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kanashikute itoshii
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
小山田あみ先生がイラストを担当されていた旧版を読んだ時から、惹きつけられてやまない作品です。そして読むとたこ焼きが食べたくなります。
事故で妻子を亡くした有名企業の会社員と、AVのスカウトで生活する青年。普段の生活圏から逸脱しなければ出会うことはなかったであろう男同士が、深い愛欲に落ちていく物語。
レビューでよく使う「エロ」と「エロス」は、別物として使い分けています。「エロ」は行為そのものの描写、「エロス」は性衝動を伴ってて、お互いにその人じゃなきゃダメみたいな状態。しかも動物的本能っていうんじゃなくて、もう理屈では説明できない相互関係を表したものなので、わたしの思うエロスは受け攻め一人だけの情動では成立しない現象かもしれません。そしてなかなか伝わりにくい萌え…笑。あくまで個人的な受けとめなので、そんなイメージを持ってる人がこのレビューを書いていると流していただければ幸いです。
BLでエロとエロス両者を兼ね備えた好みの作品に巡り合うのはなかなか難しいのですが、本作は耽美小説とは違うタイプのエロスを感じた作品のひとつ。刹那的な関係が永続的なものに変わっていくプロセスを読ませてくれるところがBLらしいと思います。
冒頭、二人の出会いのシーンは、すでに現実から少しズレていきそうな予感がたまらん雰囲気です。その後、彼らがセックスだけする同居生活になだれていく様子が淡々と描かれていきますが、視点が醒めていればいるほどなぜか説得力を帯びます。
二人を結びつけたのは、家族を失った絶望感。和美の散らかった部屋で生まれた関係は、和也にとって現実逃避でしかなかったはずなのに…。一度和美の部屋を出た後、和也はまた戻ってきます。ここから徐々に変化を見せていく二人の関係が読みどころです。
和美の小さな優しさに触れたことで救われた和也は、今度は自分が和美の役に立ちたいと立ち上がります。すぐにカッとなり、現実的な問題解決を不得手とする和美のために、大人として常識的なふるまいをすることで。
後半、素直に気持ちを言葉にできない和美が愛おしくなっていきます。お母さんのこと、本当に大好きだったんだなぁ、と。どんなにだらしなくても、親に顔向けできないギリギリの生活してても、お母さんだけは見放さないでいつも心配だけしてくれてたから…。耳が痛いです。
和美を愛おしく感じたのは、自然と和也の心情に寄り添って読んでいたからだろうと思います。メインの二人がどちらも優しい人間だったから、このタイトルなのだと読後にしみじみと実感しました。
浴衣のシーンが大好きです。浴衣が誰かの思いを託したモチーフになっていて、単なる浴衣コスじゃないところが素晴らしくて。でもエロくて美味しかったけど、結局!
余談ですが、本作を購入した頃、別の作家さんも小山田あみ先生からyoco先生にイラストが変わった新装版作品が刊行され、新たなトレンドが生まれたと実感した記憶があります。ちなみにそちらも新装版買いました。
全く作風が違うけれど、どちらのイラストでも不思議とピタっときます。多分、このお話がビジュアルイメージに頼らない、人物の心理や情にフォーカスした作品だからかもしれません。
最後はラブラブ夫夫です笑
yoco さんが挿絵を担当した本を集めています。
タイトルは、故人をしのぶ哀悼の「哀しい」。
二つの死と葬式の場面が出てくる
一つ目の死は、冒頭の事故で妻子を失った主人公・池田和也。
勤務中に、妻子が車の事故に巻き込まれ焼死してしまう。
自我を喪失したまま終えた葬儀の後、事故現場が見える歩道橋の上で立ち尽くしていた和也に「飛び降りんなよ」「死ぬんじゃねーぞ」と声をかけてきたのが安原和美だった。
和美に誘われるまま付いて行き、肉体関係を結び、暫く同居する。
粗野な遊び人だけど、優しい所がある和美。
二つ目の死は、安原の母。
訃報を受けた和美に請われて、一緒に行く和也。
安原の母は孤独死していた。
和也も和美も、家族の死に際を看取れず死別している。
最期の言葉を交わせない、看取れなかった死。
遺品整理で母の慈愛の深さに気づいた和美と兄、和美は海辺で一人泣いていた。
和也が和美の兄に気持ちを代弁して、和美と兄の和解と、投げやりだった和美の人生の転換するきっかけを和也が作る。
和美と共に行きたいと思う和也。
人は不思議な生き物。自分の為ではなく、誰かの為なら力が沸く。
大事な家族を失って、哀しみと愛しさに気づいた二人。
大事なものの脆さも知ったので、きっと幸せになれると思う。
どことなく愁堂先生の「七月七日」に近いイメージのある作品だと思っていたら、近い時期に書かれた作品の様でした。
今の作風とは大分違いますが、こちらはこちらでとても魅力的な作品だと思います。
淡々とした和也視点での進行で、初めは正直言って和美の良さも分からないし流される和也の気持ちも理解出来ません。
でも和也が和美のアパートから出て行って、自宅に帰った時に夢から醒めたように現実に戻るんですが、数日後にまた和美の元に戻ってからは何となく2人の事が理解出来る様になりました。でもこれってハッキリとは言えない感覚的なものなんです。
大事な人を亡くした人なら知っている損失感だとか、同じ痛みを抱えているからこそ寄り添え合える共感だとか、2人は愛してるとか好きだとかお互いに言って無いのに分かり合っているのが良いのです。
後半の和美視点の「愛」や両サイドからの「夢」も良かったし、あとがき後の書き下ろしの「それから」にホッと来ました。
号泣したりとかは無い作品ですが、ジワジワと心を揺さぶられる作品だと思いました。
評価が分かれる一冊だと思う。
甘々、王道BL好きの私は合わなかった。
私自身攻めに愛着が持てなかった部分もあり、読んでいてモヤモヤ。
受けに対して暴力を振るう姿が痛かったからだ。
しかし、人の死をきっかけにストーリーが展開され、
親と、私自身自分との関係を考えさせられる機会もあった。
各、章毎に短編的にまとめられ、読みやすい構成。