びんぼう草の君

binbougusa no kimi

びんぼう草の君
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神8
  • 萌×219
  • 萌6
  • 中立4
  • しゅみじゃない2

--

レビュー数
8
得点
138
評価数
39
平均
3.7 / 5
神率
20.5%
著者
小鳥屋りと子 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
カゼキショウ 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
価格
¥660(税抜)  
ISBN
9784778119577

あらすじ

高校時代、裕福な家に生まれ周囲から一目置かれていた河原崎志信は、いつもこっそりと花をくれる、貧しい家庭で育ちながら明るく大らかな同級生・吉野達春に好意を抱いていた。
だが、ある日ハルジオンを渡されているのを級友達に見られ、とっさに突き返してしまう。
そんな過去を後悔したまま大人になった志信は、父親の死で生活が一変し、病弱な母親と借金を抱えて困窮する日々を送っていたが、工事現場での仕事中に偶然吉野と再会し…。
小説ショコラ新人賞受賞作、文庫化!!

表題作びんぼう草の君

吉野達春,24歳,植物専門の研究を行う優秀な特別研究員・大学院生
河原崎志信,24歳,工務店・工事現場勤務

その他の収録作品

  • においすみれの君
  • あとがき

レビュー投稿数8

追想の愛

小説ショコラ新人賞受賞作とのこと。
読みやすい文章に、ほのぼの優しい作風が好印象の作品でした。

裕福な家庭に生まれ、クラスでも一目置かれる存在だった志信(受け)。
自分によく花をくれる、貧乏な家庭育ちのクラスメイト・吉野(攻め)に淡い恋心を抱いていました。
しかし、ある日花を受け取っているところを他のクラスメイトにからかわれ、思わず花を突き返してしまいます。

それから数年後。
父が借金を残して病死したことで、志信の生活は一変。
病弱な母と借金に困窮する志信の前に、裕福になった吉野が現れ……
そんな再会物です。

タイトルの「びんぼう草」とは、ハルジオンの別名。
学生時代、志信が照れ隠しに吉野に突き返してしまった花です。
その花言葉が「追想の愛」というのが何とも作品の主題に合っていて素敵だなぁと思います。

志信は、母親想いで働き者の好青年ですが、現在の惨めな境遇にときに卑屈になることも。
再会した吉野の変わらない人の良さに惹かれつつも、彼に見下されることを恐れ、ときに壁を作ってしまう。
そんな人間味あるキャラクターです。

吉野は、高校時代は貧乏で周囲に馬鹿にされる存在でしたが、遠縁の老人の遺産のおかげで裕福になり、現在は大学院の農学部で花の研究をしています。
昔の志信に花を突き返されたことを全く恨まず、再会後も志信に花を送り続ける健気な人物。
彼の送る様々な花が、志信と母の暮らしに彩りを与えていく展開に温かな気持ちになります。

そんな吉野視点の番外編では、志信とのラブラブな日々と、吉野が今までに志信に送った花の思い出が丁寧に描かれます。
学生時代、吉野が志信を好きになるきっかけとなったキュウリグサ(花言葉は"真実の愛")。
初めて志信にプレゼントしたムラサキカタバミ("喜び")。
二人だけの秘密となったニオイスミレ("秘密の恋")…。
それぞれの花言葉を調べてみると、各場面に込められた吉野の志信への想いがより伝わってきて、じんわり感動します。

特に印象的だったのは、再会後吉野が初めて志信に送った花・トルコギキョウのエピソード。
志信に喜んでもらえるよう今度こそ彼に相応しい花を選びたい、と苦心する吉野の健気さにグッときます。
このように表題作(志信視点)で出てきたエピソードが番外編(吉野視点)でもう一度語られることで、物語に深みが増していたと思います。

再会して恋人になるまでの展開自体はシンプルですが、その前後の心の交流が丁寧に描かれているので、読み応えはなかなか。
今後が楽しみな作家さんです。

あとがきによると、年下攻めや体格の良い受けがお好きとのことなので、次回作ではそうした設定の作品も読めたらいいなと思います♪

14

優しいお話でした

優しい絵柄の表紙とあらすじを拝見して、なんだかとても心惹かれて手に取ってみました。

裕福な家庭で育った志信(受け)。
一方、貧しく満足に制服も買えないような家庭でありながらも優しい性格の吉野(攻め)。
高校の同級生で、相反する立ち位置にいる二人ですが吉野のくれる花を通して近づいていく二人。なのに同級生の目を気にして吉野に酷い態度をとってしまった志信は…。

という、何とも既視感のあるというかよくあるお話でした。

けれど、この二人の気持ちが丁寧に綴られていて、また、どちらも共感できるキャラであることから話にすんなり入り込みやすく、読みやすかった。

志信は高校生の時『お坊ちゃん』であることに優越感を感じていて。でも父親の急死と残された借金によりそれまでとは一変した生活を送ることになり。そこで卑屈な感情を抱いたり、でも母親を守りたい、負けたくない、と気持ちも持ち合わせていて非常に人間臭いキャラでした。

そして吉野も。
貧しくともいい家庭で育ったんだな、という性格で、とても好き。
志信に嫌われたくないと、一生懸命な彼が何とも可愛らしい。彼が志信に送る花のチョイスもとても良い。彼らしく、華々しさはないもののそれぞれ魅力のある花でとても良かった。

前半は志信視点で、後半は吉野視点で描かれているため二人の感情の機微がわかりやすかったのも良かったし、文章自体読みやすかった。

ただ、詰めが甘いなと思うところも。
志信のお母さんとの関係や、いじわるな職場の先輩の話も『これだけ?』という感じだし、吉野の大学での人間関係のもつれもあっさり終了してしまったなあ、と。
二人の気持ちの変化を中心に描きたかったのは分かるのだけれど、そういう細かいところももう少し書き込んでくれていたら一層話に深みが出たのになと思ったりしました。

高校生の時からお互いに好きで。
ずっと忘れられずに、お互い想い続けていた、というのには激萌えしました。特に、志信が吉野がくれたハルジオンをしおりにしてずっと持ち続けていた、というのは非常に良かった。

優しい表紙がこの作品によくあっていて、優しい気持ちになれる、そんな作品でした。

10

表紙のイメージ通り

結論から言うと、とっても良かった!新人作家さんで買うのを迷ったのだけど買って良かった。迷いつつも購入した自分を褒めたい。
高校時代に傷つけてしまったクラスメイトのことを忘れられない主人公が、ふとしたきっかけで相手と再会しする。お互いの蟠りや誤解を理解し合いながら、気持ちを通じ合わせていくのがたまりません。描写が丁寧で無理がなく素敵な作品です。
何となくあまりエッチシーンはないような予想でしたが、エロではなくラブラブな感じで描かれていてそこもいい。
もし迷っている方がいたら冒険してみることをおススメしたい素敵な1冊でした。本当に表紙のイメージ通りの作品です。

6

春の野花を摘みに行きたくなるような

裕福だった高校生時代、いつも自分に野の花をくれる貧乏なクラスメートがいた。花が好きだった志信(受け)は、それをもらうのが嬉しく、それをくれる吉野(攻め)にほのかな想いを抱いていたのに、ある時ほかのクラスメートに花をもらっているところを見られ、恥ずかしさにきつい言葉を投げてしまう。
その直後に父が亡くなり、志信は一転困窮した生活に陥る。病弱な母とふたりの、働いては借金を返す日々。卒業から5年あまりが経った頃、あれ以来疎遠になっていた吉野に再会する。吉野は相変わらずマイペースだったが、高校時代とは逆に裕福になっていて…。


高校時代に貧乏だった攻めが金持ちになり、金持ちだった受けが貧乏に、というありがちなストーリーです。でも攻めが不思議ちゃんで、「金が欲しければ愛人に」などの展開にはならず、おっとりとした雰囲気で話は進みます。

受けは5年もの困窮生活で疲れてはいますが、根が上品でこちらもおっとりしているので、卑屈さはほとんどないです。もちろんたかろうともしないし、金持ちになった攻めを羨むわけでもない。おごりや施しは受けない自尊心の高い人です。
攻めは不思議ちゃんで、昔から花と受け以外に何の興味もない人です。人付き合いは下手だし、自分の何が人を怒らせるのかわからない。付き合うのに疲れそうな人です。
受けも攻めも個性の強い人だけど、受けが攻めに惹かれるのも、攻めが受けに惹かれるのもとてもよく理解できました。おっとり穏やかな話だった印象があるのですが、実際に内容を思い返してみると割とアクの強い内容だった気もするし、なんか不思議な読後感です。
野の花の名前がたくさん出てきて、春めいた気分になりました。

途中で警備員のバイトをしていた受けが、同僚に痛い目に遭わされているのですが、そのエピソードのオチがないので少々モヤっとした気にはなりました。悪人が野放しなのはすっきりしないなぁ。

4

疲れた時に読むと効能がある様な気がします

電子書籍で読了。イラストは小さいサイズでした。
受け攻めとも環境の劇的な変化があってもねじくれもせず真っ直ぐなまま。とてもピュアです。ギラギラした男っぽさは皆無の草食系です。
色々とドラマは起きて、それ自体が平板なわけではないのにも関わらず「せつない」という感じはあまり持ちませんでした。
ストーリーよりも二人が小川のほとりで昼食を食べているという印象風景が強く残っています。
ペリエの様な味というか、喉ごしというか、爽やかです。

0

恋心に草花を添えて

道端にひっそりと咲く野花のような、ピュアで素朴な恋のお話でした。
今作が作家さまのデビュー作だそうです。
表紙のイメージ通りの優しい雰囲気が漂い、派手な華やかさはないのだけれど、作中に登場する草花や花言葉の数々が作品にほのかな彩りを与えていて素敵なのです。
静かに、優しく花を愛でながら進む2人の交流がなんとも穏やか。

裕福な家庭で生まれ育ち、背筋がぴんと伸びたような品のある優等生だった志信。
公立高校のクラスの中で、いわゆるスクールカーストの上位組に分類されているようですが、志信自身が人との間に薄い壁を作っていることもあり、憧れ半分、腫れ物扱い半分のような微妙な立ち位置に居ることが分かります。
どことなく息が詰まりそうな毎日を送る志信。
彼の学校生活での密かな楽しみ。
それは、決して経済的に裕福とは言えない家庭環境に居る、植物を愛する吉野というクラスメイトがこっそりと志信に贈ってくれる、道端に生えている素朴な草花達でした。

花に限らず綺麗なものが好きな志信は、いつも教室の片隅に花を飾り、家庭環境や身なりをクラスメイトに揶揄われても気にせず、あっけらかんとしている吉野のことを好ましく思っています。
自分には真似出来ないマイペースさに眩しさを覚え、憧れたのでしょうかね。
そんな対極とも言える環境に居る2人が、花を介した2人だけの秘密の交流を重ねていく。

その日も2人だけで花のやり取りをしていると、タイミング悪く他のクラスメイトに見つかってしまう。
自らの立場と保身のため、吉野が差し出したハルジオン(びんぼう草)の花を酷い言葉と共に突き返してしまい、彼を傷付けた事を悔み、いつ謝ろうかと思っている内に自身の父親が死去。
一転、多額の借金を背負い、進学を諦め、そのまま学校へは行かず、遂には吉野に会うことも謝ることも出来ないまま卒業することに。

やがて時は流れ、24歳になった志信。
家計と借金返済のために昼夜を問わず懸命に働きながら、あの日の事を思い返しては後悔をしている。
ある日、勤務先の現場で同僚からいびられ、現場に置き去りにされているところに偶然にも通りかかった吉野と数年ぶりに再会し…と続きます。


吉野の事は好ましく思っているけれど、親しくしているところをクラスメイトに知られてしまったら自分や吉野がどんな扱いを受けるのかを考えてしまう。
志信という人間は、ある意味とても人間らしい人なんじゃないかななんて。
特にこの年代ならば仕方がない気がします。
けれど、自身の行いを後悔して、あの日突き返してしまったハルジオンをごみ箱から探し出して、押し花のしおりにして今でも大切にしている心根の優しい人。
父親の死により、受けの志信の境遇が一転してはいますが、自尊心が高く、現実に腐る事なく母親を助けようと懸命に働く姿には悲壮感や卑屈さはあまり感じられません。

一方の吉野は、遠縁の親戚の遺産相続により貧しい生活から一変し、植物系の研究を行う大学院生となり、かつての志信のような裕福な家庭となっていました。
立場や環境は逆転してはいるものの、どちらも人となりに変化がないので嫌な感じは全くしないのです。
再会してからというもの、再び始まった毎日アパートのドアノブに掛けてある吉野からの花の贈りもの。
これをきっかけに、ゆっくり、穏やかに2人の距離が縮まっていく。

本当にゆっくりと進むピュアな恋でした。
志信よりも攻めの吉野が少し不思議というか、ちょっと語るには難しい人で、作中に書かれたマイペースという表現よりも、これは今で言うアスペルガーの一部なのではないかな…と思います。
これというものにはこだわりがあるものの、基本的に花以外には興味がなく、その場の空気が読めず、協調性はあまりない。
思った事をそのまま話してしまい周りからは浮いてしまうし、人の気持ちがいまいちよく分からない。
思い切り研究者向きの人ですね。
正直、いつか志信に会えた時を想像して部屋の調度品を揃えていた…の辺りは執着がすごいな…と思いましたが、きっと志信にとってはそのどれもが吉野らしくて魅力的なのでしょう。
波長が合うというか、お似合いの2人なのではないかと感じます。
ですが、そこまでの2人のエピソードがピュアさ溢れるものだっただけに、想いが通じ合ってすぐのベッドシーンはやや唐突に感じられました。
うーん、ほのぼのとした雰囲気とは合わなかったかもしれない。

後編の「においすみれの君」は吉野視点。
付き合ってから1年後の2人の様子と、前編の裏側、学生時代の吉野視点のお話が描かれています。

学生時代の2人だけのニオイスミレの秘密。
2人だけの花を介した交流。
吉野視点での学生時代のニオイスミレの香りを纏った志信の描写がなんだか良かった。
後編は嫉妬という感情が分からず持て余しぐるぐるとしている吉野の図が見られます。

「ゆっくりしていい?」から始まる、志信の観察とも言えるねっとりとしたえっちがすごい。
40分も撫で回し、匂いを嗅ぎ、モノには触れずに反応を注視し…志信に対する執着がすごいというかやばいです。

前編に出て来た会社の同僚と吉野の研究室のメンバー、志信の母親など、なんだか中途半端な描写も多く、いまいちすっきりとしなかった点、メイン2人にこれ!という突出した魅力が感じられなかったため、中立寄りの萌評価です。
特に大きな事件も問題もなく、淡々と穏やかに進むお話です。
逆を言えば、安心して読めるお話かもしれません。
少々盛り上がりには欠けましたが、草花を絡めた交流は微笑ましく、2人の一途さやピュアさが溢れるものでした。

0

退屈すぎて何度も寝落ち

※辛口注意※
デビュー作だそうです。
金持ち受と貧困攻なんですが、高校時代に貧乏攻からもらったハルジオンの花を突き返してしまったことでお互いしこりが残り、金持ち受が父親の死により借金を背負ってしまったことで、長いこと音信不通となります。

そこから偶然の再会をした時、金持ち受は借金を負ったことから生活が一変し貧乏受となり、貧困攻は棚からぼた餅で得た他人の遺産により成金攻となってました。
個人的にこの時点でそんなのあり得ない(特に攻の境遇)と若干冷め気味だったのですが、タイトルにある【びんぼう草】を作中のアクセントとして上手に活かしていた点は非常に良かったと思います。
花についても詳しく描写されていて、ネットでどんな花なのか調べてしまうくらいには面白かった。

攻と受、ふたりの性格のせいもありますが、とにかく2人ともお利口さんの優等生で、色々と潔癖です。
特に受なんかは、借金を背負ってからの環境の変化で、少しはねじ曲がってても良さそうなものですが、相変わらず綺麗でお上品。
攻もちょっと色々と心配したくなるような性格なんですが、根が純粋で良い人なので物足りないです。
そんな感じの性格のふたりが【花】を通じて淡々と物語が展開していくため、起伏のなさも相まって読むのに1週間を要しました……正直退屈です。

そして挿絵の影響と攻の口調の効果か、ふたりが百合ップルにしか見えず、いまいち萌えに到達しなかった。
あとがきで作者さんが好きな萌え属性を語っておられましたが、次回作ではぜひともその好きな属性で読んでみたいです。

2

花言葉に心を乗せて

高評価だったので興味を持ちました。
馴染みのない作家さんだと思ったらデビュー作ということでした。

裕福な育ちで優等生な受けが一転困窮する暮らしに、逆に貧しい家庭の子だった攻めが成金になって再会。
本当は好きなくせに、言えずに子供だった頃の屈辱をし返すかのように受けを隷属させて…ってな展開だったら嫌だなあと思いなかなか手が出せなかったのですが、カバー絵のふんわりしたイメージどおり優しいお話でした。
長い初恋が成就したという感じで、心温まる系の物語に癒されたい時にはお勧めかもしれません。

二人ともとてもいい人だし、再会後にすんなり恋人になってしまうなど物足りない気がしました。
また、志信の職場の先輩とのことや学生時代の人間関係のトラブルなど中途半端な結末で、もっと何かあるのかと気になってしまいました。

設定は面白そうだったのですが薄味すぎて呆気なかったのが残念でした。

1

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