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Christmas no kouro
最近立て続けに小説を読んでる流れでこちらを読んだら、一層この文体が好きなんだなと気付かされました。ラニョン先生が好きなのか、冬斗先生が好きなのか、両方かしら。翻訳文が苦手だとか思っていたのは完全に過去の話です。
今までモノクローム・ロマンス文庫は全部電子ではありつつ購入していましたが、今回はKindle Unlimitedで。買う価値は十二分にある短編です。
相変わらず好みドストライクの職業、人物、背景、会話で構成されていて、たまらないです。大の男2人の終盤のやり取り…追いかけてきて欲しかったの、本気だと言って欲しかったの、詰まるところそれをうだうだと言い合う2人…が随分乙女チックに思えて、何をしてんだ君たちはとまぁ頬を緩ませながら読みました。兎にも角にも、非常に良かった。
海を楽しむような島でクリスマスの話ってのもまた良いですね。
『小説ディアプラス2017年フユ号』掲載作品の電子書籍化。
同時刊行の『夜の眼』に比べて軽いお話です。気負わずお手に取りください。
でも、ラニヨンさんのお話ですから。やはり仕事の遂行に誇りを持つ男達のお話です。いや、今回の場合は、自分の仕事をちゃんとやろうとするあまり関係が拗くれちゃうんだけど。
FBIの美術品捜査チームに属するシェインは備州長船康光の刀の窃盗容疑をかけられ、サンタカタリナ島にある別荘のコテージで休職を余儀なくされていました。容疑が晴れて復職が決まり、島で出来た恋人、ノートンの元に出向いたのですが彼は忽然と姿を消していました。それから2年後のクリスマス休暇、任務によって負った大怪我のダメージを癒す為に島を訪れたシェインは、ノートンのコテージでクリスマスライトを設置しようとしている男性に気づきます。見た目は全く異なるのに、ノートンを思い出させる彼を問いただすと、彼はノートン(偽名かも?)その人であり、そればかりか保険会社の調査員で、2年前の事件を調査していたことを認めたのです。では、シェインが恋だと思っていたのは調査の為の方便?シェインは深く傷つくのですが……
感想を一言で言うと「大人ってめんどくせーっ!」。
でも解るんです。
仕事を一生懸命やっていると「こんな感じになっちゃうことあるよな」って。
お互いに調査の仕事をやっていて、本気になればある程度相手のことを調べられるというのも、素直になれないのに拍車をかけちゃっています。
また、シェインが一歩間違えば命に関わる様な怪我をした直後であったというのも、事態を複雑にしちゃうひとつの要因かも知れません。そういう時ってどうしてもネガティブ思考になっちゃうよね。
所謂『誤解・すれ違いもの』なのですけれど、ハリケーンや、バイプレーヤーの寂しい老人、ヒューパートの存在も含めて、登場人物の感情の移り変わりの理由が丁寧に積み重ねられていて、お話に無理がない。すんなり感情移入出来るところがやはりお上手。
クリスマスのお話です。
時期を合わせて読むのも一興かと。
電子での海外BL中編。作者はあのジョシュ・ラニヨン。
主人公は、FBI捜査官のシェイン。
囮捜査中に押収物の日本刀を盗んだ、と所有者から訴訟を起こされ、処分が決まるまで休職しカタリナ島で仮のバカンスを過ごしていたシェイン。
滞在途中に島で出会った自称・美術品泥棒の画家?のノートンとのリゾ・ラバ。
遂に復職が叶い、ノートンに今まで黙っていた自分の仕事の事を話そうと思っていたのに、一足先に姿を消したノートン。
傷ついたシェイン…
さて2年後。
捜査中に腹を刺されたシェイン。クリスマスに退院し、家族との時間を拒否しあのカタリナ島に独りでやってきた。
ところが隣のコテージでクリスマスの飾り付けをしていた男はノートンだった…!
…という展開で、自分の方が捨てられた、と感じているシェインが怒りの感情をノートンにぶつけます。一方ノートンはそれほど2人の関係に重きを置いていなかった感じで、余計にシェインのプライドも恋心も傷つく。
お互い職業は守秘義務が有り、それゆえにこじれまくった関係性。何もない一般人視点からは自業自得にも思えるくらい自分の仕事がいかに心よりも重要と思ってるのか、そのエリート意識までもが暴かれる感じ?
ずっと仲違い的、今回はシェイン視点なので、自分は好意以上を感じてた、だけどお前は単に仕事だった、俺に何も感じてなかった…という失恋感情を強く押し出して、実際ノートンがどういう人間だったのかが描かれてないから読者はシェインに感情移入する流れになるけれど…
一言で言うなら「誤解」ものであって、コミュニケーション大事よね、素直になるの大事よね、という帰結でしょうか。
本作も本心をなかなか言わないノートンに対して、より心を晒したシェインの行動で一歩進めたわけで、結局ひねりなく仲直りなのが少々…ですが、ここは素直に良かったね、と言っておきましょう。
とても面倒な大人二人のすれ違い話。こうなるに至った理由に必然性を持たせる職業設定が良かった。
シェインはプライド高めなドジっ子に見えるFBI捜査官、ノートンは元保険調査員。二週間ばかり共に過ごして運命を感じたはずが、ノートンが突如姿を消す。シェインは傷付いて引き摺り、二年後に再会してからも疑心暗鬼に駆られている。
大人の駆け引きとは到底言えない、微妙なバランスでクリスマス前を過ごす二人。たぶんお互いに自分を守る術を身に付けた年齢で、プライドが邪魔をすることもあり、なかなか心の内を明かさない。
とあるきっかけでやっと爆発したかと思えば、その内容はただの痴話げんか。「俺に連絡できただろ」「そっちだってできただろ」ってもう……呆れつつも微笑ましいというか、何か笑ってしまった。
どちらの説明も筋が通っていて(シェインの方は主に感情論だが)、こうした状況を作り出す設定の上手さに感心した。サクっとくっついて万事解決。可愛くないところが可愛いと思える主人公だった。
エピローグも良かったが、ここに期待していたのは二人の出会い編。ちらっとでも見せて欲しかったな。