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otona no natsuyasumi
作者インタビューか何かで見かけてずっと気になっていた作品。
ページのほとんどは表題作、巻末に短編が掲載されています。
●「おとなのなつやすみ」
水沢が引きこもるために祖母の住んでいた家にやってくると、そこには熊のような大男・勅使河原が住みついていた。勅使河原はすぐに出て行こうとしたけれど、なにやら訳ありっぽいので、大掃除を条件に数日居ることをゆるす。
二人は名前しか知らないまま、掃除したり、魚釣りしたり、ときにHしたりしつつ、ゆったりと心地良い時間を過ごしていく。
でも働き盛りの男が、そんなゆったりした時間を持てるのは、それなりの事情があるわけで…
水沢も、勅使河原も、一人だったら立ち止まったままだったと思う。
でも同じような傷を負った二人が傷を舐め合うのではなく、ただ一緒の時間を過ごして、その存在が大事になって、大事だから次に進んで欲しいと願う。
そして大事な人が踏み出す一歩に合せて、自分も進み出していく。
人って生きているだけで何かしら傷つくことがあると思うんです。
立ち止まっちゃいけないってわかっていても、その傷によって次の一歩を踏み出すのが怖い。物語は淡々としているけれど、淡々としているこのゆったりさが癒しな感じで、傷ついたことがある者には妙に心に沁みてきます…
●「3番線に電車がまいります」
同じように人間観察してる二人、実は大学生と大学職員で、大学職員がゲイだとわかると大学生はいろいろ妄想してしまって…
アッサリした感じのページ少なめな短編です。
表題作も短編も淡々とした感じで、ワーッとした盛り上がりはないけれど、この淡々さがジワジワと沁みてきて私は好きです。
本作が初読みですが、絵も好みなので、他の作品も読んでみたいです。
しっとりした表紙に惹かれました。
表題作と読み切り作の2つが載ってます。
『おとなのなつやすみ』
水沢が亡き祖父母の家に5年ぶりに訪れると、見知らぬ男(勅使河原)が勝手に住み着いていた。
事情を詮索せずに共に暮らし、そのうち身体も繋げるようになり…。
上のあらすじに書いてあるよう、共に傷ついている2人です。
お互い、相手が何かを抱えているのは察してるけど、何も言わずただ穏やかに過ごすんです。
そして勅使河原の知り合いが勅使河原を訪ねてきたのを機に、2人の『なつやすみ』は終わりを迎えるんですが、その終わり=勅使河原の再生を促すのが水沢。
この水沢は格好良かった!
勅使河原は何故家が無かったのか?なつやすみ中は2人共無職?とか、細かい事が気になってしまいましたが、タイトルと物語がピッタリはまってたように思います。
ただ…萌えたかというとあまり萌えなかったです。
2人の体格は良いしエロシーンもしっかりあるんですが、エロさが感じられなかったのは何故なんだろう…表情かな?
『3番線に電車がまいります』
電車が来るまでの暇つぶしとして、向かいのホームの人間観察をする桜井。
同じよう人間観察をしていた池と知り合うと、彼は同じ大学の職員だった。
ある日池が、男と揉めるのを目にした桜井は…。
ノンケの桜井が、ゲイの池に惹かれた理由がイマイチ分からなかったです。
それからが見たいんだよ!という所で終わり、エロ無しです。
色気ある表紙に期待値が上がりすぎてました。
何処が悪いとかは無いんですが、個人的にはまれなかったので『萌』で…。
表題作+短編1編収録です。
「おとなのなつやすみ」
ちるちるの作家インタビューを読んで気になっていた作品でした。
どこか可愛らしいタイトルと裏腹に、お互い傷あと持ちの逃避行ラブとは?
読んでみれば、確かに背負った背景は重くてキツい。でも2人ともそこから逃げて閉じこもって…という感じではなかったかな。
笑顔があったし、体を動かしてわいわいと片付けをし、大いに食べ、そこには確かに「なつやすみ」のような楽しい空気が漂っています。
ただ、勅使河原の方に山の仕事への誘いが来て、なつやすみの終わりを知る水沢が切ないですよね。
でも、その短いなつやすみの間に、2人の間には決して傷の舐め合いではない結びつきが生まれていて、離れていても消えることは無かったんですね。傷があるからこその優しさが物語に流れていました。
「3番線に電車がまいります」
電車通勤(or通学)してると、乗る電車や乗るドアとか決まってきて、となると名前も何も知らない「いつものあの人」みたいな集団ができるじゃないですか。その感じが出てますね。
そんな感じで知り合った人の痴話喧嘩を目撃して、気になるようになって、自分に乗り換えなよ…ってのはまあ短編ならではの展開かな。
あと、私、池さんの靴が好きです。
表題作は、登山家の男と栄養士の男のお話なんですが、登山家だけあって、体が凄いんです!個人的にはダンサーみたいな適度な筋肉が好きなのでここまでガッツリだとビビってしまいます。でも、そのゴツい体の勅使河原が友達の滑落事故でトラウマを抱え、山を見ると吐いてしまうときもあったほど繊細な神経の持ち主。髭面で熊みたいな最初の印象から、人懐っこい優しい男に印象が変わっていったのはやはり優しい栄養士の水沢と過ごした夏休みがあったからですかね。男同士って感じで、エッチに流れるのも、夏休みを終わらせるのもさっぱりきっぱりしていましたがそこが逆にリアルで良かったです。
もうひとつのお話は、「乗り換えませんか 俺に」って言う名台詞が良かったです。わー、どこかで使いたいっ!絶対そんな機会ないけど。
学校で管理栄養士をしていた水沢は、久しぶりに、今は空き屋である祖父の家に行きます。そこで、勝手に居着いていた勅使河原と出会います。
学校の給食で食中毒事件を起こした水沢と、登山の最中に親友を事故で失ってしまった勅使河原。水沢が勅使河原に「いつまで逃げてるの?」と言った場面が一番心に残りました。取り返しのつかないことは、どうしようもないです。私は、ずっと休んでいるのも、立ち上がるのも大変だなって考えてしまいました。
不意に訪れた長い休みは、大人になってからのモラトリアムで、きっと正解ってないのだと思います。大人は、休んでいても、もがいていても辛いのだなって思いました。
表題作は中編。
食中毒を出してしまった小学校の栄養士。仕事をやめて田舎に帰ってくると、そこには熊男が住み着いていて。。という出だし。
熊男は元山男らしいのだが、事故を目の当たりにしてスランプのようだ。お互い煮傷を抱え、しばらくの”なつやすみ”を共に過ごすことに。
詳しいことは語らないままに一緒に暮らす内、いつしか仲良く、そしてお互いゲイで、恋人にもなる。
でも、人生から逃げているだけではだめだと、なつやすみを終えた二人は分かれて自分の人生に向き合う。
という良いお話でした。
自分の生き方を見つけた二人が、恋人として結ばれるところまでが描かれています。
他に短編が一つ。
電車のホームで人間観察をするのが趣味な二人。なんとなく離すようになる。
一人は、浮気性な恋人に傷心のゲイ。もう一人はノンケの大学生だが、そんな彼氏から俺に乗り換えなよ、とかっこよく迫る。ゲイの方が簡単に受けないのがいい。”考えとくよ”と思わせぶりなところで終了。
エロでもおセンチでもないストーリーがよかった。
今後、ストーリー重視の作品を描いていってくれたらいいなあと思いました。