心の一部が、甘く崩れていく音がする。

愛しのいばら姫

itoshi no ibarahime

愛しのいばら姫
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神197
  • 萌×274
  • 萌29
  • 中立6
  • しゅみじゃない8

--

レビュー数
40
得点
1374
評価数
314
平均
4.4 / 5
神率
62.7%
著者
凪良ゆう 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
湖水きよ 
媒体
小説
出版社
プランタン出版
レーベル
プラチナ文庫
シリーズ
365+1
発売日
価格
¥670(税抜)  
ISBN
9784829625866

あらすじ

美貌のモデルでありながら、自身に価値を見いだせない美山。新鋭デザイナーの久保田は、そんな美山を朗らかに受け止めてくれて…。

表題作愛しのいばら姫

新鋭デザイナー,27歳
トップモデル,27歳

その他の収録作品

  • yes
  • あとがき

レビュー投稿数40

まさに「いばら姫」

作家買いです。

凪良さん作品の「365+1」の紺と綾野の二人を引っ掻き回すだけ引っ掻き回した、あの美山くんのお話です。「365+1」では「性格悪ッ!」と思った美山くんですが、すごく可愛くてちょっとびっくりしました。

父親はすでにおらず、母親も育児放棄していたためまともな幼少期を過ごすことなく大きくなった美山くん。母親からの愛情を受けることがなかった為、自分に価値を見いだせず、また人からの愛情を欲しがっても貰えることはないとある意味諦めを感じて生きてきた彼ですが、それをさらに決定づける出来事になったのが元カレから捨てられたことでした。そのあたりの事情は「365+1」でもさらりと出てきますが、そのことをきっかけに紺たちに八つ当たりともいえるような意地悪をしちゃうのも何となく理解できました。

見た目は美しく、トップモデルとして不動の人気を誇る美山くんですが、その入れ物をなくしたら自分には何も残らないと自身を卑下している美山くん。そんな美山くんに惜しみない愛情を注いでくれるのが攻めの久保田さんです。愛情といっても初めは恋愛の愛情ではありません。子どもの頃親から与えられることのなかった「愛情」です。でもその愛情が、少しずつですが確実に美山くんを満たしていきます。

「365+1」ではあまり存在感のない久保田さんですが、実際は大きな懐を持った男性で、かつ自分の仕事にも大きな夢や希望を持ち努力もするナイスガイです。ノンケさんゆえに美山くんへの自分の気持ちを持て余してしまうのですが、気持ちが固まるまでは簡単に手を出すことはしないし、反対に気持ちを自覚してからはガッツリ頑張ろうとする男性で素敵でした。

自分を守るために相手との距離を埋めず、人から踏み込ませないために自ら棘を作っている美山くんはまさに「いばら姫」ですが、そのいばらをものともせずに果敢に踏み込む久保田さんにキュンときました。

個人的に凄く好きだったのは美山くんの元愛人でありパトロンだった灰原さん。彼のおかげで美山くんがトップモデルになれたのは間違いないし、別れる時にお金で片をつけるのはある意味大人のやり方として非常にスマートだと思いました。文中では「お金持ちの鼻持ちならないオッサン」みたいな扱いになってましたが、彼の話も書いて欲しいなとか思いつつ。

この作品単体でも読めますが、前作「365+1」を読んでいた方がより面白く読めるんじゃないかと思います。

始めは人を信じることができずにいばらを作って自身を守っていた美山くんが、久保田さんの愛情を受け徐々に自分を好きになり相手も守りたいと思うようになっていく姿に安心しました。お互いに高め合っていくことができる関係の二人にこれからも幸あれと願っています。


22

愛しい受け、愛しい物語

「365+1」のスピンオフ。
前作はいい作品だったと思うが、自分にはそれほど吸引力がなかったが
魅力的で存在感のある脇役、美貌で毒舌の美山のことは
とても気になっていたので、この作品は楽しみに読んだ。

結果、素敵な一冊だった。
美山は期待にたがわず、個人的には大ヒットの受け。

お相手は、モードフェスのデザイナーだった
綾野の先輩久保田。
正直こんな懐の広いいい男だとは思っていなかった。
才能があって、自分の夢に真摯で、でも青臭いだけじゃなく
したたかさと柔軟さも持った男。
そんな彼にどんどん恋をする美山の可愛さときたら!

カメリアのエピソードや、ロシア人母の思い出など
透明感のあるセンシティブなエピソードの一方、
思わず笑ってしまうようなやり取りや懐かしいような場面、
すれ違いや嫉妬、華やかな業界の様子も見え隠れし、
切なさも甘さも、キュンも笑いも、バランス良く織り込まれている。


後半の「yes」は、王道の結婚式ネタ。
カップルとしてまとまった美山が、
絢爛たる美しさに柔らかさや可愛らしさも加え
久保田のために頑張っている様がなんともいい。

ショーの最後を飾る渾身のウェディングドレス。
美麗でロマンチックで、これぞBLという気分になった。


個人的に気になるのは、当て馬というか
美山の元のパトロンの灰原氏。
もっとドロドロな展開になるかな……と思わせながら
真摯で直球な久保田と健気な美山の前に、
大人の余裕でカッコよく去った彼、好みなんですけど?
金も権力もある40男の更なるスピンオフを希望します。


大感激!大絶賛!という作品ではないと思うが、
繊細で優しい後味の、とても好きな作品だった。
評価は「神」で。




最後にちょっとボソッと……。
表紙はなかなか素敵だったのだけれど
中のイラストがもっと繊細で美麗だったらなぁ。
湖水きよさんは別に嫌いじゃあないんだけれど、
美山が髪脱色した目つきの悪いあんちゃんに見えるところなどあって、
ちょっと個人的にはイメージを表現しきれていない印象でした。

15

サエナビー

私も、中のイラストが気になってしまいました。
自分の画力を棚に揚げて言わせてもらうことになるんですけど、人物の表情、アングル、ファッション(おしゃれ業界の話なのに普通の服。。)など、もう少し工夫が欲しかったですよね。
小説の挿し絵って、漫画と違って、読者にイメージを膨らませてもらうために、あえて上手く描かないのかな?とまでおもってしまいました。
あと、もうひとつ共感したのが、「ウェディングドレスのくだりが、これぞBLという感じ」というところてす。
まさしく、そうですね。全く同じ意見です。

やっぱり美山ちゃんいいわぁ

365+1(既読)のスピンオフ。
この1冊だけでも充分楽しめるとは思いますが
やっぱり365+1も読むとより美山ちゃんを堪能できます。

前作の中で出て来たことが、再度こっちで「あーそういうことだったのか・・」
と納得させられたり、紺と綾野のその後を垣間見たりと
違った楽しみ方ができます。
例えば・・・
電気が止められてしまう件・・
前作で紺の家に毎度泊まりに来る美山が
「だって、なんか電気つかないしー」と言い、それに対し紺が
「なんかじゃねえよ。また金払ってねえんだろ」と言うシーン。
今回の作品を読んで「そういうことだったのね」と改めて納得。
前作では、紺と綾野の間を引っ掻き回してるのか取り持っているのか
わからない美山ちゃんでしたが、今回は美山ちゃんの素顔に切り込んでいて
いつもは毒舌で直球な美山ちゃんの本来の姿、
幼少から積み重ねられてきたものが浮き彫りになり
じわっと胸が熱くなり、鼻の奥がつんとなることも度々ありました。

久保田と紺、綾野はもともと同郷ですが
今回は今も田舎にいる久保田の親友とその婚約者の里江。
里江の意味深な態度に揺れる美山の気持ちが痛いほどわかる。
もともと強がるタイプだから、泣き言は言いたくないし
弱い自分は見せないし、本当は不安で心配で泣きたいくせに
精一杯意地張って強がってみせて・・
もともとはストレートな久保田に本気になればなるほど
ゲイである自分が未来の久保田の隣にいられる自信はない。
ぐるぐる考えて、ドツボにはまっていく・・・
ゲイがノンケを好きになると、必ず起きる現象です。
あの美山でさえも、そのドツボにはまり久保田を想っては涙し
勝手にいろいろ想像しては、落ち込んでしまう姿は
前作では考えられなかった美山ちゃんでした。
いやぁ・・だけど里江はちょっとカチンと来ました。
「早く、さっさと結婚してしまえ!」とマジ呟いてしまいました。

超ラブラブな美山と久保田に終始当てられっぱなしの
甘々な短編「Yes」もすごく良かったです。
ウエディングドレスに指輪、そして「一緒に暮らそう」
この3つが揃ったら、もう嬉しくて泣くしかないでしょ。
あの自分勝手で毒舌な美山が真剣に久保田のことを想い
「子どものこととか親のこととか、将来後悔するかもしれない」と
真剣に考えてるところなんか、もう
「久保田しか見えない」と言ってるようなもの。
いつまでも、熱いままでいてね♪

それにしても、美山の元カレの槙原女々しい。
そして槙原を撃退した久保田、カッコいい!!



10

ひとたらしの魅力にやられました

『365+1』のスピンオフですが、こちらだけでも大丈夫です。
出会いのきっかけであるモードフェスが気になる方は、読んでみてください。
『365+1』を読まれた方は是非、こちらも読んで欲しいです!
脇役だけど、紺と綾野も出てきますし、『365+1』だけでは勿体無いです!!

『365+1』では影の薄かった久保田が、こんなに「ひとたらし」ないい男だったとは(笑)
美山も、言いたいことをズケズケ言うだけの人間じゃなく、すごく寂しがり屋なかわいい子でした。
トップモデルである美山が、モデルの「美山靫彦」じゃない美山靫彦自身には価値が無いと思っているのが、すごく伝わってきて悲しかったです。
周りが望む「美山靫彦」を見せれば見せるほど、本当の自分が無価値に思えて・・・だけど、久保田だけは態度だけじゃなく、ちゃんと言葉にして、美山靫彦まるごと全部を見てかわいい、ほっとけない、大切だって示してくれる。これは惚れますわv

凪良さんは本当に心情描写が上手だと常々思っています。
凪良さんの作品は、受けと攻め両方交互に語られることが多い気がしているのですが、今回は一冊通してずっと美山目線で綴られていました。
そのせいか、美山に感情移入しやすかったような・・・もちろん、語り手が変わる話も、両方の想いが知れておいしいくて好きです。
今回、久保田視点が無かったのは、久保田が裏表の無い、嘘の無い人間、心情=表情・態度・言葉の男だったから・・・なのかな?とふと思いました。
久保田視点を書く必要が無い。それがそのまま久保田の魅力を表わしていて、やっぱり凪良さんはすごいです。

『yes』もちょっと甘い話かもしれないけど、幸せな美山に、よかったねぇと目頭が熱くなりました。
久保田と二人で、これからもどんどん幸せを感じながら歳を重ねて欲しいです!

9

ありがとう~今とっても幸せ~

追っかけしてる絵師さんでもないし、なんで買ったんだっけ と思いつつ
評価の高い本だったから、まいっかと読み始めたら、止まんなくなったー
読了後、幸せすぎて、しばらく眠れなかったー
エキサイトしすぎてアドレナリンがきっとたっぷり出たに違いない。
今夜からは寝る前に読む本は、ちょっと選ばないとな。

今日も当作を持ち歩き、2回目のゆっくり読書タイム。
こんなに幸せな気分になれるのって、しかも幸せ気分が
継続するのは、私には珍しい。

むごいところないし、やることやってるし(笑)
ちゃんとストレートの葛藤(これ大事!)も描かれてるし、
仕事話的な要素もある程度あるし、
なにより、いばら姫の毒が最高!!!!!!
つんつんさん大好きな私にとって、最強クラスのつんつんさん!
攻めさんに対してだけではなく、
世間一般すべてに対して毒の吐いてるところが半端ないー(笑)
しかも真実ついてるので、嫌味ない。(真実が故にぐっさり刺されるが)
ぐっさり刺されるのが癖になりそうでした。

それと真っ向勝負する里江って女子も、たいがい酷い腹黒たぬき女子(笑)
いや、いたって普通な女子なんだろうけど、
やっぱり二人の間で揺れ動いたりするところが女子なんだよな。
他のお姉さまもおっしゃっておられたが
こいつとはあんまりお知り合いになりたくない(爆)
そんな二人の丁々発止(いばら姫の勝ちー)は読んでて、めっちゃスッキリしました!

後、人たらし久保田。卑怯者。ずるいわ、その人たらし能力。
それさえあれば、あんたどこでも生きていけるよ。

と、登場人物どれも、とっても気に入って、とっても好きな本になりました~
唯一オススメできないのが、ネグレクト苦手な方。
そこだけは、心が痛みました。まだ軽めな方だと思いますが
ちょっとでも×という方は避けた方がよいかもです。

これ、12月発売だったんですね。ほんとクリスマスプレゼントみたいな
素敵な本でした。

9

過ごした夜の分だけためたカメリア

ああ、これはスピンオフですが、本編よりも好きです。
本編だけだと裏がないけれど思った事は全部云っちゃう我儘放題の子でしたが、これを読んだら愛おしくてたまりません。
ちょっと幼なじみの女子が鬱陶しいのと、彼女に関するミスリード狙いが見え見えだったのは残念ですが、概ねよかったです。(ああ、でも女子はこういう人多いかも。特に紅一点系)
傷つかないから一人がいいという子は、大抵「かまって欲しい」という愛情に飢えてる子なので、こんな人たらし(笑)に出会ったらイチコロですよね。

過ごした夜の分だけためたカメリアを取り出すシーンと、ショーの最後のマリエはたまりませんでした。
そうですよ!オートクチュールのショーの最後はマリエって決まってるじゃないですか!!
ああ、素敵。
末長くお幸せに。

余談ですが、湖水さんは好きですし365+1の挿絵にはぴったりでしたが、今回はちょっとだけ別の某方の絵で観たかったなあと思ってしまいました。ユキちゃんがちょっと普通すぎるかも。

6

ツンデレ姫と世話好き王子

『365+1』はまだ読んでいませんが、本作品のみでも十分面白かったです。

我が儘っぽく振る舞っているけど、実は自信がなくてネガティブ思考のトップモデル美山。
世間で評価されている美山は作られた美山であって本当の自分ではないという思いが常につきまとっています。

一方の久保田は仕事にも誇りをもち夢を追いかけているポジティブなデザイナー。
一見合わなそうな二人の絡み(ちょっと口の悪い掛け合いとか、勘違いで気持ちがぐるぐるしちゃう感じ)がよかったです。

幼馴染との関係に嫉妬したり、久保田の夢のために自分を犠牲にしようとする美山の健気さもぐっときました。
久保田は美山の精神安定剤ですね(笑)

5

大好きなお話です

凪良ゆうさんは作品によって印象がかなり違う作家さんです。
私は凪良作品の中ではシリアス重めのお話が好きです。
今回365+1のスピンオフということで、私は365+1があまり好みではなかったので今作もあまり期待してなかったんですが…
冒頭からもう面白くてとても読みごたえのあるお話でした!
まず、愛しのいばら姫という題名がイイと思いました。読後になぜいばら姫なのかが違和感なくストンと納得できます。
365+1ではありがちなキャラだった美山が、今作ではとても繊細に描かれていて、その対比を実感するためにも365+1から読んで欲しいです。(もしくは愛しのいばら姫→365+1でもいいかも知れません)
カメリアの花にほわっと包まれる気分になると思います。

4

毒舌美人が恋に落ちたら

あの美山がこんな表情を見せるようになるなんて…!

前作で当て馬だったりキューピットだったりした孤高の性格悪いトップモデル美山のスピンオフ。

トップモデルになってから十数年、完璧な「美山靫彦」としての自分を傍観して、本当の自分と違う存在だと距離を置いていた美山。
そんな彼に朗らかに接する久保田はモデルとしての美山をミューズと崇めると同時に、美山自身を「ほっておけない」「かわいい」と言って頭を撫でる。

毒舌で不遜な美山が、おおらかで肝の据わった久保田の温もりに解されてゾッコンになるまでが本当に可愛かった。久保田の前では飾らずありのまま、怒ったり笑ったり子どものような素顔を見せる姿にもキュン。
それにしても毒舌っぷりは相変わらず清々しいほどでした。何度性格悪いと言われても「知ってる」で済ます美山さすがトップモデル様。
そんな彼が「花飾り作って」と毎晩おねだりして、それをこっそり大事にとっておいたり、久保田の前では素直に「うん」と子どものように頷いてみたり……ギャップにのた打ち回りたくなります……!
孤高の存在から恋人に献身的なまでになる劇的ビフォーアフターが絶妙でした。
ウェディングドレスプロポーズもトップモデル美山に相応しくて素敵。

あと紺や綾野も出てきて、世界的なファッションショーを二人も手伝っていたりして、紆余曲折していた二人の未来も明るいのかなと思って嬉しくなっちゃいました。

4

性格の悪い(受)最高

ツンとした感じも性格の悪いさも含めて綺麗で滑稽な(受)が、(攻)との出会いで今までに無かった感情を揺さぶられて可愛くなる話が大好きなのでキュンキュンしました。かわい有美子「透過性恋愛装置」で開拓されましたが如何せん性格の悪いくせに健気な(受)って割と稀少なのでもっと色んな作品が出てくると嬉しいです。365+1スピンオフですが私はいばら姫のが断然に好き。靭彦のガラス細工の様な冷たく閉じられた哀しい世界から、久保田が土足で救い出す様な力強くて温度のある世界へ連れ戻す感じが幽閉された姫を助ける騎士そのもので胸熱でした。靭彦はただ守って貰うばかりではなく、久保田の為に自ら生贄へ赴く潔さに涙し、久保田が靭彦を奪還し結ばれてプロポーズまでの過程もドラマチックで一々切なく響きました。そしてお互いが一方的に守る間柄ではなく共に大きな夢へと向かい手を取り合ってパートナーとして踏み出すところで終わるなんてカタルシスで溢れました。 

4

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