夜の眼

yoru no me

夜の眼
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神15
  • 萌×26
  • 萌1
  • 中立0
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
5
得点
102
評価数
22
平均
4.6 / 5
神率
68.2%
著者
ジョシュ・ラニヨン 

作家さんの新作発表
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イラスト
門野葉一 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
モノクローム・ロマンス文庫
電子発売日
価格
ISBN

あらすじ

あの男が脱獄した。かつてパーカーを騙し、パーカーのすべての誇りを、世間からの評価を、友人を、他人への信頼を叩き壊し、命までも奪いかかった殺人者が。身を隠そうとするパーカーに、口数少ないスタッグ警部補が護衛として付き添い、二人は山荘へと向かうが……。

表題作夜の眼

LA市警 警部補
犯罪記者

レビュー投稿数5

それでも光はあると信じている

こちら、電子での単話配信された作品です。
60ページちょっととページ数としては少ないのですが、とても読み応えがある作品でした。
何だろう・・・。
元恋人であるサイコパスからの逃避行と言うサスペンスものでありながら、人と人の繋がりを描くと言うか。
一人の人間の救済がテーマと言いますか・・・。
う~ん・・・。面白かったですね。

内容ですが、サスペンスものであり、主人公救済のストーリーです。
自身から全てを奪ったシリアルキラーで元恋人・リッキーが脱獄した事を知らされた事件記者のパーカー。
護衛であるスタッグ警部補と共に、身を隠す為に誰にも知られていない山荘に向かいー・・・と言うものです。

こちらですね、二人が山荘に向かう道中、そして山荘で共に過ごす時間の中で、長い間闇の中を彷徨っていたパーカーの魂が救われる様子。
更に、並行してパーカーの回想と言う形で、シリアルキラー・リッキーが語られます。
で、一応カップリングとしてはスタッグ警部補とパーカーなのですが、あるのはキスだけ。
二人が恋人になったのかも定かではありません。
だから、何だろう・・・。
多分、恋愛としての萌えを求めると、ちょっと肩透かしを食うかもしれないんですよね。

が、一人の人間、大げさに言えば彼の根底そのものが描かれてる骨太な作品と申しましょうか。
過去に自分の中の正義に従い、冤罪であるリッキーの釈放を勝ち取ったパーカー。
しかし、リッキーはサイコパスであり、自身も殺されそうになる。
その事で、世間の評価、自分に対する信頼、そして誇りと全てを奪われてしまったパーカーは、未だに深い闇の中に居るんですね。
そして今回の脱獄ー。
そのせいか、あらすじだけだとサスペンス要素の強い作品なのに、受ける印象としては物静かで悔恨の意識-。
彼の心を深く追っていくストーリー運びに、静かに引き込まれるのです。

で、秀逸なのがここから。
「あっ、そうなの?」と言う拍子抜けの結末-。
と、思わせてからの、心が震える展開。
パーカーは前述の通り心に傷を負っている。
そしてスタッグ警部補は無口と、最初は全然噛み合わないんですよね。
徐々に心を許していく二人にも萌えるんですけど。
それが、ラストで悲鳴のような本音を漏らすパーカー。
それに答えるスタッグ警部補の台詞がもう、本当に心が震えると言うか。
思わずホロリとくると言うか・・・。
パーカーの魂は、今やっと暗闇から抜け出し、光を感じる事が出来たんだなぁと、深く感動してしまう。

こちら、60ページちょっとしか無いのです。
このページ数で、これだけの内容を書いてあるのが素直に感嘆しちゃうんですね。
また、パーカーのみならず、スタッグ警部補と言うキャラクターもしっかり描写されてるのが凄い。
MMて、恋愛を書くと言うよりは、人間を書いてるんですよね。
その中で、恋愛が付随して来ると言うか。
上手く言えないんですけど。
私はこの作家さんが大好きですが、こういう部分にたまらなく惹かれます。

とりあえず、お値段安め、ページ数も少な目と手軽に読めるので、ジョシュ・ラニヨンさんの作品に興味がある方の入門編としてもおすすめしたいです。

10

自分で自分が信じられなくなった時に

『小説ディアプラス2017年ナツ号』掲載作品の電子化。
ラニヨンさんの短編が電子化されるのは大歓迎です。短編集って出版されるまで時間がかかりますので、待っていられないんですもの。
また、多作な作家さんだったと聞いていますので、翻訳者の冬斗さんとディアプラスさんに頑張っていただいて、どんどん雑誌掲載をしていただきたいとも思います。だって、今まで読んだラニヨンさんの短編ってハズレがない。今回も、自分の正義を貫いた結果、窮地に陥ってしまった話としてかなりズンと来ました。

あまり詳しく書かれていませんが、主人公のパーカーは事件記者という仕事にかなりの誇りを持っていたと思います。リッキーに対する冤罪を告発し、彼の刑期を短くする運動に奔走したのは、決して恋愛感情だけではない。彼のジャーナリスト魂がそうさせたのだろうと思うのです。

しかしその結果、出獄したリッキーによって更なる犠牲者を出し、自分も殺されかかってしまうなんて、これはかなり辛い。

一時は恋人と思っていた相手に殺されかかるというのもかなり辛いですけれど、一番ダメージが大きいのは、自分が正義と思って行ったことによって、最悪の結果をもたらしてしまったことじゃないかと思うのです。
自分が今まで信じてきて、誇りを持ってやってきたことの全てが否定される訳ですから。
自分の価値観が足下から崩れ落ちてしまった後、彼が過ごした数年間を思うと、腸がねじくり返る様な辛さを感じます。

脱獄したリッキーからパーカーを守る為に派遣されたスタッグ警部補のキャラクター設定が秀逸!
ある意味『職務に忠実な普通の人』なんですよ。
だからこそ、あれから誰も(特に自分を)信じられずに、自分の価値を蔑まざるを得ないパーカーを救済することが出来たのではないかと思ったんです。

自分の仕事の倫理に沿って『ただ善きことを行おうとすること』それ自体の素晴らしさが明らかになる部分は、このレビュー位の短さです。
でも、その鮮やかさと言ったら!
暗く、寒く、孤独だったパーカーの人生に降り注ぐ、春の朝の光が私の目にも見える様でした。

『男性同士の恋愛物語』という枠では括れないですけれど、また、決して『読んで楽しい気分になる』話ではないですけれど、何かにとっても頑張っていて、それでも挫けそうになった時に是非お読みいただきたい物語です。
そんな方にきっと力を与えてくれることを請け合います。

9

この雰囲気がたまらない

特殊な状況におかれた警察官と保護対象者の短編。

脱獄した元恋人が殺しに来るかもしれないという、緊迫感の中で一夜を過ごす二人。主人公・パーカーの過去はかなりワケあり。そこが徐々に明かされていく過程が面白く、話にぐいぐい引き込まれた。
またその過去の諸々は、護衛役のヘンリーとの関係を微妙なものにしそうなのに、ヘンリーはしっかり中立的な考えを示していたのが良かった。

初対面の二人は、辺境の地で隔離されながら、お互いを知っていく。たった一夜、丸一日も経っていないのに、ヘンリーの魅力にやられてしまいそうだった。
常に冷静で論理的、それでいてゲームには容赦なく、明るい笑顔を見せる。過去に恋人を亡くした経験を引きずっており、傷付いたパーカーを放っておかない。堅物かと思いきや、しっかりと芯のある主張を持ち、人間味にあふれていた。
一言で言うといい男。まさに理想型。

事件に派手さはなく、静かな結末を迎える。今後、二人がどうなるか分からないし、これっきりでお別れかもしれない。そうした終わり方も作品の空気感に合っていて、とても良かった。
このしっとりした雰囲気がたまらなく好き。

3

ソファの上のテント

モノクローム・ロマンス文庫の作品は、長編だけでなく短編も大変面白い。残念なのはあっという間に終わってしまうことだ。短編なんだからそりゃそうだ。

表紙真ん中の不敵な笑みの男がリッキー・バブアー。思いの外、年嵩のビジュアル。まぁね、刑務所に10年はいたから。
表紙下がスタッグ警部補。刑事ってなんでこうもセクシーなのか。
表紙上がこの作品の悩める主役、パーカー。一人称は僕。

作品に対してまま悲観主義的立ち位置をとってしまうので、2人は別れるのではとか、主役がまた騙されるのではとか心配しがちだけど、この作品については努めて彼等は幸せになるのだと思いたい。ここから更なる不幸が訪れるなんて、そんなの悲しすぎる。

スタッグのセリフに好きなものが多いです。
口数が案外多いしジョークも言うが、「本気ですか?警察官の多数が〜」と信条に沿わないことにはきっちり主張をするところが素敵。「見張りだ。〜後で、絶対に。〜」この句読点の多さがさ〜ド雄のくだりなんだけど可愛い。
そして極め付け「俺は制服とバッジだけの存在じゃない、パーカー。一人の人間だ。精一杯生きているだけの。そしてそれは、誰にだってできることだ」

萌2〜神

2

リッキーの物語の方に興味がある

電子での海外BL短編。作者はあのジョシュ・ラニヨン。

これまで数作作者様の電子短編を読みましたが、本作は少し異色だと感じました。
というのは、本作は「BL」(またはM/M)とするには恋愛要素が少なく、文芸とするには主人公の衝動が邪魔になる。
主人公は事件記者のパーカー(ゲイ)。
ある殺人事件を調べていくうちに、事件そのもの、また犯人とされたリッキーという男に惹きこまれ、リッキーの冤罪を晴らすために奔走するようになる。
結果リッキーは自由の身になるが、その後もリッキーは殺人を犯しパーカーも殺されかける…
そして今、リッキー脱獄の知らせを持って護衛の警部補がやってきた…

このサイコパス殺人者のリッキーがパーカーを殺しに来るのか、というサスペンス要素。
かつてリッキーにいいように騙されてしまった後悔と自嘲。
護衛の警部補・スタッグも実はゲイ。
緊張の夜にスタッグにすがってしまう気持ち。

スタッグとパーカーのキスシーンがあるのですが、これは正直必要だったのかな、と疑問。
このシーンがある事で、パーカーは恋愛要素に左右される人間で、だからリッキーにもつけこまれたのだし、護衛がゲイで好みならこんなすぐによろめくのか、という気持ちになってしまった。
設定はとても面白いと思ったのにゲイ要素が逆効果の作品、のように読めました。
ただ、お次のお相手がこのスタッグならば、パーカーは良い精神状態で落ち着けることでしょうね。

1

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