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ai no niwa
いろいろ難しいテーマでした。
学校で友人たちからレイプされ、不登校になった充。
無関心な父と対照的に過保護すぎる母の愛に苦しんだ先生(小説家)。
2人が出会って、壊れたこころを再生していく話でした。
まだ子供である充よりも先生が子供で。
先生には、母親の過剰な愛に心身のバランスを崩した少年期から救い出してくれた祖父母がいました。植物を育てることで、適度な愛を注げばきちんと育つことを根気よく教えてもらったのに、先生は「自分は祖父母の期待したようには育たなかった」とか、「愛情を注ぎすぎてしまうなら、たくさんのものに分ければいい」とか、後ろ向きな気持ちばっかりです。
ひととも男女問わず自分に声をかけてきたひととからだの関係だけ持って、執着しないように線を引いています。それで愛を与えているつもりになっているのが…。おおう。
可哀想な自分に浸り切っている感しかありませんでした。
先生は充に対しても、弱っているから優しくして、元気になったら手放すといういつものやり方で接しようとしますが、結局だいぶ年下の充に救われます。
作品の空気感的に「大人、もっとがんばれよ!」と軽々しくツッコミを入れられない雰囲気なのがつらい。
レビューがないから残そうと思ったものの、正直に言うと特に言いたいことがないんです。なぜなら先生が甘えすぎている大人で、好きになれないから。
傷ついた少年を一番ひどいやり方で追い出そうとする。
それを乗り越えてきた少年をさらに追いやろうとする。
ひととちゃんと向き合ったこともないのに、逃げてばかりですよ。
表現で結構胸に来るシーンがあります。
先生がせっかく育てたハーブを「捨てるよ」というシーンとか、充が自分は植物じゃないから強い!と言うところとか。
台詞も「午前2時のきれい」のときより人間味が増していました。
テーマが重いので読むひとを選ぶかなと思いますが、先生の家の雰囲気は素敵なので、こういう雰囲気でもっとほのぼのと読める作品を描いてくれたら読んでみたい作家さんでした。
最後に、先生は自分の愛を「枯らす愛」と言っていますが、昔の先生のように植物に水をあげすぎるきらいがあるわたしからすると、「根腐れさせる愛」ではないかと。
毎朝声をかけ、水をあげ、雑草を取り除いてきた苗が腐っていなくなるなんて日常茶飯事ですが、それって枯れてはいなくて腐ってるのですよ。
先生のように甘やかされた子供を英語で”spoiled child”と言いますが、spoiledには食べ物をだめにする、腐らせるという意味もあるわけで、愛を与えすぎると腐るんです。
そこがちょっと気になってしまいました。