snowblack
baa-lamb
なんとも愛らしいつややかな表紙の『ひつじの鍵』の初同人誌。
いつもながらタイトルの洒落たことと言ったら、作者らしい楽しさ。
一穂先生、物語も勿論大好きだが、こういうタイトルをつけられる
そのセンスと背景の雑学の豊かさに、いつも感心しちゃう!
そのタイトル、『baa-lamb』は、メエメエ子羊ちゃん的な意味。
一色はa wolf in sheep’s clothingかしら?
いや、彼の更に中にはやっぱり羊ちゃんがいる。
小タイトルは、A red sky at night, shepherd's delight;
a red sky in the morning, shepherd’s warning.
というお天気に関することわざから。
まずmorningの方は、本編の中羊が救出された直後の話。
一色が羊の父と車の中から携帯電話で話している。
父の思い、それをさりげなくハンズフリーで羊にも聞かせる一色。
暖かな、夜明けの光景。
父にばれてたら「一緒に逃げよう」と言う一色さん、やっぱりギャップ萌え。
こういう小気味のいい感じも、一色さん、いや一穂さんの魅力。
もう一編、nightの方は、本編の後日談に当たる。
羊にとっても思い出深いボロアパートから、一色が引っ越しをすることになり、
その一日のお話。
一色から貰った1000円札を使えなくて、自分のお財布のお金を使う羊、
自分を可愛がってくれた定食屋のおばちゃんへの挨拶、など
小さなエピソードに羊の愛おしさが散りばめられ、
そして河原でピクニックのような食事、最後の仕上げは新居初エッチ♡
現実を考えると、きっとこれからも色々と困難はあるだろう。
でも、ふたりのこれからに幸あれ、
そんな風にほっこりと優しく思える読後感でした。
カード会社のスーパーコンシェルジュ×もとは苦労人だけど母の再婚で富裕層の仲間入りをした高校生 の恋を描いた「ひつじの鍵」。
本編は高校生の主人公・羊(よう)の視点のみで綴られていたので、コンシェルジュ・一色視点の物語を欲しておりました。
というのは、ページ数の関係なのか一色が羊に恋をした展開が急すぎて、一色の気持ちやら困惑やらがあまり描かれておらずその辺りを知りたかったのです。師匠の教えを支えにお仕事に精魂傾けている(設定の)一色が、お客様のご令息(しかも高校生)に手を出すというのは、普通に考えて(BL脳であっても)相当精神的に負荷がかかると思われ、その葛藤たるやいかばかりかと。
もちろん、読者にお任せ、自由に想像してね、もありとは思うのですが、葛藤こそが御馳走と思っているので、機会があれば読みたかったという次第です。
で、この同人誌でした。
「A red sky in the morning,shepherd's warning」と「A red sky at night,shepherd's delight」の2編収録。
後者は羊視点で、一色の引っ越し兼ラブラブエピソード。
前者が個人的に待望の一色視点、しかも本編の直後のエピソード。
でも、期待していたのとは違いました。両者のページ数の違いから邪推するところですが、もしや一色視点は書きづらい(=咀嚼しづらい)のでしょうか。
しかも軽い。ふわっふわに軽い。羊の父にばれたらどうせ会社もクビになるし、羊のことは好きでお互い両思いで別れる必要もないから、羊を連れてトンズラするか、などと言っている。
科白じゃなくてモノローグで言っているからこれが本音ということ。
こりゃあ葛藤なんてしてないぞ、と思うのと同時に、設定崩れてる?などとも思いました。
読みたかったものではなく(読みたい読みたくないは読者の勝手なので、おしつけるつもりはないです。しかも同人誌だし)、なんならもう一人の一色バージョンとでも言うような感じです。
うんと若い子との恋愛がたのしくて脳がバグってるとしか。大丈夫か一色さん。
本編の補完になるどころか、逆を行っているように感じ、残念でした。
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