美貌の錬金術師×別の世界の記憶を持つ青年の、異世界トリップ・ファンタジー!!

錬金術師と不肖の弟子

renkinjutsushi to fusho no deshi

錬金術師と不肖の弟子
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神70
  • 萌×237
  • 萌14
  • 中立5
  • しゅみじゃない4

--

レビュー数
25
得点
545
評価数
130
平均
4.3 / 5
神率
53.8%
著者
杉原理生 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
価格
¥650(税抜)  
ISBN
9784199008368

あらすじ

金銀の竜が空を飛び、呪術師が跋扈する世界──幼い頃の記憶を失くし、
老錬金術師の助手として育てられたリクト。ところが17歳のとき、
病に倒れた師匠の命令で、師匠の弟子・アダルバートの元に修業に出されることに!!
町で工房を営むアダルバードは、黒髪の美しい男だが、大の人間嫌い。
なんとか助手として置いてもらうことに成功するけれど……!?

表題作錬金術師と不肖の弟子

錬金術師
推定17歳,錬金術師の弟子

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数25

No Title

初杉原先生でしたが大変おもしろかったです!
ただしエロくはないです、yoco先生の表紙が本当にぴったり当てはまる世界観。

無愛想で高位の美男錬金術師アダルバートと純朴天然ピュア敬語の弟子リクト。
とにかくリクトのすっとぼけ発言がかなり楽しいです。本人はいたって真面目に発言しているのですが、生い立ちが特殊なためとにかくズレてるw

生まれ変わり、平行世界、ちょっとずつ色んな要素が絡まってよく練られたファンタジー。
お、そこがつながるんだ!とおもしろかったです。

エロエロではない分貴重な前座の一回と本番一回をお楽しみください^_^


0

シリーズ化しないかな。


シリーズ化しないかな…。

ネタバレありです。

大好きな坂の上シリーズの様なお話かと思ったけれど、同じファンタジーでも、攻めと受けがいて、しっかりBLがありました。ちゃんとラブになった所がまた良かった。エrの場面も何とも言葉で表せないほど、優しくて美しくてロマンチック。

攻めは、寡黙で落ち着きがあって、少々自分勝手で、ぶっきらぼうで、しかし受けには意外と丁寧で優しい。

受けは、可愛らしくて、レビューにもある通り天然。性の事に関しても生真面目な返答をしたりする所が面白い。

受けの生い立ちについて色々予想しながら読みましたが、過去が明らかになるにつれ、私の予想は外れまくりで、最後の方までハラハラ。絶対、受けは別の世界から来た子供かと思ってたし、その後は、王子に中身を乗っ取られてたのかと思いました。

結ばれた後の2人の生活をもっと読んでみたい…。2016年の作品なのですか…。もっと早くに出会っていたかった!作者様の他の作品も読んでみたいです。

2

淡々と紡がれる静かで美しい物語

初読み作家さんですが、美しく静謐で、まるでおとぎ話のようなお話でした。
作者さんの好きを詰め込んだ、と後書きにもありましたがラブストーリーと言うよりはある人に関する人生の一瞬を切り取った、みたいなお話で、錬金術師や国のこと、それらも深く掘り下げて書かれていました。

ので、最初はちょっと物足りなかったんです。
過去のお話もちょっと説明的かなぁ、と思う場面もありました。
なのでそれらを加味して萌え2評価にしました。
できれば、2巻くらいに分けて過去のお話も登場人物にそって記憶として綴るのではなくじっくり読みたかったなぁと思いました。

けれど、アダルバートの己の中に秘めた熱と言いますか。
それが後半すごく伝わってきて、別に全然えっちい方向に振り切ってる訳では無いのに、とてもエロティックで、愛情深くて、優しかったです。

また、アダルバートの性格が、人嫌いにしては、案外柔らかいというか。
リクトに対してだけなのがまた素敵なんですけれど、素っ気なくて1人の世界を大事にしている風であるのに、リクトには柔らかいんですよね。
そこもまた高ポイント。
リクトの崩れない敬語もまた良くて、ちょっとポイントがズレてる性格も、空気が読めないとかそういうのではなく塩梅がいいんですよね。

2人だからこそ惹かれあって、分かち合えて、生きていけるんだなぁと読んでいて実感できました。

0

穏やかで優しい運命の恋

作家買いの作品なのですが、ファンタジーが不得意科目なので一気読みできず、ちまちま初回読了した際には、BLみが薄いからそんなに萌えないな、、と思っていたのですが、後を引く読了感だったので、読み直したら泣いてました…。

山村で老錬金術師(エレズ)に育てられたリクトは、師の命で王都のアダルバートの工房に弟子入りすることになったのですが、アダルバートの仕事や彼に関わる錬金術師、神人たちと関わるうちに、徐々に失った幼い頃の記憶、さらに自分はどこからやってきたのか、という謎が明らかになっていくのですが…この過程、構成が素晴らしいです。リクト(とアダルバート)の失われた記憶に関わる事件は、と~ってもつらいものなのですが、現在進行形のドラマの登場人物達の風変りでユーモラス、個性的なキャラクター設定のおかげで、哀しい気持ちに囚われ過ぎず、楽しく読み進められます(過去=重い、現在=軽い、のいいバランス感)。物語の起源となる、前時代に起きた悲運の王子(エリオット)とアダルバートのラブストーリーがしんどいんですよね。(私はたぶんこちらのほうが萌える気がしましたがw)

とはいえ、この物語の核は、エリオットの自己犠牲にあるような気がしました。正直、最後までよく咀嚼できなかったのは、エレズ→リクト(エリオット)に対しての“主よ”という呼びかけなのですが、王位継承問題では国をこれ以上乱さないために王族として、また、永劫に続く邪悪な呪いに対しては、大錬金術師の器を継ぐ者として、命を賭して新しい流れを創造したことに対しての畏敬の念ということでしょうか。絶望の底からエリオットが切望した未来を、リクトが受け継いで、アダルバートと2人、工房で穏やかに暮らしているこが王子の勝利の証であり、しんどい非凡より幸せな平凡がいいという、新時代の善なる錬金術の成功例のようにも見えます。

過去の記憶がリクトの中に蘇ってからの展開に涙腺が決壊しました。他のレビュアー様もおっしゃってますが、リクトが初めてアダルバートに会ったという日、エレズのもとを訪れた彼の長い髪を、幼いリクトがふざけて三つ編みにしたというエピ。“会えた会えた”とエリオットの歓喜がひしひし伝わる描写に震えました。アダルバートが過去の記憶を共有していないところが、むしろいい!です。”運命”は、日常に紛れてひっそり穏やかに訪れるんですね。

“魂の残り香”という表現があるのですが、あくまでそれは“残り香”でしかない、という表現がいいなぁと思いました。エリオットの魂だけ受け継いだ別人格のリクトは、同じ歴史が繰り返されないためのエレズの実験的な養育の成果にもみえました。むしろ、このちょっと情緒が欠落しているようなリクトのほうが、今のアダルバートにお似合いですし。ドラマチックじゃない運命の恋、萌は少なかったのですが、きちんと等身大の人間が描かれたケレン味に依らないファンタジーで、魂の救済があり、起こってしまった悲劇に対して誰も断罪されないところも素晴らしいなと思ったので神としました。

4

再読です

キャラ文庫アンソロジーの翡翠を読むに辺り再読しました。

実は読んだ時も神評価にしていたのですが、レビューはしていませんでした。
でも素晴らしい事に再読してみても神評価作品でした。

2016年の発売当時に読んだきりでしたが、読むに従って段々と思い出したりこんな内容だったかと再確認して驚いたりして新鮮な気持ちになりました。

初めはリクトの世馴れない感じが微笑ましくて、錬金術師のアダルバートの偏屈さの陰に見え隠れする優しさにドキドキするんです。

そして終盤に行くに従ってのリクトの秘密や、アダルバートの過去に絡められた真実に至るまでのお話が秀逸で夢中になって読みました。

登場人物の全てに役割があって、結末も納得が行く読後感の素晴らしい作品でした。

お話の特性上エロはとても少ないです。でもそんな事どうでも良くなる面白さです。
むしろ無くても良いくらいでした。でもアダルバートのリクトへのちょっとした愛情表現にとても萌える作品でした。

今回は電子で購入しての再読だったので、電子限定SSも読めて更にその後の2人が読めて最高でした。

ストーリー重視の方に読んで欲しい名作です。
yoco先生の挿絵も楽しみた方は紙の方をお勧めします。

そして最近、杉原理生先生のお名前を拝見しないと思っていたら2018年の同人誌と「小説Chara vol.30」に収録された商業誌の番外編からの活動が無いのが寂しいです。

Twitterのアカウントを拝見したら何年も書かれてないみたいですが、これから書けたらいいなとあったので楽しみに待ちたいと思いました。

5

ファンタジー好きにはたまりません

yoco先生の美しい表紙に惹かれてずっと気になっていた1冊。
ようやく読みました。
錬金術師に旧い竜、神人にギルド、そして異世界転生(?)に生まれ変わり(?)
とファンタジー好きの私にはたまらない設定でした。

推定17歳のリクト。幼い頃の記憶がなく、奴隷商人のもとから老錬金術師(見た目は美青年)に買われ、育てられます。養い親の病気療養により、王都で暮らす兄弟子の錬金術師アダルバートのもとへ弟子入り志願で訪れるのですが・・・

ここからネタバレ

ある事件をきっかけに自分が何者だったかが判明します。
50年前、アダルバートが王宮錬金術師だった頃に相思相愛だった第2王子エリオット。オッドアイであるために忌み子として軟禁状態で育てられた、不遇の王子です。
もうね、このエリオットが可哀想で可哀想で。
王宮内でただ一人、信頼を寄せていた兄、王太子バリーに弟王子殺しの罪を着せられ、王位継承の内乱を防ぐために、自分を犠牲にし、最愛のアダルバートにも嘘をついて彼を守ろうとします。そして地下牢に幽閉され、処刑されるのを待っているのです。
そこで最後の力を振り絞ってエリオットが成したこととは⁉️

この兄王子バリーはエリオットにとても優しかったのに、最悪の形で裏切って、最後にリクトに謝ってほしかった。
そしてアダルバートがエリオットへの想いをどう消化したのか、リクトへの想いをどう育んだのか、そのへんを知りたいですね。

それから神人のレナートとカトルのやり取りが面白かったので、こちらももっと読みたい‼️
なので、ぜひ続編をお願いします。


2

苦手・・

短編漫画のアップテンポな展開に読みなれてしまうと、
こういうじっくりゆっくり変化に乏しい展開だと、先の筋が読み切れず苦しくなってしまう。
記憶喪失のリクトの視点と口調で展開するお話が、眠くなってしまう。
HONTOの電子版に、挿絵が無いせいかもしれない。

閉じて開いてをもう5回ほど繰り返して、2カ月たつのにまだ半分も読み進んで居ない・・後から買ったブライトプリズン9巻を先に読了してしまった。

書評の評価が高い、本当は面白い内容なのだろうと思うのですが、進まないので一旦終り。
読了後、また書き換えするかもしれませんが、挫折。

0

面白かったなあ

charaバースデーフェア2020で円陣先生が推していたので購入。こういう世界観好きなのと、すっとぼけた印象の受けも堅物無器用そうな攻めもサブキャラもみんな好きだったので神にしました。円陣先生、おススメしてくださって本当に有難うございます。
金髪黒髪イケメン複数+竜?可愛いトカゲ?まで出てくる本編+後日談(電子限定っぽい)+あとがき。残念なんだけどho○toさんでは挿絵が無かったんですよう、ううう。無念。

幼い頃奴隷として売られていたのを、錬金術師のエレズに買ってもらい、山の村で我が子のように育ててもらったリクト。エレズが「病気になった、先行き心配だから王都に行ってアダルバートの弟子になりなさい」というものだから、しぶしぶ訪ねていったのに、「弟子は取らない、居候として置いてやる」と言われ・・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
エレズ(攻めの師匠、受けの養い親、ウェービー金髪ロン毛イケメン、フリッツとは仲悪そう)、フリッツ(錬金術師、錬金術師のギルド長、見た目は若いがじーさん、美少年好き)、レナート(金髪碧目イケメンな神人、多分S)、カトル(美少年になるトカゲ、多分M)、アビー&ダレン(近所の食堂をやっている兄弟、良識ある方々)、エリオット(故人、ウェルアーザー王家の王子)、その他エリオットの兄弟王子。イケメン多いけど、みんな、どこか変(笑)

** 好きだったところ

受けのリクトが大好き。まっすぐ純粋培養されたからなんだろうけど、物おじしないタイプで、直球勝負で「男色家ですか?」と聞くわ、もしそうだったらどうすんのと問われると「緊張はするけど研究だし精液あげるぐらいは前向きに」と考えるような方。言葉はそんなに多くない直球タイプ受けが、不器用な言葉足らずな攻めと、上手くコミュニケートできるわけがない!ずっと爆笑している訳ではないお話なのですが、うっかりするとせつなくてどよーんとなってしまいかねないお話を、「そこでそう言う?!」と笑わせてくれて、とても楽しかったです。

無器用攻めも良かったですが、何より周りのサブキャラも秀逸。トカゲもどきにしかなれないカトルは、主と思っているレナートにけちょんけちょんに言われて涙目になっても主のことを良くしか言わないし、ちょっとおだてたら木に登りそうな子だし、主のレナートと合わせてめちゃ可笑しい。フリッツとエレズが犬猿の仲っぽいのも興味深々。「どっかに同人誌転がってないかな、探さなきゃ」と思うぐらい面白かったです。

ファンタジー大丈夫で、ちょっとセツナめお話が大丈夫な方、是非是非。ちょっと時系列入れこんだ箇所もありますが、とても良かったです!

8

とぼけているのに切なくて

胸がキューっと絞られる様な切なさを綺麗な文体で綴る杉原理生さんがとても好きだったのですけれど、新しいお話を発表しなくなってから3年とちょっと。気にはなりつつも、何となく読めないでいた今作を読んだら……とても良かった。

リクトの一番古い記憶は、7歳位の頃に人買いに捕まえられて奴隷として売られていたところを錬金術師のエレズに買われたこと。それ以前のことは覚えていません。
これは『自分は一体誰なのか?』そして『自分の居場所はどこなのか?』をリクトが探し、そして見つけるお話です。

リクトのキャラクターが秀逸でねぇ……
推定17歳、プラチナブロンドの美少年で、いわゆる『天然』なんでしょうけれど、どこか達観している様な所があるんですね。
なんて言ったら良いのかなぁ。訳が分からない例えですけれども『人里離れた田舎でおじいちゃんに育てられたフェミニン系の長男』っていう感じ。
常に敬語混じりの丁寧な言葉遣いで、感情は細やかなくせにその振り幅は小さい。
抑制的なので、動揺していないみたいに見えるんですね。
でも、心の中は結構、波立っていたりするんです。
だから、すっとぼけている様に見えるのに、すごく切ない。
なんだかズレているから、可笑しいのに、とても悲しく感じる。
リクトが自分の出生の秘密に近づけば近づくほど、こんな相反する感情を同時に抱いてしまうのですよ。
この感情の交錯がお話をとても複雑で奥深いものにしていると思います。
絶妙です。

リクトの出生の秘密は、養い親と言っても良いエレズ、エレズの弟子でリクトが居候をするアダルバート、そしてこの2人と過去に因縁のあったエリオットという王子の3人が関わった過去の悲しい出来事に由来するものです。

これね、知らない方が面白いと思うのですよ。読んだ時に。なので伏せます。
かなり辛かったですよ、読んでいて。断片的に出て来るので『ガッツリ辛い』と言うより『書いてあること以上を想像させられちゃって辛い』という。
ただ、救いがあって『リクトはリクトである』のです。
それは良かった。とっても良かったんです、そこが。

このお話で「神だ」と思ったのは、何と言ってもラブシーンのロマンティックさですよ。
かなり年上だけれども、寡黙で感情表現が苦手そうな攻めが「俺の持っているものはなんでもおまえに与える。だから、代わりにおまえは俺のものになってほしい」なんて言っちゃうんだよーっ!
あたしはこのシーンでクラクラ来ちゃったですよ。
ここまでのアダルバートのキャラの積み上げを読んで来たら、もう、たまらんです。だって、こんなこと絶対言いそうにないんだもの。
ずーっと色っぽくないのですよ、この2人。
でも、本当に最後の最後の最後に、とっても甘くてロマンティックになります。
これがねー、とっても良かったのですわ(鼻息)。

杉原さん、もう書かないのでしょうかねぇ。
新しいお話が読みたいなぁ……

7

BL×100%ガチファンタジーから見える景色

大作ですね。
久しぶりに「読んだ」という感覚。

このページ数に比してBL濃度は薄め。
だけどそれが上品で良い。
そのさじ加減で良い。

あれ?このあたりでBLの香りが漂うんだけど勘違いかな?くらいの奥ゆかしさが丁度良い。
なぜなら、主人公は純真無垢の拾い子であり、高貴で悲運な王子でもあるから。
明け透けにガツガツと見せつけられては、逆に興ざめしてしまう。

男の子たちの「ラブいちゃエロ」だけが楽しみなら、そこに辿り着くまでの時間は長すぎるでしょう。お勧めしません。
でも、男の子たちが出てくる「面白い小説」が読みたいのならこのページ数は裏切りません。

壮大な世界観×魅力的なキャラ×センチメンタルトリック
がこの本の魅力の三大柱

まず世界観はザ・ファンタジー
魔法のような錬金術、幻影、ギルド、ドラゴン、契約、結界、不老不死、前世の記憶…
え、そんなのもアリ?ってくらいに様々な設定が登場します。
普段現代モノばかり読んでいる者にとっては、その凄まじい総合格闘技っぷりにまずは圧倒される。
でも大丈夫。
ちゃんとついて行けました。
きちんと読みさえすれば、自動的に文章が空想の世界へ連れていってくれます。

そうして気付けば
無垢な少年のほのぼの新生活を応援し
彼の記憶の謎に夢中になり
王子の回想で涙し
厄災に息をのみ
一見落着の安堵とともに主人公のラブを全力で祝っていました。

現代モノでは表現しにくいスケール感に大変満足。

ただ、設定だけでは長い小説を読み続けられないですよね。
それを支えているのが魅力的なキャラたち。
1冊のBL小説としては登場人物が多い方ですが、みんな存在感があります。
まず脇役が総じて良い。
彼らの言動に思わずクスっとしてしまう。
食堂の美形兄ダレンの穏やかな突っ込みとか。
神人カトル君のご主人に向ける崇拝っぷりとか。
師匠エレズの人の世をはばからない俯瞰した雰囲気とか。

しかし一番はやはり主役の二人ですね。
攻のアダルバートさんは男らしく艶っぽいのに抜けているんだか、年長者っぽく構えている風なんだか、ただの不器用さんなのか。そんな一面的に語れないところが魅力な男です。
受のリクトくんは好奇心旺盛な無垢ボーイ。自分なりに色々考察して一見論理的な結論を出すんだけど、それが浮世離れしていているから完全に突っ込み待ち状態。微笑ましくて笑えちゃいます。
二人とも程度の差はあれど、とにかく天然さんですね。

さて、そんなフワフワした二人には、所々不自然で謎な行動が散りばめられています。
例えば「ん?お金がたんまりあるのに稼がなきゃ?」という違和感。
実は、その秘密は二人の悲しい過去にあって…
でも本人にその記憶はありません。
遠い過去に持っていたはずの強い感情が、本人のコントロールを超えて意志を持たぬ習性として現在に残ってしまっている。
なるほど、伏線だったのかと頭で納得するより先に、胸が切なく苦しくなるこのトリック。
とっても感傷的な演出です。


結論、やはり大作ではなかろうか。

普段ファンタジー系には見向きもしなかったのに、BLという理由だけで手に取り出会えた世界。
BLジャンルの懐の深さ、そしてBLを通して見たことのない景色を見せてくれる作家さんに感謝したくなる作品でした。

7

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