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hitotsushika naimono
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
双子ものってどうしても片方が陽でもう片方が陰という構図になりますね。
だいたい明るくて人気者の弟と物静かで自分が欲しいものでも全部弟に譲ってきた兄、みたいな。
この作品もそういう設定でした。
双子として生まれても兄は兄、弟は弟。
手のかかる弟と、「お兄ちゃんなんだから」と言う親。
家族全員で弟の世話係をして、自分は一体何なんだろう。
双子の兄・晴陽が主人公です。
とにかく最初は閉ざしまくってます、こころも視野も。
自分をめちゃくちゃにしてしまいたくて二丁目に足を踏み入れたとき、名乗ったのは弟の名前。これもよくある設定ですね。自分を汚して壊したいはずなのに、自分の身体を通してみんなに愛されて汚れのない弟を汚す、というような。
だけど自分の名前を名乗りたい、呼んでほしいと思うひとが現れたことで晴陽のこころと周囲を見る目が少しずつ開いていく、魂の救済的ストーリーでした。
正博が人格者すぎてすごいです。
もともと庇護欲の強いタイプだったんでしょうけど、生まれたての仔猫の面倒を見るように晴陽の面倒を見てくれる。何があってもいてくれる。自分だけを見てくれているひとができたことで、家族や大学のひとたちも楓月の影として自分を見ていたわけじゃないことに気付いていきます。
周りが晴陽を見ていなかったんじゃなくて、自分が見ていなかっただけだったんですよね。
28才のスパダリも、こんな成長を見せられたらたまらないでしょう。儚く脆くいつ壊れてもおかしくなかったような子が、自分に手の中で少しずつしっかりとした形を作って強くなっていって、笑いかけてくれるまでになるんですよ!?手放せないでしょう、これは!ここまで育てたのに、他の人のところへなんて送り出せませんとも。送り出さなくて良い!
想像してください。保護したボロボロの仔猫をお世話していたら、どんどん毛艶が良くなって、目ヤニで塞がれていた目が開いて、最初はキトンブルーの段階でよく見えていないけれど、大人の目の色になったときに、自分を見つめて「にゃあー」と言ったら…。萌え死ぬ。これです。この感情です。愛おしいんですよね、すべてが。
よくあるパターンで正博が楓月に惹かれるんじゃないかという疑心暗鬼になるかと心配しましたが、そういう展開はありませんのでご安心を。
晴陽がやっと開いた目とこころは、それまで晴陽を覆っていたどす黒いフィルターを正博が綺麗さっぱり取り払っているので疑うこころなんてもうないのです。
すっきりしました。
最初の雰囲気からもっとどろどろ展開を期待した方には物足りないかもしれません。
日頃のストレスでげんなりしていて、心が洗われるような作品が読みたいわ…と思っている方にはぴったりな作品です。ぜひ。
悪くはないけど、周囲にもっと自分を見てほしいとコンプレックスを抱える主人公が、果てしなく都合のいいイケメンに言ってほしい言葉を言ってもらうだけの漫画って感じですね。
攻めが童話の王子さまみたいでした。キラキラしてるって意味じゃなく。記号的な役割しかない感じ。男向けのお話のお姫様をトロフィーだとするなら、女向けの王子様はただ欲しいものを与えてくれる魔法の杖って感じじゃないですか。そんな感じです。肉欲をむき出しにせず、汚い自分を見ても許し受け入れ、求めているものに気づき与えてくる人。
だから何というかどういうきっかけで主人公の事が好きになったのか分かりません。
意図的に条件付けの愛情になることを避けてる気さえします。
結局主人公が救われる話なので、BLの体裁はしていますが関係性は二の次。主人公の気持ちばかり前面に現れ、結末も愛の行方ではなく、主人公とそのコンプレックスに終始。少しBLでやる必要性にかける気がしますね。
攻め以外の周囲もただ主人公に都合よく配置されてるだけなので、最後の手のひら返し見ると主人公が勝手に先走っちゃたように見えて残念かも。
新宿2丁目を舞台にした、受けの再生物語とでも言うのでしょうか。私は未読ですが、「気になるあの人のヒミツ」とのコラボ作品だそうです。そちらは明るい作品との事ですが、こちらは中盤までは暗く重い雰囲気。しかし、中盤以降はじんわり心が温かくなる感じです。間がとても上手で、ハッと引き付けられるようなシーンが印象的な作品でした。
内容としては、「カヅキ」という偽名で新宿2丁目に通い、出会い系で知り合った男と関係を持つという事を繰り返している大学生の晴陽(受け)が、ある晩、サラリーマンの橘(攻め)と出会います。橘にもいつものように体を求められると思っていると、彼は一緒に食事をしたり出掛けたりするだけで…というものです。
受けの晴陽には双子の弟がおり、同じ顔なのに明るく人好きのする彼ばかりが愛されて…という状況。そのせいで自分に価値が無いように感じ、やや自暴自棄な状態です。2丁目では弟の名前の「カヅキ」を名乗り、行きずりの男と寝る事で自分自身と「カヅキ」を貶めているのです。
そんな時に出会ったのが攻めの橘。包容力のある年上の男性です。「友達になろう」と遊びに誘われ、セックスもせずに一緒に過ごす事に戸惑ったり、調子が崩されたり…といった感じです。その状態に落ち着かず、評判の良くない男と寝て、乱暴な目に合わされてしまいます。一種の自傷行為だとは思うのですが、このへんは、かなり痛々しい…。
殴られ、酷く犯されてボロボロの状態で攻めに本音をぶつけ、また攻めから本当の自分を受け入れてもらった事で、受けは少しずつ変わり始めます。自分が心を開く事で、周りは自分を受け入れていてくれた事に気付き、世界が優しくなっていくのですね。そして攻めと過ごす時間がかけがえのないものだと気付き、自分の精一杯の気持ちを伝え-。
萌え所としては、攻めの意外な嫉妬深さ。心を開き始めた受けの愛らしさに、寄ってきた男をすかさず牽制。そして笑顔で、出会い系のアプリを消すようにお願い。更に受けが、他の人と真っ赤になりながら話そうものなら、その後のエッチは超ネチっこく執拗に…。大人の男の嫉妬って、大変萌えてしまいます。
気になるのが、ちょっと上手く行き過ぎな所とでもいうのでしょうか。受けが心を開いたから、今まで気付けなかった優しさが見えてきたというのは分かるのですが、双子の弟の気持ちだったり、周りの人達の気持ちというのがしっかり描かれている訳ではないので、やや唐突に感じます。いきなり掌を返してきたよ…みたいに感じちゃうのですね。攻めの心情だったりももう少し書き込んで欲しかった…。ページ数の都合だったりで仕方ないのかなぁと思いますが。
設定としてはとても好みの作品なので、攻めの気持ちなんかもしっかり読める、小説版を出してもらえたらなぁと思います。