__モコ__
otogizoushi
人間と妖怪が混ざって暮らしている時代のお話。
狛犬の黄瀬は、ずっと探していた狐の黒子を見つけるところから始まります。
元々そこまで、妖怪だとか戦いだとかそういうのを好む傾向はないのですが、こちらのお話は本当に良かった。
きっと作者さんがそういうのが好きだったり興味があったりするのでしょうね。
設定も細かく、読み進めていく内に、
「そうか、あれは伏線だったのか」
と気付かされたりと、とても新鮮な気持ちで楽しめました。
出てくる黒バスメンバー全員が妖怪、というのも面白かったのですが、
【お通し祭】【お通り番】【宝玉】
というものを軸に展開されていく各妖怪の様子や、生贄として捕らわれていた狐の高尾が蛇の緑間に攫われて行くところ。
獅子のメンバーが狐の主である赤司に話しに来るところ。
記憶を操作されて妖力を失った狐の黒子を、何としてでも手中におさめたい狛犬の黄瀬。
ただ1つのカップルだけではなく、メンバー全員の背景や思いが組み込まれていて読み応えがありました。
そして後半。高尾が緑間に言った言葉。
「お前がいるこの世界が守りたかったからなんだよ!」
これが心に突き抜けました。
各部族の問題、特に【宝玉】を狙った争い。
しかし、キセキの妖怪たちにはそんなこと関係なかった。
高尾が叫んだその一言こそが、出てくる皆の思いだったのだなと思うと目頭が熱くなりました。
伊邪那美に立ち向かうため。
蛇の穴に高尾を閉じ込めた緑間。
愛しい家族を高尾に預けた青峰。
それぞれの愛する者と共に戦うことを誓う黄瀬、黒子、赤司、紫原。
6人が立ちはだかる見開きのページは、何度見ても鳥肌が立ちます。
ラスト。
300年の時を超え、そびえ立つ6枚の岩。
周りを駆け回る1匹の狐。
子供を連れ、今、そのときが来るのを待つ女性。
解かれたあとは、いつまでもしあわせであって欲しいと願わずにはいられません。