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1994〜5年に発表された作品に、新しく2004年に描き下ろされた最終話を加えての新装版。
「SUGAR Cube」ACT.1〜7
主人公のおとなしい高校生が、素行不良で退学したキヨセという先輩に憧れた事で人生を変えてしまう物語、といってもいいのかな…
キヨセが路上で年上の女性と戯れたり。
怪しげなクラブに出入りしたり。
その度ごとにキヨセが口に入れる角砂糖。
少年は、キヨセを追って紛れ込んでしまったクラブでキヨセのライバルに角砂糖をもらう。
だがそれはただの砂糖などではなく、ドラッグが染み込ませてあった…
トリップしてその男・アキツに抱かれてしまう少年。
その後も、キヨセに会いたいがために不良たちとドラッグを口にしたり。
アキツに敵対する別の不良グループに輪姦されたり。
でもいつも少年はぼんやりして、白昼夢の中のよう。
少年の心の中はキヨセしかいないみたいに。
なのにキヨセは登場せず、アキツが少年に執着していく。
少年の名は「ルリヲ」。
アキツとルリヲの交わす愛はバッドトリップみたい。ふわふわ、ユラユラ。
ルリヲにはアキツの心は見えてない。いつまでもキヨセを追って夢うつつ。フラフラと道路に歩み出てトラックが突っ込んでくる…!
元々の作品としてはこんなバッドエンドで終わってるわけだけど、後年新しくルリヲの「その後」が描き下ろされています。(Act.8)
長い意識不明から回復し、記憶も混濁しているルリヲがアキツと再会する。
名前は思い出せないけれど「声」は覚えている…アキツとルリヲ、2人の現実が今始まるのか?
何しろ今時のマンガでは見ないような、なんともアングラな空気感。
高校生が滑り落ちていく薄闇の世界。ただ流されて、ただ翻弄されて、ただ傷つく…そんな主人公の姿がイタい。
終盤「あおのこと」という作品の序盤が2編収録されていますが、のちに「あおのこと」完全版がコミックスになっています。
カバー下には発表当時に話題になっていた映画についてのエッセイ。
「青春デンデケデケデケ」の浅野○信、「FRIED DRAGON FISH」「PiCNiC」。
表題作は以前に単行本で出版された『SUGAR Cube』という作品の完全版という事らしいです。
あとがきによると、『SUGAR Cube』に描き下ろしを加え、こちらの作品は以前の結末とは違った、光が見えるラストになっているそうです。
表題作の他に『あおのこと』というシリーズが収録されているのですが、こちらはまた別の単行本でお話があるみたいで、この本の中ではまだ続きがありそうな雰囲気で終わっています。
どちらのお話も高校生か大学生くらいのまだ大人になっていない青年と少し年の離れた’ワル’い男が登場します。
けっこうどっぷり麻薬の世界や強姦シーンも出てきますので、苦手な方は要注意です。
受け様は頭は良さそうなのに、流されやすいというか好きな人の影響でどんどん悪い世界に嵌っていくという感じで、余り好きな系統のお話ではありませんでした。
ただ、表題作は攻め様の愛で光が見える結末なので良かったです。
受け様がかなり受け身な感じで、余り魅力が感じられなかったのが少し残念でした。
以前「SUGAR Cube」として出ていたものを、そのエンディングが作者は納得だったのですが、反響が「悲惨とかかわいそう」というものだったため、ACT8として新たに付け加えた作品に、『あおのこと』の導入作品2本が入っています。
この作者さんの特徴の、割と何不自由ない家庭環境にある優等生の少年が、全く真逆の世界にあこがれひきこまれていく、といった展開ははずしていません。
しかし、このパターンは何度読んでも飽きないのですよ。
今回のこれは、しっかりとその少年が捜すものをはっきりと見つけることができるエンディングが待っている点が違うのだと思いました。
確かに、旧版のエンディングでは少年・ルリヲは壊れたまま、差し伸べられた手をとることなく自己を手放してしまった終わりになっていました。
それは、彼にとっても希望を失った自己防衛としてありだったのかもしれませんが、その後付けくわえられたACT8で、アキツをきちんと認識してキヨセと決別することができたのは、すごい救いだったと思うのです。
”あこがれ”と”愛”の区別がつかない少年期。
そんな時代をぼんやりと発光しているような繊細な表現がされている作品でした。
同時収録の『あおのこと』は完全版にて。。。