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buke no hatsukoi
作家買いです。小林さんには珍しく、表紙やタイトルからも分かるように武士もの。
内容は、というと。すみません、ネタバレしてます。
主人公は藩士・榊。28歳、独身。
家柄もよく容姿端麗、寡黙ながらも思いやりにあふれ家老からも重用されるナイスガイ。
がしかし、嫁の来てがない。理由は彼と婚姻が決まったおなごが、祝言の目前で立て続けに不幸な事故で亡くなる、という事例が続いたため。
ゆえに、彼は結婚はあきらめていて、しかも自分が好意を寄せた人物に万が一のことがあってはならぬと生涯独身を貫くことを決心しています。
堅物な彼ですが、人には言えない嗜好を持っています。それは「化粧を人に施してみたい」という願望を持っていること。しかし嫁も女の姉妹もいない彼はその願望を果たせず悶々とする日々。
そんなある日、ひょんなことから役者の音弥と出会います。見目麗しく、かつて淡い恋心を抱いた同僚(男)にどことなく似た雰囲気を持つ彼を贔屓筋として応援する榊ですが、実は音弥は舞台のないときは陰間茶屋で働く陰間で…。
というお話。
自分と関わりを持つと死んでしまうのではないか、と気をもむ榊と、はじめは榊に対して警戒心を抱いていた音弥の、少しずつ進む恋がなんとも可愛らしかった。
交互に、榊と音弥、二人の視点に切り替わって話が進んでいくので、二人の心情が理解しやすく感情移入しやすかった。
榊は寡黙で感情が表情に出にくいのですが、実はむっつりでいろいろなことを考えているのが小林さんらしく思わず笑いを誘います。自分が好いてしまって、万が一音弥に何かあったら、と自制しつつ、それでも音弥を想う気持ちが止められない。誰にでも優しく、思いやりにあふれるナイスガイでした。
一方の音弥も。
早くに両親を亡くし、天涯孤独になったあげく色子としてまだ子どもだった頃から客を取らされる日々。そんな中でも、手に入らない物は欲しがらないとか、自分を必要以上に卑下しないでおこうとする、健気なのだけれどそれだけではなく、しっかり自分というものを持っている子でした。
小林さんは癒し系に見えて、実は肉食系な受け、って定番なような気がしますが、音弥も色子という立場を駆使して、28歳にしてDT(←個人的に萌えポイント☆)の榊を攻めるシーンもエロカワでした。
身分の違う二人なのでちゃんと結ばれるのだろうかとやきもきしながら読み進めましたが、榊の家に仕える人たちのナイスアシストもあってちゃんとハピエンでした。
音弥は役者ですが、序盤で大きなけがをしてしまうこともあって、「歌舞伎」の設定はあるもののその点はさらっと終わってしまったのがなんとも残念でした。もう少し「歌舞伎」の魅力が前面に出ていてもよかったなあ、と。ただ、音弥は「役者」としてよりも「色子」としての立場であることがこのストーリーでは重要なので、ある意味仕方ないとは思うのですが。
反対に陰間茶屋での生活はかなり描き込まれていました。まだ年端もいかない子たちが買われるシーンはちょっと萎え萎えでした。あまりに可哀想で…。
あとがきで小林さんが書かれていましたが、こちらの作品は『三匹の守役』という作品とリンクしているのだとか。榊のかつての想い人の話らしいので、非BL作品のようですがそちらも読んでみたいと思います。
榊・音弥の主人公はもちろん、榊の家の奉公人や音弥の弟分の葦蔵や陰間仲間の雛千代といった脇キャラたちがとっても魅力的で、笑いあり涙ありの、非常に小林さんらしい1冊でした。
面白かったです!
以下、長文となってしまい、すみません(>_<)
始めは、時代物って想像力が追いつかないかな?と心配していましたが、
この作品では、時代物のハードルより、逆にその時代の恋愛の艶っぽさにはっとさせられます。
「…お月さんも、もう寝やしゃんした…」など、歌舞伎のセリフの入れ方が良いんです!
堅物武士の榊さんが、音弥の顔に化粧を施す場面も、素晴らしい…(>ω<)
音弥は陰間茶屋に身を置いているので、拭いきれない辛さもありますが、それでもお話が暗くならないのは、彼自身の明るさ、彼を取り巻く登場人物の魅力あってこそだと思います。
そして、典雅先生は心に残る場面を書かれるのが本当にお上手です。
音弥がゆで卵を欲しがるシーンや、他の人への身請けが決まってしまった後、榊さんとの喧嘩腰の思い出を回想するシーンなど、切ないんです…。
先生のお話では、皆さんとても饒舌で、その台詞の面白さも最大の魅力ですが、大切な人が辛い目にあった時には、言葉をつぐんで、ただ見つめたり、抱きしめたりして心を通わすんですよね。
武家の初恋では、そういう繊細な心の交流に改めて感動しました。
時代の面白さあり、名場面あり、登場人物の魅力あり!
いつもと違うお話が読みたいな、と思われる方におすすめしたい名作です。
小林典雅さんが描く無口無表情な堅物藩士。
典雅さんというと饒舌すぎる変態な攻めって言うイメージが強くて、
武家物で堅物藩士?
どんなやねん
と、興味深く読み出したのですが、、、
確かに主人公は過去の曰くもあってか、鉄壁の無表情、このまま人生を独り身で貫くのもよしとする、謹厳実直なお武家様ですが、とにかく地の文が饒舌。
主人公のセリフが極端に限られている分、情景、状況、心情が、やたらとふりがな付の漢字の多い文章で延々と綴られていきます。
主人公の榊も、顔に表情が表れないだけで、頭の中ではそれはもう、それなりに、いろいろ考えてはいるので、その心情の説明は饒舌。
更に、思いが通じたとたん、恥ずかしげもなく心からの口説き文句が蕩々と流れ出すので、ああ、やっぱり典雅節、と、なんだか安心したりして。
この文体のリズムに上手くのれるかどうかと、色子設定がかなり生々しいのでそこをどうとるかで、作品に対しての好き嫌いが分かれるかも知れませんが、榊様の頑張りに、萌2つ。
小林典雅さんの江戸時代もの。
主人公はお堅いお武家さま。だから口調がとっても凛々しくて生真面目なのです。
『榊鉄之丞には嫁がいない。』
からはじまる物語、しかも榊には人に知られると気まずい嗜好があるという。
これは「男色」の事かと思いきや、設定は全然違うのです。
嫁がいないのは、まとまった縁談の相手が祝言前に必ず病気や不慮の事故で命を落としてしまうから。その数、何と4人!おかげで榊は「呪われた男」という流言が広まって縁談が来なくなりました。
人に言えない趣味は「化粧」。それも、人に化粧をしたい、という願望を隠し持っているのです。
そんな榊が、ご家老のお供で見た芝居に出ていた大部屋役者・音弥と知り合って…という展開。
音弥は、陰間がすべて舞台子というのが売りの朧屋という見世で色も売っていますが、自分の境遇に対して達観しているようで淡々と客を取っています。
榊は音弥が気になってたまらず、客になって音弥の時間を買いますが決して寝たりはしません。一緒に芝居の台本を読んだりして、客はスケベな奴ばかりと思っていた音弥もすっかり榊が好きに。
しかし榊は自分が音弥を好きになって「呪い」で音弥が死んだら大変、と距離を置き続けます。
そんなつかず離れずの情緒ある2人なのに、いざHシーンは初めてのはずの榊がテクの飲み込みが早いとか、身受けの大金をポンと出したりとか、バタバタと大団円になってしまうのが少々残念な気がしました。
お堅い武家なのに周りも陰間上がりの音弥を家に入れるのを賛成してるとか、かなり都合のいい終わり方ですが、完全ハッピーエンドになっています。
挿絵は松本花さん。真面目な素敵武士・榊の印象はぴったり。音弥の方は、女形だから仕方ないけど女の子すぎるかもしれません。
独り身で堅物な武家・榊が、大部屋役者の音弥に一目惚れしてしまうお話し。
音弥も優しく親切な榊に好意を抱いていますが、身分の違いや堅物な榊の態度に、
自分に好意を抱くはずがないとあきらめています。
一方の榊も、自分の周りで不幸が続くことから、音弥を失うことを恐れ、
あくまで贔屓としての距離を保とうとします。
お互いを思い、勝手に誤解し、気持ちが噛み合ていない様子が面白いです。
特に真面目な顔して口説いたり、性交の手順を本で学ぶ榊の天然っぷりが最高です。
可愛いお話しで、さらっと楽しく読めました。
ただ、萌要素は少なかったです。
小林典雅作品は再読率が非常に高いのに、こちらは一度読んだきりだった作品。
何かもやっとするところがあった気がするけれど、思い出せず状態での再読。
あぁそうだった……
受けが、女形で陰間茶屋で客をとる色子なので、育ってきた背景が悲惨だったんだわ……。
しかも時代が時代なので、精通も声変わりもまだの頃から客を取らされる。
受けが来るのを部屋で待つ間に、隣の客間からヒヒジジイと声変わり前の少年がまぐわう様子が聞こえてきて、受けもそうやって育ってきた……ということに攻めが改めて気づかされるシーン。
ショタ地雷からすると、ここのヒヒジジイのキモさと少年の哀れさがまさに地雷そのもので、ぎゃぁああああ!!となるのだったわ……。
攻めは真面目で品行方正なお侍さんで好感度が高いし、受けも悲惨な育ちだけどジメジメしておらず芯がしっかりしてる魅力的なキャラで、その二人の交流はとても楽しく読めるのだけど、陰間茶屋パート部分が私にはダメージがでかすぎるのだった……。