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kitsunegami to yomeiri danshi
なんだか全てがはっきりしなくて、それこそ霧の中を徘徊しているような印象が残る一作。
疫病神がなんだったのか、どうしてミサキが封印され神になったのか……ミサキは結局幸なのか不幸なのか……全てがぼんやりした印象。
はっきりしているのは、涼太がミサキを好きだったことくらいかなぁ……それも、『かわいそうとは、惚れたってことよ!』的な、ちょっと同情心も混ざってる。
もやもやでモヤモヤな、すっきりしない読後感ですが、とにかくミサキの耳としっぽが気持ちよさそうだったので、萌×1!
田舎に住む祖父が怪我をしたため、看病に派遣された受けは、祖父が管理している山の祠で、自らを疫病神だと名乗る狐耳の神に取り憑かれた。受けを花嫁にするという疫病神に、快楽の限りを尽くされるが…。
稲荷神と疫病神の中間くらいの神様が攻め、その花嫁に認定された、オカルト雑誌にイラストを描いているイラストレーターが受け、というカップリングです。
攻めの印象がその時々でバラバラで、そのため作品がコメディチックなのかオカルティックなのか耽美なのかよく わからない感じでした。特に耽美要素に違和感がありました。受けの視点の話で、受けは天然であまり動じないキャラという設定なのに、頭の中の語りがすごく耽美でしつこい。気持ちの描写は大事だけど、延々と抽象的な耽美語りをされるとちょっと読んでいてしんどかったです。
疫病神の封印を解いてしまった受けが取り憑かれ、呪いやら受ける話なのですが、その呪いや、疫病神に憑かれることの影響も延々と語られている割には分かりにくかった。願いが叶うけど代償がともなう、というのが大筋らしいけど、大体何が叶ったのかもわからない。あと攻めが祀られた因縁も、郷土史ではこう、言い伝えではこう、などとすんごく詳細に説明されていて、こんなに説明要らないよ…と思ったくらいなのですが、結局そんなに詳細に説明されたのに真実は分からない。じゃあ最初からそんなに詳しく説明してくれなくても良かったよ…。
ページ数がオーバーしすぎてだいぶ削った、とあとがきで作者さんが書かれていたのですが、とにかく不必要な描写が多すぎました。これはBLであって、伝奇物ファンタジーじゃないよと言いたい。
でもまぁ、エッチのページは多かったのでまだ良かったんですけど。これでエッチが削られてたら怒っちゃう…。
もふもふとか、神社を舞台にしたファンタジーとか大好物です。佐々木さんの作品で私が読んだのは、『うちの神様にはがっかりだ』(漫画:山田ユギさん)に続いて2冊目でした。
数あるもふもふの中でも、狐こそ至高!!あの神々しさと、日常生活ではなかなかお目にかかれないレアさ、精悍な顔立ち、そして…しっぽ!!
と、狐に対する思いを語り出すとキリがないので、それはさておき。
この作品でも狐の神様が出てくるということで、おおいに期待していましたが、残念ながら最後まで萌えませんでした。攻めのミサキは狐神というより、狐っぽいしっぽと耳が付いた“疫病神”といった印象です。
それだけならまだよかったんですけど、俗っぽい性格に身勝手な要求、それに人を見下した態度にイライラしました。涼太が彼に恋したキッカケもよく理解ができませんでした。
最後にミサキが涼太を尊重し離れようとした事で、ちょっとだけ見直したので“中立”にします。
あらすじ:
売れないイラストレーター・涼太(受け)の前に現れたのは、疫病神を名乗る美貌の男・ミサキ(攻め)。
涼太によって封印を解かれたというミサキは、彼を花嫁にすると宣言し、そのまま居座ってしまい…
花嫁モノですが、物語の核となるのは、疫病神ミサキの成り立ちや、人間の業の深さといったなかなか渋い題材。
涼太もなかなか図太いキャラで、(良い意味で)花嫁っぽくないところが気に入りました。
ミサキは一見傲慢ですが、意外と優しいところや可愛いところもあり憎めないキャラ。
入院中の涼太の祖父の病院食から魚(祖父の好物)を横取りする等、神様の割に嫌がらせの仕方が子どもっぽいのが笑えます。
賽銭というシノギに応じて人間にご利益を与えるという合理的なシステムをとっており、
「俺のことは、実力のあるやくざだと思っとけばいい」
と言ってのけるようなユーモラスな一面も。
涼太に対して偉そうな態度をとりますが、その一方で彼のことは大切に思っており、そのことが少しずつ明らかになるストーリー展開が良かったです。
涼太は、疫病神に対して全く物怖じしないどこか呑気な人物。
ミサキの疫病神としてのルールを「設定」と称する等、超自然的な存在を二次元の文脈で捉えているのがオタクっぽくて面白かったです。
ミサキに夜な夜な抱かれてでもイラストレーターとして世に認められたいという、自分の欲望に正直なところもあり、そこがミサキに気に入られる理由の一つとなっています。
涼太がミサキの美しさを絵に描き止めたり、一緒にご飯の支度をしたりと、全体的にほのぼの寄りなストーリー展開。
強大な敵と闘う、等のイベントではなく、涼太がミサキにもう一度会うため一心不乱に絵を描き続けるという「自分との闘い」が物語のクライマックスとなっており、そのストイックな姿が感動を誘います。
二人が結ばれ、最後の最後に涼太の幼い頃のエピソードが明かされ終わるという構成はやや物足りないですが、当時のミサキの言葉に彼の情の深さが感じられ温かな気持ちに包まれます。
あとがきによると、長編になりすぎて大幅にページ数を削られたとのこと。
完全版も読んでみたかったですが、ただの甘ったるい花嫁モノとは一味違う民俗学者的ファンタジーとして興味深い一冊でした。