やわらかな星は、涙が出そうなほど甘かった。

キャンディカラーの世界できみと

candy color no sekai de kimi to

キャンディカラーの世界できみと
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神8
  • 萌×210
  • 萌9
  • 中立0
  • しゅみじゃない5

--

レビュー数
9
得点
107
評価数
32
平均
3.5 / 5
神率
25%
著者
中庭みかな 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
すずくらはる 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
価格
¥734(税抜)  
ISBN
9784344842359

あらすじ

ライトノベル作家の智紘がいっしょに暮らす家族は、高校時代からの付き合いになる最愛の恋人・周とニワトリ(ボリスブラウン)のマチルダ。物語世界に没頭してすぐに寝食を忘れてしまう智紘を机から引き剥がし、手ずからおいしいごはんを食べさせてくれる周は寡黙な男前で、小さなカフェレストランでシェフをやっている。ただ見ているだけで充分だったあの頃からは信じられないくらい幸せな日々に、未だに夢のようだと思ってしまう智紘だが……。

表題作キャンディカラーの世界できみと

永原周、カフェレストランシェフで智紘の恋人・25歳
野田智紘、スランプ中のライトノベル作家・25歳

その他の収録作品

  • たった二文字の甘いもの
  • あとがき

レビュー投稿数9

極彩色の情景描写、心理描写。圧巻の名作。

素晴らしかったです。
何度も読みながらしみじみと感動が胸にしみて、泣きました。

中庭先生の作品を読むと、主人公の「この世界にひとりぼっち」という感じの孤独が胸にしみこんできて、その切なさに泣くことがよくあります。
今回も、智弘(受け)のそんな孤独が胸にしみたのですが、それ以外の部分でも感動で泣きました。

アルマの庭の美しさは本当に素晴らしかった。
智弘がぎこぎこと古いママチャリを漕ぐ様子や、アマンダに餌をあげたり話しかける様子…彼らが暮らしている情景が、鮮やかに目の前に見えるようで、本当に美しかったです。その鮮明さに泣きました。あまりに美しくて…。

私は勝手に、情景描写にこそ小説家の先生方の個性が出るなあと思って読んでいるのですが、本作の情景描写は中庭先生の繊細で、丁寧で、儚げな情景描写を堪能できる作品だったなあと思いました。

中庭先生の作品は、他に「片恋のスピカ」「黄金のひとふれ」を拝読したのですが、これまで読んだ作品の中で、一番まっさらな気持ちで先生の情景描写を楽しめた気がします。
「黄金のひとふれ」は、主人公の深い孤独に心が引きずられて、どの情景描写も冷静には読めていませんでした。「片恋のスピカ」も素敵だったけれど…本作のアルマの庭のシーンは本当に本当に美しくて、透き通った飴玉を思い起こさせる咲き誇る花々に心が奪われました。

ここも、ここも、ああ中庭先生っぽい表現だなあ、素敵だなあとたくさんドッグイヤーをつけて読みました。

中庭先生の作品で初めて読んだのが「黄金のひとふれ」だったので、中庭先生のお話はズタボロの受けが苦難に耐え忍ぶお話…という印象があったのですが、本作を読んで、その思い込みは吹き飛びました。
ほどよい切なさの中に、やわらかで繊細な甘さが丁寧に落とされていて、その塩梅が素晴らしくて…。

中庭先生の物語をずっと読み続けたい、と、物語を読みながら涙が出ました。
小説を読みながら作家さんにそんなふうに思いをはせて泣いてしまうのは、初めての経験でした。
中庭先生の表現が好きです。唯一無二だなあと読むたびに感じます。読めば、中庭先生だとわかる文章が好きです。

生きることに閉塞感、苦しさを覚えている主人公の繊細な心の揺れ動き、風の匂いや葉っぱのそよぐ音が聞こえてきそうな丁寧な情景描写。
どちらもが中庭先生しか書けないものがいつも書かれているし、この作品はその最たるもののように感じました。

終わり方も素晴らしかったです。
本編後の短編「たった二文字の甘いもの」は、「おおおおお…」と引き込まれながら読み終えました。この世界はたった二文字でできる、甘いものでいっぱいだ。最後の一文まであまさず素晴らしい物語でした。

3

眩しい光

全体的に可愛らしいお話でした。
ただ、要所要所では切なく、何度か胸がギュッと絞られました。

中庭先生の作品は2作めです。
最初に読んだお話があまり馴染まなかったので、この先生の作品は合わないのかな?と思ったのですが、このお話は良かった。ジーンと響きました。
言葉の選び方、情景描写、ともにしっくりきて、他の作品も読みたい!となりました。

こちらのお話、最初から既に恋人同士です。
高校時代に智紘から交際を申し込み、周が快諾?して、お付き合いが始まり、現在は同棲しています。
智紘目線で綴られているので、周の感情が全くもって読めないのですが、読者からしたら周の愛情は分かりづらいながらも見えます。

ただ、肝心の智紘には言葉も想いも届かないため、智紘はずーっと不安なままでいます。
恋人同士とはいえ、愛情の矢印が一方通行でしかないのではないか、という不安です。
駆け出しのラノベ作家である智紘は、仕事面でも不安を抱えていて、その両方の不安に押し潰されそうになり…と話は展開していきます。

この作品の何に一番惹かれたかというと、色彩です。

キャンディの色は恋心のピンクに不安のブルー。励ましのゼリーは赤。周の職場はカフェなのですが、その庭に咲く凌霄花のオレンジ。
全てが効果的に散りばめられていて、キラキラしていました。
そして周と智紘、二人の想いが同じようにキラキラしていて、眩しいほどでした。

心情とリンクした色使いに心揺さぶられる、とても素敵なお話でした。

1

おまえが嫌になっても、もう逃がさん

作家・表紙買い。
キラキラふわふわ表紙と”キャンディ”というタイトルから
もうこれ絶対甘々なお話じゃん!と、読み始め…
気が付くと、智紘の片想い劇場に見事に惹き込まれていました…笑。

高校時代からの知り合いで、恋人になってからは6~7年?なのに、
両想いだと分かってのエッチに至るまで282Pかかるなんて…(´・ω・`)
智紘視点で進められるお話なので、
付き合ってもらってる、本当に好きな人が出来たら手放す的な片想い感が
ずっーとずっーと続くので、読み手にとっては好き嫌いが分かれるかもですね。
私もうだうだうじうじ系はあまり好まないのですが、
このお話のカラフル感溢れる言葉の綺麗さや、受攻の一途さ
出てくる周りの人達の絶妙なアシスト加減など、魅力も多々あり
たまにはこういうお話もありかな…といった読後感です。

甘々を期待して読まれると、正直途中でしんどくなると思います。
ですが、このお話のオススメしたいポイントでもある
片想いの切なさ・言葉の大切さ・相手との信頼関係を
十分に堪能出来る深いお話なので、しっとり系が読みたい時にオススメです★

9

隠れた名作

中庭先生の作品郡は、隠れた名作の宝庫だと思っているのですが、思ったより注目されていないのはなんでなのかなぁ、といつも不思議です。

一穂ミチ先生や、凪良ゆう先生、朝丘戻先生なんかが好きなのと同列に中庭みかな先生の作品もとても大切にしているので、もし新しく作品を探している方が居るなら是非、読んでもらいたいなぁと常々思っています。

さて、この作品も、中庭先生のじんわり切なくて温かい、色彩の豊かな文章がとても印象的な作品でした。
表紙のほんわかパステルなイメージとは少し違って、どちらかと言うと、夏の夕方の日差しに、カラフルで透明なガラス玉を透かしたような、淡くて切ない中にある鮮烈で狂おしいほどの愛が詰まった内容でした。

中庭先生の作品は、主人公(受)が痛くて苦しくてギリギリまで孤独を味わい尽くして、そうしてやっと攻め様に掬い上げられる、みたいな印象も強いのですが。

今回は程よい切なさと痛み、シリアス感、そして最後の愛に溢れた2人のやりとりがとてもバランスが良くて幸せな気持ちになりました。

内容は、これから付き合う2人のお話ではなく、すでに付き合っている2人のものなのですが、どことなく安西リカ先生の「好きで、好きで」を思い出しました。
それに比べて少しばかりシリアス、重め、切なさ増量、といった感じでしょうか。

決して派手なことは起こらないのです。
けれど、両思いなのにずっとずっと片思いをしているような切なさ、生きることに少しだけ負い目があるような苦しさ、それらを表現するのは、中庭先生の強みでもあり、本当に素晴らしく上手く物語に絡んできていました。

また、モブの静さんや成島さんもいい味出してましたので、ぜひぜひ、スピンオフ書いて欲しいです。
同人誌でもいいから、静さんと成島さんの行く末を見守りたい…
彼らはこじらせてもう10年以上とのことなので。絶対に面白いお話が読めると思うのです。

攻めの周は、本当にいぶし銀で言葉足らずで、表情も足りません。
けれど、少なに語られる一言がそれらを補うようにずっしりと重くて力強い。
それに加えて、智紘のことをほんとにほんとに大事にしてるのが節々で伝わってくるんですよね。
こういう寡黙攻め、好きだなぁ〜〜〜
いかんせん言葉が足らないので、智紘は色々不安になるんですけど、しっかり両思いになった後に、智紘の腰をずっと後ろから抱き抱えているシーンなんかは、本当に可愛らしくてとっても癒されました。

受けの智紘も、周のことが大好きで大事で、周自身がポロッと零した言葉なんかをずっと覚えているんですよね。
ずっと負い目に感じていた、周を付き合わせている、という気持ちが、やはり全編通して切なかったです。
共感できるからこそ、その弱さや生き方への辛さがより伝わってきました。

そして挿絵も、繊細でお話のイメージにピッタリで良かったと思います。

そしてSSは攻めの周視点。
これを読んでやっと、少しだけ周がどんな思いで智紘を見ていたのか、そばに居たのかがわかります。
思いの外、智紘にゾッコンだったんですねぇ。
いいものを見た。と言う周の周りに漂う空気感だとか色彩が、文章からひしひし伝わってきて幸せなのに切ない。甘いのに辛い。とってもいい塩梅のお話でした。
本文で、周が智紘の書くもの、について触れている箇所があるんですが、
「楽しくてどこか少し寂しくて、本を閉じたあともいつまでも胸に残って消えない、残像のように明るい光だ」と言っていて妙に納得しました。
「食事や睡眠がひとの身体を生かすように、あの光に似たものが、ひとの心を生かすのだろう」
そんな言葉に、中庭先生の書くものこそがそれなんだ、と改めて実感しました。

読んで生かされているなぁ、としみじみ思います。
素敵なお話が読めて、本当に幸せでした。

ちなみに、萌え2評価なのは、私の中で沈まぬ夜の小舟が圧倒的に神だからです。変な意味はありません。

2

可愛い表紙に騙されちゃいけません

作家買いです。

表紙やタイトルからフワフワと甘くて可愛い作品に思えますが、その実、結構痛い部分がある作品です。
ただこちらの作家さん、痛い方向にシフトしすぎるきらいがあるので、この程度の痛さなら全然許容範囲内。
個人的に大好きな当て馬設定等もございまして、特に終盤は萌え爆発で楽しく読めました!


内容です。
高校時代からの恋人・周と、祖父から譲り受けた一軒家で同居中のラノベ作家・智紘。
小さなカフェレストランでシェフをしている周は、生活能力に乏しい智紘の面倒をしっかりとみてくれます。
ただ見ているだけだった高校生の時からは、信じられないような幸せで-・・・と言ったお話です。


こちら、既に出来上がってるカップルのちょい痛いすれ違いものになります。
どこか夢見がちでフワフワして見える智紘と、寡黙で無骨な周と言ったカップリングです。

既に出来上がってるカップルだけあって、序盤は大変甘くてほのぼのしてます。
恋人である周の仕事場・カフェレストラン「アルマ」に行き、食事をしつつ仕事をする智紘。
理解あるカフェオーナーには可愛がられ、無口ながらさりげない愛情を見せる周。
そして家に帰れば、ほのぼのイチャラブ。とても甘いです。

ところがここに、うっすら墨を落としたような不安が滲み出す・・・。
スランプ中の自身の仕事と絡め、一日何も出来なかった事に漠然とした不安を感じる智紘。
徐々に不安を煽られるストーリー運びがお上手で、幸せそのものの智紘が、何故不意に焦燥を滲ませるのか-。
その違和感が気になって、ついつい先に読み進めてしまいます。

ここに智紘が考え出す、新しい作品のストーリー。
また同時進行で語られる、智紘の回想と言う形での二人の過去。
この二つが上手く交錯し、ストーリーは一気に痛さを増します。

実は智紘には、自分の気持ちを周に押し付けて、ノンケの彼に無理矢理付き合ってもらっている負い目があります。
周に本当に好きな相手が出来た時は、潔く身をひこうという決意を固めているんですね。

そこに現れた、とても可愛く性格の良いアルバイトの女の子。二人が好きあってると勘違いした智紘は-・・・と言った所。
もうこのへんが痛くて切なくて仕方ないのですが、そこさえ乗り越えれば萌え爆発。
無骨ゆえ分かりにくかった周の内心なんかが分かると、もうこの二人何やってんだと!!
何だろうな・・・。智紘は多分、周を美化しすぎなんですよね。
彼は智紘が思うよりずっと、ワガママで自分の我を通す男ですよ~と。
そのフラットな態度からは想像が付きにくい、彼の重い愛情にはニヤニヤくるんですね。

他、二人を引っかき回す当て馬・成島もいい仕事をしてくれました。
攻めが嫉妬でギリギリやってるのって、何故こんなに萌えるのでしょうか・・・。

ところで、若干引っかかる部分ですが、受けのキャラクター。
何故こんなに卑屈な所があり、しかも空回り気味なのか・・・。
ちょいフワフワ浮いてるような思考回路にも違和感を覚えました。

と、引っかかる部分はありますが、全体的には好みのお話で楽しく読めました。



6

願うのは大好きな人の幸せなのに

今回はカフェレストランのシェフと
スランプ中のラノベ作家のお話です。

受様が恋でも作家業でも大きく成長するまでと
2人の過去回想を絡めた後日談を収録。

受様はライトノベルを書いている小説家です。

受様が本格的に小説家を目指し始めたのは
高校に受様の小説を読んだ同級生に
「作家になれる」と言われたことが
きっかけでした。

その同級生こそが今回の攻様です。

受様は小説をきっかけに
攻様と親しい友人となりますが
攻様への恋心を抑え切れず
告白したことがきっかけで
2人は恋人としてお付き合いを始めます。

落選を繰り返し続けた受様が
小説は趣味にしようと思い始めた
大学三年生の夏休みの頃
デビューにつながる賞をとります。

受様は就職せずに専業作家となり
卒業のタイミングで米国移住した
祖父の家を譲り受けます。

その頃、
料理人を目指しホテルで修行中だった
攻様はアパート暮らしでしたので
同居を持ち掛けますが
良い返事はもらえませんでした。

受様は細々とながらも仕事を続けられ
先月、通算6冊目の単行本を
出版してもらえます。

しかし、その執筆時に
無理がたたって入院騒動を起こし
カフェレストランのシェフに
なっていた攻様は
受様を1人にしてはおけないと
やっと同居に踏み切ってくれます。

攻様との同居生活は
受様に幸せな毎日をもたらしますが
仕事面はなかなかうまくいきません。

というのも受様は担当者から
次のお話は新しく続けていけるモノを
書いて欲しいと求められていたのです。

今日も攻様の働くカフェで
攻様の料理を食べつつ
四苦八苦する受様でしたが

カフェレストランに入った新人バイトが
可愛らしい女子大生だったことから
攻様と自分の関係についても
いろいろと考え始めてしまい…

受様からノンケな攻様にしかけた恋ゆえに
攻様に好かれている自信のない受様が
恋と作家業でぐるぐるするお話です。

受様はデビュー以来、
小説一筋で頑張っていますが
読者の評判はいまいちです。

新しいシリーズこそはと取り組みますが
なかなか良いアイデアが浮かばないところに

攻様の働くカフェレストランに入った
新人バイトの女子大生が
攻様といい雰囲気を醸し出していて

受様はノンケな攻様がバイトちゃんと
新たな恋を育み始めたのでは!?
と思い悩むようになるのですよ(笑)

悶々した挙句に
受様は攻様とバイトちゃんを主人公に
自分を当て馬にした物語を仕上げ
攻様の新しい恋を応援しようと決意します。

攻様は受様にちょっかいを出す
カフェオーナーの後輩に対して
独占欲をむき出したり
受様用のキラキラな飴玉を絶やさない等

受様にゾッコンなのは
受様以外の人には丸わかりなのに
本人だけが判っていないのが
すれ違いモノの面白いところです。

受様の誤解が解けて
受様が納得のいくお話を書き上げるまで
受様のぐるぐるに一喜一憂しつつ
楽しく読ませて頂きました♪

受様が書き上げたお話には
受様が攻様と叶えたい未来が
描かれていました。

受様の切なさや弱さや憤りとともに
攻様を思う気持ちが溢れたお話に
素敵な未来が続くことを願っています。

今回は本作同様デキカプのお話で
安西リカさん『好きで、好きで』は
いかがでしょうか?
こちらもすれ違ってのスッタモンダです。

6

お仕事も恋も産みの苦しみ

作家買い。対象年齢外かもと恐る恐る手にとってみましたが、あらびっくり、受けさんがお仕事で悶え苦しむ記述が印象的でした!BL的萌えは後半の短編の方で補い、前半はどちらかというと先生方の苦悩話に「おーーーーーーー」と思って面白かったです。本編290Pほど+攻め視点の短編20Pほど+あとがき です。地雷はあんまり思いつかないです。(一応女子は出てきますが)

お話は、雨の中、受けさんがカフェレストランに自転車でランチを食べにやってくるところから始まります。そのカフェレストランは大好きな周が働いているところで、周の作ってくれたナポリタンとエビフライと、デザートのいちじくタルトまで食べてご機嫌になって二人の暮らすログハウス調の一軒家(表紙にいる鶏はペットちゃん)に帰り、よし!とエディタに向かい・・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
カフェレストランのオーナー(美人さん)、その知り合い、アルバイトの子(♀)ぐらいかな。

************以下は内容に触れる感想

周がしゃべらなくてー。最初っから付き合ってるんですけど、智紘が告ったことから始まった関係なので、「ほんと、あんた好きなん?」と最後の方まで疑って。好きなんだろうとは思うものの、もうちょっとなんか表現しない?とじりじりしました。その結果生じる見事なすれ違いは、まさに王道w。
萌え萌えなのは、そんな感情分からん攻めさん視点の短編。こっち読んで、ははーなるほどーとすごく思いました。じりじりされる方いらっしゃると思いますが、最後まで頑張ってください。
納得はするけど、やっぱり言葉にしてほしいなあ というのが正直なところ。

仕事も煮詰まっている智紘は、すごく頑張ったと思います。その小説の方の産みの苦しみに関する記載は、なんだか真に迫っているように感じられて、なんといえばいいのか、いやー先生方の努力に本当に感謝する気持ちでいっぱいです。先生方がいないと私は小説も楽しめないんですもん、頑張ってくださいとしか言えなくて恐縮なのですが、これからもどうぞよろしくお願いします という気分です。

お仕事話がお好きな方にも楽しい(というと先生方には申し訳ないですが)1冊なんじゃないかなと思いました。そうそう、受けさんが書く小説のちょっとした記載があるのですが、頑張って直した後の作品の雰囲気が面白そうで、いいじゃんー読んでみたいーと思いました。

3

両想いなのに片想い

すずくらはる先生の可愛い雰囲気のイラストにも引かれて。

付き合ってるのに片思い感満載なお話。
つきあうきっかけの時点でどうしても「付き合って貰ってる」という意識から抜け出せない智紘。
言葉って大事なんだな~と改めて無口過ぎる周くん(;・∀・)をみていて思っちゃいました。
なので、同時収録の周視点のお話を読むとそんなの杞憂だったのに~となるのですが。
それを言葉にするんだ周っ!と思わず背中叩きたくなっちゃいました。

よく考えると一途同志のふたりなんですよね~。
周くん視点のお話を読むまで、例えば一緒にいることで大事な言葉を消費させてしまうってところまで考えてるとは思いもよりませんでした。

本編はグルグル色々考えてしまって悪い方へ悪い方へと自身の執筆の事もあり余計に流されてしまうのですが、そんな中でも智紘の一途さが可愛かったです。
そして時々ボソッと呟く周にもツボ。
「中二病」発言には笑っちゃいました。
雌鶏のマチルダさんにも癒されます。

あと、ラノベ作家なので、作中小説も絡めているのですが、そのお話も魅力的でした!
ぜひ読んでみたいです~。

3

両想いなのに切ない


初めから出来上がっているカップルの話のはずなのに、片想い感が半端ない。
普通出来上がっているカップルの話の場合、初めはずごく甘くて途中でなにか事件があってというのが定番なのに、幸せいっぱいのピンク色とか言いながら、不安な気持ちを押し隠している感じ全開。
読み終わってみると、ちゃんと両想いだったのに攻めの言葉がないせいと受けが付き合ってもらってるという気持ちが強すぎて遠慮してしまって心がすれ違っていたというのがわかりますが、読んでいる間はずっと切なくて切なくて苦しかったです。
SSで攻め視点になって初めていろいろ考えていたんだなと思いますが、ほんとの恋人になるまで8年って長すぎでしょって感じでした。

<あらすじ>
智紘(受け)はスランプ中のラノベ作家。現在新しいシリーズの構想を練っている途中ですが、全くアイデアが思いつきません。
私生活では、8年の付き合いのパートナー・周(攻め)と一緒に暮らしており、いつもふわふわピンク色の中で生活しているみたいに満たされています。
周がシェフをしているカフェレストラン「アルマ」のオーナー・静とも仲良くしてもらい毎日のように入り浸っています。
そんなある日、「アルマ」に新しいバイトとしてかわいい女子大生・未衣がやってきます。彼女を見たとたん封印していた記憶が蘇ってしまうのです。


智紘は昔から本を読むのが好きで小説を書くのが好きで、大学3年で賞をとりそのままデビューして今に至っています。
ふわふわとした感じで生きてきたと思っており、地に足をつけている周に対して気後れしているところがあります。
周とは高校時代の同級生で友人として親しくしていたのですが、智紘が場の勢いで告白してしまい、付き合うことになります。
キスもセックスもいつも自分からだし、好きという言葉も言ってもらったことがない。そのため、付き合ってもらっているいう思いが強いです。
「アルマ」に未衣が来たことにより、まだ告白する前にカフェを経営している夫婦のニュースを見て周がこういうのが夢だと言っていたことを思い出し、周の夢の邪魔をしているのではと思い至るのです。

周は高校を卒業してから苦労して調理師免許をとり、現在は「アルマ」のシェフとして働いています。
すぐトリップしてしまう智紘を気遣い、食事をきちんととるよう目を光らせています。上下に4人の兄弟姉妹がいて真ん中なためか、高校生で智紘が出会ったときから大人びた態度をとっており、寡黙で表情もあまり変わりません。


スランプでネガティブになっているところに、静の後輩・成島がやってきて智紘にチョッカイを出すので余計に話がややこしいことに。
そのタイミングで、実は半年前に周は店をもつという話を断ったことを聞き、その原因が自分だったということも知ってしまいます。
スランプに加え周の夢の邪魔をしている自分に気づき、智紘は不安定になります。

そんな中、自分の気持ちに整理をつけようと次の本のプロットに周と未衣と自分をモデルにした話を考えるのですが、担当編集に自分をモデルにしたキャラクターはいらないんじゃないかと言われ、自分のことと投影していただけに自分は必要ないといわれているようで傷つくのです。
小説家だけに妄想力が半端なく、あっという間に周と未衣が実は好きあっているんじゃないかという妄想に取りつかれてしまうのです。周は未衣と共通な話題があるとしかいわないし、誤解されてもおかしくない言動も取っているうえ智紘の勘違いに全く気が付いていないし、唯一気が付いていたと思われる成島は見て見ぬふりだしで、それを正す方法はいくらでもあったのに、だれもこの勘違いを正すことなく、修羅場に・・・
巻き込まれた未衣ちゃんもちょっとかわいそうでした。自ら混じってきた成島は静に怒られて自業自得だったけど。

ただ、ここまでくるまで周が智紘の不安に思っていたことに気が付かなかったのでしょうか。結局、周がもう少し言葉か態度で表してればと思うとなんだかなぁという気分になります。
ただ、話に何度も出てくるカラフルなキャンディーのパステルカラーが頭の中ではじけるので切なくて仕方ない話だったのに、雰囲気はカラフルなふわふわしたやさしい感じになっていて、それが違和感なく同居しているのがちょっと不思議な話だったと思います。

静と今回当て馬役の成島の話がちょっと気になりました。
出てきたときから、智紘にチョッカイだしていましたが、どう見ても本気じゃないし、静目当てだよなーと思いながら見ていたので、その後の二人はどうなるんでしょうねー。

SSは周視点。
「たった二文字でできる甘いものは」というなぞなぞに、いまだに好きだと言えていない周‥
本編よりお互いちゃんと話ができるようになった二人ですが、それでもいまだに
「すき」といえない周でした。


「電子特典おまけ」周視点
ある晩、帰宅すると智紘が落ち込んでいることに気が付きます。
智紘は気分が落ち込むと食事量が極端に減り、いつも置いてあるキャンディの消費量が極端に多くなるのです。
まだ仕事をするという智紘を置いて先に寝ていると、夜中に語り掛けてくる声が
・・・

智紘は周が寝ていると思い(周は起きていると言い辛くて狸寝入り)、弱音を吐くのです。そして寝ている周がこの愚痴で悪夢を見ては大変と、おもむろにスマホで波の音を鳴らし、「きれいな魚がいっぱい泳いでいて、ピンクのいるかもやってきました。とても奇麗で楽しいでーす。」と。
智紘が可愛すぎて眠れなくなる周が面白いです。

次の日、変な夢見なかったか聞かれ「ピンク色のいるかが出てきた」と返す周。それを聞いて嬉しそうにする智紘に、可愛すぎて暴れそうになるのを落ち着かせるために何度も顔を洗う周に笑いました。
切ない話が長かったので、このおまけはとても楽しく面白かったです。

2

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