ねぇ、今——弟のこと、考えてた?

青を抱く

ao wo daku

青を抱く
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神42
  • 萌×236
  • 萌22
  • 中立3
  • しゅみじゃない9

--

レビュー数
17
得点
423
評価数
112
平均
3.9 / 5
神率
37.5%
著者
一穂ミチ 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
藤たまき 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA(メディアファクトリー)
レーベル
フルール文庫ブルーライン
発売日
価格
¥700(税抜)  
ISBN
9784040676807

あらすじ

静かな海辺の街で暮らす和佐泉は、毎朝の日課で海岸を散歩中、ひとりの男と出逢う。少し猫背の立ち姿、振り向いて自分を映した黒目がちの瞳――叶宗清は、海での事故以来、病院で2年間目覚めないままの弟の靖野に良く似ていた。旅行中だという宗清の飾らない人柄を疎ましくも羨ましく、眩しく感じてだんだんと惹かれていく泉。だが泉には、同じように好意を寄せてくれる宗清には応えられないある秘密があって……。

表題作青を抱く

外資系スーパー勤務,26歳
テクニカルライター(メーカー勤務),26歳

その他の収録作品

  • 青が降る
  • あとがき

レビュー投稿数17

青を抱く

海の事故で2年間、意識不明の弟を持つ泉。
ふらりとその海に滞在しにきた宗清。
泉の弟に瓜二つな宗清とたまたま出会い、少しずつ近寄っていく。
泉の家族が献身的に弟を看病していて、事故の理由はわからないまま話は進んで。
宗清は泉に惹かれ、泉も宗清といるのは嫌ではなく。
終盤、驚く事実がわかりすごい話やなぁと。
泉のお母さんがある人にいう言葉がすごく心に残って。
それはとても冷たい表現かも知れないけれど、ぐっときた。
楽天的な話では無いけれど、暗くなり過ぎず、のめり込んで読みました。

0

R5年8月発刊 角川文庫版で読了

BL小説の一言で片付けるには色々な要素が絡み合っていて、「恋愛小説」の趣き。角川文庫版なのでイラストも表紙しかなく、前半はなかなか読むペースが上がらなかったのだけど、後半に進むにつれ、散りばめられていた伏線が一気に回収されていく。

今回、書き下ろしの短編が収録されている。この短編によって作品全体の余韻がより深くなるから、旧版を読んだ人もこの書き下ろしは読む価値ありじゃないかな。登場人物がみんな優しい、みんなせつない、

0

ネタバレなしで読んで欲しい

いやいや、さすがの一穂さん、あっぱれ。

何もない海辺の街に、東京からふらっと旅行へきた宗清と、海の事故で意識不明の弟を2年間看病している泉。

2人が親しくなるにつれ、少しずつ明かされる事実。無関係に見えた糸が紡がれて…。

真実が明らかになったとき、あぁーといろいろ納得できました。

もちろん物語なので、いやいやそんな都合よく、という突っ込みもほんの少しありますが、そんなの問題じゃないぐらい読後感がいい!

最後の最後に、宗清の運転免許証の謎だけは笑いました。

海辺の情景が浮かんで、とっても素敵なお話でした。

4

いい恋愛小説を読みました。

気持ちいい恋愛小説を読んだなという感想。
男女の話でも成り立つのかなとも思ったのですが、
これはやはり同性間の話でないと書けなかったなと。
それは、ただ血の繋がりのトリックだけではなく。

このお話は普通の同性間の恋愛小説といってもいいかも……
と、思っていたら、最後に濃厚なBL的展開が待っていました!

泉の心情が丁寧に丁寧に描かれていて、でも泣かされたのは宗清の方でした。

文章が、良くも悪くも一穂さんで、
擬音や、景色、心情の表現の仕方が独特だなと。
時々BLを読んでいて「これ、作者は誰だっけ?」と、
表紙を見返す時があるのですが、一穂さんの文章にはそれが無い。
時々引っ掛かりつつも、最後まで読ませてしまうのは流石です。

途中、泉がどちらを選ぶのか、はらはらしつつページをめくらされました。
そういう意味で、靖野の心情にももう少し突っ込んで欲しかったかな。

でも、清々しく読み終えたので「萌×2」

3

『青が降る』をじっくり読んでほしい

一穂さんの作品は、色で入ってくる作品が多くて(自分の頭の中にという意味で)その中でもこれは特に色の感覚とか視覚的なインスピレーションを強く受ける作品でした。
結末というか真相?の部分には少し驚いて、『まさか一穂さんが~?』と思うところもあったんですが、それを呑み込んで『青が降る』を読み進めたところにもっと深い真相があったので納得して、読後感も格段に良くなった。それはもしかしたらサラッと読んでしまうと到達できなかったかもしれない。単に私の力不足ですが。
ネタバレ?になるので、未読の方でもしお嫌であれば一旦読むのをやめていただきたいのですが。。。。。

事故直前の件をなかったことにして普通の兄弟に戻ることが、兄が自分に捧げてくれた時間に対して弟として返せる唯一のことだった。
結局は忘れていなかった。
宗清の質問に靖野が答える形でその話をして、「この話も明日には忘れると思う」と言う。宗清も「ああ、俺も」と言う。一瞬にしてお互いが悟った「本当の兄弟であり他人としての暗黙の了解」。それで「今」の靖野の気持ちは?
実は1度目に読んだ時にはここまで考えられなくて、「ふんふん。ん?」という感じで先に進んでしまったんですね。でも読後どうしても気になってこのシーンに戻ったんです。そこで「そういうことか~」と。この危うさというかお互いが結局敢えてうやむやにした「色々」をようやく考えた。
一穂さんの作品はたまにこういうことがあって、私自身の力不足で、一穂さんの力を全部受け止めきれてないんじゃないかと不安になって読み返すことがあります。。。すみません。
「口にしないこと」の美しさをこうやって教えられているのに、自分の行動には反映されない。もどかしいです。どうでもいいけど(笑)
一穂さんにしては比較的長めで濃厚なエッチシーンも好きでした!


2

海辺の街の情景が浮かぶ、雰囲気ある小説。

良い意味で雰囲気小説だと思いました。海辺の街。病院でずっと目を覚まさない、泉(受け)の弟の靖野。靖野の目覚めを献身的な介護で待ち続ける泉と、泉の前に現れた、靖野によく似た旅行者の宗清(攻め)。
情景が浮かぶような描写が多い、雰囲気たっぷりの小説です。

靖野の事故に隠された秘密や、どうして靖野と宗清がそっくりなのか、という謎が少しずつ解き明かされていく。

大きな『謎』が常に居座ってはいるんだけど、泉と宗清の関係を進めるのは驚きの展開の連続とかではありません。それぞれに秘密を抱えるふたりが楽しんでいくのは、小さな非日常を一緒に経験すること、会話を重ねて相手を知っていくこと。ページを繰るごとに関係性がゆっくり進むようで、フルールのwebサイトで読んでいたときは続きが待ち遠しかったな。

一方で謎解きの方は、ちょっとむりやり整合性を持たせてる感があったかな。『謎』に向かってどんどん読者の期待が上がっていく小説の場合、『真相』でその期待にばっちり答えるのって難しいですよね。そういう意味では、ご都合主義も個人的には許容範囲内でした。

エッチはふたりの想いが通じてから。最後にドッと、っていうのも個人的には良かったです。本編ではけっこうツンだった泉(宗清はそのツンに萌え萌えのちょいMでしたが)ですが、付き合ったら一途に熱っぽくなりそう。長持ちカップルの予感がします。

2

現実感が薄いけど納得?

発売当初から購入してあったのですが、あらすじを見て少々寝かせ過ぎた今作ですが、読み始めると一息に読了しました。

始めの出会いからして偶然じゃなく必然。
全ての出来事が微妙なバランスを持って物語を形作っている
二人の家族全員がこんな真実によって繋がっていたなんて
やっぱりあんまり重い話は…と思っていましたが…

始めから終わりまで、複雑な事情を抱えているのに
こんなに綺麗な形で纏まるとは…
都合がよすぎる感はありますが、この形以外は無いんだろうなと思われる結末でした。

靖野の気持ちを考えると、切ないを通り越してそれでいいのかと、
二年間の兄の捧げてくれた時間やその他もろもろに対して返せるものとして、自分の感情を無かったものにしていいのかな。
泉も、その場しのぎで逃げた事を後悔していた割に、靖野が目覚めてからその事については触れない。
不自然といえば不自然だけど、今の形のバランスを崩しても誰も幸せになれない。

ハッピーエンドとして終わるなら、泉と宗清のこれからを考えるなら、綺麗な結末も現実感が薄い終わり方も仕方がないですね。

でも物語としては読み応えがあり面白かったです。

3

一冊まるまる青色のイメージ

今回はページを捲っても捲っても青を感じる作品でした。
海の青や空の青、深さや天候によって全然違うけど、分類するなら「青色」と表現される色。それをずっと感じていました。
一冊通してその本のイメージというか雰囲気というか・・・そういうものが全然ブレません。言葉では表現しにくいはずの感覚的なものを伝えるのがすごく上手な作家さんだと改めて思いました。

宗清が泉の弟・靖野に似ていた理由。確かにそれなら宗清と靖野が似ているのは筋が通るけど、その理由付け必要だったかな・・・と思ってしまいました。
泉だけが似ていると思っていたなら、弟を重ねて惹かれたけど他人の空似でした、で収めても良かったのかも。でも、他の人から見ても宗清と靖野が似ているのなら、ちゃんとした理由が必要だし・・・全てを納得させる理由は、やっぱりこの設定しかないか・・・とちょっと呑み込むのに時間を要しました。
目覚めた靖野の気持ちを考えると・・・『青が降る』で触れられてはいるけれど、靖野が無理してる気がしてしまい、ちょっとモヤモヤしてます。この収め方が一番無難で綺麗に纏まるので、これでいいのだとは思います。

この作品は、とても綺麗だと思います。そう、綺麗。
どろどろとした人の負の感情さえも、濾過されたようなどこか透明な美しさです。
泣いて喚いて心をぐちゃぐちゃに掻き乱されるような、そういう激しさが好きな方にはオススメしません。
怒っても泣いても綺麗で、心に重荷を抱えていても優しい登場人物たち。彼らを紡ぐ美しい文章。その完成された美しさを堪能する一冊だと思います。

1

かなり思い切った設定

設定がこの先生でなかったら、読めないくらいぶっ飛んだ設定で驚いた。
ネタバレはしないが、初めて読むのを投げようかと思った。
最後まで読んだのは、心情や描写がよかったから。
いつも思うのが、男男の設定より男女の設定の方がしっくりくる。
読み手を飽きさせない展開。
イラストを担当された藤先生も病気の描写が他人事とは思えなかったと書いてらっしゃるように、細々した設定に読まされた。
難しいけど、評価は神評価にします。

1

甘くて辛口

読み重ねてみると思うのですが、
この方の作風は基本的にBLの軸から
意識的に半歩ずらした所に軸がある様な
手応えです。
ヤングアダルト小説の一つの流れと思って
対峙すると案外響き易いのかも知れません。
登場人物達の在り様もそう言う視点で見ると
腑に落ちやすい様な気がします。

率直に言えば辛口のジンジャーエールの
様な味わいです。
それなりの甘味もあるけど刺激も辛味もある。
時にそれが隠し味以上の存在感を出すので
辟易する方もいるかも知れません。
ただ、上手く練れている辛味だとは感じます。
それ故親しみやすい方もおいでなのかと。

4

物語の糸を引く

ある目的があって海辺を歩いていた攻めの宗清、目的を見失いかけた儚げな声で宗清を呼び止めた受けの泉。出会いまでの複雑さと恋に落ちるまでの優しい掛け合いに涙が出ました。
泉と宗清、それぞれの家族、幼馴染、と一穂先生ならではの広い世界観で二人にとっての大きな転機が描かれています。

一穂作品って登場人物が多いように思います。しかもそれぞれが物語の鍵を握っている。何重にも交差する登場人物たちの想いが、二人の結びつきをより強く、くっきりと浮き上がらせていたのが印象的でした。
「青を抱く」というタイトルも物語の糸を引いています。泉と宗清の会話は最後まで堅いような気もしますが、合間にのぞくくだけたやりとりに“らしさ”を感じました。

余談ですが、フルール文庫の文字組み(16行×38字)が好きです。ザ・文学という雰囲気が引き立てられていませんか。他文庫よりゆるやかな文面がこの作品にも合っているような気がしました。

4

評価に悩む

一穂さんらしい、爽やかな読後感の作品でした。

思わず風景が目に浮かんでくるような緻密な描写に、「へ~」と思わず感心してしまうトリビア。出てくるキャラたちがみんないい人たちばかりだし、そこかしこに撒かれた伏線を上手に回収しながら進んでいくストーリー。

出てくるキャラもみんな魅力的でした。
真っ直ぐで、苦労も知っているため人に対する思いやりも持っている宗清。
弟が海難事故に遭い、そのまま2年間目を覚まさないため自分の事は二の次で生活している泉。
表面上はそれだけなのだが、でも実はお互い深いところに秘密や葛藤を抱えていて。

ストーリーとしては二転三転する事実や両親たちも巻き込んだ壮絶な過去が展開され非常に面白い。面白いのだけれど、どうしても「ご都合主義」的なところが目について仕方なかった。
宗清と泉が出会えた奇跡や、二人の関係が、「リアルならこんなにうまくは行かないよね」とどこかで感じてしまう。

それに泉のお父さんが良い人すぎちゃって、それもちょっと嘘くさいというかなんというか…。そんなにできた人、いる?と思わずにいられなかった。

靖野も事故に遭う前に泉に告げた告白。あの気持ちを、事故から目覚めたあと、どうやって折り合いをつけたのかが分からなかった。泉が葛藤して、悩み、苦しんでいたそのことこそ、きっちり話をして気持ちの整理をつけるべきで、そこがストーリーのキモじゃないのかな、と思ったのですがその点をするっと流されてしまったのが残念でした。

がしかしそれでも泉と宗清、弟の靖野の関係は話としては非常に面白かったし、ストーリー展開の上手さは流石としか言いようがなかった。
ので評価に悩むのですが、☆4つで。

7

海のような話でした。

読んでいる間は、この二人はどこに辿り着くのか、周りの人達は何を思ってるいるのか、登場人物の気持が私にはあまり読めなくて、早く先が知りたいって衝動に追いたてられるように読み進めました。
物語の最後で全ての謎が解けるのですが、その結末は私にとっては意外なものでした。
(あ、謎と言っても別に推理小説なわけではありません)
カップルの二人より関わった人達の方が印象が強くて、二人のこれからが知りたいとも、文面にならなかった二人の時間を知りたいとも余り思いませんでした。
人の人生に深く関わりすぎるのが重いと感じるほどに少しリアルすぎたからかもしれません。
誰もが幸せにはならないけど、何が幸せかもわからない。
だけど、選択は間違ってなくて、選んだ人は全員それで幸せなんだと信じたい。
そんな風に感じた話でした。

2

えっ? どっちがどっち? そっちなのー!?

私にとっては、当たり外れのある一穂ミチさんの作品。
さて、今回はどうかなー?と思いながら読んだのですが……

うーん、正直、萌えにヒットしませんでした。
かなり残念です。「ハズレ」の方ですかね…?
ゴメンナサイ。

前作、「世界のまんなか~イエスかノーか半分か2~」を
読んだばかりで、その作品がかなりの萌えストライクだっただけに、
それも影響しているのかもしれませんが……。

一穂さんがこのような静かな物語を書かれるのは知ってるんですけどね。
それ以外にも「あれっ?」と思うようなことがあったりして。

   ◆◆   ◆◆   ◆◆

実を言うと、話の中盤以降まで、挿絵のどっちが
主人公の泉(受け)で、どっちが宗清(攻め)か、
分からなかったんです>< 
頭が混乱状態で読んでました。

というか、半分以上、泉(受け)の方を「こいつが攻めだ!」と
完全に勘違いしておりました。
うーん、でもそれは私だけせいではないはず……と思うのは、
責任転嫁ですかね……??

今回、各登場人物の特徴の描写が極端に少なかった…と思います。
少なかったというより、なかったに等しいかも…です。
(私の見落としでしたら、スミマセン)
例えば、「背が高い」とか「体格が良い」とか「髪が短い」とか
「目鼻立ちがくっきりしている」とか……
私が覚えているトコロといえば、最初に泉と宗清が出会うシーンで
宗清の特徴を靖野と似ていると「捉えているトコロ」だけでしょうか?

なので、泉が「宗清にそっくりの弟の靖野がいる」と
語った時点で、「弟ならそ泉より小さいに違いない!」と
思ってしまったんですね。
弟がまさか、表紙左のような大きな?男とは思わなかったので。
人物描写がなかった時点で、それが分からなかったんです。
なので、泉(受け)を
「攻めで、挿絵で言えば、こっちの体格のいい方!」と
勘違いしてしまったんです(笑)

その後、なんか話を読むにつれて、
「あれ? あれ? なんか変」と思うようになって、
泉(受け)と宗清(攻め)が逆だということに気付いたんです。

でも!
私のバカな勘違いに気付いた時にはもう遅かった……
修正不能!
もう物語は中盤ぐらい。
ぎゃあああああ!!


最後の濃厚なエッチシーン。
主人公の泉(受け)と宗清(攻め)のエッチだったわけですが、
読むごとに一回一回、
「こっちは泉。弟の靖野がいるほうで…」
とか
「こっちは宗清。地元民じゃないほうで…」
とか、
頭のなかを整理しつつのエロシーン。
濃厚なエッチに集中できなーい!!><
すごーくページを割いて、エッチシーンを書いてくれているのですが、
ああああ、頭のなかは、人物の整理でいっぱいいっぱいです。
ひぃぃぃぃ。

思い込みって怖いですね~~~。
みなさまも気をつけましょうっ><
(「そんなバカな思い込み、お前しかしねーよ」って言われそう)

   ◆◆   ◆◆   ◆◆

えーと、ストーリーの方を少しだけ。
泉の弟で、2年前に海で溺れた靖野。それによく似た宗清(攻め)。
それの謎が解けるシーンが途中で出てきます。
しかし……ここは、全く感情移入できませんでした…。
正直言って、「へえー、そうだったんだ。まあ物語だしね」
ぐらいにしか感じませんでした。
女性同士だから、とかいって嫌悪を抱いたとかそんなのでは
全くありませんが、「そっかぁー」ぐらいにしか思いませんでした。

良かった所も少し。
まさか靖野がこの一冊の本の間に意識を回復するとは
考えてなかったので、意識を回復した時は純粋に嬉しかった。
現実世界では、きっとこの状態は、これからも見込みが無いと
思います。
ここは、
「希望を持っていれば、いつかきっと……」という
メッセージが込められていたようで、嬉しい場面でした。

   ◆◆   ◆◆   ◆◆

この本を読んで思ったのですが、
私は単純にリアリティーにあふれる純愛ストーリーが
駄目なだけかもしれません。

一穂さんのひとつひとつの表現力、それはとても素晴らしかったです。
でも、わたしは基本的に、
「何か凄く印象深いキャラクター」と「引き込まれるストーリー」が
必要不可欠のようです。


今回の本は、静かで穏やか、
寄せては返す波のよう。
水平線が見えて、キラキラと輝いて……
そんな中での二人の純粋な気持ちが折り重なる愛のストーリー。

それが単純に私に合ってなかっただけかもしれません。


それでも、私は一穂さんの作品が好きです。
(好き・嫌いは作品によって分かれてしまいますが)

例え、「今回はハズレかなぁ」と思うものをひいたとしても、
おそらく、「次こそは!」と思い、
一穂さんの作品を買い続けると思います。


次作に期待です。

9

あやちゅけ

snowblackさま
コメント、ありがとうございます。嬉しいです!
一穂さんの作品は出会って、まだ日が浅いのですが、
そういう描写をされる方なのですね。初めて知りました。
とても表現が上手な方だと思うので、是非人物の外見等も、あと一押し
表現して貰えたら、また格段に良い作品になるのではないかな…と
言う気もしました。(私の希望も入ってたりします)
視点を評価頂き嬉しいです。コメント、ありがとうございました!

snowblack

あやちゅけ様、こんにちは。
一穂先生の作品はほとんど読んでおりますが、「登場人物の特徴の描写が極端に少ない」というのは、特徴の一つだと思っております。
BL作品に多い身長〜cm、瞳が〜髪が〜とか、美貌を書き表すとかはどれもまずなく、その他の細部でその人の雰囲気が伝わる書き方をされていると思います。
私はそれに慣れてしまっておりますしそういう書き方が好きなのですが、確かにそうすると挿絵の影響も大きいですし、捕らえ損なうこともあろうかと思います。
面白い視点だと思い、一言コメントさせていただきました。

情景が目に浮かびます

都心から少し離れた海辺の小さな町が舞台。
何度も出て来る、波が打ち寄せる砂浜。
その砂浜を散歩しながら、ごみを拾うのが泉の日課。
そして、弟が事故に合ったのも同じ海で・・・
人の命をも簡単に奪おうとする海、だけど見ているだけで
心穏やかにしてくれるのも海、2人が出会ったのもこの海で・・・

主人公泉と海で事故に合って植物状態の弟靖野
そして、泉たちの暮らす海辺の町へショートステイしている靖野に良く似た宗清。
この3人の関係が、このお話のカギとなって
読み進めるほどに、何とも言えない虚しさや苦しさ
そして逆に、ホッとする気持ちや嬉しくて泣きたくなるような気持ち
様々な感情に動かされる内容でした。

最初海辺で出会った泉と宗清。
読んでいくと、お互いを微妙に意識する2人。
簡単には恋人と呼べる仲になる雰囲気ではないんだけど
何か見えない糸でかなり強く結ばれているような・・・
そんな風に感じさせるエピソードがたくさん出てきます。
2人共、人には言えない心に秘めた何かをずっと1人で抱えてきて
それを打ち明けられるほどにお互いを必要とするまでを
とても丁寧に、表現されていました。
ほんの1か月くらいの時間、泉と宗清は一緒に過ごしますが
その中で2人の心の中を交互に覗き、ハラハラしたりじれったくなったり
楽しませてもらいました。

この2人と2年もの間眠り続けている4歳年下の弟靖野。
この3人が恋愛も含め、とても複雑な関係を持っています。
最後に「そういうことだったのか・・・」ときっと思います。
泉が驚くほど靖野に似ている宗清・・・
その謎となぜ宗清がこの町に来たかがつながるとスッキリしますよ。

何もかも受け入れて、そして心を解放した泉と
泉を想い続けた宗清が愛を確かめ合うシーンは
すごく2人らしいというか、ちょっと泣けてしまうほど良かったです。
Hの最中宗清は「泉っ」て呼ぶんだけど、
泉は抱かれている時も最後まで「叶さん・・」なんですね。
それがとても泉らしい感じがしました。
同い年なのに、いつまでも敬語感が抜けないのも泉らしくて・・

泉の想い、宗清の想い、そして眠り続ける弟の想い・・・
その全部が明らかになるとき、軌跡は起きるんですね。
号泣・・・というより
うっ・・良かった・・・ぐすっ・・・と泣けました。

「世界のまんなか」とはまったく雰囲気の違うものですが
前回に引き続き素敵なお話でした。
もちろん神で・・!!

7

今月も来月も一穂祭り

WEBに掲載されているときちょこちょこ読むよりも、一冊の本になって読んだほうがさらに深みが増しますね。わたしの拙い表現でいうと、なんだか一本の映画を見たような感覚。

海辺の街を舞台に、秘密を持ったふたりが出会って、惹かれ合い、ラストで秘密の過去が明らかになる。
主人公の泉と、泉と出会い、好意を寄せてくる宗清。宗清がよく似ているという昏睡状態の泉の弟•靖野の三角関係(かどうかはゴニョゴニョゴニョ…)

全体的にドラマチックな要素があり、特に後半で予測困難な真実と怒涛の展開が待っています。
ラストで明らかになる登場人物たちの秘密が、「おぉう…」と感嘆するか、「なんじゃそら」となるか別れるかも?ですが、ガンガン物語が進んでいくのではなく、一穂ミチ先生のどこか儚げで叙情で情緒的な描写が、そのラストの展開も静かにだけど、じわりと重く深く染み込んでくる感じだったと思います。

そして序盤の雰囲気から、あまり期待してなかったエロも書き下ろし含めけっこうあったので満足です。穂先生の情事のシーンの描写が大好きです。

同じ月に発売された人気作の続編『世界のまんなか』を読んだ直後にまた違った味の一穂作品が楽しめる。そしてまた次の月も。
いったいどれだけ引き出しがあるのだろうと脱帽の一穂クオリティですね。

6

静かに深く 青に染む

今月出たばかりの『世界のまんなか』は、ジェリービーンズみたいに
カラフルでポップな作風だったが(百味ビーンズ風に胡椒味もあり?w)
こちらはまた色合いの違う作者の世界。

WEB連載で読んでいた時から、後半じわじわと涙が溢れたが
再度本を手にとって一気に読むと、その味わいはさらに深く
読後、潜水した世界からなかなか戻って来られなかった。

      …      …      …

東京から4時間、海辺の町。
泉の4歳下の弟・靖野(しずの)は、2年前海で溺れそのまま目覚めない。
飛び込みの選手で潜水のエキスパートだった弟は
なぜこんなところで溺れたのか……?
靖野の介護のために、在宅勤務に切り替えて実家に戻り
いつ終わるとも知れない閉じた日々を淡々と過ごしている泉の前に、
ある日弟によく似た面差しの宗清が現れる……。

透明な世界だけれど、見通しも身動きもつかないような
そんな不思議な感覚で読み進めるうちに段々と話に引き込まれ、
いつしか物語の大きな波に飲み込まれていく。


宗清が携えてきた秘密、泉が抱えていた苦悩、
小さなやりとりを重ねながら、少しずつ近ずいていく二人。
二人が惹かれ合う宿命的な必然。

どこか憂いを帯びて丁寧に生きる泉と、
おおらかだけれど繊細な優しさを持つ宗清。

泉の抱えていた苦悩の原因は、なんとなく見当がついたのだが
その後の展開は想像を越え、物語は最後奇跡のように着地する。

「所詮おはなし」という言葉で
カタをつけてしまうこともできるかもしれない。
そもそもの発端になった過去の出来事に対する
意見もさまざまかもしれない。
それでも、この物語は美しい。

善悪や常識では割り切れない人の想い、
家族にとっての血のつながりと共有した時間の意味、
セックスも含めた肉体を持った人間の、暖かさ愛おしさ、
そして切なさ。
そんなものが、作者一流の情景の描写や会話、印象的なモチーフを通じて
細やかに積み重ねられていく。


BLとして読んだ時に、評価が分かれる作品かもしれないとは思う。
でも私にとって彼らが求め合う様は、萌えを超えた萌え、
これは紛れもない純度の高い恋愛小説だった。
……神としか評価しようがない。

   「俺は、自分だけのためにこの人を好きでいていい。
   何も残らない。でも覚えてる。一人になっても覚えてる。
   そして歩いていく。」

      …      …      …

書き下ろしは、数ヶ月後東京にて。
再度それぞれの人々の優しさに涙し、
巡り会い共に生きる二人の交歓に、心満たされて本を閉じた。



*最後にボソッと……
 藤たまきさんは、好きな漫画家さん。
 挿絵も悪くなかったのだけれど……
 最後までイメージが微妙にずれた感覚が拭えなかったのは
 先にwebで読んでいたのが災いしたのか……

17

minika

*最後にボソッと
に、賛同です。私もたまきさんの絵もマンガもスキなのですが、
表紙の宗清は大人なイメージが強く、ちょっとズレていた気が
しました。作中の挿絵では少し安心しましたが。
つぶやきにコメント失礼しました。

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