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mouiikai madadayo
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
「てのなるほうへ」で出ていた、ろくろ首 春宵がメインとなるスピンオフ。
前作はせつなさありのハピハピものに感じましたが、
当作は「永遠に近いもの」をどうするか ということが
少し取り上げられているようで、ちょっぴりせつなさありの印象です。
お話が好き。小椋先生の挿絵がこれまた秀逸!
で神に近い萌2でお願いいたします。
いいんです、妖怪が。
表紙でお分かりになるように、とても描きこまれています。
カラー口絵は、前作メインカプを含めた妖怪たちの宴会図。
プチトマト妖怪(正式名称知らず)が攻めの膝に寄り掛かって
酔っぱらってます。
めちゃくちゃ愛しい。こういう書き込みいっぱいの図。
中は3作あるのですが、その中表紙が、妖怪大行進の
ぱらぱら漫画のようになってます。
こういう本作るのって、とっても楽しいと思う。
一日千秋:江戸時代のお話。50P弱。
もういいかい、まだだよ:現代設定。160Pほど。
もういいかい、もういいよ:まだだよ の20年後。10Pほど。
春宵が、思いのほか、天然ちゃんでうぶうぶちゃんで、
とても妖怪とは思えない、本当に可愛らしいキャラでした。
そんじょそこらの人間よりずっと子供。純情。
**************以下は より ねたばれ
一日千秋:
江戸時代、人を驚かして、妖怪として有名になんなきゃな!と
頑張ってる春宵が、人間(弥一郎)との関わりで傷つきます。胸が痛い。
御簾裏(みすら・狐姿の妖怪で江戸の妖怪の元締め)の親心(傷ついた春宵に
寄り添う)と、まだ頑張ろうする春宵に、じーん。
まだだよ:
「弥一郎」に瓜二つな樋野学と春宵のお話。
学は不器用な一途さん かな。春宵は人間のある家族に3世代に渡って
家族として過ごしてもらっています。本当に本当に可愛いです。
そんな二人の大切にしたいお話。最後の学のセリフに、有難うと言いたい。
もういいよ:
学は42歳ごろで、御簾裏がこっそり学のところに来て、
「選択肢がある」とささやいたりもしています。
まだまだ悩む、でもそんな時間もまだ許される二人の心の揺れ でした。
ほわほわ幸せ話ではありませんが、二人で一生懸命悩んでいる姿が
とてもとても心に残る、作品でした。
先生、今回も素敵なお話、有難うございました。
次は御簾裏のお話を読んでみたいです・・・贅沢でしょうか。
ろくろ首の春宵は人間社会に溶け込んで暮らしています。
平成の日本(おそらく平成一桁代)、春宵は自分の正体を知る大学教授のもとで、大学生・樋野学と出会います。
樋野は、江戸の昔に春宵に初めてできた人間の友人・弥一郎と同じ顔をしており、春宵は樋野のことが気になって仕方ありません。
もしや弥一郎の子孫では?と考えた春宵は樋野のことを知りたいと近づくのですが・・・というお話です。
草枕と違い、人間・妖怪両方の社会でそれなりに上手く生きてきた春宵視点で語られるので、前作『てのなるほうへ』よりも妖怪社会について詳しく書かれていた気がします。
そして、妖怪と人間のもっとも差違な部分、「寿命」についても・・・前作で春宵がぽろっと吐露していたので、春宵が主役ならそいう話になるだろうとは予想していましたが、考えれば考えるほど切ないなぁ・・・。
救済策も提示されていはいるけれど、それを彼らが選ぶかどうかまでは書かれておらず、そこは読者に委ねられます。どちらが幸せか・・・それは人によって違うでしょうしね。
弥一郎と樋野の繋がりについても、人によって解釈が違いそうです。
おもしろかった!という以上に、読み終えて人と語り合いたい一冊でした。
この作品は「寿命」と「トラウマ」がキーワードだと思います。
過去、弥一郎にしてしまったことを後悔し続け、その時弥一郎の一言に傷ついていた春宵。
寿命の問題もトラウマも、癒えて乗り越えた、には達していませんが、彼ら二人なら・・・!と信じられる優しい雰囲気に満ちていました。
今作だけでも問題ありませんが、『てのなるほうへ』も読むのがオススメです。
飄々としたイケメン春宵(前作)と、そんな彼にもいろいろあって傷ついていて、そして恋人の前ではこんなに甘くて可愛い!という一面(今作)が楽しめますのでv
『てのなるほうへ』のスピンオフ。
前作読んでいた方が前作のネタバレにはならないかな~という程度なのでこちらだけでも十分楽しめます。引続きイラストは小椋ムク先生。
表紙にいる、ある可愛い妖怪達も活躍します♪
今回もイントロ「一日千秋」でがしっと心、鷲掴みされました。
妖怪世界と行き来しながら人間世界でも生活している、ろくろ首「春宵」が主人公です。
草枕や弥一郎との関わりには色々考えさせられるところがあります。
切ないです。
日常描写では、春宵さんは江戸時代から生きてるおじいちゃんなので、言い回しが古くて逆にその表現が可愛くってそこが私には萌えポイントでした。
のっぺらぼうが主人公だった「てのなるほうへ」のスピンオフです。
「てのなる〜」で、個人的にすごくすごく気になる存在だった、ろくろ首の春宵。
スピン元の方で「人間と恋仲である」ことに言及していたので、これはもしやスピンオフあるのか…と思い探してみたらこちらの作品を発見することができ、やった!と即買いでした。
スピンオフ作品ではありますが、スピン元を読んでいなくても問題なく作品の世界観に入っていけると思います。
(※本文にも挿絵にもスピン元の二人が出てくるので、元を知っているとより楽しめます☺︎)
ええと、正直に言うと、どちらかと言うとスピン元の「てのなるほうへ」の方が個人的に好みだったな、と。
というのも、前作の攻め、のっぺらぼうの草枕ほどには、今回の攻め様に感情移入できなくて…。
学が春宵を好きになったきっかけやその過程なども、どうもピンと来ず、な部分もあり。
なんといっても弥一郎との出会いやエピソードがとても良くて印象に残ってしまったため、弥一郎と比べると学(今回の攻め)がなんとなく薄ーく思えてしまったんですよね。。
”出る”と噂の妖怪を自ら探しに来て、人間を驚かせようと待っていた春宵の首を持ち上げ、逆に春宵を驚かせてしまうー
そんな弥一郎にとても好感を持ってしまっていたので、いまいち学の魅力が感じられなかった…
それからこれは作品の評価とは全く関係ないのですが、読み進めるまで私、勝手に春宵は攻めだと思っていまして;
本編を読んで春宵が受けだと分かった時、ちょっと動揺してしまったんですね。
あくまでも私の中の勝手なイメージだったのですが、ちょっと”イメージ違い”でびっくりしたー!というのがありました。
ただ、ストーリーは文句なく面白く、そのテーマも奥深いです◎
前作で持ち越されていた(?)「人間と妖怪の寿命の差」というものに、攻めの学は真っ向から向き合い考え抜き、ある結論を出しています。
ただ、そぼ決意をまだ春宵には話していないんですね。まあ話しても間違いなく拒絶されそうですが…これからどうやって二人は意見をすり合わせ、結論を出すのだろう…と非常に気になるところです。
あと、前作も挿絵が可愛くて可愛くてきゅーん!だったのですが、今作も小椋ムク先生の可愛いイラストの素晴らしいこと!(⸝⸝⸝°◽︎°⸝⸝⸝)
ページを開いてすぐ、スピン元の二人と今作の二人が合同で飲み会しているイラストがあるんですが、もうキュンキュンです。。「トマトの妖怪」をスピン元の受け様が正座した膝の上に抱える形で載せていたり、顔を赤らめた提灯が酒瓶をそのまま飲んでたり(笑)可愛いったらありゃしない!❤︎
考えさせられるテーマを持ちながらも、可愛らしくてなごんでしまうシーンもあり、前作に引き続き、妖怪の世界を存分に楽しませていただきました✨
「てのなるほうへ」はだいぶ前に読了済み。
今回は、そちらにも登場していたろくろ首が主人公。
「てのなるー」の草枕とは違って、いたずら好きの明るい子というイメージがありましたが、それだけではなく、隠された彼の後悔が描かれたお話になっています。
小椋ムク先生の描く妖怪たちがとても可愛くて、癒されます。特に酔った子たちが。
「一日千秋」前章にあたります。
江戸の頃、まだ若かったであろう?春宵と樋野弥一郎という人間との出会いから別れまで。
妖怪も人間と同じで、持って生まれた性格というものはそう変わらないんでしょうね。
春宵は、妖怪、人間に関わらず、誰かと関わっていきたいタイプで、なんというか、とてもポジティブ。悪い想像をあまりせず、楽観的に人々と関わっていこうとします。
首を飛ばしたり長くしたりして驚かすのが彼の楽しみで、弥一郎との出会いは、いつものように驚かそうとしたところ、逆に彼はウワサのろくろ首を探していて、まんまと春宵は逆ドッキリされてしまったというものでした。
結核に侵されていた弥一郎は余生を楽しく生きようとしていて、春宵も友達として彼と過ごす時間を大切にしていましたが、無情にも病状は進んでいき。危篤状態を目の前に、春宵は妖怪のボスにお願いして、弥一郎を死なない妖怪にしてしまったのです。
春宵は、良いことをしたと思っていました。
だけど、弥一郎は違いました。
春宵にしてみればほんの少し流れた時間。
弥一郎が生き返ってからの何十年、まったく歳を取らない姿に、周りから不気味がられるようになっていたのです。
そんなとき偶然ふたりは再会しますが、弥一郎が口にしたのは恨み節と、「化け物」という春宵を罵る言葉でした。
そして弥一郎は自死してしまいます。
深く後悔しながらも、春宵はやはり人間と関わっていくことをやめられないのでした。
そして本編。平成です。
妖怪でありながらも、お世話になっている荘助の協力もあり、人間界に馴染んで生活している春宵。
戸籍もあり、仕事もある。すごい。
大学教授である荘助の助手として働いていて、偶然にも樋野学という、弥一郎にそっくりな青年と出会います。顔貌や、匂いまでそっくりのようです。
弥一郎との繋がりを確信し、とにかくその子孫かもしれない樋野くんとの関わりを持ちたくてしょうがない。即行動、が春宵らしい。
春宵の良さなんですよね。明るくて、うじうじしない前向きさが。
ひょんなことから樋野くんがゲイであることを知ってしまい、春宵も秘密を話すべく自分が妖怪であると告げるのですが、全く信じてもらえず、首を飛ばして見せることもできず、悪質な嘘だと思われて、ゲイは妖怪だと揶揄しているのかと怒らせてしまいます。
ふつう信じませんからね。
確かに、幽霊はいるいないとよく騒がれているのに、妖怪は昔の言い伝えみたいな、創作っぽいような感じがしますから。
妖怪ウォッチが流行った時、妖怪は流れキター!と喜んでいたのかも。
でも昔々から変わらない春宵の写真を見せたり、荘助の思い出話などを聞いたりして、わりとすんなり信じてもらうことができましたが、そこからがだいぶ唐突なラブ展開。
樋野くんはたぶんもともと春宵は好みで、バイトなどを通して付き合ううちに惹かれていったのだろうなとは思いますが。妖怪であることは、彼にとっては障害とはならないようです。
お付き合いが始まったのはいいものの、春宵の本来の姿(ろくろ首したところ)を見せてくれないというささいな仲違いがあり、ぎくしゃくしたまま樋野くんが測量バイト中に土砂崩れに巻き込まれてしまいます。
ここからが妖怪の本領発揮!
仲間であるかまいたちやムササビ(毛布みたいにでっかい)の協力もあり、春宵も首を飛ばして樋野くんを見つけ出し、救助成功です。
ここの小椋先生の挿絵がまた可愛いんだー!
また、樋野くんが生死の境を彷徨って魂が抜けたからなのか、思った通り本当に先祖であった弥一郎の魂が乗り移り、あの時の謝罪と感謝を口にしてくれます。
「化け物」と言われたことは春宵が自分で思っていた以上に深く傷になっていて、枷になって、本来の姿を見せることができなくなっていましたが、数百年の時を経て、ようやく春宵は自分のアイデンティティ?を取り戻すことができました。
元気になった樋野くんと初めて身体を繋げることになったのですが、妖怪として長いこと生きてきても、未熟だったり、初めてのことがあるもの。
照れながら夢中になっている春宵はとても可愛かったです。
樋野くんは肝すわってんなー。さすが弥一郎の子孫。
最後の後日譚では、ふたりが恋人になって20年経ったころの様子が描かれています。
このころに草枕の「てのなるほうへ」が現在進行形で起きているよう。
春宵はもちろん姿形変わりなく、樋野くんは40代。リラックスできる非常に良い恋人関係を続けてるようですが、見た目の差は開く一方。
そして、弥一郎を不老不死の存在にした妖怪のボス、御簾裏が樋野くんに囁きました。
「まだ選択肢はある」
彼らは最終的に何を選んだのでしょう。
それは描かれていませんが、とても良い終わり方だったと思います。
とても面白い作品でした。
『てのなるほうへ』で、主人公・草枕の親友であり、良き理解者でもあり、巽との恋のナイスサポートをしてくれていた春宵のお話。
『てのなるほうへ』がめっちゃツボだったので、『もういいかい、まだだよ』の発売を楽しみに待っていました。前作が未読でも問題なく読めると思いますが、草枕も少しだけですが登場していて物語としても時系列がリンクしているところもあるので、読んでいると「あの時のシーンか!」と気づく部分もちょいちょいと出てきます。なので、前作を読んでいた方が楽しめるかもしれません。
ネタバレ含んでいます。ご注意を。
江戸時代、ろくろ首の春宵は町で人間を驚かすのが彼の楽しみ。
その日もいつものように町へ繰り出し、出くわした人間を驚かしてやろうと待ち構えていた時に出会ったのが弥一郎。
病を抱えながらも明るく愉快な弥一郎と意気投合し仲良くなりますが、その後、弥一郎のためにと思い春宵がしたことがきっかけで弥一郎と決別することに。
時は過ぎ、現代。
春宵は樋野という大学生と出会いますが、この樋野という青年が弥一郎とそっくりで…。
というお話。
前作『てのなるほうへ』では、理知的で冷静な男性、というイメージを春宵に抱いていたので、ざっくばらんでいたずら好きな人物だったのがまず意外でした。けれどそこがまた彼のビジュアルにあっていて可愛らしい。
春宵は妖怪仲間と仲たがいしているわけではないのですが、人間が好きで、そのため人間の暮らす世界で普段生活している。その生活をサポートしてくれている大学教授の壮助という人物が、恋愛感情ではなく、春宵を心の底から愛していて大切にしてくれているのがうかがえて気持ちがほっこりします。壮助と春宵の「つながり」が、ちょっとおもしろく、不思議な関係でありながらしっくりくる。
『てのなるほうへ』でも出てきた御簾裏や、ほかの妖怪仲間たちが、春宵に優しく彼が困った時にはしっかりサポートしてくれる様も良かった。
ただ、攻めの樋野くんがなあ…。
いや、別に悪い子ではないし、春宵のことを大切にしている様はきちんと読み取れるんです。
なのだけれど、彼のキャラがいまいち弱い、というのか…。
彼が春宵に惚れた経緯がよくわからない。
春宵は弥一郎とよく似た面差しを持つ樋野くんに興味を持ったというのは理解できる。けれど、樋野くんの方は…?
樋野くんが抱えるゲイであるという葛藤と、春宵が妖怪だという秘密。それらがごちゃごちゃしている間にちゃっかり春宵にキスして、とんとんと恋人になっちゃった、という感じ。
全体を通して優しいストーリーにしたいという栗城さんの思いは理解できるものの、この二人が恋人になるまでの過程、がBLという部分でのキモになるところだと思うので、そこがあっさり流れちゃったのが残念でした。
時系列としては、『てのなるほうへ』の二人のお話よりも20年くらい前になるのかな。
『てのなるほうへ』で、草枕と巽が恋人になる頃に、樋野くんは40代半ば。
妖怪から見ると人間はあっという間に人生を終えてしまう。
時間の進み方が異なる樋野くんと春宵が選択する「これから」はいかに。
ここで春宵がかつて弥一郎にしてしまった「とあること」に対する春宵の葛藤がつながっていて、この二人がどの道を選択するのか、という終わり方がとても良かった。
ただ、肝心のBがLしている部分で萌えきれなかったのが残念。あと、『てのなるほうへ』がツボ過ぎて、今作の期待度が高すぎたのも一因かも。
全体的に優しい空気が流れ、シリアスな展開になることも少ないので、やさしく甘い作品が読みたいときにはお勧めな作品かと思います。
電子書籍で読了。挿絵あり(サイズが小さいです)。あとがきあり。『特別版(ペーパーかな?)』が付いていました。
大人気だった『てのなるほうへ』のスピンオフなのですが、こちらの評価(得点)がとても低いのは何故だろう?種類は違うけど切なさ具合はこちらも負けてはいないと思うのですけれど。
『命の長さ』についてのお話なので、お若い姐さま方には今一発だったのかな?こちとら、かなり薹が立った女子なもので、結構身につまされました。私の腐女子人生を始めさせる契機になった『ポーの一族』のテーマでもありますし。
三編入っていますが続き物です。通してのあらすじ(ガッツリネタバレ)を。
江戸時代、妖怪と人間が遭遇することも多かった頃、ろくろ首の春宵は人を驚かせることを楽しんでいましたが、唯一驚かずに面白がる呉服屋の長男、弥一郎と出会ます。労咳を病む弥一郎は「人より短い命なんだ、楽しまないと損だろう」と言う前向きで明るい男。春宵は弥一郎に惹かれ、一緒に遊ぶ友人となりますが、日に日に衰えていく弥一郎を見るのが辛くなり、妖怪の仲間に引き入れます。その結果、弥一郎は一命をとりとめて呉服屋の跡目を継ぎ、前の様に一緒に遊ぶこともなくなりました。家業の忙しさの所為だろうと思っていた春宵は、弥一郎を死なせたくない一心でやった事が必ずしも彼に幸せをもたらした訳ではないと知り、大きく傷つきます。時代はめぐって、現代。春宵は父の代から家族の様に暮らしている安藤壮助教授の助手をしています。生まれた時から知っている壮助ももう年寄り扱いを嫌がる年代になっているのに春宵の見た目は20代のまま。学生からは冗談交じりで関係を疑われる様な状況です。ある日、壮助の紹介する測量のバイトに応募してきた学生が弥一郎そっくりで、おまけに名字まで同じ事に驚きます。春宵は壮助から同じバイトを紹介して貰い、その学生、樋野学と親しくなっていくのですが……
寿命が長いということは、多分、過ぎる時間がゆっくりである事なのだろうと思うのです。ある意味、最初のお話はなるべくして起こったことなんですよね。
自然の理を歪める力を持っていたらどうするのか、と聞かれたら私も春宵の様な選択をしてしまうかもしれないなぁと思いますし、それとは逆に、歪められた方だったら弥一郎の様に感じるのだろうとも思います。
そのエピソードがあったからこその、このラスト。納得。じーん。
『てのなるほうへ』のお二人も出て来ますが、それだけじゃなく『異なった文化の二人が一緒に生きていくこと』を描いた連作だと思いますので、前作で感動した方は併せてお読みいただいた方がよろしいのでは、と思ったりしました。
前作「てのなるほうへ」での攻め様のっぺらぼうの草枕の友人として出てきたろくろ首の春宵のお話です。
時系列的にはメインの話は前作の20年前にあたります。前作でのエピソードを春宵側から読めるところもあるので前作を読んでいると楽しいですが、読んでいなくても大丈夫だと思います。
「一日千秋」「もういいかい、まだだよ」「もういいかい、もういいよ」の3部構成です。
「一日千秋」
時は江戸時代。ろくろ首の春宵(受け)と知り合った弥一郎という友人との出会いと別れ。
その時の春宵の行動によりトラウマとなる二つの後悔を作ってしまいます。
寿命のない春宵が、初めて人間の寿命というどうしようもないものに直面し動揺し後悔する様が切ないです。
「もういいかい、まだだよ」
時は流れ現代。自分のことを妖怪だと知る唯一の友人・安藤荘助の庇護により、人間社会で生活を続ける春宵は、弥一郎そっくりの学生・樋野と出会います。樋野が気になって仕方ない春宵は用事を作っては樋野に連絡し交流を深めます。
2人の恋模様という点ではイマイチわかりにくかったように思います。
樋野には恋人がいたようですが、自分が悪いと言っていたので、春宵へと心変わりしたことが破局に繋がったのではないかと想像しますが、春宵視点なのでその辺はよくわかりません。
話が進むと「好きなのは自分ばかり」と嘆いていることから本気度は伺えますが、きっかけなどは結局わからないままです。
春宵の方も、過去の後悔により弥一郎に激似の樋野のことが気になるのはわかるのですが、元々何がしたかったのでしょうか。キスされて嫌じゃなかった、付き合おうって言わたから付き合うことにしたというのはどういう気持ちだったのでしょうか。化け物と言われて傷ついたことが根深くて、いろいろ考えるのを放棄していたようで恋愛面で好きになったのかどうかわかりにくかったです。
樋野と弥一郎と似ていることが2人のすれ違いを引き起こしますが、仲間の協力もあり、悲劇が繰り返されることは回避され、やっとちゃんとした恋人になれます。
でも、何百年も生きてるのに春宵が初心でびっくりしました。
「もういいかい、もういいよ」
樋野視点。2人が知り合ってから20年余り。
友人の草枕が恋人についての相談にやって来ます。そこで、草枕は恋人である人間の寿命について理解していないことに気づきます。
ただ、抜け道はあるのです。春宵には黙っていましたが樋野は早くから一緒に時を重ねたいと思っていたようでした。春宵は過去のトラウマなので激しく拒否反応を示しますが、道は一つではない、まだ2人で考えていけるという希望のあるものでした。
どちらを選ぶこともできるという希望のあるものでしたが、春宵は拒否反応が酷いし、なんかしんみりした感じで読了しました。これは読む人のメンタルによるのかもしれません。希望があると明るく取る人も当然おられると思います。
話の分量でいくと、メインは二人の恋愛なのでしょうが、10数ページとはいえ最後の話のほうが印象に残ったので、なんとなく2人の恋愛よりも年月が経ち再び寿命という別れが近づいてきて2人がどうするかとういうことを書きたかったのかなとも思えました。
まだ時間はあるということで結局どうするかの結論は出ないまま終わってしまいましたしが、肝心の樋野はとっくに覚悟を決めているのに、春宵が怖がるせいで間に合わなかったなんてことにならないことを願います。
前作でも出て来た春宵たち妖怪の元締めである9尾の狐・御簾裏は親のような愛情で春宵を心配します。私は前作で草枕にはあまり優しくない(冷たいというわけでもないけれど)と感じていたので、春宵にはやけに親切だなと思ってしまい、ちょっともやっとしました。
春宵の後ろ盾の荘助は本当にいいキャラだったと思います。自分が生まれたときから一緒にいた歳をとらない春宵を家族として愛し、自分が死んだ後のことまで心配する姿には心を打たれます。
そして古希を過ぎているのに、とても若々しい。2人がいい雰囲気になっていことに気付いた時に襖の向こうからの「もういいかい」という声かけ。すごくお茶目だと思いました。それにスルッと「もういいよ」と返す春宵も。すごく好きなシーンです。
とはいえ、私は2人の恋愛模様よりも、荘助との会話のシーン、仲間の妖怪に協力してもらってるシーンとか、2人だけではない場面の方が印象に残りもっと読みたいと思ってしまいました。これってBLとしてはどうなのかなぁ。最後は二人の今後がわからないという終わり方なのもあって余計にそちらに意識を持っていかれたのかもしれません。
ただ、荘助や妖怪たちの優しさがとても心地よかったです。
口絵に草枕CPと妖怪たちのとの酒盛りシーンがあって、とてもほのぼのしていてよかったのですが、本文中になかったのは残念。
「てのなるほうへ」の涼やかなろくろ首・春宵(しゅんしょう)の物語。
時間軸は、「てのなる〜」の20年くらい前。
3編の構成になっています。
「一日千秋」
江戸時代。すでに長く生きている妖怪の春宵は、江戸の町に繰り出して人を驚かせて遊んでいた。
そんな頃、驚かせようと首を転がしていた春宵を逆に驚かせた人間の弥一郎と仲良くなったが…
それまで深く人間とは関わってなかった春宵は、人間というものが自分たち妖怪とは全く違う世界・時間を生きている事を理解していなかった、という切ないお話。
後から考えると、江戸の妖怪の長・御簾裏は多分こうなる事わかってたよね。わかってて春宵に選択させたよね。遠い遠い過去、同じ事が御簾裏にも起きたのかも知れないね…
「もういいかい、まだだよ」
現代。春宵は「春野宵」という戸籍を得て、全てを知っている安藤荘助の研究室で、40過ぎには見えない!と驚かれつつ助手として働いていた。
そこに、測量のバイト学生として現れた樋野の顔は、あの弥一郎に瓜二つで…!
まあ、都合のいい展開も少しはありつつ、樋野と春宵は惹かれあっていきます。
春宵がなぜか樋野の前では首を伸ばせずに、樋野が春宵の事を誤解して気まずくなっていたある日、樋野が測量に入った山で土砂崩れが発生し。
春宵と妖怪仲間の連携で樋野を助けるあたりは、ドラマチック展開。&ムササビ毛布欲しい〜!
どうしてものんびり思考の春宵ですが、ちゃんと樋野と結ばれますよ。
「もういいかい、もういいよ」
中年になった樋野と、まだ20代に見える春宵の暮らし。
樋野は禁断の「選択肢」を持ち出す。それはあの「白銀の男」の囁き…御簾裏、やっぱり怖い。
樋野と春宵がこれからどうするのかは描かれずに終わるけれど、どちらにしろ春宵の得た幸せは本物です。
この1編には草枕が出てくるよ。
”てのなるほうへ”で、さりげない優しさが素敵♪と思っていたろくろ首の春宵さんのスピンオフということで、わりと洒脱な印象のキャラだったので、楽しいお話を期待していたら、めっちゃ切なかったです。んでも、こちらのほうが好きでした。
人間と仲良くしたい妖怪という哀愁の漂う存在に、すでに他レビュアー様のご指摘のように、古の名作(〇ーの一族)を思い起こさずにはいられないのですが、もうちょっと浮世に近い距離で優しくほのぼのと、”終わりのない生”ということや、好きな人だちと”同じじゃない”ということが、いかにしんどいかを描いていて、読み終えてしんみりしてしまいます。
初めて仲良くなった人間に言われた言葉に傷ついて(一日千秋)、それでもやっぱり人間と交わりながら飄々と何百年も生きてきた春宵さんが、因縁の出会いで報われる展開に救われます(もういいかい、まだだよ)。が!その後に続く(もういいかい、もういいよ)が深くて…。
永遠の命を与えるということは、優しさなのかエゴなのか…最後まで難しい命題だなと思いました。一緒に暮らし幸せな日々を送る二人が、最終的にどういう選択をするんだろう~?と、ぞわっとした余韻が残るラストです。