お買い得商品、セール品、中古品も随時開催中
思わせぶりな含みがたくさんあるストーリー。
表題作と同時収録で、必要な情報はある程度得られます。
ただその情報ですっきりするか、もやっと感が残るかは、読者の性格次第かなと思う1冊。
生き別れになった弟を探している孤児院育ちの三葉(みつは)。
彼にとって「故郷」と呼べるのは、孤児院のある町だけ。
数年ぶりにそこへ帰って来た三葉が出会った少年は…。
探している弟と同じ名前で呼ばれる「ナナ」でした。
冒頭部分の視点でやや混乱しますが、1ページ目はナナ目線、三葉登場シーンから三葉目線です。
表題作は火事で名簿が焼けたせいで、行方知れずになっている弟を探す旅の途中で、どうしてもほうっておけないナナに出会った三葉と、同じように孤児として育ったものの、名前すらなく、拾ってくれたひとももう亡くなって、天涯孤独になったナナの話です。
これがすごく匂わせてくるんですよ。
まず、孤児院の火事というキーワードに呼応するかのように出てくる、火を怖がるナナのエピソード。
足に残る火傷の痕が古いものだから、「おや?これは…」って思わせます。
だけど名前の時点で、「名無し」の「ナナ」という名付けの由来から、まあ、別人なんだろうなという察しもつく。
いろいろな情報が錯綜していると言うか。
唯一の肉親を探し出したい三葉の気持ちは分かるけど、あてどなく探しても見つからないよなあ、と思う。
どこからか情報を得ているみたいだけど、具体的な捜索方法は不明です。
ナナの方も拾ってくれたオーナーが亡くなったことは分かる。
でもオーナーとナナの絆がどんなものだったかははっきりと分からない。
亡くなる瞬間まで、ナナのことを気にかけてくれたオーナーの年齢も分からなければ、親子みたいな環境だったのか、恋人のようになっていたのかも分かりません。
ただ分かるのは、ナナがベッドで寝たがらないことと、不眠症ということ。
あとオーナー亡き後だとは思うけど、適当な相手と寝るのを繰り返していたということくらい。
不眠症に悩まされていたのに、このひとのそばだと眠れるというエピソードはそう珍しくもないけど、それ以前にナナが不眠症になった理由がよく分からないから何とも言えないんです。
オーナーが生きていた頃はいつも一緒に寝ていたから、オーナーがいなくなったつらさから?とか、いろいろ想像はするものの、正解がないからスッキリしません。
同時収録を挟んだあとの、三葉とナナのその後もよく分からない。
免許の更新で北海道に行く三葉が、ナナをある島に置いていくのですが、その島の人々と三葉の関係もよく分からない。
分からないこと尽くしだけど、とりあえず天涯孤独な2人が寄り添って生きることに決めたのは分かる、という感じで、白黒ハッキリ!派には厳しいストーリー展開です。
同時収録は弟のナナオの話。
ナナオ(七音)は養子になって、血のつながらない弟と両親と4人家族で暮らしています。
そんな中、三葉の書いた旅行記を弟の部屋で見つけたナナオは、その本に興味を持って…という流れで、三葉とナナオが繋がるかと思いきや、うーむ。
そこはナナオの選択に意味があるので良いのですが、ナナオの知り合いの男性(カツヤ)がよく分かりません。
この人、ナナオよりもずいぶん年上に見えるけど、どういうつながり?出会い系?
好きな人はいるけど、その人への気持ちを断ち切るために別の人と…という空気は感じますが、はっきりとは描かれていないので、ここももやる。
いろいろもやります。
そこが良い!という方もいらっしゃると思うけれど、スッキリハッキリ解決!とか、出てきた情報はしっかり処理して!という方には、なかなか厳しい作品かと思います。
『セブン』
天禅さんのお話はどこかキュン☆てなるところが好きなんですが、今回もキュン☆させていただきましたー(笑)
ナナの淋しくて、でもそれを見せるのがなんだか恥ずかしくてみたいなところが可愛かったです。
なかなか気持ちを素直に出せずにいたりもするけど、最後には自分の気持ちを真っ直ぐにぶつけて。
欲しいものは全部欲しいと言えるナナがステキ。
その後のお話では、自分がいなくても笑顔を見せるナナに妬いてしまう三葉。
それでも、三葉の呼びかけに真っ直ぐに駆け寄ってくるナナにはそんな気持ちも飛んでしまうんだろうな。
三葉には今後大いにナナを甘やかしていただきたい気分です。
『白日の真下』
お互いにお互い片想いみたいな感じで。
特にヒロムは一方通行だと思い込んでて。
その気持ちを隠して離れて冷めるのを待とうと考えるけど。
それで冷ませるとそこまでは考えてたのかもしれないけど、実際目にしてしまって泣いちゃう気持ちってよっぽどだと思う。
それを察したように声を掛けられたナナオは自分がそれを乗り越えてきたせいなのかヒロムより強いんだと思う。
どうしても帰られない気持ちがあったからたとえ苦しい結果になってもそばにいることを選んだんだろうな。
2つのお話が入ってて。
それぞれにリンクする部分があるんだけども、そこで再会にまでは至らないのがどうしてかなーとかちょっと思ってみたり。
再会してのお話も見てみたかったなーとか。
昔なじみがいる街にやってきた三葉は、バーでナナに会う。
記憶喪失で12歳より前の記憶がなくて、前のオーナーに名前が無いから「ナナ」と名付けられた。三葉と同じく養護施設育てです。
ナナは不思議な色香のある少年で、大人びた冷めた顔なんかすると、ぞくっときます。
でも、一番可愛いのは、照れた時の年相応の顔で。
ほんとに一瞬一瞬の表情が見逃せない位、素敵なんです。
三葉が探しているのは、「ナナオ」で、「ナナ」じゃない。
気まぐれに可愛がって、どこかへ行くかもしれない男を、こんなにも手遅れな程好きで──。
ナナの過去も入り混じって、切ないです。
怒涛の涙まじりのかき口説きシーンは、ノンストップで読み続けました。
白日の真下
もう一人の「ナナ」の話。
弟のヒロム×兄のナナオ
シリアスな兄弟カップルの話で、ナナオの方が境遇と年の差からか、覚悟を決めていた気がする。
ナナオの怖さが読解力不足なのかもしれないのですが、よくわかりませんでした。
過去を切り捨てたから、切り捨てたかったから……なんでしょうか。
表題作のセブンは、三葉とナナのその後の話で、ちゃんとラブラブになっていて嬉しかったです。
幸せな気持ちで、読み終えました。
ですが、なぜ三葉の探していた弟「ナナオ」との再会シーンがなかったのか!
それだけが気になって気になって、もやもやしてしょうがないです。
もう1エピソード欲しかったですね。
ある事情から一人ではまともに眠ることのできないナナの前に、三葉という青年が現れます。
最初は意地をはっていたナナですが、三葉の優しさに少しずつ心を開いていきます。
しかし、三葉が探し求めているのは、「ナナオ」という名の彼の弟だと知り…。
なんとなく掴みどころのないお話だな~という印象をうけました。
三葉の人物設定も、ナナの人物設定も、複雑でわかりにくかったせいかなと思いますが、ラストもハッピーエンドと呼ぶには、ちょっと物足りなかった…。
同時収録作品「白日の真下」は、三葉の弟、ナナオのお話です。
こちらは血の繋がらない弟、ヒロムくんが恋のお相手。
この二人、兄弟という後ろめたさもあってか、お互い気持ちを隠しています。
どちらも決して押しの強いタイプではなく、障害のある恋な為、結構切なかったです。
こちらの作品、それなりに楽しめるかな…とは思いますが、読後感爽やか~な天禅さんの作風が好きな方にはちょっとツライかもしれません。