君とふたりで、生きてゆく

Jの総て 3

Jの総て 3
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神43
  • 萌×23
  • 萌2
  • 中立1
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
12
得点
234
評価数
49
平均
4.8 / 5
神率
87.8%
著者
中村明日美子 

作家さんの新作発表
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媒体
漫画(コミック)
出版社
太田出版
レーベル
F×COMICS
シリーズ
Jの総て
発売日
価格
¥952(税抜)  
ISBN
9784778320096

あらすじ

NYでの失踪から1年半、「J」は流れついた刑務所で初恋の人・ポールとの再会を果たす。突然の再会に、戸惑いすれ違うふたりだったが...。
運命の恋、カミングアウト、母親との邂逅...、マリリン・モンローに憧れ、自らのジェンダーに翻弄され続けた少年は運命を乗り越えられるのか―。
「J」をとりまく絶望と愛の物語、ついに完結!
"ふたりのその後"描き下ろしショートストーリーも収録。
(出版社より)

表題作Jの総て 3

弁護士事務所に勤める司法書生
M・モンローになりたかった性同一性障害の青年

その他の収録作品

  • Ride a white elephant

レビュー投稿数12

大団円

マリリン・モンローの死を合図にするようにして、Jの周囲が大きく変わりはじめる最終巻。当然1巻の主要人物も再登場する。

法律事務所に勤めるポールのもとに、リタとかつてJにインタビューした雑誌記者が訪れる。Jは刑務所におり、所内でモーガンと再会していた。Jに面会したポールがリタから知らされた事実を伝えると、Jは精神的に不安定になる。やけになり問題行動を起こしたJに再度面会したポールは、心からJを愛しており救いたいと考えるようになるが、さらにJの母親に関する問題が重なり、Jの混乱は大きくなる。

『ゲイ』という言葉が広まり始めた時代、おそらく名称を与えられることで覚悟を決めたポール。「クールぶってるつもりかもしんねーけどすぐアツくなんし」とのモーガンの評価にもあるように、いかにも真面目で体温の低そうなポールがJのために奔走し、時に声を荒げ、心の弱りきったJを自分の方へ引き寄せようとする姿は心を揺さぶる。

中村明日美子はあとがきに、「強くてカワイイオカマが描きた」かったが、「最初から強い人間なんていない」「愛し愛され、傷つけ傷つき、大切なものがわかってようやっと人は強くなる」「ですからJはこれから強くてカワイイオカマになるのです」と書いている。

物語の最終場面は1980年。この間約20年については何も語られてはいないが、最後のコマのJの姿は中村のあとがきの言葉を裏付けるようである。

巻末のオマケ「Ride a white elephant」は2人の新婚生活に割り込む伯母(理事長)のドタバタ小編。2巻のオマケ同様、波乱に満ちたJのヘビーな物語を和らげ、穏やかな読後感をもたらす。

4

傑作としか言いようがない

今更レビューするのもどうかなぁーと思ったんですが、やっぱり熱く語りたい。
同級生シリーズほど万人受けする作風ではないけれど、中村明日美子先生の中ではこれが一番好きです。
いや、もう好きとかいう次元を越えてるな。傑作、ため息、満足感、感涙、興奮。いろんな感情と言葉が読み終わった後に溢れてきて、愛しさが止まらない。
これ、ハリウッドで映画化しても良いぐらい内容が出来てると思う。(して欲しくないけど)
BLというジャンルに留めていい作品ではないです。でも、BLだからこそ描けた内容。
こういう作品に出会う為に、今まで腐女子やってきたんです。
他人に批判されても罵倒されても、やめないでよかった…と心底思えました。腐女子やってると、辛いこともちょっとはありますよね。
末代まで受け継いでいきたい作品。人生を変えた作品。迷わず読んで頂きたいシリーズです。

4

忘れられない物語。

ラストには1巻の頭へと繋がっていく、
映画の終幕の様な完結巻。
君が好きだ、
それだけじゃだめなのか、
クールで優等生キャラであるポールの、
感情的な姿はJへの本気を
いっぱいいっぱいに表わしていて、
クライマックスのJを引き上げるシーンは、
むせるほどに涙がこみ上げた。


この巻は、
壊れていくJとそれを救おうとするポールを中心に、
リタ、ジーン、Jの母親とその妹夫妻、
カレンズバーグのおばさま…と
お互いの「家族」が物語の核になっていく。
自分とリタの間に子どもがいると知った時、
Jは意識を手放すほどに動揺してしまうけれど、
ラストの柔らかな空気を見ていると、
ジーンがいることはJが失った「家族」の温かさを
再び感じられるきっかけのひとつになったのではないかな。


そして2人の友人。
モーガンとエドモンド。
モーガンのポールと再会し背比べをするシーンは、
微笑ましくも切ない、懐かしい痛みのような
息苦しさに襲われました。
1巻でモーガンはポールを殴り仲たがいしたけれど、
モーガンは、ポールが大切で、Jも大切に思っている。
そしてモーガンなりの表現方法でそれをちゃんと伝えていて。
冷酷で常識にこだわっていたように見えたポールも、
大人になったからこそ、モーガンとこんな風に
接することが出来るようになったのだろうね。
ポール鈍感過ぎるけどね(苦笑)。

そしてエドモンド。
彼がいなければ、2人は再会できなかっただろうし、
ポールは共に生きていくほどの決意を固めることは
出来なかっただろう。
調子いいキャラではあるけれど、
ポールを決心させた「ゲイ」と言う言葉の話。
Jが飛び、救いあげた時も彼は一緒にいた。
ラストの1980年にはまるで家族の様にそこにいて、
とても良い関係だったのだろうなと思わせてくれるのだ。


女性として生きていくことを、
家族と友人に理解されて穏やかな表情を見せる、
ラストシーンのJが幸福感に溢れていて
とても救われた気持ちなる。
半生が壮絶だったからこそ、「よかった」と
心から感じることが出来た。


衝突が繰り返されつつも、Jの心が解されていく同巻。
全巻を通してヘビーなトラウマが根本にあるので、
簡単にはお勧めしにくいけれど、
このラストを見届ける為だったのだな、と
思えるような忘れられない作品でした。
まるで映画を見た後の様な、ほうっとため息が出る感覚。
気になって、読む覚悟が出来たら最後まで読み届けてほしい。

4

傑作

読み終えてため息。
傑作です。
構成が素晴らしい。現代と過去を行き来しながら、JとJを巡る人々の事件が明らかになってくるんだけど、中村明日美子さんは見せ方が上手いなァ、と。
あらすじだけを読んでストーリーを理解したつもりでいると、勿体無いです。あの構成と絵があってこその、「Jの総て」なのだ。
ストーリーも登場人物も、本当に魅力的。
結末で胸があたたかくなり、心からホッとしました。

3

これがJの総て

まきこみたくないの。ポールをあたしの人生とかそういうのに

マリリン・モンローの死がJのターニングポイントだったのかもしれない。
彼女の死によってあんなに強気だったJが人が変わったかのようになっていった。
モンローの死、ポールとの再会、そして男ではない自分にリタとの間に子どもがいるという事実。
Jは限界だったのだと思う
でも、そんな中でもポールをまきこみたくないという思い強かった
Jはポールを突き放して、ひとり自分の中にすべてを閉じこめようとしたのだと思う。
そこで、リタが2人を結びつけるキーパーソンとなった

「あれがJの初恋の人」

これはモーガンにも言えることだか、リタは好きな人の幸せをとても願っているのだと思う。
2巻ではリタの存在がJを苦しめていたようにも思ったが、この話はリタがいたからつながったのだと思う。。。

そして、世間の冷たい目・・・
最後までJはポールを愛していたからこそ巻き込みたくないという想い!
それが最後の行動に移った理由であり、ポールのあのすべてを取っ払う言葉・・・

(;;)

これからは2人で戦って生きていけるのだ
これがJの総てでした

中村先生ありがとう!そして多くの方に読んで頂きたい。

3

心に残るどころじゃない…

読み終えて、本をとじてそれでもずっとずっと余韻が残りました。
ひとことで、言い表せる作品じゃないです。
でも本当に読んで良かった。この作品に出会えてよかったと思います。大事にしていつか子供が産まれたら読んで欲しいと思います。
中村明日美子さんの作品はどの作品も好きですが、私の中では「Jの総て」がダントツです。
ストーリーはもちろんですが、絵やコマの配置、線の一本一本細部に亘るまで美しく、視覚的にも素晴らしいです。

ココから先、少しネタバレです…
心に残るシーンはいろいろありますが(Jが飛び降りたとことか思い出しても鼻水出るくらい泣けます)、私の好きなシーンはポールがおばさんに「おかあさん」と心で呼びかけるシーンです。
皆の幸せを願わずにはいられない作品です。

1

巡り合う運命

NYを出て刑務所に入ったJ
そして、再びそこでギムナジウム時代のポールとモーガンと再会を果たし、Jの運命がやっと救われるのです。

ここで見えてくるモーガンの優しさ。
彼はポールが好きだった(プラトニック)、だからポールが好きだったJを守りたい、それがJとポールを再会させるきっかけになるのです。
ポールがJへの気持ちを、自らをゲイだと自覚することから話が進んでいく。
なりふり構わずJの為に奔走するポールの必死さが何故か滑稽なほど、恋する男はバカになる、を体現していて気持ちがいい。
そこまで初恋というのは、とても大事なのだ。
Jにとってもポールにとっても。

リタには子供がいるのだが、Jの子供だという。
前後してアーサーともやったが、本当にJの子かと疑問に思うのは野暮か?
しかし、この子供がいることで、ゲイカプには子供ができないという家族というものを考えた時に、ポールとJのカプには子供ができたわけで、絆が一つできたのだよな、家族が増えたんだよな、という考え方もできるのではないだろうか?
だからリタの登場というのも重要だったんではないかと思うのです。

ラスト年月を経て、80年に突入した頃になるのだろうか、
おだやかな場面が流れ、この幸せを読者も分かち合って実感するのです。

本編でも、せっかく再会した二人がベッドになだれ込む閑も与えられずにかわいそうだったが、書き下ろしにおいても、、、爆笑!
ポールが色々なものをふっ切ったと同時に、やはり過去にとらわれて、ポールを縛っていた叔母の理事長も幸せ過去を捨て去り、新しい道を見つけるという道筋が、全てのハッピーエンドを表わしていて、幸せな気分にしてくれるのです。

『ばら色の頬のころ』という本は、この3巻を読み終わってから読まれることをお勧めします。

1

傑作

画力、美しい絵柄だけでも特出しているのに
ストーリー構成に至るまで芸術作品の域。
ためいきが止まらない。
ラストも素晴らしかった。
同級生などの高評価作品の良さが理解できないだけに
(批判ではなく当方の感受性の問題・人気がある事実は理解できる)
中村明日美子氏によるJで見せられた崇高な世界に後ろ髪引かれるばかりである。

1

上質の物語はインスタントに味わってはいけない(反省)

紙の本でかなり昔に読んでおりました。
が、「ダブルミンツ」映画化キャンペーンで割引になっていたため、電子版を「ばら色の頬のころ」まで購入し、久しぶりに読みました。

この作品での中村明日美子画伯の絵柄は「ちょっとアンバランスの様でもあるけれど、そこが魅力的」だと思っております。今回読み直して「あ、昔は凄くクールな描線だと思っていたけれど、実はとてもリリックだったのね。なんか若さを感じる」とも思いました。

そこで、ここからがこの文章で一番言いたいこと。
紙の本の方がいいよ。
画伯の絵の美しさは電子でも充分感じることは出来るけど。
けど、
紙の質感を手に感じながらゆっくりと、Jとポールとモーガンの世界に浸った方が、価値のある時間を過ごせると思います。
……ちょっと悔しい。

1

現代BLの最高傑作

中村明日美子さんのイラストはアニメイトなどで平積みにされていたので何度か見たことがあったが、前衛的なのか神経に触るような絵だった。
この本は他人にしつこく進められて嫌々読み始めた。それが、一度読み始めてしまえば、最大の障害となっていた、イラストも意味があり私もこのような線が引けるようになりたいと思うまでになった。奇しくも、これが私と明日美子作品との初めての出会いである。今では完全に明日美子先生の虜である。
Jが綺麗すぎる。いわゆるおかまと呼ばれる人々は実際の女より、女らしく、可愛い。本作におけるJも男性ながら、言動、姿かたちともに女らしい。自分の姿を振り返り、せっかく女に生まれたのにもっと女を愉しまねばと思った。
Jの総てという題名から、○○の一生的な感じで結局Jが死んで終わりなのかと思いながら最初は読んだが、すべてが許されるような優しい結末だった。明日美子先生の作品はどれだけ暴力に溢れた世界を舞台にしていても、ハッピーエンドにしてくれる。いつも安心して読むことが出来るのも大きな魅力だと思う。読み終えてから、生きる希望が湧いてきた。

1

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