冬草
konomachi ni sundeu karera no koto
ぐさりさんは元々文章書きだった、
ということを耳にしたことがあります。
今作を読んで、ああ、なるほど、と改めて思いました。
ぐさりさんの阿吽本9冊目は
前々作『あの街に住んでる彼らのこと』の設定を受け継いだ続編。
ショート漫画(1~2Pものを含む)と、4コマ漫画で構成されていて
どれも物語つづきの話なのだけど、それにしても短いページ数の中で
こんなに満足感のある、読み応えのある同人誌は本当に久しぶり。
今までの中で、わたしはこの作品が一番好きです。
山岳写真家の岩ちゃんが一か月ぶりに帰ってきた。
岩ちゃんが帰って来てすぐすることは、及川さんに触れて堪能すること
その後泥のように眠ることー
前々作同様に同棲日常本なので、
阿吽ならではの空気感がゆったりと漂う中
筋トレしたり、イチャラブしたり、おでかけしたり、
そして今回は、まっつん(咥え煙草とか...本格的にカッコイイ)と
マッキーと一緒に山登りにも行っています。(牛若くんも友情出演!)
どのパートもそれぞれ楽しむことができますが、
一番のみどころは、最終章のふたりの山登り。
この最終章は及川さんのモノローグから成っていて、
冒頭に描かれた岩ちゃんのモノローグとも繋がっています(阿吽のモノローグリレーのようでため息がでた)。
一歩一歩、地に足を着けて語られる及川さんのモノローグは
その言葉を辿っていく読み手の心をグッと掴んだまま
物語のラストへとじわじわ導いてくれるのですが
それがまるで、地上から頂上へ、
そして頂上から下っていく際の案内人のようで
ぐさりさんのストーリーテラーっぷりに触れ伏すばかり。
個人的に一番心魅かれたのは、『電車』と題されたショート漫画、
電車の中で、ふたりが結婚や子供について話すシーン。
『俺たちってば 永遠にふたりきり』という
及川さんの、岩ちゃんとずっと一緒にいるんだという揺るぎなさが
切なさと幸福感で溢れていて、胸を鷲掴みにされました。
そしてそれを象徴するかのように
電車に揺られて立っているふたりの後姿がひどく印象的で...
今もまだ、心から離れてくれません。
”阿吽”という言葉だけで萌えることのできるわたしは
かなりおめでたい人間ですが、
この作品は萌えだけじゃない”何か”が詰まっている。
今はまだ、言葉で明確に表すことはできないけど
それは読んで肌で感じるものなのだと思います。
評価は、阿吽本としては、はじめての”神”評価。
作品を重ねる度に素晴らしさが増していくぐさりさんの阿吽本、
次回作も期待し、心待ちにしております!