ディアレスト

dearest

ディアレスト
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神21
  • 萌×28
  • 萌12
  • 中立2
  • しゅみじゃない4

--

レビュー数
9
得点
175
評価数
47
平均
3.9 / 5
神率
44.7%
著者
中庭みかな 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
野ノ宮いと 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
価格
¥630(税抜)  
ISBN
9784344846883

あらすじ

他者を拒みながら生きるロシェルが受け入れるのは、唯一キオだけ。キオにとってロシェルは主で、幼馴染であり、兄同然で――そして最愛の恋人だった。自分ひとりが特別に愛されるのは幸福で、同時にとてつもなく寂しいことだと思うキオ。誰をも慈しみ誰からも慈しまれる良い人生を大切なロシェルに渡すため、彼への恋心を手放すと決めるが……?

表題作ディアレスト

20歳,領主の1人息子でキオの主人
17歳,左足が悪いロシェル付の使用人

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数9

私の読みたい物語がここにありました。

人には誰しも忘れたいと思うことが生きていれば一つや二つあるかと思います。それは辛いことだったり、あまりに幸福すぎて失ったことに耐えられない思い出だったり、もしくは忘れてしまった方が楽な恋だったり……。
そんな忘れたいという悲しい願いが人生で一度だけ叶えられる魔法が存在する世界のお話です。

キオはロシェルへの恋心を忘れたいと願いました。キオは純粋すぎたんですね。まっすぐに愛するが故に嫉妬という誰しも持ち得る、醜くも人間らしく愛おしい感情を受け止められなかった。だからこの恋心を消し去ってしまいたいと願ってしまった。それは愚かなことかもしれないけれどこの箱庭で育ったキオにはその小さな胸が今にも張り裂けそうな痛みだったのでしょう。そして何よりロシェルに幸せになって欲しいからの願い。
しかしロシェルにとってそれはなんて残酷な願いでしょうか。母親のことを忘れ心が欠けてしまったロシェル。何よりも愛する人からの忘却を恐れていた事でしょう。互いに相手がいれば幸せなのにすれ違ってしまう二人が切なかった。

またこのお話は終盤に明かされる秘密にハッとしました……、そうかだからロシェルの献身はあんなにも愛情深く、ある種祈りのようだったのか……。

そして特筆すべきはラストの魔法によって結晶化したキオの恋心を味わいながらの交わり。
これは文字でしか紡げなかった感動です。
あまりに美しく、なんて尊い愛の行為かと息を呑みました。キオのロシェルへの恋心はこんなにも優しく多幸感に溢れたキラキラしたものだったんですね。
美しい情景が鮮やかに頭の中で描き出され涙が止まらなかった……。

私は中庭先生がセックスをただの快楽を交わす行為としてではなく、愛を確かめ合う行為として描いてくださったことに感動しました。そう肌と肌を合わせて体の一番深くで交わるって自分を全て明け渡して心を晒すことなんですよね。

出会えて良かったと心から思える作品がまた一つ増えました。
中庭先生に心からの感謝を。

16

悲しくも優しい物語

高校生ものなのに、重く深く複雑な関係性を描ききったデビュー作以降、読者を選ぶのかなぁと他作品に手を出すのをためらっていました。今回はシンプルなタイトルにビビっと惹かれて、読んでみたくなりました。

外国が舞台の主従ものです。時代ははっきりと記されてはいません。物語に触れて抱いた最初の印象は、某こども劇場を思い出させるようなノスタルジックで悲しげな雰囲気。イラストもかわいらしくて、お話に合っていると思いました。

17才のキオは幼い頃に負ったケガのせいで片足が不自由。母親が使用人として仕えていた主人の息子、ロシェルはキオより3才年上と年齢が近いこともあって、キオは子供の頃から遊び相手でした。

キオの主な仕事はロシェルのお世話でしたが、引きこもりがちで気難しい彼の相手は大変。でも、冷たくぶっきらぼうに見えて、キオの体や足のことをいつも気遣い、就寝前には二人だけの儀式のように足のマッサージを施してくれる。キオは彼の優しいところも知っていました。いつしかマッサージは足だけにとどまらなくなり、戸惑いを覚えるキオ。やがてロシェルに縁談が…。

後半に進むにつれ、隠されていた事実が明らかにされていきます。キオがロシェルへの思いに気付き、それを忘れたくても忘れられなかった謎。まだ子供の人権が存在すらしていなかった時代の野蛮な搾取。(現代でも進行中ではある)闇に紛れた負の歴史…重いエピソードが綴られていきます。

キオが他の誰かに託してしまいたかった綺麗な宝石のかけらを二人で分かち合うシーンは、二人が引き合わされた「本当の」理由や当時の関係性を知った後に噛み締めると、その美しさに思わず涙がこぼれます。序盤の足マッサージが始まるシーンにもドキドキしましたが、ここが最も官能的なベストシーンでした。

主従関係の醍醐味を表す、薔薇の花のエピソードがこのお話の通底奏音です。お伽噺のような純心無垢さを纏いながら、大人としての関係性に目覚めていくエロス。読み終えた後にタイトルがエロく見えてくるという、不思議な萌えでした。エロシーン自体に重きを置かない、関係性萌えには十分に満たされると思います。事実、エッチシーンは薄めで逆にバランスが取られているように感じました。

健気でピュアな受けではあるのだけれども、どうやらそれだけじゃない。苦手なのは悲劇のヒロインタイプなので、はじめはそういうタイプではないことを祈りました。違ってホッとしたけれど、もしかしたらひたすらに不憫すぎるかもしれません。そういう子たちには必ず最後は幸せになって欲しいので、エンディングには安堵しました。ジェラルドパパが愛の人だったので救われたのだと思います。

最後のSSはロシェル視点。二人が離れ離れになる前夜と現在の彼の思いが描かれています。氷のように冷たく、体温も低めなロシェルの放つ激情が切ないです。

12

辛くても忘れてはいけない想いがある

今回は心が欠けた領主の息子と足の悪い使用人のお話です。

受様のみを求める攻様と身分違いをやむ受様がその関係を変えるまで。

今からほんの少し前、この国には魔法の力が残っていました。しかし人が
石炭を燃やし、大きな船を動かす事ができるようになると、かつて神秘の
力をつかさどった魔法の使い手は今では皆どこかに立ち去ります。

しかしただ1人、国王の元に残った名も知れない魔法使いがいました。彼は
人が囚われた悲しみや怒り、恋や裏切りによって傷ついた心を消し去る
術を持ち、大きな戦争に見舞われた国内で人々に術を施し、いつの間にか
姿を消します。残ったのは悲しみや恐怖はなくなったものの、何にも心を
動かさなくなった心の欠けた人達だけでした。

受様の母は領主の屋敷で下働きをしていましたが、幼い頃に病で亡くなり
ます。寄る辺の亡くなった受様を領主は温かく見守り教育を授けてくれ、
屋敷の人々が皆で受様を育てくれます。

受様の左足には大きな傷跡があります。傷そのものは癒えましたが、完全
に治りきらず、その影響で歩くのが下手で走る事は出来ません。

受様自身も覚えていないくらい昔に負ったため、受様にとって足が不自由
な身体が自分であり、向き不向きがあっても自分に出来る事をすればいい
だけであり、屋敷の人々も必要以上に受様を力仕事やお使いから遠ざけた
りはしませんでした。

しかしそんな受様の考えを全く認めない人がいます。それは領主の1人息子
であり、受様が側仕えをする攻様です。攻様は病で母を亡くした悲しみに
泣き続け、魔法使いの手で母に関する思い出を手放し、その結果、泣く事は
なくなりますが、誰が何を言っても笑顔を見せる事も無くなりました。

受様も母を亡くした時に領主に母を忘れる魔法を教えられますが、父を知ら
ない受様にとって母との思い出は何より大切な宝物で、忘れる事などできな
いと必死に首を振ります。そして思い出を失ったと言う領主の大切な人を
ずっと淋しいのと同じで可哀そうだと思います。

領主の大切な人とは心が欠けてしまった息子であり、領主は受様に寂しい
ママに生きなければならない息子に寄り添って欲しいと願い、受様は攻様の
小さな執事となるのです。

攻様は離れで暮らしていますが、受様以外誰をも近づけず、もっぱら絵を
描く生活を送っています。攻様は気難しい癇癪持ちとして遠巻きにされて
いますが、そうならざるを得なかった事情を知る人も知らない人も皆、
攻様の事を機にかけ、心を痛めていました。

攻様の絵は風景や生物ばかりです。しかも古びて寂寥した佇まいや、廃墟
に残る絹のリボン等、人も動物も細やかな音さえも存在しない寂しい風景
です。しかしそれこそが攻様の見ている世界そのものであると理解する
受様にとってはとても特別に見えていたのです。

しかし、そんな生活も王都から攻様の婚約者がやってくる事で一変します。
やってきた女性は美しく優しい人でした。彼女は王都から3日を掛けてやっ
てきますが、この地の青い空を見て喜び、王都でも風が強い日には石炭工場
からの煤が酷いと言い、そこでは石炭堀りに子供達が駆り出されていると
瞳を陰らせる聡明な人でした。

受様は領主から攻様と婚約者が上手くいくように仲を取り持って欲しいと
頼まれるのです。受様は領主の思いをくみとり、何より攻様に幸せになって
欲しいと攻様と婚約者の仲を取り持とうとしますが・・・

母を亡くした悲しみを忘れられずに心が欠けた攻様と攻様専用の執事で
ある使用人の出会いから結ばれるまでの切ない恋物語になります♪

中庭先生の物語はファンタジックな世界観、主人公達の繊細な心理描写、
彼らの辿る運命の数奇さと素敵なエンディングにいつもドキドキさせて
くださいます。

今回は心が欠けてしまった攻様に独占されつつも主従関係という身分差に
囚われ攻様の手を取れない受様のジレジレ感がメインなのかと思っていた
ら、びっくりな伏線が隠されていて、思った以上にハラハラ&ドキドキ
でした (>_<)

攻様にとって世界とは受様のみと共有するものであり、誰よりも受様だけ
を必要としています。受様の足は屋根から落ちて負ったものでしたが、
攻様はその原因を作ったのは自分だと毎夜、受様の足をマッサージし続け
ていたのです。

しかしそのマッサージも2人が成長するにつれ隠微な影を孕むものとなり、
受様は攻様への恋心を自覚するのです。それでも領主の1人息子である攻様
立場や幸せを誰よりも思い、心を痛め続けます。

そんな受様に攻様から母の思い出を消し去った魔法使いが接触、受様は攻様
への恋心を差し出します。そして攻様が母を忘れた様に、自分も攻様を忘れ
ていくのだと思っていたのに、なぜか恋心は消えません。

攻様が胸に秘めてきた想い、受様に隠されていた過去、領主が負っていた
黒い影の存在、魔法使いと領主との関り等々、巧妙に配された伏線と関わり
が白日の下に晒され、2人が本当の意味でお互いの手を取るまで、たいへん
楽しく読ませて頂きました♪

受様の攻様への想い、攻様の受様への想いにきゅんきゅんでしたが、国王に
望まれながらも引退して領地に留まる領主の妻への想い、息子への想いも切
なくてグッときました。

領主の城というごく狭い世界をメイン世界としながら、彼らを取り巻く広い
世界の出来事も巧みに取り入れられていて、深みのある物語となっていま
した。素敵なピュアストーリーをありがとうございました (^-^)v

8

「忘れな草」の魔法に号泣

「忘れな草」という魔法使いは、人の悲しい記憶を消してくれるーーそんな世界でのお話です。

執事のキオと、癇癪持ちの若主人ロシェル。ロシェルに婚約者ができたことで、キオは「忘れな草」にロシェルへの恋心を消してほしいとお願いしにいきます。

もう本当に、本当に切ない。キオのロシェルへの恋心を「忘れな草」は、恋ではなく「最愛だ」と表現します。

小さなキオの体いっぱいにつまった、ロシェルへの恋心。なによりも尊い想い、最愛。それをロシェルの幸せのために手放そうとするキオのいじらしさに涙が止まりません。

しかも、実はキオの過去には本人さえ覚えていない知られざる秘密があって…。
それを知った時、あまりの苦しさに嗚咽が抑えきれませんでした。

最後の最後までどんでん返しがある物語です。
ただ優しい、切ない、甘いだけではない、読者の心の痛みに寄り添い、そっと優しい花をたむけて去っていってくれるような…どこまでも優しい読後感でした。

素晴らしい名作です。

8

想像していなかった展開

挿絵目当てで購入しました。
初めての作家様だったのですが、とても良いお話で他の作品も読んでみたくなりました。


キオの心がとてつもなく綺麗で、胸が痛みっぱなしでした。
優しくてロシェルの幸せを願っているから
恋心を手放したくなって『忘れな草』に頼ってしまったんですね…。
そのキオの気持ちが切なくてたまりませんでした。

読みながら途中から、このお話はハッピーエンドになるのだろうか…?と
とてつもなく不安な気持ちになったんですけど、ちゃんとハッピーエンドでした。
でも、全然想像していなかった展開なのですっごくびっくりしました。
まさかそんな過去があったなんて…と思いました。
過去の出来事のお陰で、キオは心を手放さなくて済んだので良かったです。

個人的には登場人物がみんな良い人だったので
キオの心以外に胸を痛めることがなく、それが良かったなぁって思いました。
クラリッサが嫌な子だったらもっと苦しかっただろうなぁって。


想像もつかなかったハッピーエンドだけど
綺麗にまとまっていてすごいなぁと思いました。

2

最愛の

ディアレスト、とは「最愛」もしくは「親愛なる」の最上級だそうです。
シンプルでいて、この2人とこの物語にぴったりのタイトルは他には無いのではないでしょうか?

読中・読後共に不思議な感覚になるお話でした。
途中途中で、このお話はなんなのだろう?と、よく分からなくなることもあったのです。
領主の元に身を寄せる、左脚が不自由な天涯孤独の少年、心にぽっかりと穴をあけたままの気難しい領主の息子、そして、一生に1度だけかけてもらえる魔法の存在。
主人のロシェルと執事のキオ。
設定だけを見れば王道の幼馴染の身分差ものなのです。
しかしながら、キオが主人で幼馴染のロシェルに対して献身的なのは分かるけれど、それにしてはロシェルがキオに対して強く依存をしているのが妙に気になる。
この、2人の間に流れる共依存のような薄暗さが王道からちょっと逸れている感覚になるというか、伏線が上手いというか。
淡々と紡がれていくお話がどの方向へ向かうのか分からないまま読み進めると、キオの中で芽生える感情や、静かに近寄る闇が少しずつ大きくなっていく。

キオ視点で物語が進むので、いくらロシェルは本当は良い人間なのだと語られても、途中までは魅力がわからなかったのですよね。
心の穴については理解が出来ても、20歳なのにあそこまで感情的になるかなあ…なんて思ってしまっていたんです。
ところが、後半になり真実が明らかになるに連れて、彼があんなにもキオの脚や体調をなぜ愛おしげに、時には苦しそうに気遣っていたのか?なぜ薔薇園は白薔薇だけなのか?
この辺りの、謎が判明すると共に予想外だったキオの過去が浮き彫りになっていく流れが見事。
すごい。一気に今までのすべてが塗り替えられていくようでした。
キオの過去とこれまでのロシェルの想いを想像すると切なくて仕方がないのだけれど、どうしようもなく2人のことが愛しくなってしまうというか。
気付けば私もすっかり魔法にかけられてしまっていたようです。
忘れな草色の、きらきらと光るキオの「最愛の結晶」の美しさが印象に残りました。

御伽噺のようなお話の中にほんの少しの仄暗さを加えることによって、なんだか不思議な感覚に陥る。
人間の感情のいとおしさを強く感じる作品でした。
健気で美しい心理描写が光る優しい物語です。
BL的なツボにはあまりささらなかったのですが、終盤の流れが見事でしたのでこちらの評価で。

7

勿忘草と紅白の薔薇

Dearest:「いとしい人(恋人)」

冒頭から四分の一ほど、過去から今の経緯解説部分。
キオを取り巻く色々な人が登場する。

魔法使いが登場するだけあって、ナンデモアリな展開。
魔法で忘れていた記憶を取り戻す話。

--
●キオの親:
父親は、生まれる前に死亡
キオを産んで間もなく母も風邪で死亡。少女のような容姿の女性だった。

●キオ:17才
左足の怪我で、歩行困難。
母の死を悲しむキオに、ジェラルドが勧める「忘れる魔法」を断っている。
実は、「死を求める心」を秘めている。
キオは、一度過去で死にかけている。というか死んでいる?

●ジェラルド:屋敷の主 元騎士団長 妻を亡くしている。

●ロシェル:20歳 屋敷の主の一人息子。キオよ3歳年上。
絵が趣味。3才で母親が死亡。
魔法で記憶を失い、感情を上手く表現できない。

●クラリッサ:18才。美貌のロシェルの婚約者。

●グース:料理人 優しい人 白薔薇を一株隠し育てていた。

●イアン:ジェラルドの部下。幼馴染。明るく気さく。

●「勿忘草」:記憶を消す魔法使い。魔法は、人によっては廃人になる。

0

切なさ漂う、主従ファンタジー

全編通して切なさ漂う、”失った記憶”が鍵となる主従ファンタジー。

中庭みかな先生、初めて読む作家様でした。

正直なところ、前半〜中盤までは盛り上がりに欠けるなあ…と思いなかなか読み進められなかったのですが;

終盤、キオ(受)の左足の怪我の真相、そして失った記憶や消されたはずのロシェルへの恋心が消えない理由が一気に明らかにされるシーンがすごかった…!!

思わず「うわ」と声が出てしまうほど驚き、なるほど、と納得し、じーんと心に来るものを噛み締めました。

キオの左足を毎晩必要以上とも思えるほどに介抱するロシェル、そして彼や屋敷のキオを囲む人たちの”キオを守りたい”という気持ちがストレートに刺さった…

ロシェルの婚約者であるクラリッサが全く悪役などではなく、本当に心の綺麗な女性だったのも安心して読めたしキオの切なさがよりダイレクトに響いてきて、とても良かったです。

欲を言えば…

二人の初えち、あんなふうに強引で性急な感じではなく(無理矢理ではなくてキオも望んだことだったけれど)、ロシェルの愛を優しくじっくり感じさせてくれるものだったらなあ…とは思うのですが。

きゅっと切ない胸の痛みを感じながらも、最後にはしっかり幸せを感じることのできる、主従ファンタジーでした。

0

ずっと同じところをぐるぐる

繊細な描写がとても良い作品だった。文章は好き。ストーリーはメイン二人でずっと同じところをぐるぐるしてるだけだった気がして、恋愛成就の満足度が低い。終始不機嫌なロシェルの描写を読み続けるのもキツかった。

引きこもりの主ロシェルと足の悪い下働きキオのお話で、ほとんどがお屋敷の中だけで進む。そこに少々ファンタジー要素が入ってくる、不思議な世界観。

二人の関係性は、一言気持ちを伝えればすぐに物語が終わってしまいそうなほど出来上がってる。身分差や婚約者の存在はあれど、ロシェルがキオ以外と接触を拒み、癇癪持ちかつ怒りでしか他人と繋がれないキャラなので、キオしか相手になれなさそう。

ロシェルがこんなことになった背景にはそれなりの理由があるが、それでも酷い言葉や態度ばかりを見続けるのはしんどい。特に子供時代のロシェルは耐え難かった。

気持ちを自覚したキオの取った行動は、魔法使いに頼るというもの。そして愛を忘れたいと願ったキオのその後は、なんとも中途半端。
キオの足の真実も、唐突に作品のトーンが変わる異質なエピソードで、いろいろと違和感だった。

最初から最後まで二人だけの世界を見ていた印象。結論はずっと目の前にあったのに、心の問題で引き延ばし、動きのあるエピソードでストーリーが盛り上がる展開が足りない。静かで美しいととるか、静かすぎて退屈ととるか。

どちらにしてもキャラクターに魅力を感じず、自分には合わなかった。キオとロシェルは医療の助けを借りて欲しい。

0

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