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作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
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中村明日美子氏らしい2冊だなぁと感じました。
とは言っても「同級生」シリーズのような、爽やかで初々しい物ではなく、美しくも暗く、グロティスクで閉鎖的。
好みの分かれる作品だと思います。
正直、主人公を含め登場人物の思考が理解できず、最後までもやっとしたままでした。
男性との絡みは勿論ですが、女性との絡みも多いので、苦手なかたはご注意を。
結末を含め、「BL的萌え」を求めるかたには少し合わないと思います。
弟の死をきっかけに「羽」を失くしたブランコ乗りの<トリノス>が星空とは真逆に位置する地上へとゆっくり墜落していく過程が1巻だとすれば、2巻はトリノスが再び飛翔するまでの人間らしい迷いと葛藤を丁寧に描いた巻だと思います。
1巻を読まれた方は、ぜひ2巻の最後のページまで読まれてみてください。
それまでの暗く黒い世界に、眩しいくらいに光が射し込みます。
以下、ざっくりネタバレ含む内容です。
サーカステントから逃げ出し、オオナギの愛人になることでトリノスは飛べなくなった己をサーカスから解放しようとしましたが、そもそも支配者が変わっただけで自足の必要がないオオナギとの生活が長く続くはずもなく、かつて同じテントに所属していた<レオ>と再会したのをきっかけに次第に破綻をきたしていきます。
トリノスはオオナギの下を離れ、しかし自足は叶わないまま焦りと不安を抱える日々の中で、偶然再会を果たしたミシェル(オオナギの妻の弟)と関係を持つようになります。その生活は一見甘くも感じられますが…
そんな折、以前逃げ出したテントの団長オーギュスト・キリロワが新しいサーカス団を立ち上げていたことを知り、観に行きます。
ようやく訪れたこの暗く息苦しい物語の大きな転換点でしょうか。
布を操って美しく空中を飛び回る<ルネ>に、トリノスは目を奪われます。
ルネが行っていたのは「エアリアル・シルク」と呼ばれる、トリノスが弟と組んで行っていたブランコと同じ空中芸の一種なのですが、飛ぶことそのものが見せ場となるブランコとは違って、地上で行うようなダンスを空中で行うという、まさに重力に逆らった“パラドックス”とも言える芸です。(余談ですが、このエアリアルシルクは数あるサーカスの演目の中でも圧巻の芸だと思います)
そのすぐ後の、あの詩の一節を書きかえた一コマはグッときました。
この変化を後押しするかのように、オーギュストがトリノスに確固たる真理を教え、物語はいよいよフィナーレへ。
ここから先はもう鳥肌でした。
瞳に力を宿して再び飛翔しはじめたトリノスの強く美しいこと!
素晴らしい作品だと思います。
「同級生」とは毛色がまったく異なり取っつきにくいかもしれませんが、全力でオススメします!
しかしこれはBLではありませんので、その点についてはくれぐれもご注意を。
2巻は1巻より絵柄も内容も読みやすくなっているように思います。
しかし相変わらず黒く美しく痛々しい世界観です。
トリノスはオオナギという外交官に買われて、そして名前をタケオと名乗らされます。
そしてこの家にいても酷い仕打ちを受けるだけで、トリノスは救われることはありませんでした。
結局、オオナギはトリノスとの関係に破綻が生じ、彼を開放します。
その後のミシェル・ボランジェ(オオナギの妻の弟)とトリノスの関係には甘甘部分もあり、ここはBL的な視点で見ても萌える部分かと思います。
こちらの作品が非BLなのになぜBL特化のサイトに掲載されているんだ?と思った人も、この部分を読んだら納得するかもしれません。なんだかBLの境界線って難しいですね。
しかもミシェル×トリノスがもうちょっとでリバしそうな展開だったのです。ここ凄く萌えました!(笑)でも残念ながらリバ未遂で激しく悔しい気持ちになりましたー!!
ちなみにミシェル・ボランジェは2巻の表紙のメガネの彼です。
この物語はずっと残酷さや痛さや狂気を孕みながら進んできましたが、最終的には主人公のトリノスは救われたと思います。他のキャラクターも何となく希望のある終わり方をしたと思います。
その点もBLの醍醐味らしさがあるといえばそうかもしれません。
どうもこの作品は中村明日美子先生の初コミックスということもあり、また官能や耽美を追求した本として、えらくご大層な論文?みたいなものまであるようで、
なんというか、非常に本の敷居が高く上げられてしまっているような気がします。
ですが内容自体は分かりやすいものですので、
耽美だ官能だ芸術的過ぎて分からん世界だ!と倦厭せずに読んでみて欲しいです。
まぁ苦手な方はどうしたって苦手でしょうから無理にはすすめませんが。
だいたい私も耽美なんて酔っ払うために読んでいるだけで何にも分かっちゃいないと思いますし←
単純に中村明日美子先生の絵を楽しむのも良いと思いますし、黒くて美しい世界に浸るのも良いと思います。
そしてそこからこの物語に何かを感じ取ってくだされば幸いです。
1巻よりも描線が緻密で繊細になったこの巻の中村氏の絵は、ひさうちみちお氏の絵にも似た無機質さをまといつつも官能性を増すことに成功している。
また、現在の彼女の絵の特徴の一つである瞳の描き方もこの巻の後半で完成したと見てよさそうであり、この表現で人物の表情がより豊かになっている。
1巻後半からのあらすじは以下の通りである。
オオナギに引き取られタケオと名を変えたトリノスは、自分の「弟」と同じ名前を持つオオナギの妻の弟・ミシェルに自分の「罪」を告白したことで、彼と親しくなる。
このことやタケオの元同僚ジャグラー・レオの事故がタケオとオオナギの関係に変化をもたらし、タケオはオオナギの元を去ることとなる。
1年後に再会したタケオとミシェルは恋人のような関係になるが、実はミシェルにもオオナギの妻である姉・ココとの間に秘密があり、互いに傷を舐めあうような意味合いも込められた関係であった。
タケオの元いたサーカスが再びこの町に訪れた時、タケオの過去について、そしてタケオとミシェルとオオナギの関係について、物語が大きく展開する。
タケオ、いや、トリノスは、結局サーカスから逃れることはできないのだが、彼なりの幸せには向かうことができているものと思われる。
非BL作品故、当然物語の主題は“ラブ”ではないためそれを求めたい向きには勧められないし、内容も明るいものではないどころか痛々しい描写もかなりあるのだが、作りこまれた物語に浸りたい際にはもってこいの1作であり、食わず嫌いせずぜひチャレンジしてもらいたいものである。
なお、データベースには「攻め:ミシェル」となっているが、オオナギとタケオのシーンもあることを付け加えておく。
また、ジャグラー・レオの過去を描く番外編『MEQUE MEQUE』がコミックス『鶏肉倶楽部』に収録されているが、この短編集は全体にかなりエロ・グロ・ナンセンス色が強く(なんせ表題作のテーマは鳥姦!)、レオの恋の相手も不美人な令嬢であることから、読み手を選ぶであろうことを補足する。