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ashita sekai ga owaru nara
「赤と黒(2)」に収録の大和母・槇視点の番外編「Three hearts of the night」は印象的でした。
そして、その槇の結婚のいきさつ、そして若き日の矢萩とのエピソードが本作「明日世界が終わるなら」。
先代美洞組組長の娘として生まれ、自分も極道の世界の中で生きようと定めた若き日の槇。
周囲は運転手役の矢萩とくっつくと考えていたようだけど、槇が惹かれているのはいつも矢萩の隣にいる三笠だった…
三笠も矢萩も、槇なんて眼中にありません。
顔が綺麗でも肝が据わっててもバックに組がついてても。槇は蚊帳の外。
だから父組長に頼んで三笠を婿にする。
このやり方は筋を通してない、と自覚しながら。
でもそうしなければ2人の隣に立てないから。
何もかも飲み込んで生きてきた槇は今はもう笑顔も忘れたけど、3人で笑ったあの日の思い出があれば。
病に倒れて今最期を迎える三笠の顔は出さないのがニクいですね。
そして、最後の瞬間を矢萩と。それが槇の遅ればせながらの筋の通し方だったのかな。
そして、大和を愛しいと言ってはいるけど、息子よりもどこまでも三笠を選ぶ「女」だなぁって感じました。
そんで、私は三笠と矢萩は現実にはヤってないと思うんだよね。
赤と黒の大和の母視点で描かれる。
矢萩(由紀夫の父)が守ろうとしたもの、組=大和の父が登場します。
赤と黒で大和母が矢萩と思い人が同じ的なことを言っていたのはこれか〜となりました。
冷徹な目をした矢萩が三笠といる時だけその目が彩られる。
まるで由紀夫と大和を見ているかのよう。
「明日世界が終わるなら誰といたい?」と聞かれ「矢萩」と正直に答える三笠を改めて好きだと思う槇。
父親の力を使って三笠と結婚することを悔い改めようとした時、矢萩が三笠はそんな男じゃないと止めるのがおもしろい。
その後の三笠も加わっての3人の会話が最高でした。
三笠と矢萩の間には自分は入れないと痛感して嫉妬しまくりだろうに、それもひっくるめて結婚した槇。
しあわせな花嫁だったとしても、笑うことのない母になり。ずっとしあわせな片思いだったと。こういう恋、人生もあるのだなと。
そして大和は愛されて生まれてきたとわかり安心しました。
複雑な心情ながら、しみじみいい番外編でした。
既刊「赤と黒」の由紀夫の父と大和の両親3人のお話し
大和の母、槇の視点で始まります。
この槇さんは本編でも実子の大和に「極道を背負わす」という事について触れております。
あの時点では想像の域を超えなかった彼女の深い深い愛が感じられるこの番外編。
彼女自身が背負ったその宿命をこのお話しを通してまた知っていける、そんな奥深さと世界観が広がります。
そして何と言ってもこの3人の関係性と心意気。
痺れる……・・・。
ヒリつく空気感が漂い40ページ程の話とは思えない重厚感です。
槇の1人の女として、組の姐さんとして、そして同じ男を慈しんだ同志として魅せる矜持に同性として男惚れならぬ女惚れしてしまいます。
この母にして大和あり。
そして彼女の心意気を静かに、そして確実に受け取る矢萩と大和の父、三笠。
BLの中に登場する女性の中で1、2を争う好きな女性です、槇さん。
そんな槇さんの息子、大和と由紀夫の出会いはやはり絆で結ばれたDNAレベルでの「運命」だった事だろう、と「赤と黒」の世界観の奥行を更に感じずにはいられません。
槇さんの言う「最後まで、幸せな片想いだった」というセリフ。
涙で滲む最高に切ない終わり方。
これぞ番外編!間違いなく神作品の番外編です。
※女性視点ですが直接的な絡みなどの描写はございません。