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ai no poltergeist
こちらに誘導されましたが持っているのは旧版の方。
短編集です。
「まさかさかさま!」
ドSの黒澤とドMのコンビ。と思われてる山吹の視点で。
山吹には黒澤が自分の出方を伺ってる、と見えてるらしいけど、黒澤視点は描かれてないから本当はどうだかわからないよ。
本当の矢印の向きは外からも、当人同士でもわからないのかも。それが「まさか?さかさま⁉︎」なのだ。
「愛のポルターガイスト」
いつも優しいおじいちゃんの家には美しい男の幽霊がいる。おじいちゃんが亡くなってもいなくならずに、逆に怒って家族に復讐してやるという。なぜなの?
…というお話。
一度は愛を誓って、でも裏切られ。死んだら会えるかと思ったのにこちらには来てくれない。
よく考えたら可哀想で苦しいな。「みえる」孫が身代わりになる?身代わりじゃ無くていつか報われたらいいと思うけど、幽霊との恋ってどうなるんだろう?
「僕は見た目が99パーセント」
主人公は転校生の宮崎。
隣の席にすごい美少年でドキドキするけど、どうやら彼は孤立している。
なんで?と思ったが、普段の学校生活の中で少しづつ彼がおかしい事に気づく…
顔だけ抜群な彼の性格は、実にオシイ。
「仔猫もらってください」
オレが好きにイジワルしちゃってるカワイイ仔猫チャン。でも本当は…的な、まあよくある話。アンタは仔猫の下僕なんだよ。
「エムのリビドー」
すぐ暴力を振るう彼氏に我慢できず…だったのに、暴力や束縛が無いと愛された気がしない、というズブズブ。閉じてます。
「ラブサービスマン」
ダメ男ばかり好きになってしまう…って思ってたけど、実は尽くしすぎちゃって相手をスポイルしている子のお話。気付いたのにそのまま行っちゃうのが何とも。
「法医学者異感情発生事件簿」
これはちょっと異色ですね。
人体が色々な原因で死ぬ、その原因を調べるのが楽しくてたまらない法医学者の安藤。
死体を見て吐く新人刑事に興味を持ち、自分が分析するはずだったのに逆に…
生きている人間はコントロールの枠外であって、それは自分にも当てはまるのですね。
「愛だとか恋だとか友情だとか〜善玉コレステロールと悪玉コレステロールの場合〜」
「窓際の林檎ちゃん」収録作の続き。
弟・善のもとに疲れた初老男がやってくる。この人なら兄に靡かないかも、と尽くす善。
一応誠実っぽいけど、ど〜〜うかな〜?
病んでる設定だけど、読後感はどこか抜けがあって重くない。側から見ればそれでいいの?という境遇も、当事者たちは「ま、いいか」と思ってそうだから。
シビトさんの味ある短編でお腹いっぱいになれるので萌×2で。吐瀉物から好きな食べ物を割り出して人を誘う監察医、善玉と悪玉双子のお話など強烈なキャラクターも充実していて読んでいて楽しいです。
表題作は登場の仕方も動静のつき方もドラマチックです。私はタイムスリップものが大好きなので、ホラーチックでしたが好みでした。
他作品は自分を客観的に捉えつつ抜け出そうとはしない「こんな人・愛し方もあるよね」という若干コメディだったりSMだったり。
1つ目の「まさかさかさま!」の「支配しているようで俺を支配する事に支配されているとすら思える」という台詞にはおおーっ!となりました。この台詞は他の漫画を読んでいて、執着やSMぽくなると思い出して考えたくなる台詞です。「エムのリビドー」「ラブセールスマン」なんかも自分や相手に絡めとられてもそれを良しとしてしまう、同じような展開と言えなくもないのですが、それが独特の表情や台詞でどれもそれぞれ中毒的なお話になっています。
基本最後は
「でも幸せだからまー…いっか」
初期の読み切り短編集の新装版です。表紙もほのぼのーとしたテイストから妖しい雰囲気に変わり、より作品の雰囲気に合ったものになってると思いました。
中身はほんとに短い、ショートショートのような短編がたくさん詰まっています。
どれもまったく別のお話なんですが、共通しているのは病んでること。恋の迷い道に見事にはまり込んでいる人達ばかりで(そしてSMテイストがあって)、シビトワールドでした。
みんなハッピーエンドのはずなのに、病んでるから「それでいのか!?」と思ってしまいますが、それこそが恋の愚かさというか、ままならなさというか。その辺が切なさとなっていました。
ショートショートのようにそれぞれが完結した世界になっていて密度も濃いので、短編にありがちな「続き書いて」にはならず、むしろたくさんのお話が読めた満足感がありました。
お蔵出しペーパーも最近腐った私にとってはうれしかったです。