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俺が泣き虫だってことを、きっときみは永遠に知らないままだろう。
heaven's rain
ちるちるさんの第5回BLアワードでランキングに入っていた「坂道のソラ」はどうにもこうにもツボに入らず(失礼!)、この作品も読もうかどうしようか悩んだのですが「初回限定小冊子」に惹かれ購入。イヤ、良かった。すごく良かった。
個人的地雷の「不倫」が初っ端から描かれていて、正直この本の厚さも手伝い読み切れるか心配しながら読み始めました。だって値段も厚さも通常のモノと比べ約2倍。手に取るとずっしりとした重みで、正直2冊に分けてほしかったなあとか、そんなことを思いながら読み始めました。けれど読み始めると一気に引き込まれました。
設定は「天使だった男」が出てきたり輪廻転生が描かれていたりとファンタジー要素が強いのですが、それでいてリアリティも非常に高い。それぞれのキャラたちがとても魅力的で感情移入しやすく、そこかしこに撒かれた伏線を上手に回収しながら進んでいくストーリー。文章の構成が非常にお上手で、無理がない展開にページを捲る手が止められませんでした。
現在と過去。
暁天さんと瑛仁さん、そしてリンとの関係。
いつの時代も変わることのない人間関係やその人の持つ本質。
そしてどの時代であろうと、出会って恋に堕ちる二人。
今までありそうでなかった、そんな不思議な空気感のあるストーリーでした。
読む前、あらすじで拝見した「天使だった男」。
だった、ってどういう意味だろうと「?」状態で読み始めましたがその設定の素晴らしさに圧倒されました。
どの時代も病弱で早逝してしまうリン。
そんなリンを愛し、見守る暁天さん。リンのいなくなったその後の人生を送る暁天さんの気持ちを思うと胸が詰まります。
けれど、この二人には他の人には立ち入ることのできない想いがあって、二人だけが理解できる幸せのカタチがあるんだなあとしみじみ思いました。まさに純愛。二人のお互いを思う気持ちに、気づけば落涙している。そんな作品でした。
あと個人的に凄く好きだったのは瑛仁さん。
狡い男ではありますが、ゲイである自分を認められない気持ちや、世間体を気にする思いは当然あると思う。自分を受け入れてくれた明美を大切にしようとする姿は、彼の誠実さを物語っていると思います。
そして明美も。
恋愛感情を抱いてくれることのない男を愛してしまった彼女の切ない恋心に「強い女性だな」と感じました。幸せになってほしいです。
暁天さんとリン。
二人が現世で幸せで過ごせる時間は短いけれど、愛情の深さは時間では測れないものなのだと痛感しました。これからも、いつ、どの時代で出会っても、幸せな二人でいてほしいと願っています。
yocoさんの描かれた表紙もなんとも言えず素敵でした。
若干色のトーンが低いので一見暗い雰囲気ですが、雨上がりのなか、手を繋いで一緒に歩きながら笑顔で見つめあう二人。空には虹がかかっていて。
本編とリンクしたような素敵な表紙でした。
とにかく文句なしの神作品です。
朝丘戻にしか描けない空気感。
そこには愛しあうことの儚さと苦しさでも尊さがちりばめられている。
この作家以上にそれらを偽りなく赤裸々に愛情と誠意をこめて表現できる
作家はいないでしょう。
今作品はそのテーマを惜しげなく伝えきった渾身の、それこそ魂をこめた作品だと思います。
号泣きしました、なんて安い言葉でこの作品の感想は述べません。
お涙頂戴の辻褄あわせの物語も、綺麗事ばかりのよい話もきらいです。
泣きたいために人が死ぬ話を読むのはもっと嫌いです。
そして朝丘戻はそんな作品は描かない。
長年ずっとこの方の作品を読みつづけてきました。
一度も裏切られたことはありません。
この作品を読めて幸せでした。
幸せな気持ちと愛情がつまってます。
読んで後悔はありません。
ようやく読めました。
まとまった時間が出来たら一気に読みたいと思っていたので。
(ちょっと追記しました)
髭の元天使のおっさん、
なんて響きで、コメディチックだけど、そんなところは微塵もありませんでした、やはり。
公式の特設ページでお試し読みをして続きが気になるなら、ぜひ読んでみてくださいと言いたい本です。
先入観なしに読んでみて欲しいなと思いました。
以下、ネタバレしてます。
もしかしたら奇跡が起こるのか起こるのかと気がつけば、奇跡は起こらずに終わってしまいました。
そうして元天使の彼は来世でリンと出会えることだけを願い、リンの幸せだけを願い。
それが自分の幸せだと言ってのける。
どれだけの覚悟があれば言えるのか思えるのか。
彼はリンがいなくなった後、どれくらい生きたんだろう…。
天寿を全うしなくては来世できっとリンに会えないだろうから。
大切なひとがいない時間をひとりで生きていく事を考えると胸が苦しくなりました。
でも、きっとこれも魂の修行だよって言いながら、生きたんだろうなとも思いました。
そして彼が何故「リン」と呼ぶのかなぁと思っていたけど、リンの魂を愛しているからなんだろうなぁって。
彼等だけでなく彼等を取り巻く人物たちの事も詳細に書かれていたのが印象的でした。
人それぞれに人生があるんだなって。
初回限定版の小冊子はぜひ読んでいただきたいので、小冊子がいつまでついてるのかわかりませんが、気になってるならついてるうちにどうぞと言いたいです。
小冊子で彼等の次の人生が垣間見られて、どうぞたくさんの時間を一緒に過ごしてくださいと思わずにはいられませんでした。
一分一秒でも長く。
yocoさんが好きでyocoさんのイラストに惹かれて読んだのですが、読んで良かったです。
魂を込めて書かれたであろう朝丘先生にもお疲れさまとありがとうを伝えたいです。
タイトルの「Heaven's Rain 天国の雨」もすごくいいタイトルだと思います。「虹」も大切なキーワードですよね。
いろいろと感慨深いです。
後から後からいろいろじわじわきそうです、この本は。
あ、雨の季節にもう一度読みたいです。
天国は一つではない、という考え方が好きです。人それぞれに天国があるのなら、この作品の顎髭天使もいて、こういう形の生まれ変わりもありえる、と思えてきます。
短命で生きる定めにあるという、櫻凜とかつて天使だった藤岡暁天の、「永遠に続く」物語。
私は結構、話の展開に整合性を求めるといいますか、細部が気になるタイプなのですが、この作品は序盤を読んで気にするのは止めました。決して荒唐無稽だからではなく、天使とは?とか、生まれ変わってもなぜまたサクラリンになるのか?とか、そんな細かい所は重要ではないと感じたからです。
「うたう鳥」の時間軸は現在、今のリンです。心臓に爆弾を抱えながらも、お弁当屋さんでバイトをし、両親の援助を受けつつ、アパートでささやかに自立した生活をしています。リンはゲイでもあり、藤岡暁仁と不倫関係。そして、藤岡の弟、暁天と運命的に出会います。
「天国には雨が降らない」は、前世のリン。やはり心臓が弱く、最期の二週間の話。
死を目前にしたリンは、天使とかけがえのない時間を過ごすのです。この天使が暁天になります。
「しゃぼん玉の虹」は、現在のリンと暁天。二人は結ばれて、前世より長く、濃密な時を一緒に暮らせているのですが、別れの時が近づいている。
リンの心情描写が繊細であり、深く染み入ってきました。リンと暁天、二人が一緒ならもう、何も言うことはないなと、私の最大の感想はこの一言に尽きます。
ささやかな日常が愛おしく思える、優しい作品でした。リンは体は弱いですが、一人称は俺、繊細かつ筋の通った性格が良かったです。
yoco先生の表紙も大変素敵でした。
もっと上手く感じたままに書ければいいのですが、これが限界です。お涙頂戴のチープな作品ではないことは、はっきりと言えます。ボリュームがありますので、読み終えるまで時間が多少掛かりましたが読んで良かったです。
予約して楽しみにしていた今作。
時間のある時に、大事にじっくり読もうと思ってましたが、あまりの表紙の美しさに衝動を抑えきれずに一気読み。
はあぁぁぁぁぁぁぁ…………(溜息)
何でしょう、この充溢感。
どんな言葉を選んでも陳腐になってしまうというか、取りあえず読んで良かったです。
輪廻転生ものは使い古されたネタだと思っていても、書き手によってその色は様々で、今回の朝丘さんの転生ネタは胸があたたかくなりたまらない幸福感に満たされました。
幸せの感じ方は十人十色ですが、こういった形が苦手という人も一定数いると思いますので、好き嫌いは分かれると思います。
お涙頂戴だと思うかもしれません。
でも、何度でもリンのことを見つけ出し、愛してしまう暁天と、生まれ変わって記憶をなくしても、やっぱり何度でも暁天に恋をするリンが愛しくて愛しくて。
幾度となく繰り返される輪廻の中で、このふたりの紡ぐ幸せを垣間見ることが出来て、たまらない満足感でいっぱいです。
リンも暁天も尊も、そして明美やるりも、みんな素敵なキャラで好きでした。
転生前も転生後も嫌な奴だなと思ってしまうのが瑛仁なんですが、これもこの人の役割だと思えば納得出来る……というか、こういう人がいても仕方がない。ずるい人間がいることで、物語にリアリティが生れます。
小冊子もボリュームがあり、最後の最後まで丁寧に描かれる二人の様子に
こみ上げてくるものがありました。
読み終わった後でもう一度表紙を眺め、そこに掛かる虹と、キラキラ光る
雫を見ていると、胸が熱くなります。
ずっとふたりが幸せでありますように。
そう願わずにいられないようなお話でした。
本作の前に、泣ける小説をということで転生ものを読み、とても感動したので続けて転生ものを選びました。そもそも生まれ変わりを信じている私は、輪廻転生をモチーフとしたお話が大好きです。
今作も心が揺さぶられるほどの衝撃を受けました。じわじわと心に染み入る言葉の数々。グッときました。朝丘先生は一言一句を大切に、細やかな心遣いをもって、言葉を紡ぎ出す天才ですね。
朝丘先生作のレビューをするのはこれが初めてですが、電子書籍で販売されているものは殆ど全て読了するくらい、作者様の大ファンです。
あらすじ
リン(受け)は、21歳。短命という宿命を負っています。攻めの兄であるアキトとは不毛な関係です。それでもリン(受け)は、自分の残りの人生をかけて恋をするつもりでおりました。タカ(攻め)に会うまでは。タカ(攻め)はアキトの弟で、強引にも「兄から手をひいて俺のところにおいで」と誘うのです。最初は抵抗していたリン(受け)ですが、徐々に絆され心惹かれていきます。
そして、回想(前世「天国には雨が降らない」)シーンに移ります。生きるとは何か、自分の果たすべき役割(使命)とは何か、人はなぜ転生を繰り返すのか、幸福とは何かなど心にズドーンと来る話が、二人の睦みと共に延々と綴られます。二人は運命に導かれて今世での出会いを果たしたのだと、十分納得できる素晴らしい内容でした。
前世での記憶はタカ(攻め)によってのみ明らかになり、リン(受け)にはその記憶が一切ありません。ですが前世での想い人タカ(攻め)には、何度生まれ変わっても忘れないという特殊能力(?)があり、必ず探し出し、リン(受け)を幸せにすると約束してくれるのです。
前世でも今世でも来世でも二人は出会い、恋をする。けれどもリン(受け)は何度生まれ変わっても、短命の宿命を負っています。二人の逢瀬は短く儚い。それゆえに、余計に萌えます。短い時間だからこそ懸命に生き、愛を育み貫くことが出来るのでしょう。
私の好きなエピソードの一つに「親指相撲」をする二人の微笑ましいシーンがあります。前世でのやり取りです。是非皆様にも読んでほっこりして頂きたいです。
その親指相撲をタカ(攻め)の提案で今世でもするのですが、似たようなシーンで、前世と同じ反応をするリン(受け)に、ウルっと来てしまったのは私だけではないと思います。
あと、私には難解でちょっと理解不能なこんなセリフがあります。
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リン(受け)「輪廻転生があるなら、どうして俺はいまの意識しかないの?」
タカ(攻め)「いまを生きてるのがリンだからだよ。”前世と今世”の感覚は”昨日と今日”とは違う。”誰かと自分”だ。リンが俺の意識を自分のものに出きないのとおなじ」
リン(受け)「前世や来世の俺は他人ってこと…?」
タカ(攻め)「魂はおなじだから”他人”ではない。”別人”に近い」
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「誰かと自分」のくだりは何となく分かるような気がします。でも「他人」ではなく、「別人」というくだりが良く呑み込めず、修行が足りないなー私って感じています。
たぶん、きっと、もっと私が深く真剣に考え、向き合えば、そのうち自ずと答えが出てくるのかも知れません。
最後になりますが、「虹色の雨」の章のラストは、未来を感じさせてくれるお話しではありましたが、リン(受け)がこの世を旅立つところで終わっていました。
だから「あとがき」の後に、SSが載っていて本当に涙が出るほど嬉しかったです。
リン(受け)とタカ(攻め)の来世での出会いが描かれておりました。未来を想像出来たし、楽しい気分になったところでラストを迎え、ホーッとため息。
この度も良い本に出会えて良かったです。幸せです。
そうそう、URLを貼付します、ご参考まで。
http://www.fwinc.jp/daria/ds/heavens_rain/
ついでに疑問をお話すると、別人格になってしまった人を愛せるかな~、ってこと。このレビューをした後、ふっと「多重人格が当て嵌まるかも」とは思ったのですが、私の考える多重人格は、魂は宿っていても、浮遊する何人もの霊に脳を占領されてしまった状態のように感じられるのです。どれが本当のその人の人格なのか。別な人格に乗っ取られたような状態のその人を、人は愛せるのかしら…。ほんの独り言ですが…誰かまたこの疑問に関するコメント入れて頂いたら嬉しいな…。
すごい!コメントを頂けるなんて!今初めて気が付きました。お礼の言葉、遅くなってしまい申し訳ございませんでした。それとともにコメントを有難うございます。私もこのレビューを書いて以来、ずーっと考え続けておりました。そしてshoh様の仰るように、「多重人格」というワードに行きつき、これがヒントというか、答えなんだろうと考えるようになりました。1か月を過ぎてしまってから見出した結論。もうレビューを書き換えることが出来ないし…と思っておりましたが、このコメント欄に書き加えれば良かったのですね。ですが、私がそうかもしれないと漠然と思っていたことをもっと的確にお教え頂き、感謝感激でいっぱいです。本当に有難うございました!!( ;∀;)
作品未読ですが、レビュー流し見中に気になったので失礼します。
「”他人”ではない。”別人”に近い」という表現についてです。
「他人」とは、アイデンティティを共有しないまったくの別個体(いわゆる「わたし」と「あなた」の違い)。
一方「別人」とは、その人であるなんらかの部分(ここで言うと魂?)を共有する、しかし記憶や時間軸等は交差しない別人格のような意味合いで使われているのではないでしょうか。
感覚的なものなんですけど、例えば解離性同一性障害(多重人格)のひとを別人(格)とは表現しても、他人とは言いませんよね。記憶喪失なども。
そのひとがそのひとであることは間違いないけれど、でも決定的ななにかが違う。
そういった意味合いなのではないかと思いました。
残酷な運命を抱えた2人の輪廻転生、そのいくつもの物語のひとつを覗いている。
妻を持つ瑛人を好きな凛、そしてそこに突然現れた瑛人の弟、暁天。
初めは暁天の意味不明な発言と行動にもやもやとした疑問を抱えながら読み進めることになると思いますが、その言動の意味が物語の途中で明かされた時、きっともう一度彼の発言を読み返したくなります。
ページ数が多く手に取るのを躊躇する気持ち、私自身そうだったのでよく分かるのですが、実際読んでみると本当にあっという間です。あっという間ですが、心に残る余韻が半端ではない。
読み終えた時、誰もが彼らの幸せを願わずにはいられないでしょう。
(以下ネタバレ注意……というか読了済でないと分からないかも)
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今回メインとして語られた“暁天と凛”の話でも、いつか凛に『終わり』が来ることが分かっていて、それぞれが抱える運命がある限りそれは変わらない。けれど、2人がその運命を持って生まれてくるからこそ、次の輪廻を、再会を信じて、光のある『終わり』を迎えることができるのですね。
小冊子の最後、次の2人は高校の同級生。前世よりずっと早い出会いで、しかも前世ではあんなに離れていた歳の差が無い。2人で過ごす時間はきっと初めよりぐっと増え、輪廻を重ねる度に2人を取り巻く環境が良くなって行っているのが分かります。
きっとこの世界でも凛の『終わり』が訪れる日は来るのでしょうが、この先この世界の2人が積み重ねる沢山の幸せな思い出たちも、きっと次の輪廻へと繋がっていくのだろうと思いました。
いつかの凛が言っていたように、輪廻を重ねた先で彼の病気を完治させられる技術が生み出され、2人が病気によるものでない幸せな『終わり』を迎えられる日が来ることを祈らずにはいられません。
瑛仁さんの漢字を間違えておりました、瑛人ではなく瑛仁です。申し訳ない……
天使だった男が、何度生まれ変わっても短命の受けを愛し続ける輪廻転生もの。
短命の運命を背負ったリン(受)が、暁天(攻)の兄、瑛仁と不倫しているシーンから始まります。
生まれつき身体の弱いリンは、残りの人生で誰かと恋をすることに憧れていました。
長生きはできないと知らされているリンは、大学へは進まず、弁当屋でバイトをしながら慎ましやかに一人暮らしをしています。
そのバイト先の客として出会ったのが瑛仁で、弁当を買いにくるたびに言葉を交わしているうちに惹かれ、リンは瑛仁が既婚者だと知っていながら不毛な関係に至ります。
家に来ても絶対に私物は置いていかない。好きとは言わない。電話もしない。…愛されているとは感じさせない。
不満はないと自分に言い聞かせながらリンは残りの人生を賭けて彼を好きでいようという固い決意を持っています。
そんな中、唐突に暁天さんは現れます。
「兄から手を引いて俺のところへおいで」
本のあらすじにもありますが、この暁天さん、前世では天使だったんです。
短命の運命を背負ったリンの人生を、ずっと傍で見てきました。
リンの、一つ前の人生が終わりを迎える数日前、ずっと一方的に見守っていただけのリンの目に、唐突に暁天さんが見えるようになります。
リンに自分の言葉が届くことが嬉しい。
リンを幸せにしてあげたい…
でもこの身体ではリンが望むものを与えてあげることができない…
残りの時間を恋人のように過ごすようになり、少しずつリンの寿命が近づく中、暁天さんは、来世では人間になって「リンが生まれ変わるたびに探し出して幸せにする」と約束します。
そして今世、天使の涙を流したことで人間として生まれ変わったものの、リンの好きになる相手である瑛仁の弟という厄介な立場で生まれてきます。
毎日のように弁当屋に通ってリンを口説くのですが、リンの方は不倫相手の弟が近づいてきたことでもちろんかなり警戒します。
それに加え、暁天さんは初対面にも関わらず自分に愛情を示し、まるで透視能力でもあるかのような口ぶり。
けれども、なんだかんだ理由をつけながら外に連れ出し自分の狭い世界を広げてくれる暁天さんに、リンはだんだん思いを変えていきます…
* * *
この本、暁天さんとリンの視点だけでなく、途中で瑛仁と瑛仁の妻の視点も入る珍しい構成をしています。
メイン2人の話をもっと読みたかったと思わなくもないですが、背景が見えるとストーリーに深みが増します。
女性視点に入った時は一瞬戸惑ったものの、それぞれいろんな葛藤や思いがあるのが分かり、読み応えがありました。
なんというか、朝丘さんの書くお話って、朝丘さんにしかない不思議な空気感があります…
読んでると、雨上がりの匂いとか、夏の匂いとか、生温い風の感触が鮮明に浮かんでくるんです。
キラキラしてて綺麗で、幸せで、でもどことなく寂しい空気も漂わせていて、幸福な時間の尊さを感じます…
暁天さんの途方もない愛情と包容力も凄いです。
嫉妬に振り回されて酷いことしたりなんてしません。
本当にリンを大切に思ってるんだなあ、と感じます。
暁天さんは何度も惜しみなく「愛してる」という言葉を使うんですが、この言葉がこれほどしっくりくるキャラは他にいないんじゃないかな…そのくらい暁天さんから発せられる言葉には一言一言に重みがあります。
「俺が泣き虫だってことを きっときみは永遠に知らないままだろう。」という煽り文、これも読後読み返すとすごく胸に沁みました…
もう二度とリンをひとりにはしない、寂しい思いはさせたくないという思いが詰まってます。
暁天さんは何度生まれ変わってもリンを見つけ出して恋人になることが自分の幸せだと言うのですが、リンがいなくなった後、リンのいない世界でひとりで生きていく暁天さんのことを想像すると胸が苦しいです。
それにしても、このまま暁天さんだけひたすら記憶が積み重なっていったらどんな人間になるんだろう…
暁天さん、今世のリンに前世の自分達の話は最期までしないんですが、瑛仁には物心ついた頃から「サクラリンに会ったら教えろ」と予言のように何度もすり込んできていたらしく、客観的に見てかなり変な人なんですよね。
言動が浮世離れしていて、でもそこが魅力的でもあります。
暁天さんの抑揚のない独特な優しい口調も好きです。少し少年っぽさを残した性格も。
あと、リンのバイト先に毎晩通って声をかけていくから、バイト先の人達に、変態なストーカーだと思われているエピソードがちょっと笑えました。
店長に「面倒な客なら来禁にしてやるぞ」って言われてる暁天さん…笑
この本何度も読み返しているんですが、ストーリーが面白いから読み返したくなるというよりも、またこの世界に浸りたくて帰ってきてしまうような、そんなお話でした。
いろんな言葉が心に残ります。
yocoさんの絵も、世界観に合っていて素敵でした。
出逢えてよかったと思える一冊です。
*
個人的なイメージソングで、歌手名は伏せますが”世界一好き”という曲があって、教育テレビみたいなテンポの曲なんですが歌詞が幸せな2人にすごく合います…
病弱で一途な子。凛の最初の印象。
可哀想だから、瑛仁との関係が凛にとって良い方向へ向かいますように。と、思いながら読んでいました。だって、表紙の2人でしょ。
でも、違った!
あれ!?天使?何このせつない2人。。。
一気に瑛仁との関係を打ち切って貰いたくなり、瑛仁がひどく嫌な人間に思えてきました。
でも、読んでいて自分の気持ちがコロコロと変わり、嫌な登場人物だなぁと感じても、朝丘先生の作品は、一人ひとりの人格をしっかり作り込んでいるので、最後にはそんな気持ちはなくなるのです。それも、わたしが朝丘先生の作品を好きな理由なのかなぁとこの作品を読み感じました。
リンが暁天と出会い、生きることを明確に考えるようになる姿は今までと別人!
暁天は何があってもリンが好きで、一緒にいようという気持ちは揺るがないので、後半幸せに浸りながら読むことができます。
出会って一緒に住んで、たぶん2人でいられた時間は5年ほど。。。
その短い幸せのために、暁天がどれだけ必死にリンを探し、長い間一人でいたかと思うと切なすぎる。
そして、来世でも同じようにしようと思ってる愛の深さ。
この先も2人が出会い結ばれることを願ってしまいます。出来るなら早くに出会わせて、一緒にいられる時間を多くしてあげたい。
読み終えて、思い起こすと後からジワジワとくる作品です。
YOCO先生絵師本をコレクションしているため、ブックオフで購入。
凄く分厚い本。小冊子がついていなかったので、電子版を購入。重いので、電子版のほうが楽。
あとがきにある「あめが消えるところ」も、読んでみたい。
「天使だった男と紡ぐ、永遠に続く幸福への旅路。」
「人間の幸不幸を学ぶ必要のある者が天使に選ばれる」
「涙は魂の叫び」
・・・意味不明な説明文だけど、とにかく読んだ。
主人公のリンは心臓病、短命を覚悟している。
リンには相愛になれない恋人が居る。恋人には妻がいる。
ある日、恋人の弟から「俺のところへおいで」と声をかけられて、恋人の弟と交際することに。
天使だった恋人の弟、暁天曰く、
瑛仁の弟、暁天の前世は天使。そして今世は人に生まれている。
何度生まれ変わっても、リンを見つけて恋をして、リンを看取ることの繰り返し。
譬え肉体を持っている時の交際期間が短くても、それで十分幸せなのだ
・・・と、リンとの関わりを説明する元天使。
既婚者の兄とリンの不毛な恋は、暁天と出会うきっかけに過ぎなかった。
リンが発作を起こす、余命は僅か。
弱ったリンの枕元で、また生まれ変わってリンを見つけて恋をする、と言い切る元天使。
それを聞いたリンは、死への恐怖が消える。
やっと、二人の来世は明るい人生になりそう、という示唆を置いて完結。
寿命が長ければ幸せ、じゃなくて、生きる時間の密度に意味があるんだなと思った。
「またいつか会える」と思えば、死に別れても、絶望はしない。
「死んでまた出会う」約束を交わした二人にとって輪廻は長い長い旅に過ぎない。
輪廻と時を経た再会の約束は、とても仏教的。
何度生まれ変わっても必ず恋人と出会えるリンは、もの凄く幸せな魂の生涯を送っているのかもしれない。
あ~、リンが羨ましい。
編集機嫌切れなので、ここにメモ。
構成がすっきりしないで、経緯を把握しにくい。
作中、主人公二人にとって脇役の藤岡瑛仁の同級生の美少年や妻の明美についての説明と過去が盛り込まれれているが、どうして必要なのか疑問。
生きていれば、色々なことが毎日起きるので、凛を取り巻く人達について書いて、別れた後も心配がないということや、
タカさんと出会う為の切っ掛けとして、藤岡瑛仁が必要だったのかもしれないけれど、
物語の展開上、重要な要素ではないので、別の番外編で書いたらスッキリしたんじゃないかと思う。
物語の流れの淀みになっているように感じて不快だった。
凛が再生して、タカさんとの出会いを思い出す為に、どうしても必要な事項ではないと思う。
それよりも、小冊子で別にした内容のほうが、本編に入れるべき内容だったんじゃないかと思う。