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作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
「雪よ林檎の香のごとく」の後日談、同人誌等の再録の第二弾です。第一弾が青、第二弾が赤のこれ、そして第三弾が黄色です。
第一弾が志緒ちゃんの高校時代から大学入って初めの方まで。
第二弾のこちらは志緒ちゃんの成人式から大学院に入り、さらには就職するまで。
高校生と大学生では生活も変わりますし、そこから就職でまた変わります。そういう激動の数年間を、高一から付き合ってきた二人が共に時を重ねている姿が丹念に描かれていて、感慨深いです。
BLって一組のカップルが結ばれるまで、がまずは多く、人気作の続編では、結ばれた二人に横槍を入れる当て馬が出てくるか、ものすごく大きな壁が立ちはだかるか、それでなければ逆に平穏なイチャイチャか、になりがちです。
でもそこまでドラマチックじゃない普通のカップルにも、普通に葛藤があったり、大した事ではなくても二人にとっては大切なエピソードがあったりします。
この作品は、どこかに本当にいるかも知れない二人の、二人だけがこっそり大事にしているエピソードを垣間見たような気持ちにさせられる短編が盛り沢山で、どれも堪能しました。
些細な日常のことの、でも2人にとっては大事な事の、その大事さを語れる作品ってそうはない気がします。
青までの志緒ちゃんは夜の営みに関して大変に初々しいしかったのですが、この巻では一緒に寝る事が少しずつ当たり前のようになっていて、二人の関係性が深まったことがよくわかります。
が、手を出して嫌われちゃったらどうしようと以前は悩んでいたのが嘘みたいなくらい桂がどすけべになって志緒ちゃんを翻弄したりもします。そんな蕾が綻ぶような移り変わりが丁寧に追って描かれているのもBLとして楽しい。
納められている作品でも、とびきり心に残る、ターニングポイント的な作品はTHE FUTURE IS NOWでしょうか。
この作品集のラストを彩る、志緒ちゃん就職一年目の話です。
一足先に就職していたりかが結婚を決意し、桂にとっても過去のしがらみについて新たな展開があります。
その上で桂が志緒に見せる決意が描かれています。
ここまでの歩み、最初の作品からだと作品内で10年の時が経っているのですが、作品内で10年の重みがちゃんと実感できる話となっていて、だからこそ読んでいて心が動かされました。
こうやって登場人物たちの時の積み重ねを追いたいと思える作品も、それを堪能できる作品も希少なので、こうやって読めて感無量です。
なぜでしょう。本作を読み返すほどに、志緒に共感できない自分がいて。本編と「青」では、結ばれるまでの桂のためらいや志緒の真っ直ぐさに、とても感情移入できたのですが。
結婚できない。一緒のお墓に入れない。志緒が悲しそうに悩んでいるのが、どうしてももどかしく感じてしまいました。
私が若い頃の気持ちを忘れてしまったからなのか。それとも、ここ数年で同性婚に関する社会の変化を見聞きして、「なんとかできるのでは…」という考えが頭をよぎってしまうからなのか。物語を現実に寄せすぎては楽しめないのは分かっていても、志緒の悩みが現実的なので、切り離して読むのが難しくて。
真っ直ぐな性格のはずの志緒が、二人の関係を周りに知られるのを恐れるのにも違和感を覚えて。二人の関係をりかが受け入れてくれたように、志緒のお父さんなら分かってくれる気もして。
終わりの日のことばかり考えていないで、桂と一緒の幸せをもっと味わってほしい。美夏が自分も志緒も猫より長生きするとなぜ分かるの?と問いかけたように、明日のことは分からないから。でも、未来のことが分からなくて不安になるのは、若い志緒の持つ酸っぱさなのでしょうね。桂が指輪をくれて、いつか一緒に住む日が来て、志緒がその酸っぱさを懐かしく思い出す日が来るのでしょう。志緒のそんな青さが眩しく、愛おしく感じました。桂もきっとそんな気持ちなのでしょうね。
志緒が桂に早春賦を歌った女生徒にやきもちを焼いて泣いてしまったり、猫をもらってくれた教え子と桂が海にドライブしたことを服から漂う潮の香りで察知したりと、桂を好きでたまらないことが伝わってきて、そんな志緒はとても可愛いです。
沖縄で桂とデートした志緒が、桂と分かち合えない悲しさを感じる場面があり、それが本作品の中で一番私の胸を打ちました。人目をはばからずにすんでも、結婚しても、きっと消えない寂しさ。その寂しさを、一穂さんは描きたかったのではないか、と思いました。だから、桂と志緒は何度も体を重ね、何度も気持ちを確かめ合う。読後は、甘くて、切なくて、寂しくなります。それがこの作品のとても好きなところです。
二人の物語はきっと、これで終わりなのでしょうね。それでいいと思いました。寄せては砕ける波に永遠を感じる二人のラストがとても印象的で、二人の気持ちは永遠に変わらないと信じることができます。
【雪よ林檎の香のごとく】の続編。
【赤】のこちらは、酸味と癖の強そうな色合いの表紙です。
【青】の後、志緒の成人後のエピソードで、24歳までの話。
個人的にはこちらの方が好きだったかもしれない。
未成熟で甘酸っぱい青林檎も大好きなんですが、こちらの赤はしっかり実ってもいだ後、熟れて芳醇な香りを漂わせる果実という感じです。
青、赤と通して読むと、時系列に沿って志緒と桂の成長や葛藤が手に取るように分かります。
ふたりを取り巻く環境が変化していく様も、幼なじみのりかや妹の美夏を通してリアルに浮き上がり、物語に『流れる時間』という厚みを感じさせてとても良かったです。
出会って10年近く、そろそろ志緒も出会った頃の桂の年齢に追いつきそうですが、年上と付き合うと大体考える宿命にある『この年齢の時の相手はもっと大人だった』という錯覚をしたりするのかな、とか色々妄想を膨らませて楽しく読めました。
どの辺のページか付箋付け忘れたので曖昧ですが、個人的に「相手の心を手に入れると身体、その次は時間が欲しくなる」みたいな表現があったのですが、凄く共感。
人間って恋をすると本当に欲深くなるな、と。
そんな欲深くなれる相手と巡り会えて、かつ一緒にいられることは奇跡に近いことだよね、とこの二人を見ていると強く感じます。
書き下ろしでは、桂の覚悟と決意、そしてこの物語の一区切りを見られたような気がして、ほっとしました。
一穂さんにしては、ベタなところに落としたな、という気もしますけど。
二冊並べて置いてみると、何だか感慨深いものがあります。
『雪よ林檎の香のごとく』のその後を描いた同人誌などの総集編、
その弐。
その壱「青」は、志緒が大学に入学した18歳までだったが、
こちらはその後現在まで、書き下ろしを含む13編。
出会いから10年の歴史が描かれている。
ほとんどの部分は既読だったがまとめて読むと感慨深い。
小さな話をつないだものが、こうしてちゃんと一編の大きな物語になる
その確固たる世界観と、まるで本当に生きているような人物像を紡ぐ
作者の筆力にも、改めて感嘆する。
そして最後の書き下ろしでは、やはり泣かずにいられなかった。
この作品のファンならば、この短い書き下ろしの為だけにでも
この本を買う価値はあると思う。
*
大学生になり、度々桂の住まいに泊まるようになる志緒。
成人式を迎え、大学を卒業し、大学院に進学し、そして24歳。
一方の桂は、二人が出会った高校を離れて新しい学校に赴任し
それでも二人は、変わらずに一緒にいる。
少しずつ大人になる志緒。
その潔さはそのままに、彼らしさを微塵も失うことなく
そしてクールに見える彼の中にある熱は
むしろ温度を上げながら。
それだけに、一緒のお墓に入れないと思う下りは切ない。
そういうことを、リアルに感じるようになる志緒、
大人として現実と付き合いながら、未来を考える二人。
どのエピソードも、志緒ちゃんは志緒ちゃんで先生は先生。
それぞれ萌えと萌えにとどまらない感動があるが、
それは是非実際に読んで味わってほしい。
泣いてしまった書き下ろしの『The Future is Now』、
もちろん内容にも胸を打たれたのだが、
これで彼らの物語に一区切りな感じがしたのだ。
この本の出版を聞いた時から薄々予想はしていたものの、
彼らの今後を見ることができなくなる……と感じた時、
深く親しく付き合ってきた大切な人との別れのような
寂寥感に、しばらくボーッとしてしまった。
作品の完成度としては、この切なさを含めて傑作なんだと思うが
わがままなファンの希望としては、
どうかどうか、何かの折には彼らの近況を知らせてほしい。
きっとこの空のどこかで、
互いにしか分からないパッションとドラマを秘めながら
日々淡々と誠実に生きて行く彼ら。
そんな彼らの幸せを祈りながら、再会を待ちたい。
同作者のデビュー作『雪よ林檎の香のごとく』の同人誌や特典のSS、そして書き下ろし一本を加えた二冊同時刊行のうちの一冊です。
こちらの表紙はピンクに染まった志緒。
同人誌も買えるものは買っていたので、既読作多数です。
個人的には『Summer Tune』の玄関エッチが、慌ただしく、しかも二人の互いへの思いが爆発したように見えて大好きです。
そして『マイネームイズレッド』内の『カーマイン、クリムゾン』を読むと、この再録本のタイトルがそこからとられているのかな感じることができます。
林檎を志緒にたとえているんですね、多分。
「青くて赤く、すっぱくて甘くて、固くてやわくて」という、桂にとっての志緒を表した言葉から。
書き下ろしの『The Future is Now』は32ページほどの作品なので、ちょっと寂しいかなあ。
ただ、考えさせられるようなものとなっています。
志緒が就職した五月のお話で、志緒は24歳。
桂の誕生日がある六月を一緒に迎えるのは九回目。(出会って十年目)
志緒が桂と過ごした期間はまんま志緒の妹・美夏の成長と重なり、そんな美夏の存在以外、男同士の二人には具体的に存在する何かがない。
志緒が歳を重ねた分、桂もまた歳を重ねるわけで、二人の距離は永遠に縮まることは当たり前ですけれどないんですよね。
桂は志緒よりも経験も知恵も豊富な分世間が見えているので、慎重で臆病でもあるわけですが、それは本編の時にも描かれていましたがわたしは好きなんですよね。そういう狡さは。
志緒の若さや膨らむ愛情は暴走しそうなほどで、それをうまく制御するためにはそれぐらいでちょうど良いと思うのです。
ただこの九年で志緒は九年分大人になっていて、桂が忙しい時期に煩わせたくないと言葉を飲み込んだり、ぶつかってばかりでは関係は存続されない、言いたいことを言いたいだけ言っていたらダメなのだということを学んでいます。
その分それが切れかかった、未来がはっきりとした形で見えないことに絶望しかかると、足元の不安定さに怯えてしまう。
一穂さんの文章は詩的なところもありますが、なんというかそういう心の言葉にしづらい部分を語らせるのはうまいなあと思います。
わたしは作品の攻めキャラのみが好きという物は他にもたくさんあるのですが、『雪よ〜』のように桂には志緒、志緒には桂でないとダメで、二人ともが好きと感じることのできる作品は少ないのです。
二人だからこそと思えるような。
なのでこの再録本は嬉しい反面、これからはこの二人の新しい作品(今までは同人誌でたまに出されていましたが)が読めることはないのかなと寂しい気持ちになっています。
一穂さんはこの二冊で一応の決着をさせたのかなと。
出来たらもっと書いて欲しいです。
彼らの恋は眩しくて強くて、自分がもう無くしたものですから。