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itutu no hako no monogatari
今市子さん、大好きです。
特に初期が好みかもしれません。
今作品は濡れ場は極少なので、BLで括るとモノ足らないかもしれませんが、
絵の綺麗さ、お話の作りの巧さが際立ち、特にこちらは何年経ってもいい作品だと思えるのです。
また各々の作品のテイストが違い、飽きさせないんですよね。
なかでも特に好きな作品を。
【落日】
昭和初期を舞台にした、画家・音弥と画商・久野の秘めた関係。
この関係性、波津彬子さんの「9つの夜の扉」にある作品とほんの少し似てます。
昔読んだ時は、音弥がどうしてこの三角関係を選んだかわからなかったのですが、今ならわかる。
その想いにもまた、ぐさりと胸をつかれるのです。
【エレベーターのパンドラ】
わりと珍しい?社内恋愛もの。
社内の派閥争いで奔走するなか、クールで格好いい三上を純粋に慕い、追っていく天然系の奥井。
ベットのなかでのやり取りが、なんともいい!横になって三上が奥井を抱えている、あの体勢が最高に好きだ!
【雪の下の柩】
「当時、何が描きたかったかわからない」そうですが、私はいい話だと思います!人の心はままならないものだと思うから。
様々なエピソードから、父親と養子になった明生の暮らした12年の苦しみがのし掛かってくる。唯一しがらみ抜きで心通わせられた三味線の存在がもの悲しい。
そして辰弥側としての寂しさも、ないがしろにしていない。
最後にみせた明生の表情が、あまりに痛々しく印象的。結局逃げることしかできなかった明生に、また生きる場所を見つかりますようと願うばかりです。
【図書館で会いたい】【花曇り】
この2篇にでてくる、小林と高屋のCPがまた非常に好きなんです!
遊んでいそうでいて奥手で情熱的な小林と、堅物のようでいて恋愛巧者な高屋。
時折挟み込まれるコミカルなやりとりが、実に楽しい!
相手の新しい一面を知る毎に惹かれていく過程、そして長く一緒にいることでうまれる不安と世間との兼ね合い。
それらをあえて描きすぎす、第三者の目からであったり匂わせることで、ストーリーに深みを与えています。
キスシーンやほんの少しのベットシーンの艶やかさといったら!
ちなみにラストの選択は、通常私は辛口目線になるのですが、彼らなら悪くないと思わせるところがあるのです。
他の作品もとても面白く、人によって好みの作品が分かれそう。
読むたびに感嘆してしまう、そんな作品集です。
一時期埋もれた作品たちであったようですが、埋もれたままにならなかったのは、ちゃんと理由があるというもの。
尽力してくれた白夜書房のA女史に感謝です!!