通称:虫シリーズ
2010年にスタート。
文明の危機に瀕した人類が、より強い生命力を持つ節足動物と融合をはかったという設定の擬人化チックファンタジーです。
2018年7月現在に至るまで、年1冊のペースで刊行され続けている絶大な人気を誇るシリーズで、花丸新人賞への投稿作品が書籍化されたものになります。
「パブリックスクール」や「ヴァンパイアは食わず嫌い」と言った人気シリーズを持つ樋口美沙緒先生の初期出世作であり、代表作。
ムシ好きな作者の、ムシへの愛から発想された作品になります。
それぞれの起源種により、ハイクラスとロウクラスに分けられる階級設定や、ムシの特性による妊娠・出産と、独特の世界観が魅力。
また、作品ごとにカップリングは変わりますが、テーマは一貫して『愛』。
シリーズを通して「愛とは一体何なのか?」と、私達読者に語りかけてくるようにも感じます。
シリーズの熱烈なファンも多く、その人気の高さからCD化もされています。
シリーズ1作目、ハイクラス種タランチュラ出身の澄也と、ロウクラス種シジミチョウ出身の翼による、身分差すれ違いラブです。
階級による差別やいじめ、また徹底的に冷たく傲慢な攻めに、病弱な受けと、胸に痛い要素が多いのですが、その中で際立つのが翼の健気さ。彼の芯の強さや深い愛情に心を打たれます。
また、傲慢そのものだった澄也の、翼に陥落してからの言動が見ものです。
他、ヒメスズメバチ出身の摩耶に、ヘラクレスオオカブト出身の兜と、シリーズを通して活躍する事となる魅力的なサブキャラも登場。
あらゆる意味でシリーズの指針ともなる作品です。
シリーズ2作目。カップリングはハイクラスの名家でクロオオアリの綾人に、ロウクラス種クロシジミチョウの里久になります。
絶滅危惧種で、その特殊な生態からクロオオアリの名家・有賀家に保護されて育った病弱な里久。唯一、自分にあたたかく接してくれた綾人にほのかな恋心を抱くものの、二人は突然離ればなれに。
3年後、星北学園で再会した綾人は別人のように冷たい態度で、というすれ違いが切ない再会ものです。
里久がかなり悲惨な目に遭うため、胸の痛みを覚える読者が多いのではないでしょうか。ただその分、二人が結ばれるシーンには感無量。熱い感動が味わえます。
また、すれ違い時にも、里久に対して冷たく徹しきれない綾人の言動が萌え所。綾人の周囲への牽制ぶりもお楽しみ下さい。
タランチュラ出身でハイクラスの陶也と、ロウクラスでカイコガ出身の郁による、こちらもかなり切ない純愛もの。シリーズ3作目です。
カイコガが起源種であるため、口もきけず体も弱い郁。そんな彼からどんなに邪険にしても一途な想いを寄せられ、いつしか惹かれていく陶也。そんなある日、二人を引き裂く出来事がー。
陶也は澄也のいとこという関係性です。
こちらも「愛」について深く考えさせられる作品。
儚い命ながら、人を真っ直ぐ愛する事が出来る郁。逆に、何もかも恵まれていながら、ただ「愛する」事が出来ない陶也。
二人の恋愛部分だけでは無く、兄弟愛や家族愛、ひっくるめて全ての「愛」というものが深く掘り下げられています。
やはりこちらも痛い部分が多いのですが、そんな中でも萌え所が、郁に本気で惚れてしまった陶也の一途さ。
このシリーズの魅力ですが、傲慢な攻めが受けに本気で惚れてしまった途端、今度は好きすぎて情けない姿を見せてくれる所にあると言っても過言ではありません。その点にも、ぜひご注目下さい。
『愛の罠にはまれ!』
シリーズ4作目。ハイクラス種ヘラクレスオオカブト出身の兜と、こちらもハイクラス種オオスズメバチ出身の篤郎というカップリングです。
過去に深く傷付けた、義兄の郁への罪悪感に苦しみながら生きている篤郎。再会した兜から恋人になって欲しいと甘く口説かれ-。
過去の罪に苦しんでいた篤郎が、自分を許して前を向けるようになるまでの丁寧な心理描写とストーリー運びが注目ポイント。
どれ程罪悪感に苛まれていても、幸せになるための努力を怠ってはいけない-。深いメッセージ性が心を打つ作品です。
また、篤郎に対して酷い仕打ちをする傲慢な兜が、痛い目を見るという攻めザマァ展開も見所。読者をスカッとさせてくれます。
初となるハイクラス同士のカップリングに、こちらも初となる妊娠が書かれと、シリーズとしては大きな転換を迎える作品。
人気のあるシリーズ中でも、特に高い評価を得ています。
シリーズ5作目。ハイクラス種オオムラサキ出身の大和と、ハイクラス種としては下位のナナフシ出身・歩というカップリングです。
異形再生に失敗し、一族から追い出された歩。憧れの大和と寮で同室になりますが・・・。
傲慢な攻めがお約束であるシリーズですが、今作では不器用ながらも真っ直ぐな愛情を向ける攻め。切ないすれ違いはありますが、シリーズ中で最も痛い部分が少なく、また甘い部分が多い作品になります。作者自らエロ要員と言わしめる、二人の絡みシーンにもご注目下さい。
『愛』がテーマになっているのは他作品と共通していますが、今作では「愛とは本能なのかー?」とシンプルながら全ての根幹をなすような問い掛けがされています。最終的に、歩の出す答えが心に響きます。
きっと、一番大切な事は本能で分かっているー。秀逸なタイトルにも注目です。
シリーズ6作目。ハイクラス種で絶滅の危機にあるグーティ・サファイア・オーナメンタル・タランチュラである大公シモンと、ハイクラス種でナミアゲハ出身、性モザイクの葵というカップリングです。
一人で4才の息子・空を育てている葵。空の父親であるシモンとは、とても哀しい過去があり-。
こちらは涙なくしては読めない、切ないすれ違いもの。葵の性モザイクという設定がミソになります。
また、「愛」を知らないシモン。葵の深い愛情に触れ、冷酷そのものだったシモンが変化していく様子が見所です。
気付いていないだけで、必ず「愛」は自分の中に存在しているー。深いタイトルに唸らされます。
シモンと葵による、「愛の在り処をさがせ!」続編です。
シモンに寄り添う為、空と共にケルドア公国に来た葵。そんな葵を守ろうと、過剰な反応を見せるシモンですがー。
やっと恋愛の入り口に立った二人。続編であり、二人の愛が成就する完結編でもあります。
こちらでの萌え所ですが、ズバリ、独占欲や執着心を剥き出しにしたシモンの言動。前作での冷たさが嘘のように、葵に対して過保護ぶりを見せてくれます。
不器用で痛々しかったシモンの愛し方。葵の深い愛情により、自分の中の「愛」にようやく気付けたシモンにホロリとさせられます。
シリーズ7作目。
シリーズ中でも人気の高いハイクラス種・ヒメスズメバチ出身の真耶が満を持しての登場です。
お相手となるのは、真耶の幼馴染みで天才パティシエの央太。
幼馴染みである二人の、再会ものになります。
既刊では、凛として気高く強いイメージの真耶ですが、今作ではそんな彼の弱さが初めて語られます。
また、見所となるのは、シリーズ最強のヤンデレと名高い央太の執着ぶり。
ヤンデレ攻めに、負けてない強い受けと、シリーズでは珍しいタイプのカップリングが新鮮な作品でもあります。