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manchester no natsu
「絶版マンガ図書館」で無料公開されているものを拝読しました。
古い作品群なだけあって、ハピエンに縛られない独特の深みと良さが詰まっています。
気付けばどっぷり浸かり込んでいました。
退廃、背徳、狂気、破壊、破滅。
こういった世界観が好きな人にはハマると思います。
『マンチェスターの夏』
タイトルになっているマンチェスターは二人が学生時代を過ごした街で、お話の舞台はロンドン。
とあるクラブで4年振りに再会した〔アンディ〕と〔ジーン〕の物語です。
一途にジーンを求め続けるゲイのアンディと、金の為にアンディを利用するノンケのジーンは、マンチェスター時代に身体を重ねた過去を、片や「パラダイス」、片や「クレイジーだった」と表現し、二人の間の縮まらない温度差が二人の周りまでをも巻き込んで取り返しの付かない悲劇へと向かわせます。
ジーンの身勝手の報いが、ジーン本人ではなくジーンの妻と娘に下ってしまったのがやるせない。
ラストでアンディが涙と一緒に吐露する行き場のない想いが胸をえぐります。
『Her child, Her sweetheart』
舞台はNY州マンハッタン。
〔ジェス〕と、ジェスの母親〔ウェンディ〕と、母親の恋人でジェスと同じ歳の少年〔マックス〕の複雑な三角関係モノ。
ジェスとマックスが11歳の時にみなしごになったマックスをウェンディが引き取ってから、19歳の年にウェンディが二人を残して突然蒸発してしまった後も、ウェンディを通して離れられない二人は奇妙な同居生活を続けます。
母親とその恋人のSEXを見ながら育ったジェスの心は当然の如く蝕まれており、ピーターパンのエピソードに当てはめられた3人の関係に訪れるのはどうしようもない結末でした。
少し違えばネバーランドなんかに行かずとも幸せになれたはずなのに、ティンカーベルの捻れた愛が破壊へしか向かえなかったのが悲しい。
ウェンディ失踪の裏には狂気が隠されています。
『TOMATO, THAT IS GOING BAD』
学生運動が活発だった頃の日本が舞台。
父親を殺すことだけを生きる糧にしているラジカルな医学生〔ゴロー〕と、無気力無関心で日々ただ生きるだけの〔峰男〕の、最期まで決して混じり合えない悲恋モノ。
破滅モノが好きな自分でも中々に堪える決着の仕方でした。
人生の目的を果たしたゴローは最後峰男に何を求めて会いに行ったのか。めちゃくちゃに抱かれて恐怖と罪の意識から逃げたかったのか、新しい生きる糧を得ようとしたのか、それともただ自分が存在したことを峰男に刻みつけようとしただけなのか。
ストーリーは淡々とした峰男の独白で進み、ゴローの背景や心情は一切描かれないので、本作品の完全版として刊行されている同名のコミックも合わせて読まれることをオススメします。そちらではよりクレイジーな結末が描かれています。(こちらも「絶版マンガ図書館」で無料公開されています)
いずれもメリバですらない、救いのないバッドエンドです。
しかしながらストーリーがしっかりとあり、グイグイと惹き込まれます。
BLですが、少女マンガと少年マンガのエッセンスがふんだんに入っているのが良いです。
あと何と言っても、当時らしい絵柄と主人公達のクサいセリフ回しが良い!
1995年発行。すでに絶版ですが、このほど某絶版コミックス無料配信サイトで配信が開始されたため、レビューを投稿します。
タイトルにも入れた通り、何しろ古い上にバッドエンド!(投稿欄に「タイトルでネタバレ注意!」とあったので伏字にしてみました(笑)が、バレバレですよね)。
はげしく読み手を選ぶ作品です。評価は古い分だけ割り引いています。
◆「マンチェスターの夏」
高校時代、ひと夏の関係を持ったアンディとジーン。卒業後数年して、二人が偶然再会するところから、物語は始まります。
今やアンディは麻薬の売人、ジーンは失業中で妻子持ち。すでに全く別の世界の住人となった2人ですが、アンディの中で眠っていたジーンへの情熱は、再会した瞬間に再燃してしまいます。
ジーンの心を手に入れるため、金をエサにジーンを悪の道に引き入れようとするばかりか、彼の家庭をも壊そうとするアンディ。
一方ジーンは、妻と子を愛しながらも、金ヅルのアンディとの関係を断ち切ることができず…
とにかくストーリーがめっちゃ良い。
今さらお互いが同じ道をいくことはないと知りながら、まるで駄々っ子のようにジーンの心を手に入れようとするアンディと、金のためにアンディを利用するジーンの温度差を、容赦なく描き、痛みを突きつけてくる作品です。
2人のほか、アンディの進行形の恋人であるザック、アンディの妻をも巻き込んだ傷つけあいも壮絶。
誠実ぶってるクセに実は優柔不断で弱いジーンが、心は妻にありながら体ではアンディに感じているあたりも、救いがなさすぎて…
夢を描かない分、4人の心模様にリアリティーがあって、地味な作品ですが何度も読み返しました。ラストシーンのアンディの涙にグサグサ胸を刺されます。
◆「Her child, Her sweetheart」←イチオシ!
主人公のジェスは、母親のウェンディと、孤児で同い年のマックスと、3人暮らし。
やがてマックスはウェンディと関係するようになりますが、ある日ウェンディは突然失踪。ジェスとマックス2人で、彼女の帰りを待つ生活が始まります。
そして時が経ち、3人で過ごした時間よりも長くなってしまった2人の暮らし。
お互いの想いは深まっていくのに、「マックスを繋ぎとめているのは、母親にそっくりな自分の顔だけ。自分はマックスにとって母親の身代わり」というジェスのこだわりがマックスを遠ざけてしまい…
ウェンディ失踪の謎を明かしていくサスペンス調の作品ですが、謎解きだけに終わらず、終盤衝撃的な展開を遂げます。
この作品の基底にある、愛することは傷つけ、奪うことでもあり、殺すことさえ愛の一表現という執着と独占の恋愛観は、「ヴィーナスに接吻」などのちの定広作品にも通じるものがあります。
作者が長年こだわり続けるテーマを描いた作品だけに、一読の価値あり。
ハピエンじゃないことで逆に、描きたいテーマが十分に表現できていると思います。
アマチュア時代の作品ということで、画力やネームの巧拙の問題は感じますが、それ以上に勢いに心を掴まれました。じっとりした湿度がイイです。
◆「TOMATO,THAT IS GOING BAD」
こちらも、アマチュア時代の作品。
無気力で無関心、根なし草のような生活を送る峰男と、大学教授の父親を殺すことだけが人生の目的のような医学生・ゴローの、すれ違い続ける恋愛未満?な関係を描いた切ない物語です。
強がりで尖ってて、カッコつけのゴローが、最期に峰男を頼ったのは、峰男に抱いてほしかったから? でも、峰男は傷ついたゴローを抱くよりもいたわりたくて躊躇してしまう。そして想いを遂げる機会を永遠に失う…
峰男の片想いはほんの少しだけ報われますが、やはり暗い結末です。
この作品に肉付けした同名のコミックスもあり、作者の思い入れのある作品のようですが、説明的な描写は極端なほど省かれているため、共感しづらいのが難点。
ちなみにこのタイトルには「腐りかけの街と若者」という含みがあるとのこと。
峰男の部屋の冷蔵庫の隅でひっそりと腐っていくトマトが、その雰囲気を醸し出しています。
3作とも見事にバッドエンド!しかも全ての作品に女性が登場。作者の得意分野とされるリバはありませんが、地雷要素は多数です。
でも、地雷が多い分だけ、他にない面白さもあります。
地雷をクリアできる方、実らない執着愛で心をズタボロにされたい方にはぜひ読んでいただきたい作品です。(無料ですしねっ☆彡)
かなり昔の定広作品です。
1987〜94年の作品ということですので、絵柄は名残りがもちろんありますがファッションとか単語とか目頭が熱くなる懐かしテイストです。
こんな明るく書き始めてしまいましたが、内容はひじょーに!不幸満載です。
絶版らしくわたしは電子で読みましたが、個人的にはあまりお勧めではありません。
表題作は、攻めのアンドリューと受けのジーンのカップル。
学生時代に関係を持ってから、四年ぶりの再会。
その四年間の間に結婚し娘をもうけたジーンに対し、危ない仕事で生活しているアンドリューという正反対な人生を歩んできたふたりが再び出会ったことで転落していく物語です。
ジーンはアンドリューという存在を愛してはいてももう他の大切なものを心に抱えていますので、ふたりの気持ちが本当の意味でクロスすることはないのだと思います。
反面アンドリューの方は、昔の輝いた時を再び取り戻そうと躍起に。
そんな噛み合わないふたりの現在が不幸とも言えますし、当たり前だとも言えます。
子供の時代は永遠ではないですからね。
ちなみにタイトルにもなっております『マンチェスター』ですが、あまり絡まないというかマンチェスターである意味はありません。
同時収録であった『Her child,Her sweethert』と『TOMATO,THAT IS GOING BAD』も、現在の作品群とはかなり毛色の違うものとなっています。
『Her child,Her sweethert』は子供の頃から一緒に育った22歳のジェスとマックスのお話。
ジェスの母親、ウェンディが蒸発して三年。
ジェスは母親と寝ていたマックスを密かに慕い、母親そっくりの顔を大事にしながら、ふたりでウェンディの帰りを待ち続けています。
そんなふたりの、お互いへの隠された執着が不幸の呼び水となりました。
素直になっていれば起こらなかった悲劇でしたが、こういう流れはBLと呼ばれる前にあったJUNE風味です。
まず、悲劇ありきというのは。
うーん、やっぱりわたしはヤワなのか、苦手でした。
ラストの『TOMATO,THAT IS GOING BAD』だけは日本舞台の作品で、医大生のゴローとチンピラの峰男(この名前も時代を…)が主人公です。
こちらは思いっきり死亡エンドですが、ふたりはそれで幸せになったというオチ。
三編通して言えるのは、どうもこの時期の作品は死を美化していて苦手だということ。
死に綺麗なんてないと思うので。
特に死亡エンドは、キャラクターを殺してお話を纏めようとするのが如何なものかと。
先にも書きましたが80〜90年代の作品なので風潮というものがあるのは仕方ないですし、それがまた受けていたのでしょうが、わたしには受け入れがたいものでした。
みみみ。
yoshiakiさま
マックス、わかりにく過ぎですよ…
もう、なんでそんなややこしいことするのよ〜(T_T)って思いながら、でもそういうとこが面白くて読んでしまいます。
ペパミントキャンディのレビュー拝見してきました^m^
表題にあんまり惹かれなくて読んでなかったんですけど、気になる!!読んでみます♪
定広さん、レビュー書くの難しいですね………
yoshiaki
みみみ。さま
「Her child~」
>ヴィーナスと違うのは相思相愛じゃなかったところでしょうかね(T_T)
マックスの気持ちは本当に分かりにくいですね。分かりにくいのがまたいいんですけどね~(#^.^#)
>プロフでヴィーナスを登録してらっしゃるのyoshiakiさまだったのですね
そうなんです♪ 定広さんの作品で最初に読んだのが「ヴィーナス~」で、次に読んだ『禁漁区の森』の中の「ペパミントキャンディ」で完全にハマりました。ただ、「ペパミント~」は凄く短いので、公称では「ヴィーナス~」のほうを挙げています^^
「PATHOS(パトス)]も私は凄く好きだったし、「灰とダイヤモンド」も名作なんですが、なかなかレビューが書けずにいます。
みみみ。
yoshiakiさま、はじめまして。
コメントありがとうございました!
「ヴィーナスに接吻」がこの作家様の初読み作品なんですが、ハマりました、定広さん。
極端な恋愛モノ大好きだし、ハピエンにあんまりこだわりないので、どれもホント面白くて!今色々読ませてもらってるんです。
このコミックは3作品ともすごく好みでした。
Her child,〜わかる気がします。
こちらも行き過ぎた独占欲ゆえの破壊行動ですよね。。ヴィーナスと違うのは相思相愛じゃなかったところでしょうかね(T_T)
3つめのゴーイングバッドも完全版の方を読んだら更に面白くて、こちらと合わせて何度か読み返しています。
今の風潮的には歓迎されにくいのかもしれませんが、痛いのだろうがバッドエンドだろうが気にせず定広さんには出来るだけ自由に描いていただけたら嬉しいですね。
余談ですけど、プロフでヴィーナスを登録してらっしゃるのyoshiakiさまだったのですね(*゚∀゚)自分以外のもう一方誰なんだろ〜って実は気になっていたんです。
yoshiaki
みみみ。さま
はじめまして! 最近Renta!でキャンペーンやってたせいか、定広さんの作品のレビューが増えて喜んでいたところ、Renta!にもないこの作品のレビューが上がっているのを見つけて、嬉しくて思わずコメントボタンを押してしまいました。
この作品、私も大好きなんです。特に「Her child, Her sweetheart」が。
プロフによればみみみ。さんは「ヴィーナスに接吻」がお好きだそうですが、「Her child, Her sweetheart」は「ヴィーナスに接吻」ととても似てるなと思います。
最近こういうグサグサ抉られる痛い系の作品が少ないので、もっとこういう作品が増えてくれたらいいんですけどね。
定広さんにも、もっと新作を描いていただけたら嬉しいな・・・