黄色いダイアモンド

kiiroi diamond

黄色いダイアモンド
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神38
  • 萌×213
  • 萌8
  • 中立1
  • しゅみじゃない4

--

レビュー数
19
得点
267
評価数
64
平均
4.3 / 5
神率
59.4%
著者
木原音瀬 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
鳩屋タマ 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
発売日
電子発売日
価格
¥890(税抜)  
ISBN
9784799753408

あらすじ

幼い頃走るのも泳ぐのも速かった勇は邦彦の憧れだった。
だが成長するにつれ勉強についていけなくなり、さらに家庭の事情でまわりからは浮きはじめ、ついには悪い仲間とつるむようになる。
そんな勇を叱っては真っ当な道へ戻そうとしていた邦彦だったが、ある日突然勇から結婚すると言われる。
優しくて本当の勇をわかってくれる相手と二人の間に生まれた子供。
勇が幸せな家族を持ったとき、邦彦は自分のこの執着が『恋』だったことに気づいてしまった。
今更気づいたところでどうしようもなく、この想いは胸に秘めたまま終わるはずだったが……。
勇の息子・俊一視点の「歯が痛い」、その後の三人と俊一の恋の行方が読める書き下ろし「十年愛」も収録。

表題作黄色いダイアモンド

片岡邦彦,25歳,サラリーマン
真田勇,25歳,男手一つで息子を育てている邦彦の幼馴染

同時収録作品歯が痛い

上岡邦彦
真田勇

同時収録作品歯が痛い

(仮)真田俊一,中学生
(仮)秋森悠生,中学生

同時収録作品十年愛

(仮)真田俊一,中学生→大学生
(仮)秋森悠生,中学生→大学生

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数19

あまりにもリアル

萌えたか萌えないかで言うと分からない。
好きか嫌いかで言うと間違いなく好きな1冊。
そんなことを思った作品でした。

木原先生作品の中ではかなりマイルドな読み心地かなとは思いますが、どの登場人物も本当に実在していそうなくらい解像度が高いというか、生活や言動のすべてがリアルすぎて時々苦しくなります。
痛くはない。でも苦しい。
飾らない言葉で真っ直ぐにザクザク刺してきます。
眠る前に少し読もうかなと思っていたはずが、苦しさと共に人間くさい愛おしい面が交互にやってきて、この先の彼らを見届けたいとページをめくる手が止まらず…気が付いたら朝になっていました。

読み始めて、邦彦の片想いがメインに描かれている作品なのかと思いきや、いやいやこれはそれだけではないぞとなるのです。
表題作の黄色いダイアモンドでは、邦彦視点で進む勇への長きに渡るずっしりと重みのある感情の行方を。
そして、彼と共に暮らす真田親子を追っていくと、複雑でいてぐちゃぐちゃとした人の営みが見えてきます。
中編・歯が痛いでは、勇の息子で中学生になった俊一の視点で子供社会の残酷さと大人の理不尽さ、多感な思春期のままならない心情と家族の愛情が。
短編・十年愛では、俊一の同級生の秋森視点で繰り広げられる、まるで過去の邦彦と勇をうっすらとなぞっているかのような別ルートの恋模様が新たな世界を魅せてくれています。

どのお話も、自分が今まで生きてきた人生の中で体験したことや見聞きしたことがある物事の断片があまりにもリアルに描かれていて非常に驚きました。
きっと誰しもが「わかる」ことが出来るエピソードが絶対にひとつはあるはず。
共感や想像が出来る悪意や感情、葛藤、そして愛情がこれでもかとストレートにぎゅっと詰められていて、人の良いところと悪いところが同時に見られる1冊です。
けれど、わざとらしさは全くなく、どれもこれもがあくまでも自然な表現なのだからすごい。

人は好き勝手にものを考えます。
好き勝手にものを言いますし、好き勝手に受け取ったり受け取らなかったりします。
良かれと思って言ったことだとしても、それをどう受け取るのかは相手次第。
過去の自分の発言を未来で後悔することだってあります。
案外、世の中は身勝手で一方通行な想いや考えで出来ているのかもしれませんね。

邦彦の粘り強さに拍手し、勇の成長に安堵し、俊一の苦悩に辛くなり、秋森の綺麗な傲慢さと変化を見守りました。
とびきりの惨めさから、とびきりの深い愛情まで。
どしゃ降りの雨から、雨上がりの晴れやかさまでが本当に丁寧に描かれた読み応えのある作品でした。

3

可愛い表紙に...

ここ数ヶ月、木原音瀬先生の作品のどハマりしています。

鳩屋タマ先生の可愛らしいイラストに惹かれて、「木原先生の甘々BLってどんなだろう?」と読み始めてみたら...何てこったい!

表題作『黄色いダイアモンド』の時点で既に甘々ではなかったんですが、『歯が痛い』はしんどいとかそういった問題ではなく...
とにかく不快感が先行し、何度か本を閉じました。
それでも木原先生を信じて読み進めると、最後の最後になってようやく光明が見えてきました。

神評価はBLとしての評価ではなく、広範な意味での作品としての評価です。

0

子供が出来、父性が生まれて、ダメ男が健全に幸せになるお話

よかったですー。
本書は3本立てになっていて、幼馴染みの勇(ノンケ)に子供の頃からずっと片思いをしている邦彦のお話「黄色いダイアモンド」(過去作)と、勇の息子・俊一が中学一年生の時の、彼をとりまく同級生や勇との関係を丁寧に描いた「歯が痛い」(書き下ろし・過去作に加筆修正)、中学生の時から俊一に恋をしている悠生のお話「十年愛」(書き下ろし) という構成になっています。

まず、勇のことから語らねばなりません。
彼は木原作品によく登場する、社会に適応できないタイプの人で、子供の頃の家庭環境がひどく、長じても生活能力が低く、物覚えも理解力も良くない。邦彦は幼馴染みで勇のことを好きだったけれど、好きだという気持ちを知られないように注意しつつ、陰になり日向になり時には口うるさく叱りつけるなどして長らく勇と一緒にいたわけなのですが、ある日勇に好きな女性が出来て、結婚して子供が生まれたりするわけです。(奥さんはとても優しく善良な人で、でも早世してしまう)
この勇が、木原作品によく登場する、社会に適応できないタイプのダメ男と違うことは、勇は圧倒的に根が素直で、不器用だけれど子供を愛し、子供のために苦手な事をコツコツ努力できるようになった、というところです。
私は、邦彦→勇の構図をみたときに、勇の悪意を心配したり、ふみにじられる邦彦を心配したりしてびくびくしていましたが、本書はそういう展開ではありませんでした。
「黄色いダイアモンド」こそ、それらしき片鱗は窺えましたが、結局そうではなかったし、「歯が痛い」においては勇の成長(? というとおこがましいけど)も実感できて、むしろ愛おしくもなりました。邦彦がどうして勇のことを好きか分かるような気もしました。

そして、「歯が痛い」においては、俊一の学校での虐めが描かれます。
「黄色いダイアモンド」では未就学児だった俊一は「歯が痛い」では中学一年生になっています。
読書とはいえ、えげつない同級生の加害描写には嫌気が差しますが、俊一がこの苦境をどう打開していくのかを見守るために熟読してしまいました。
結果、俊一の心の強さと勇の父性を目の当たりにし、勇の不器用で深い愛情に感動した次第です。
あとがきに、担当編集さんから「これはBLなんですか?」と尋ねられたと書いてありましたが、正直そんな些末なことはどうでもいいと思えました。
BLかどうかに拘るならば、この長いお話はこの後続く「十年愛」の布石であり、「黄色いダイアモンド」の続きでもあり、広義のBLといってよいと思います。
ただ、タイトルの「歯が痛い」は違うものでもよかったかもしれない……。
とにかく、このお話においても勇が切なかった。
俊一のことを生きがいだと思って、日々を生きている勇が切なかった。
学校に呼び出されるシーン、俊一に引っ張られてどこか遠くの街で野宿するシーン、とってもよかったです。
邦彦の前で弱音を吐くのも良かったです。

「十年愛」は、「歯が痛い」で俊一の同級生として登場した悠生が主人公。
中学生時代には悠生は思いやりという名の無意識の侮蔑とマウントによって俊一から敬遠され、理不尽な思いをしていて、気の毒でもありました。
(面倒くさいのはわかるけど、俊一も悠生に何がむかつくのかをはっきり教えればいいのに、とも何度も思いました)
その二人が高校生になり、大学生になり、関係が変化していきます。
悠生の気持ちは変わらないけれど、中学の時よりも視野が広くなっている分、耐えることも増えているなと感じましたが、それでも俊一への思いに勝るものもないようで、惚れた方が負けなのを地で行っています。
興味深いのはこのお話のウラで、邦彦と勇が結婚して一緒に住んでいることが描かれ、しかも勇が幸せそうだということが知れます。
よかった。よかったです、本当に。
勇は最愛の妻を亡くし、彼にとっては本当に生きづらい世の中を子供のために頑張っていて、報われて良かったと素直に思えました。

というわけで、木原先生の筆力のためにぐいぐい引っ張られるように親子の話を読み、途中やっぱり人の悪意は描かれるものの、メインキャラの成長やら幸せやらにコーティングされ、読んで良かったなと思わせられる本でした。

2

カナリーダイヤ

黄色いダイア=カナリーダイヤモンド。
  イエローダイヤモンド:
  ≪希望≫を象徴するパワーストーン。心を明るくして、前向きに生きるパワーを与える

粗筋に、共感できる部分は少なかった。
幼馴染の勇への気持ちは、憧れでもなく、恋愛だと気づいた邦彦
勇が結婚して、子供が生まれて、妻と死別。

勇が他人と恋をして幸せになる・・
勇に踏まれる足下の支え石でも良いと満足する邦彦。
励まし支える邦彦が、長い間報われない様子が凄く辛い。

物語は、勇より、勇の息子についてが多く占めている。
 息子は、邦彦の好意を全部ひっくり返す、故意じゃなくても憎らしい。

木原先生の、ドSな痛みを伴う物語・・人気作なので読んだけど、やっぱり苦手。
「幸せ」「幸福度」とは、他人が傍から見て決めるものじゃなくて、本人の感じ方次第、
と示唆するような作品。

0

黄色いダイアモンドは愛の象徴

メインの二人のお話は短めではありましたがとても読み応えがありました。
勇の家庭環境の劣悪さや勉強の理解が他の人よりも時間がかかり置いて行かれてしまう描写などが細かく書かれており、勇が俗に言う"ダメ男"になってしまうのもかなりリアルに感じ少しゾッとしました。この環境ならそりゃそうなるか、、と。そんな勇に人生のほぼ全てを捧げて生きる攻めの愛情には鬼気迫るものがありました。この男ぶれません。表紙だと爽やかリーマンお兄さんに見えますが、邦彦に新しい執着攻めを見た気がしました。基本的に勇への愛情故の行動が勇を更生させることなので常識人のように見えますが、これがもし暴力や監禁などなら立派なヤンデレだしそれくらいの重い愛情を持った男です。

邦彦に対して、どうしてこんなダメ男が好きなの?と思う自分はいましたが、読みながら理由なんてないんだよな、、と納得させられました。邦彦の愛の深さ、懐の深さは狂気的ですがとても素敵です。

勇は何より素直な人でそこがとても魅力的です。素直で人間味のある性格なので時に残酷な時もありますが、根っこが優しい子で読んでるうちにとても好きになりました。そして少しずつ成長し、俊一を懸命に愛する姿もグッときました。
勇を支え続けるぶれない邦彦もとても清々しくて、イジメなどの描写もありますが読後感がかなりよかったです。

後、「歯が痛い」は個人的に幼少期の家庭が貧乏なコンプレックスなど分かりみが深くて、、分かる分かる!と共感の嵐でした。

2

読んだのは旧版です

新装版は書き下ろし?で十年愛が入っているそうですが、私は旧版を読んだのでちょっと辛口かも。
甘い部分がなく、歯が痛いの終わりが…

妄想で色々考えられると思えばアリなんですが、木原音瀬作品の中では痛さ切なさがマイルドな分、甘さにも振れておらず、消化不良。新装版なら読後感が良かったのかも知れません。
個人的には挿絵がそれを助長していたというか、可愛らしすぎてミスマッチに思えました。(あくまでも読んだのは旧版の方です)
もう少しキツめの挿絵ならピリッとした感じで良かったんじゃないかと思いました。

1

えっ…痛く……ない?

いつも木原音瀬先生の作品を読む時は心の準備をしてから読むようにしていますが、本作は多少のいさかいはあるもののほとんど痛いシーンがありませんでした。
正確に言うと、学校でのいじめの描写があるので、それが読んでいて痛々しくはあります。

表題作のほか、2作が収録されています。その2作は表紙の子どもが成長した時の話になります。

過去に発売された作品の新装版ということで、加筆修正も多少はあるようですが、安定の木原先生作品といった感じで読み応えは十分でした。

2

片想いの温度差と惨めさが堪らない

今回も辛くて泣いた・・・
紙書籍発売から2ヶ月、電子発売を待ち呆けていましたが、こんなに長引いたのは電子処理班が「辛くて先進めんわ(泣)」と休み休み作業してたんだと思う事にしました。

「その子を知らざればその友を見よ」は荀子の言葉ですが、この作品は勇という人間を形作る幼馴染の邦彦と、勇の息子俊一視点のお話でした。
書き下ろし一篇「十年愛」は俊一を好きな同級生のお話(20年前のキャラクター達がハッピーエンドになるって、なんて素敵な話でしょう)。

木原先生は、好きになった方と好きになられた方の気持ちの残酷な温度差を書くのが抜群ですよね。「美しいこと」でも「期限切れの初恋」でも、好きになられた側は当然平気でお構い無しに振る舞うし、好きになった方は惨めにも卑屈にもなり、何を行動しても無意味に帰す。片想いの辛さにド共感します。
でも側から見ると、惨めになるほど相手が好きな姿って、可愛く見えますよね。それがスーツを着て日頃ビシッとしている男性なら尚更。

咄嗟に告白してしまったことで、思いの外呆気なく二人は上手いこと丸く収まりました。が、次のお話「歯が痛い」は、勇と息子俊一の生活の戦いが描かれ大変苦しいものでした。
清掃会社で働く父勇を馬鹿にされ、臭いといじめられる俊一。いじめの相談も解決も出来ない俊一に焦れつつ、自分の為に働く父を大切にし庇う中学生の姿が辛くて辛くて号泣しました。
ここまで来るとBLということを忘れ家族ドラマじゃ…と泣いていたところでBLを息子が発見してしまい、思春期の男子の心はズタズタに(不憫)

勇の学生時代、俊一のいじめる側、周囲の目に勇は落ちこぼれで勉強が出来ない(家庭環境も影響して)どうしようもない奴なんですが、大切な人には掛け値なしで愛されている。そこに勇の芯があり、読者には勇がどうしようもない奴には思えない眩しい存在になります。

他の作品と違うところは、莉久ですね。勇の妻で、邦彦と同じく勇を純粋に愛し、女神のような存在で居続けた女性はBLジャンルでは珍しいのではないかと思いました。

欲を言えば、邦彦と勇と俊一3人でダムを見に行くくだりが欲しかったな。
鳩屋タマさんの絵はふんわり甘々で好きなのですが、この作品のイメージより甘過ぎに感じました。勇不細工寄りの設定なのに…
でも新装版にピッタリで新鮮なタッグだと思いました。

5

木原作品にしては安心物件?

木原さんにしては甘い、と言えるのか。もちろんすんなりとは行きません。そこに至るまでには長い長い道のりが。前半は父親のラブストーリー、後半はその息子編。邦彦×勇編は勇が序盤は相当嫌な奴でした。境遇に同情すべき点があったとしても。攻めの人生はボランティアというか勇を困窮から救い出すのがライフワークという感じ。粘り勝ち。指輪のシーンは泣けました。

息子の俊一編は思春期の学校もので、いじめがテーマの一つだったので読むのが辛かった。俊一を好きな秋森はいい奴だけど実家が医者というとBLでは嫌な予感しかしません。医者は裕福で恵まれてるけど色々家に縛られてる事も多いのよ。特に手強いのは母親。この辺詳細には書かれてないけど将来的には修羅場になりそうな母親でした。

俊一と勇は似てないけど自分に恋する相手への無神経さにはものすごくDNAを感じました。木原さんの小説は読み出したら止まらない、読者をその世界に引きずりこんでしまう勢いがあるのが相変わらずすごいなと思いました。

3

リアルなんだよなぁ

先生がツイで「甘々な波が来てる」と仰っていたので
ほうほう、ならば安心安全じゃな
と、完全に油断しきっておりましたが。

え〜〜〜ん
まぁまぁ痛かったよ〜〜

いや、やっぱり木原先生の作品はリアルなんですよね。
BLなのに全然ファンタジーにしてくれない。

邦彦と秋森の独りよがりの愛も、それに対する勇て俊一の拒絶も、登場人物たちの台詞ひとつひとつが刺さる!!
読みながら「木原節が沁みるぜ〜!!」と久々に震えました。

確かに十年愛だけを切り取れば甘々ではありましたが、、、。

しかし、我らはこの癖になりすぎる刺激を求め、今日も木原作品を読むのであります。


表紙のキラッキラしたテンションに騙されてはいけない



10

甘々でも

木原先生ご自身で「いつになくラブラブの波が来ている(あとがき)」と書かれております。
うん。確かに『FRAGILE』だとかね『マジュヌーン』だとかね、あと私が心から「なんて恐ろしい」と思った『鈍色の華』の様なお話とはテイストが違うとは思いました。
でも先生、
恋というものを射抜くその視線はやっぱり冷徹でござりますよね。
曇らずキンとしていて、ところどころ痛くもありました。

このお話の舞台が『現代日本の普通の生活』だからこそ、部分部分で笑っちゃったりするんですよ。例えば『黄色いダイアモンド』の中で邦彦が勇に小言を言うところなんかで「ああ、こういう男の人っているよなぁ」とかって思いつつ。
そうやって笑っちゃった事実が、後から自分に刺さる。
笑ってしまったことに攻撃される。そんな感じ。

特に『歯が痛い』の中で、俊一が同じクラスの子を殴ったことで学校に呼び出された勇の、担任教師や相手の母親との会話のズレっぷりは、とても可笑しい。
可笑しいと同時に、その不穏さが怖くもあるんですよ。
俊一が殴った理由を絶対言わないため、曖昧なまま終息を図ろうとする担任に対して、解決していないのに話を終わらせるのは変じゃないかという主張を勇が繰り返す部分は、まるでその場に自分が居るように思えるほどリアルに可笑しく、そして怖い。

だけどそんな勇もラブラブなんですよ。

勇だけではなく、登場する多くの人が様々な面を読者に晒します。
良い奴だけの人はいなくて、いい加減で嫌な奴だと思っていた人が素敵な科白を吐いたりする。
登場人物も、お話そのものも、複雑で、パターンでは説明できない。
生身を感じるんです。

……だからこそ萌え度は爆発しなかったのよね。
だけれど、最後まで緊張が緩まることなく面白く読みました。
こういう本を読むのが小説読みの喜びなんだと思うんですよねー。

9

すごかった

木原先生だし鳩屋先生だからマストバイ。木原先生のお話って、いつも身に迫りすぎてコワくて耐え難くてシンドイです。今回も同様で、凄いお話なのですが、「きゃあ萌え萌え~♡」という心地にはなれなかったので萌2にしました。神にするには辛すぎた本編2段組80Pほど+受けの子のお話120Pほど+2編目の続き、新装版での書き下ろし35Pほど。木原先生のお話はメンタル攻めるので、元気な時に読んだ方がよいのではと思います。

攻め受け以外の登場人物は
莉久(りく、♀、俊一の母)、水沢、市橋等(俊一の同級生)。その他ちょこちょこ出てきます。

++しんどかったところ

勇が何らかの発達障害を持っているのか、勉強は×、継続してお仕事するのも×で、生活力がないのに嫁は儚くなってしまって父子家庭・・・きっつ。何がしんどいって、自分のすぐ側にありそうな事態だからかもしれないです。病気になったら、うっかり仕事クビになったら、いつこうなるか分からないと思う生活苦。コワイ。あまりに身近にある状況で、邦彦の恋心にシンクロする余裕があまり無かったでした。

2編目の俊一を巡るお話もキツイ。子供が苛められても、本当に気付けないことが多いと思うのです。苦しんでいる子供に気付いても、それを何とかするための手を打てないことが多いです。それを書かれていて、読んでいて本当に胸が痛かったでした。

邦彦が頑張って頑張って、粘り勝ちするところは泣いたし、秋森がなんだか分からないうちに俊一と付き合うことになり、最後は俊一がめちゃくちゃ甘えん坊になるところもとても嬉しく、先生が甘めと仰っていたのはここの事かと思うものの、そこに至る前半がきつくて、なかなかハードな一冊でした。

6

長い片想い

一般的に見るとスペック底辺な男に長いこと恋をしている攻めのお話。
この作品もどんなに不衛生で安定していない馬鹿な男でも、好きなんだからしょうがない感が凄くて私も好きでした。
BLとしての幸せがまるで見えないのに、気付けばそうなっているところが本当に凄いと思います。

後半は受けの息子の話。
貧乏な家庭環境、学もなく汚れ仕事をしている父親。クラスでの虐め。
これだけでも心殴られっぱなのに、父親と攻めの関係というトドメの一撃までぶち込んできて、ヒーヒー言ってました。
これぞ、ですね。
この心の痛みを求めて読みがち。

色々ありますがそれでも、幸せな場所に着地してくれるお話。似た者親子ですね。

挿絵はとても綺麗だったのですが、受けの容姿が童顔極めすぎていて、お話とリンクさせるのが個人的に少し難しかったです

6

自分の大切なものを差し出す優しさ

表題作の「黄色いダイヤモンド」は、真面目で口うるさいサラリーマン・邦彦が落ちこぼれで子持ちの幼なじみ・勇への長い片思いを実らせるお話です。80ページ弱の作品ですが、“優しさ”についてしみじみ考えさせられて、何度も読み返してしまいました。

勇は深く考えることが苦手なため、お金をだまし取られそうになったり、セックスで邦彦の機嫌が直ると考えて、邦彦を傷つけてしまったりもするのですが、そこには「困っている人を見捨てられない、相手を喜ばせたい」という優しい心があるのだと思います。
涙が止まらない邦彦を残して立ち去ることができず、邦彦の望むまま抱かれる側になる姿は、自分自身を差し出しているようで、読んでいて胸に迫るものがあります。恋人同士になった後、勇が亡き妻の形見の指輪を邦彦にプレゼントする場面では、数少ない自分の大切なものを差し出す姿に胸を打たれます。
多くを持たない勇が見返りを求めず自分自身や自分の大切なものを差し出すことは、誰もができることではなく、すごく尊いことではないでしょうか。
タイトルの「黄色いダイヤモンド」は、そんな勇の優しさを表している気がします。いわゆる勝ち組ではない勇は“ダイヤモンド”ではなくて“トパーズ”かもしれないけれど、その優しさはダイヤモンドの輝きに負けないと思います。それに黄色いダイヤモンドは本当に存在するのですよ。美しい色合いのものは希少価値がとても高いそうです。勇の優しさも同じではないでしょうか。

「教えてあげる」とか「してあげる」といった優しさは、純粋な思いからでも、どこか上から目線になりがちで、相手に受け入れてもらえないものなのですよね。勇のためと厳しくしてばかりの邦彦や、勇の息子・俊一に好意を寄せるお金持ちの秋森くん(同時収録「歯が痛い」に登場)の振る舞いから、あらためてそう感じました。
“優しさ”って、身近な言葉ですが、奥深いなと思います。

9

希望が叶った新装版

旧版既読者としての感想なのであんまり参考にはならないかと思います、すみません。「歯が痛い」の続編を長いこと切望していたので、まず夢が叶った喜びに打ち震えました…。久しぶりのビボイノベルス版。ざらついた紙質、まさかの二段組レイアウトに、これこれ!この感じ!と興奮したのも束の間。

もちろん、書き下ろし「十年愛」目当てで楽しみ半分・不安半分読み始めたのですが、読了後三日ほど経って、未だ「萌」以上でも以下でもない複雑な心境のままです。

初めて作品に触れた時に抱いた昔の感触と比べると、新装版本編+続編はカドが取れて口当たりが丸くなった大吟醸のような飲みやすいお味で…、といった印象でした。「十年愛」も作者が甘々モード中に書かれたそうなので、ちょっと笑えるような要素もあったりして、ぐおォーッとか、ひえぇぇ〜とかホラーなパニックに陥ることなく笑、平和に読み終えました。わたしとしては、秋森ではなく水沢とのその後を期待していたんですけどね…。旧版では水沢、絶対俊一のこと好きだろと思っていたし、俊一の方もある意味、水沢にかなり執着していたと独自解釈していたので笑

正直、なんだか物足りなかったです。

どんな作家様もキャリアが長くなればなるほど作風は変わっていくものですし、中でも初期の作品が好きだとか、円熟期の作品がたまらないとか、それぞれにハマる時期の作品があると思うので、近年の木原作品にわたしがハマれていないだけなのです。逆に、今まで敬遠されていたなら木原作品にトライするチャンスかもしれません。

イラストが新装版のテイストにマッチしていて、癒されました。とても良かったです。

5

その先にあるものが欲しすぎて一気読み

木原レーベルのなかでは甘々よりなのかもしれないんですけれど、
レーベル未体験の読者から見たら微糖なのではないかしら…と思ったりしました。好きになるだけ辛い相手を好きになってしまうという恋愛のもどかしさを最終的に救済してくれる度合いがBL糖度の測定値だとしたら、間違いなく本作は高めですけどね。また、いったん読み始めた読者にページをめくる手を休ませないキレッキレな筆力はさすがです。何度かの涙腺やばい!を乗り越えながら夢中で読み耽りました。評価ですが、何度か心震えてしまったので”神”にしました。

いやもう切なすぎませんか…、邦彦。与えるだけの愛情が戻ってこない相手に尽くし続けるという。恋心からはじまった執着だったとしても、もはや執着を超えた尊い行為になってますよね。正直、勇のキャラがキャラなだけに、親が子に対して与える愛のような印象を受けました。勝負ではないけど、どうやったって莉久にはかなわない立ち位置で、それでも勇を愛し続けるっていう腹の括り方が凄いなと。しかも、勇が邦彦にプレゼントする指輪が、、、これ心温まるのか寒いのかちょっと戸惑いました。邦彦って本当に器がでかい、でかすぎる。幸せになってほしい攻ランキングがあったらNo.1に推したいです。

可愛かった勇の息子、俊一の思春期のお話が”歯が痛い”でした。虐めの描写に胸痛めながら、”BLだよね?!”と途中不安にもなりながら、それでも読む手を止めることができず読み切って、”あぁ、この秋森の執着はBLだ!”と納得したのでした。また、勇のいいお父さんぶりに泣けました(成長してる!)。邦彦と勇のR18シーンを見てしまった俊一がぶすくれて、勇に対して、溺れてる邦彦と自分、どっちを助ける?というあるあるの質問をするのですが、”俊一を助けてから俺は(邦彦と一緒に)死ぬ”という勇の名答に心震えました。(邦彦の想いが報われてる…。)

描き下ろしの”十年愛”は秋森視点でした。これで、”歯が痛い”のBLの萌芽が回収されたというか、糖度プラスになってると思います。俊一の秋森に対する態度、正直さゆえの残酷なところは、父親譲りです。俊一の秋森に対してのダイレクトな言葉は、読者の心も抉ってきます…。でも、辛い先にきちんと愛があるから、その先の愛をもとめて木原レーベルを読み続けます。邦彦と勇の幸せそうなその後も垣間見えてホッとしました。つらいこともあるから余計に、ささやかな幸せの偉大さを実感させてくれるような気がします。

8

木原先生らしい作品だけど想像以上にマイルド

こちらの作品は旧版も未読でした。
木原音瀬先生がTwitterで「書き下ろしがはいったことで ラブラブハッピーエンドになりました!」と呟いていましたが、心配症なので旧版と新装版のレビューを読んで心が落ち着いてる時に読みました。


表題作の「黄色いダイアモンド」は、確かに行き場のない邦彦の気持ちが切なくてしんどかったです。
でも邦彦視点は「黄色いダイアモンド」までなので、思いのほかキツく無く短く感じました。


そして次に勇の息子の俊一視点の「歯が痛い」が始まるのですが、私は俊一が虐めにあってた話より、勇と邦彦の関係を知った俊一の苛烈なまでの邦彦への拒絶の方が痛かったです。
あれだけ世話になり懐いていても、勇との仲は許せないのかと驚きました。中1だからだと納得したものの、それでも悲しくかりました。

なので勇が俊一に邦彦についての気持ちを話した部分が私には大きくて、この時点で邦彦は勇の気持ちを手に入れられたのだと安堵したのです。


最後に書き下ろしの木原音瀬先生がラブラブハッピーエンドと言ってる「十年愛」ですが、こちらは俊一にずっと片想いしていた同級生の秋森視点のお話でした。
節目ごとに俊一との関係が書かれているものの、一節が短いのであっという間に二人の関係が変わった印象でした。
彼女が出来た事を話さなかったのは俊一なりに秋森に気を使ってたのだという事が分かり、俊一も精神面で大人になったと思いました。
ただ、二人が付き合い出してからの俊一が急に子供っぽくなったような気がしてしまいました。


その他の木原作品では胸を絞られる程の痛みを覚えましたが、こちらの作品は木原先生らしいけどかなりマイルドな作品だと思いました。

4

木原先生、ラブラブの波がきてるってよ

既刊作に新たな書き下ろしを加えた新装版。
この書き下ろしが全て。

旧版は、ここに辿り着くまでの物語だと思う。
読者の気持ちすら昇華する、甘くて癒される書き下ろしに驚きました。(いい意味)
木原作品では稀な甘さではないでしょうか?
鳩屋タマ先生のイラストもほんわかしていて、作品をよりマイルドにみせてくれます。

とはいえ、理不尽な虐め描写があったり、触れてほしくない気持ちを抉ってきたりと、甘いだけのロマンスでは終わらないのが凄いところ。
上っ面でも綺麗事でもないリアルな愛だからこそ刺さるものがあった。

欠陥だらけで目を覆いたくなる登場人物達。
こんな男もうやめとけ!と思うけれど、人を好きになるのは理屈じゃない。
そう思わせるだけの筆力がある。

小さなエピソードや何気ない会話が物語を構築し、一切の中弛みを感じさせず最後まで一気に読まされました。
執愛、友愛、親子愛…色々な愛が詰まっており、特に子が親を、親が子を思う気持ちに涙が止まらなかった。

愛することを選んだ者と愛されることを選んだ者、それぞれの結末をぜひ見届けてほしい。

15

2000年刊行作品の新装版。

作家買い。
2000年に刊行された同名小説の新装版。旧版は未読なのでそちらとの比較はできません。

2000年、ということは21年前に刊行された作品ですが、今、木原さんが書かれたと言われても違和感のない作品でした。木原作品の根っこは変わってないんだなあとしみじみ思いました。

新装版の挿絵を鳩屋さんが描いてくださっていて、だからでしょうかね、すごくほのぼのな空気感漂う表紙になっていますが、作品の内容としてはほのぼの系ではありません。「木原作品にしては」痛さはマイルドな作品と言えますが、痛い展開が苦手な方は注意された方が良いかもです。

旧版の方のレビューでも内容に触れてくださっていますが、ここでもネタバレ含んだレビューを書こうと思います。ネタバレ厳禁な方はご注意ください。






邦彦と勇は幼馴染。
足が速くって泳ぐのが上手な勇は、邦彦にとってヒーローだった。
が、勇は親からネグレクトされており、成長するに従い勇の異質さに周囲が気づくようになっていく。徐々に道を踏み外す行動を取る様になっていく勇に声をかけ続けたのもまた、邦彦だけだった。

が、19歳になった時に勇から言われたのは「子どもができたから結婚する」というセリフ。そこで邦彦は、自分が勇に恋をしていたのだと気づくが―。

というお話。

木原作品には定番と言って良いでしょう、機能していない保護者を持つ子(=勇)、が登場しています。中卒で学もなく、だらしなくって、けれどそんな勇を放っておけない邦彦。そしてそこに勇の子の俊一が加わる。妻亡きあと、息子の俊一を男手一つで育てている勇だが、仕事をして、家事をして、子育てをする、それをこなすだけの力が、勇にはない。

BL作品において生活能力のない受けって珍しくはありませんが、木原作品なのでその枠に収まりません。不憫な男性ではありますが、彼自身結構なダメ男なんですね。だから勇という男のどこに邦彦が惹かれたのか、さっぱりわからない。

まさに恋は堕ちるもの。自分ではどうしようもない感情に振り回される。恋とか愛とか、そういう思いを自覚する前から、あるいは気づいた後も。

今作品は、邦彦×勇の話である表題作「黄色いダイアモンド」に、勇の息子の俊一視点で描かれた「歯が痛い」、そして俊一のその後を描いた「十年愛」の3つのストーリーで構成されています。

「黄色いダイアモンド」だけを読むとだらしない勇にどうしようもなく恋をしてしまった邦彦、という木原さんお得意の共感しかねる展開(ごめんなさい、個人的な感想です)なのですが、おそらく今作品の真髄は「歯が痛い」なんじゃないかと思いました。

「歯が痛い」は勇の息子の俊一が中学生になった時のお話です。

勇を愛する気持ちと、それに相反するように反発する思い。
そこに、いじめという問題が加わることで一気にシリアス展開になります。

俊一に対するいじめ、がどうしても目についてしまうのですが、今作品が描いているのは勇と俊一の家族愛です。いじめられても本当のことを言わなかった俊一の勇への愛情と、言葉が足りないながらも息子を一生懸命かばおうとする勇。

心にグサグサと突き刺さる。

「歯が痛い」で俊一に想いを寄せる同級生の秋森という男の子が登場します。
彼はね、「黄色いダイアモンド」の邦彦です。自分の、俊一に向ける感情が何なのか分からないまま、俊一に執着する。子どもならではの根拠のない万能感、悪意のない善意、そういった秋森の感情や行動が俊一を追い詰めていく様が実にリアルです。

そして、最後は俊一と秋森のその後を描いた「十年愛」。
「歯が痛い」は、すごく中途半端に終わっています。え、それからどうなるの?というところで。旧版にはおそらく「十年愛」は収録されていないと思われます。旧版をお持ちの方には「歯が痛い」の中途半端な終わり方が気になっていた方も多いんじゃなかな、と思われますので朗報です。

視点は秋森くん。
ただただ俊一のことが好きで。
そばにいられなくても、俊一に彼女ができても構わない。
ただ、ずっと好きでいる。

「黄色いダイアモンド」では自分の感情に気づかないまま勇に執着していた邦彦ですが、秋森くんは自分の想いを早い段階で自覚している。その分、彼のしんどさは邦彦よりも強かったのではなかろうか。「歯が痛い」の時はちょっと鼻につく行動もありましたが、「十年愛」を読むと彼の想いがよく理解できます。

「歯が痛い」で勇と邦彦の関係を知った俊一が荒れるシーンがありますが、俊一を変えたのもまた、この二人の父親たちだったんだな、という感じ。

いかんせん木原作品ですから、はい、ハピエン!というお話ではありません。そこがいい。

昨今BL作品と言えばスパダリに、甘々に、ほのぼのに、そういうお話が多いですが、木原作品は違うところに視点が向いています。社会的弱者、と呼ばれる、救われることのない人たちに。できれば見たくない、目を背けたい。
そこに目を向け、真正面から切り込むのが木原作品ならではか。木原作品にしては痛さがややマイルドなので、多くの方に手を取っていただきたいなと思います。

タイトルの「黄色いダイアモンド」ってどういう意味なのかなって思って読み始めたんです。私なりに感じたのは、「価値」というものは人それぞれだということ。黄色いダイアモンドでもトパーズでも、それが仮にその辺に落ちている石ころであっても。

その人にとって価値があると思ったら、それは価値があるものなんですよね。周りの誰が何といおうと関係ない。そんな意味が込められてるのかなー、と、私は、そう感じました。

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