組織についてまでこんなに細かく書いてくれる作家さんは、最近ではなかなかいらっしゃらないから貴重な存在。かわいさん、仕事をセーブされてたみたいですが、これからもついていきます。
ストーリーはズバリ、トラウマからの再生。受けの篠口は前作で変態に監禁され心身共に痛めつけられ本当に恐ろしい目に遭いました。いくらエリート刑事とはいえなかなか立ち直れなくて当然です。それに心優しく、焦らせずに傷が癒えるまで誠実に寄り添う攻めの黒澤。篠口がフラッシュバックを起こして弱って電話してきた時、「そこを動くな。今すぐ行くから待ってろ。」ってシビれる。スパダリのお手本です。共にエリートでカッコいい。下巻では篠口も少しだけ元気になってきて無事にお清めエッチもできました。良かった!
円陣さんのイラストの篠口がまた天使のように美しくてうっとりです。髪や瞳の色素が薄くて色白で背が高くて痩せ型で名前が雪巳。素敵な受けの条件を全て満たしてます。最後の方に短編がいくつかあって犬の前では黒澤が「雪巳さん」って呼んでたのめちゃ萌えた。犬も美しい男達のカップルの家族になれて幸せそうで良かった。
感無量で読み終えました。本編自体も希望を感じる締めくくりでしたし、同時収録されている複数のSSについても、暗く重い事態からの夜明け、またその後の盤石な二人の絆をうかがわせる甘辛両方の味わいを備えたものに感じられました。深い満足感と同時に喪失感も味わっております…
上巻の方で少しずつ篠口に対する黒澤のスタンスが暴露されているので、篠口が見せる変化に注目して読み進めていったのですが、下巻は黒澤の回ではないかと思ってしまったのはわたしだけでしょうか。黒澤びいきの方には驚愕の事実とともに、フッ…やっぱりね…。あたしの見込んだ男だけあるわ‼︎(心の中で高笑い)みたいなリアクションになるとかならないとか…。
時々攻め厨になりがちな自分としては、やっぱり大人のイイ男には哀愁を背負って欲しいな〜と、そう望んでしまうのは、もしかしたら作者様の攻めキャラたちにそう教育されてしまったからかもしれない笑。黒澤も苦み走った色気と哀愁漂うよき男でございました。
終盤、ワンコちゃんが出てきます。犬好きさんにとっては胸に迫るような、切なくもあたたかいエピソードがたまりません。篠口の愛情深すぎる一面を描いたシーンともいえますが、彼について不思議に思っていた部分にヒントをもらえた感じです。
篠口は過去に浅香と、浅香の面影を重ねた遠藤に思いを寄せていましたが、この二人はどちらかというとBL的に受け身の雰囲気があって、篠口が黒澤と相対した時とは逆の包容力というか、母性のような慈しみ感溢れる思いを彼らに抱いているような印象でした。おそらく篠口はどちらもイケるんだろうなと思いますが、彼の中の男性性と女性性のランダムな表出が危うさとなってとてつもない魅力なんだろうなと…。
なにはともあれ、命を賭した職に身を投じる男たちの群像劇は一件落着。血を分けた家族よりも濃い絆を結んでいく男気に溢れたキャラクターたちに悶えたくなりましたら、まずは『天使のささやき』からお手に取ってみてください〜!
下巻。雑誌掲載分160Pほど+小編3つ+あとがき+小編1という内容。ぐぐぐぐっとしっとり甘めになった超ご褒美本と思う1冊です。何回も読み返したくなる、するめ本でもあります。甘いのは正義。アサルトスーツも正義。おかえりなさい篠口。神×100。
篠口が病院に戻る日の朝から下巻がスタート。一時退院して表情が変わったので、担当医とも相談して黒澤が一緒にいるんなら退院オッケーということになり・・と続きます。ぬるぬるっと黒澤に絡め取られていきます、篠口。
攻め受け以外の登場人物は
神宮寺×遠藤、宮津、谷崎(おっさん、泣かせるんだわ)、平(狙撃担当、あー気になる)、史子(黒澤の元嫁)、山下(Zweiに登場)、レイディ(二人の飼い犬になるコッカースパニエル)。レイディいい子。
++ 好きだったところ
黒澤の「もう待たない」宣言を受け入れ、「嫌いではありませんよ」等と小生意気なことをいう篠口が大好き。色事シーンになったら薄く微笑みながら、黒澤を追い上げる指づかいをするらしい篠口が大好き。レイディに「僕たちと一緒に暮らしてくれない?」等と甘く囁く篠口が大好き。わかりやすいとは思えないキャラなんだけど、上下巻でるまでの間読み返しながら待っていたからか、先生の筆力なのか。息遣いまで思い描くことができるような気がします。
なんといっても、二人の穏やかな、たまに小さく言い合いしたりする愛情が大好き。黒澤が「篠口の好みからは外れている」と自覚しているところもまた大好き。二人が爺さんになっても公園を仲良く散歩している図しか思い描けないです。篠口が大切にしていたカップを割った等の理由で篠口に拗ねられて、あわあわ黒澤が新しいカップ(アンティークとかでは)を探すとかしないかなあ・・・と妄想してしまう大好きな二人でした。いつかまたこの二人に出会えることを夢見て。
以下は小編の内容をコメント。
暁
篠口から電話を受けて、袴田の別荘を見張っていた前夜~突入~そのあと見舞いに行くあたりのSITの皆さんの様子。主に神宮寺、遠藤。神宮寺、不器用なんだけど、あんたもいい男よね、と再実感。
雨の降る夜は・・・
黒澤33歳、篠口が平河寮を出て購入したマンションに招き入れることになった6月のある日のお話。黒澤も凹む日がある。
レイディ
事件から1年あとぐらい。黒澤のマンションでレイディと二人が一緒に暮らす様子のお話。レイディは篠口にそっと寄り添って本当に嬉しい限りです。レイディを甘やかしている篠口を見てみたいーっ。「もっと悪いこともできる」という篠口の指づかいは遠慮して見ないようにするから、部屋の観葉植物になりたいです。
ウィークエンド
秋口のある週末。手作りローストビーフと、ウィークエンドシトロンというパウンドケーキを作って、黒澤の誕生日を祝う二人とレイディのお話。美味しいものや、気に入ったもの、気持ちのいいことなどを大切にする篠口がほんとに愛おしい。
ああレビュー書き終わっちゃった。いつまでもこの二人の世界に浸ってたいなあと思う上下巻でした。かわい先生、円陣先生、出版社様、本当に出してくださって有難うございました。
シリーズ作品ですが今作が初読みです。
あらすじと円陣先生の美麗イラストに惹かれ墨と雪から読み始め、墨と雪2/下巻までノンストップでした。
篠口の人となりや背景、黒澤、遠藤、神宮寺との関係性など丁寧に描かれていたので、わかりやすくすぐにストーリーに入り込めました。
公安から離れた篠口へ再び接触してきた黒澤の本当の目的は篠口への警告だった、っていうのがカッコよすぎます。
それを決して篠口にも誰にも悟らせず、客観的情報と分析によってあらゆる可能性を考え、かつそれに対処する方法もすべて用意してあるのであろう黒澤がもう、本当に木の股から生まれて来たとした思えないくらいに人間離れなスパダリです。
得体が知れず皆に畏れられる立場の黒澤ですが、仕事に関わる人間に対して高圧的な態度を取ったことは一度もなく、口調もソフトなのが良い。
篠口にだけは特別で、彼にはある程度自分をさらけ出してるところも魅力的です。
黒澤の予想が当たり、篠口は拉致されます。
精神的にも肉体的にも酷い酷い傷を負う篠口。
命があったことがせめてもの救いで、それは黒澤やSITメンバー達の尽力によるものでした。
黒澤の立場で出来ることを最大限に尽して篠口を助け、救助された事を見届けるためだけに現場に行く。
例え必ず篠口を助ける信念があったとしても、無事を確認するまでは気が気じゃなかっただろう、というのが、その後の篠口に対する献身でわかります。
苦しむ篠口に、ずっと寄り添い、ひたすら安心を与え続ける黒澤。
過剰に労るのではなく、何気ない会話や普段の生活を二人で楽しめるよう誘導したり、精神的に危うい篠口を注意深く観察しつつもネガティブに行動を制限したりすることもなく、辛いときは助けるから連絡しろと念押す。
篠口が職場に復帰できるまでの二人の歩みに、様々な感情を抱きながら読みました。
篠口に黒澤がいてくれてよかったと心底思いながら。
篠口が無事職場に復帰し、仲間たちとのやりとりや敬遠していた神宮寺との会話にグッときました。
ここまで来たらもうSAT含めシリーズ作品すべて読まずにいられません…
まさしく、墨と雪2の上下巻表紙イラストそのもののような篠口と黒澤の物語でした。
上巻以上に穏やかな展開なのに萌えて萌えて仕方ない下巻でした。
成熟した大人同士のラブストーリーとして、そして壮絶な経験をした人が再起するドラマとして、読み応えのある重厚な作品です!
事件の痛手から徐々に回復していこうとする篠口を全方位安全圏で包み、守り慈しむ大人の男道・師範の黒澤さまの愛に、上巻から引き続き痺れました。
二人の間で交わされる、無駄のない洗練されたコミュニケーション。スマートで人の機微に敏い二人が通じ合っちゃってるから、”好き”だの”愛してる”なんて甘い言葉が交わされないのに、二人の間に流れる雰囲気がめちゃくちゃ甘い!!このさり気ない大人の甘々。ずぇーったい外ではバカにならない二人が、外では見せない顔を晒す親密さに官能みを感じて悶えてしまうのでした。
印象的だったのは、篠口がデパ地下で具合悪くなっちゃった件。黒澤さまが迎えにいくのですが、助けを求めるのが不本意だったかも…な篠口のプライドを傷つけないようなフォローの仕方にギュン…。そして、実は助けを求められたことがとても嬉しかったのではないか、、とその後の黒澤さまの様子から伺えるのです(くぅっ…)。
今回、黒澤さまの元妻のことが語られるのですが…わりと衝撃的、いろんな意味で根深い印象でしたが、今は篠口一筋なのでOKです(?)。そして想像の上の上のレベルで器のでかい御仁だと再認識しました。さらに、男同士で一緒に生きていくということへの彼ららしい“解”のような示唆がとてもいいです。
また、篠口の職場復帰についての描写は胸アツ。“マッチョな職場だけど弱さを抱えた人間もいる”っていう同僚・平の言葉が沁みます。戸惑いや不安を抱えながらも、自分のおかれた現実を受け止め、仕事だけじゃなく周囲に対しても最善を尽くそうとする篠口の強さ、男っぷりに胸打たれました。アサルトスーツの篠口!!円陣先生のイラストが、これでもか!ってくらい世界観にマッチしてて最高すぎるんですけど!
数編の書き下ろしが収録されていて、神宮寺視点の“暁”にはしんどさが蘇るのですが、引き取った保護犬との日々が描かれる“レイディ”では糖分MAX。日常を取り戻しつつある篠口がレイディには常時デレなのに、人間には…。とはいえ、復活した減らず口を愛おしむ黒澤さま、まだまだ互いに知らないこといっぱいありそう…と終盤なのにワクワクさせられました。さらに、あとがきに続く”蠍座の男“エピ!と、本を閉じてもニヤケがとまりません。永遠に読める気がします…。
かわい先生の努力を感じる作品だった。
医療や犯罪の資料集めは、大変な作業だったと思う。
それだけの労力を入れこむだけある、思い入れが深い作品なのかもしれない。
黒澤は、辛抱強く、愛をこめて、篠口の負担にならない距離で様子を観て、ずっと看護を続ける・・まねできない。
前作品でアクが強い、オレ様風な振舞が多いちょっと嫌な奴だった黒沢。
公安で培った知識から篠口をプロファイルした上で、篠口を一人の人としてほれ込み、ずっと愛していたみたい。
でも医師でもある袴田は、黒澤以上に篠口を観察していて、篠口自身が自覚しない隙、弱点を突いていた。
篠口の看護をしながら様子を観察してそれに気づいた黒澤は、残虐な袴田のサイコパスとしての能力を憎む。
専門家から観たらどうかわからないけれど、何も予備知識ない人が読んだなら、
サイコパスへの防犯知識を得ることに貢献するんじゃないかと思った。
心を支配して隷属させるサイコパスは、怖い。
上巻では篠口が年末に病院から外泊許可を貰っていましたが、下巻は黒澤の自宅マンションから病院に戻るお話から始まっていました。
そして下巻ではいよいよ篠口が退院して職場復帰していました。この職場復帰当日のシーンでは泣かされてしまいました。とくに男泣きする谷崎さんに感動してしまいました。
それにしても良い職場に配属されて良かったです。
これも黒澤のあの時の采配があったからなんですよね。そして帰宅途中にフラッシュバックを起こした篠口を迎えに来た黒澤が格好良くて悶えまくりました。
犯人の余罪が明らかになったり、篠口が仕事で以前の様に活躍しだしたりと段々と元の生活を取り戻す様子にホッとしました。
黒澤との同居生活の様子も勿論良かったです。保護犬を迎える時の2人が凄く素敵でした。
下巻では気になっていた黒澤の離婚した妻の事が書いてあったんですが、ここだけなんか出来過ぎのような感じがしてしまいました。
短編の「暁」は篠口救出時が神宮寺視点で書かれており、あの時を裏側から読む事が出来て理解が深まった感じです。
そして「雨の降る夜は…」は篠口が独身寮を出てからちょっとした辺りに、黒澤が篠口のマンションにやって来るお話でした。この頃には黒澤の気持ちはかなり決まっていたと思いました。
次に「レイディ」ですが、事件から1年弱のお話でした。保護犬のレイディを可愛がる篠口の様子が微笑ましかったです。そしてその様子を見守る黒澤の篠口に対する深い愛情に感動します。
このお話では以前の様な性に奔放な篠口がちょっと戻って来ている様な気がしました。
あとがき後の「ウィークエンド」ですが、黒澤の誕生日に料理とケーキを用意する篠口でした。同居しているのが当たり前になっていて、2人がとても幸せそうでした。
まだ「甘い水」とか読んでないので、読んでみようかなと思いました。
墨と雪2上で入院期間中でありながら正月休みを利用して外泊をした篠口。ただし独身の一人暮らしということでお目付け役が必要で、名乗りを上げた黒澤と共に年末年始を互いの家やホテルですごした2人。
墨と雪2下ではそんな正月外泊が終わり、再び入院生活に戻るところから退院を経て黒澤の家で同居(同棲)生活を送るようになるまでのお話。
いくら仕事柄、性犯罪被害者の心理を学んでいるとはいえ、知識で得たことと自分が体験することは全くの別物で、自分より20歳近く年上の同性から拉致監禁、果ては暴行まで受けていた自分に負い目がある篠口。そんな自分が人にどう見られるかが怖くて、供述調書で事件を向き合うことにも冷静でいられなくて、仕事復帰することに後ろ向きだった篠口が少しずつ前を向けるようになったのはもちろん黒澤のおかげで。
仕事復帰を決め、黒澤が傍にいるならと退院の許可も下り、事件後初めて職場に赴く篠口。温かく迎えてくれた職場の上司、先輩後輩に私まで泣けてしまった。どれだけの努力をして職場復帰をしたか、みんなちゃんと理解してくれていて、事件が起きてからもちゃんと仕事をセーブしてくれる。
甘い水で軋轢のあった神宮寺ともきちんと向き合えるようになってこの巻は感動の連続でした。とは言え、やはり心に負った傷は簡単に癒えるものではなく、たまに起こすフラッシュバックに黒澤が迅速に優しく対応してくれる。いやもう、激甘~!激甘なのに胸焼けしないのは篠口が甘えることに慣れていないし、甘えることに積極的では無いから。もうホントに「大人の甘やかし」で最高でした!
さらには黒澤の離婚した元奥さんの話も篠口が踏み込んで聞けて、やはりそこから2人の関係が一気に縮まった感が。他の人には話せない、過去や自分の裏側を他人と共有するという行為が(この2人に関しては特に)大きく、話の流れがもうホントに神ですね!
そしてたまたまなのか電子書籍の書店限定なのか、平河寮シリーズでは挿絵がないとばかり思い込んでいましたが、この墨と雪に関しては円陣闇丸先生の素晴らしすぎる挿絵が付いていて悲鳴をあげるほど、そしてしばらく見入るほど眼福でした。神宮寺のアサルトスーツ姿はもうひたすらご馳走様です!!と拝まずにはいられませんでした。
シリーズ通して他の本で主役を務めた人達がちょこちょこ出てくるのも彼らのその後が垣間見れるようで嬉しかったし、篠口救出の救助班サイドも読めて更にストーリーに厚みが出て読み応え抜群でした。