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大丈夫って言ってください
hakusen no mukougawa
じんわりと沁みるお話でした。
すごくドラマがあるわけじゃなく、ほんと普通の人々の出会い。出会ったそれぞれが、自分の中の幸せとか、進む道とかに気がついて行くのです。
【まじわるパラレル】
タイトル名になった話。
駅員と派遣社員が駅で出会ってから、互いに気持ちを近づけて行くんですが。2人とも臆病になっています。傷ついた経験が有れば、やっぱり傷つきたくないし、逆もしかり。
派遣社員の白石と駅員の長谷が、おずおずと近くなって、互いに特別に変わるのが良かった。
長谷の駅員姿が、ちょっとツンしていて堅い感じなんですが、それが白石と過ごすうちに崩れていくのが味わい深い。
白石も警戒心強めだけど、長谷となら幸せ感じながら生きていけますよ。きっと。
【鴨川サガン】
不登校の男子高校生と、小説を書いていた元同人作家のおじさんの出会い。
おじさん、振り回されていました!どちらも年齢も住む地域も違う。共通項は、おじさんのPN『鴨川サガン』。
どちらも、一般的な社会からちょっとだけ違和感を抱えた生き方しています。でも暗さは不思議となくて、飄々とした感じで話が進みます。
どちらの作品とも、痛みを抱えていても救いになる出来事も、寄り添っていける人も必ずいるよ!というメッセージのように受け取りました。BLのLは、これからですね。
可愛くて優しい感じのお話を表紙から連想していたのですが、すごく胸にズッシリくる話でした。
けっこう重くて、病んでるといえるくらいかもしれません。
すごくリアルでそれが面白くて読み終わってすぐまた読み返してしまいました。
ネガティブな箇所も多いので人によっては好みが分かれそうな気もします。自分が辛いときに読んだら引きづられて辛くなるかも…という感じです。でも表現の仕方が素晴らしく上手いです。
契約社員の白石と駅の案内係の長谷。
二人とも人生につまづいて無意識に支えを探しながら、互いの存在にいつのまにか癒されています。
駅員と、会社に行きたくなくて毎朝電車を何本も見送る乗客と。
そういう些細な日常での出会いがとても好きです。
白石は何事もうまくいかず、やりたいことも見つからず、自分に自信も持てず、もう疲れたなあ・・・と暗く落ち込むわけでなくて、あははと軽く笑いながら言う様子が、何だか本当にいそうなリアルな若者という感じでした。
お互いの愚痴を聞きながら、「一人だけ成功しないで欲しい」と暗い願いを抱える姿もリアルでした。
飲み仲間だった二人が、ゲイだとかノンケだとかの葛藤もなく恋人になるのは何か唐突な気もしましたが、互いの人生の相談相手になり、互いの支えになるというこのポジションが「友達」でも通用するお話かというとそれも違う気もします。
特別に一人であるポジションに癒されて、支えられて支えているんだなと感じます。
BLとしてはかなり緩いのですが、きっとまた何度も読み返してしまうだろうなあと思うお話でした。
後半の短編「鴨川サガン」
引きこもりの少年と文学青年のお話です。こちらも独特の雰囲気で、少しほの暗かったり、でも暖かい触れ合いのお話です。
愛とか恋とか激しいものでなくて、全体的に「触れ合い」という程度の些細なお話ですが、この作者さんの持ち味は素敵だと思いました。
ガトーコミックってセミプロさんの作品を扱ったものも多く、正直あたりはずれが大きいと感じています。
でも私は普段ネット公開の漫画を徘徊して読んだり、同人誌のオリジナルBLを買って読んだりすることはほどんどないので、こういう商業で発売されないときっと知らなかっただろう素晴らしい同人誌やネットの作品を発売してくれることはとても有難いと思います。
同人で何となく買っていた作者さんでした。
書き下ろしあるかなと思って買ったら、全部同人で持っていたという(汗)まあ、いいか。
優しい絵柄で読みやすいのですが、こうやってコミックスで見るとかなり白いかもしれません。
あと内容も悪くはないのですが、商業BLとして読むならば萌えが足りない。あともう少し!それと受けがいい子そうに見えて結構勝手なのはリアルっちゃリアルなんですけれど、キャラの意外な一面を見せてどうこうという展開を狙った訳ではないみたいなので、ただ色々練られていないだけかも。
応援の意味を込めて、「萌」で!
■感想
本書には「まじわるパラレル」「鴨川サガン」「きみに届くまで~続・鴨川サガン~」の3作品が収録されています。
「社会」に揉まれる苦しさの中に、偶然とも運命とも言える恋の出会いが描かれています。
全体的に軽いタッチの作風なので、サラサラっと読める手軽さはとても好印象です。
また、主人公が抱えている不安と葛藤が絶妙に表現されており、思わず引き込まれるストーリー性もGOODです。
どの作品も、人の「心情」を大切に想い描いた作品に仕上がっているため、評価は「神」とさせて頂きます。
「白線の向こう側」駅員x派遣社員。(キスまで)
「鴨川サガン」古書店オーナーx高校生。(完全プラトニック。仄めかす程度)
「白線の向こう側」はお互いが仕事で、進む道で悩んでいる。そんな二人が出会い惹かれ合う。
感想としては、受けがちょっと打算的というか、自分が辛かったら人を頼ろうとするけど、何かあればすぐに逃げる性格なのにイラっときた。
すごく心情を大切にしたいという作者の気持ちは分かるけど、描き切れないてない感じがした。
「鴨川サガン」は大人が高校生に振り回せる感だけど、高校生にも何やら事情があるようで。でもその事情が中二病的な身勝手な感じがした。
全体的に絵は好みで悪くない。ただ、やはり少しぎこちない感じがする。でも今後に期待したいということで、☆は萌えで。