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tsukumo no hanashi
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
「つくものはなし」の4巻目にして完結編。
佳太が叔父の月見里から引き継いだ喫茶店。
そこに住んでいる付喪神たちと、喫茶店を守るべく奮闘する敬太だが、土地開発で立ち退きを迫られ―。
何をやらせてもへまばかりの敬太。
敬太に喫茶店を任せて海外に放浪している叔父のヤマナシ。
そして、個性豊かな付喪神たち。
彼らはヤマナシから引き継いだ喫茶店を守れるのか?
という部分を軸に、それぞれの付喪神たちの過去やしがらみ、謎多き男のヤマナシという男の人物像、そして敬太の成長が綴られていくストーリー。
神奈木さんらしい人ならざる者、をベースに描いていますが、ほのぼのな展開で、それを小鉄子さんが挿絵を担当されていることもあってより一層ハートフルな作品でしたが、もう読んでいて本当に心が温まるというのか。
それぞれのつくもちゃんたちには悲しい過去やトラウマがありますが、それを上手に昇華していく展開になっていて、涙あり、笑いあり、ほのぼのあり。今巻は黒楽茶碗の付喪神・大和のお話でしたが、彼を介して喫茶店の土地立ち退きに絡めていく展開はさすが。彼らを悩まし続けた騒動でしたが、ああ、そう来るか―!という大団円な結末を迎えます。
そして個人的お気に入りキャラのアメ。
彼も謎に包まれていたつくもさんでしたが、彼の過去がなんとも泣ける。そこを突っ込んで描こうと思えば描ける内容なのですが、そこをあえてさらりと描いたことでシリアス過ぎない展開になっていました。
で。
いつ来るかと待っていたBL展開ですが。
まさかの皆無!
え、あれ、終わっちゃうよ?
アメ×敬太の濡れ場は?
と思いつつ読破しましたが、潔いほどにBL展開はしませんでした。
まあでも良い。
濡れ場がなければBLではないと思われる方には正直不向きな作品です。濡れ場がなくても恋心があればいいじゃん、と思われる腐姐さま、そういう色っぽい空気も皆無です。正直、BL区分されているのが謎なくらい、BL要素はありません。
が、ヤマナシが作り、そして敬太が引き継いだ喫茶店を介して、家族とは、仲間とは、人を愛するということとは。そういった壮大なテーマを孕んだ作品で、文句なしの面白さでした。敬太の成長っぷりが素晴らしい。仲間を得て、一人の人間として大きく成長した敬太に敬意を払いたい。そしてヤマナシにも。
1巻を読み終えたとき、どんな人物かと思ったヤマナシですが、もうカッコいいのなんのって。彼の人としての器の大きさに惚れ惚れしました。
できれば神奈木さんに小説も書いてほしいな。アメの過去とか、アメと敬太のイチャコラとか、そういった部分も読んでみたい。そう思わせる、魅力あふれる作品でした。
今巻で終わりというのが残念ではありますが、読後心がほっこりと温まる、非常にハートフルな優しいお話でした。