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作者入院、休載という試練を乗り越えて節目の10巻までたどり着いたので、まとめてこちらに書かせていただきます。皆様ご存じのとおり、本作はもとよりBLではございません。ラブの部分を担うのは女性のみ。しかも掲載誌がグラビアアイドル表紙の男性誌とあって、主要な女性キャラ3人は、あかり(母性的、ちなみに巨乳)ひなた(可憐な美少女)香子(魔性の女)とタイプは違えどいずれもきわめて女子力の高いラインナップ。「BLしか読まない」「読みたくない」層にはいわば天敵かも。
それでもあえてこちらでお薦めする気になったのは、舞台である将棋界そのものがイマドキ珍しいくらいのBOYS ONLYの世界(といっても、零たちのような正真正銘のボーイズから、永世名人とかだと軽く還暦超えなので、随分幅は広い)で、次々登場する棋士たちがこぞって魅力的だから。そりゃあもうだれか一人を選べと言われても困惑するくらいに。
主人公の零は、中学生でプロとなり、10巻現在で高3、五段。でも決してただノーテンキに「将棋が好き」の一心でここまで来たわけではない。
幼いころ、忙しい父が相手をしてくれるのがうれしくて懸命にルールを覚えた。学校では周囲となじめず、休み時間はいつも一人棋譜を見ていた。事故で家族を一度に失い、父の親友のプロ棋士幸田の家に引き取られてからは、自分の居場所を手に入れるため一層将棋に打ち込んだ(それが却って幸田の実子たちとの軋轢を招き、結局幸田家を出ざるを得なくなるのだけれど)。プロ入りして自活する今となっては最早「生活の糧」以外の何物でもない。天才闘魂モノの主人公にしては随分とネクラで後ろ向きなキャラなのだ。
対して、ライバルたちはいずれも勝負師らしく、よくいえば個性的、ぶっちゃけかなりアクの強いのもいる。零の義姉香子との不倫疑惑のある後藤九段。ケーキをつまみに芋焼酎を一本空ける柔道五段の猛者、隈倉九段。故郷の過疎の村の期待を一身に背負い、重圧で常に胃をやられてる島田八段。零を生涯の「心友(ライバル)」とよぶ二海堂は財閥の御曹司だけど難病と闘う。そのほか精密ロボットとか魔性のアルピニストとか死神(!)とか、主役の零がともすればかすんじゃいそうな充実の布陣。
そして特筆すべきはやっぱりこの人でしょう、孤高の名人宗谷冬司。新人王を獲った零と宗谷の初対局が7巻の終わりから8巻の初めにかけて描かれてます。名手同士、盤を挟んでただ向かい合う。ひとことも言葉なんて交わさなくてもするすると意思が通じ合う2人だけの静謐な高み。嵐の一夜、偶然知ることになる宗谷の重い秘密。「僕の後を静かに・・・神様がついて来る」ーこのくだりなんかもう鳥肌モノでした。
私自身は、ダテに長年腐女子をやってきてないので(エヘン)、脳内に、自分にとっての邪魔な部分、不快な表現は見れども見えず、スパッと読み飛ばす機能が既に備わっているため、抵抗なくこの非BL大作の世界に足を踏み入れることができました。(そうはいっても、ヒロインの中学でのいじめ問題に延々かなりのページが費やされた時には思わず「よそでやってくれよ」と叫びそうになりましたが・・・)対局が続いてゆく限り、盤上での男と男のノーガード殴り合いとか、息詰まる頭脳戦、精も魂も尽き果てるまでの死闘・・・などなど、必ずや腐専の皆様の鑑賞にも堪えると存じます。