運命に翻弄されるドラマティックラブ!!

裸のマタドール

hadaka no matador

裸のマタドール
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神23
  • 萌×222
  • 萌5
  • 中立2
  • しゅみじゃない6

--

レビュー数
10
得点
220
評価数
58
平均
3.9 / 5
神率
39.7%
著者
華藤えれな 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
葛西リカコ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
シリーズ
愛のマタドール
発売日
価格
¥560(税抜)  
ISBN
9784403523298

あらすじ

それは、命がけのエクスタシー!

男娼上がりの性悪ビッチと噂される美貌の闘牛士・ロサリオこと理央(りお)。
そんな理央が世話係として拾ってきたのはかつて自分を弄んで捨てた男・レジェス。
帝王と呼ばれ、闘牛界に君臨した彼だが、試合中の事故で記憶と聴覚を失ってしまう。
過去の栄光も二人の因縁も全て忘れ、一途に理央を見つめ守り従うレジェス。
目の前の優しい彼に惹かれながらも、過去を忘れられない理央の心は。

表題作裸のマタドール

元天才闘牛士で付き人
日系人の闘牛士・22歳

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数10

闘牛も愛も!!

闘牛の熱狂!緊迫感!!
健気で苦しい恋路、闘牛士の誇りと師弟愛に高まる震える~

シリーズ3作品め、と知らずにこちらから読んでしまったけど問題なく世界に入り込め刹那的情緒的すさまじい熱量に打ちのめされました!

英雄レジェスの傲慢さに翻弄されていたのに、
記憶をなくし、真摯に付き従う優しさに苦しむ…
記憶喪失ものの葛藤と闘牛スタイルの葛藤が相乗効果で胸にくる!!

レジェスを再び失いたくない守りたい一心で
はすっぱな振りをする理央が健気で健気で…
どんなことしてもレジェスが愛した闘牛の世界に居続けるって!!
でも肝心なことは言えない立ち向かえない‍…ぎゅっとなります。

哲学的に闘牛を愛し、生と死と愛の狭間で生きてるレジェスには理央が必要だったんだなと分かるまでが切ない切ない
熱をぶつけるのは傲慢も傲慢だけど、同じ高みにいられる理央への愛だろうけど不器用すぎる!!
記憶なくして無骨に守る姿も‍聴覚ないのにいろいろ察するのは愛を感じるけど、武骨すぎて~本当に酷い男よ…

なんといっても闘牛前に体の全てを晒して、
戦うための衣装を一つ一つレジェスに身につけさせてもらう行為が
なんとも静粛荘厳で官能的でした。

"素肌と命を預けるのは俺だけにしろ" ってとこまで来たのが胸にきました!

3

闘牛愛がこれでもかというくらい

作者さんの闘牛愛がつまったお話ですね。

理央の半生はレジェスと共にありますね。
傲慢なレジェスと記憶を無くした後の尽くすレジェス。どちらも愛しくて苦しむ理央。

回想シーンや闘牛シーンが多くて辛い場面も多く、昔も今もレジェスが何を考えてるのかわからないので、だからどうなるの?と早く結末を知りたい一心で読みました。

理央以外はわかっていた二人が出会った最後の一年半の記憶を無くす前のレジェスの想い。
そして記憶を無くしてからも理央が過去の自分を愛していたことに苦しみそれでも理央を想っていたなんて。なんてこと!やっとわかるなんて。
レジェスの究極の愛情ですね。
傲慢なあんな形で。
でも理央もずっとレジェスを愛してて、例えレジェスが誰かと結婚しようとも。
師弟愛、同士愛、恋愛色んな愛情が二人を結びつけて。

最後もハッピーエンドで良かったです。

0

お互いの一途さ

世間から男娼あがりの性悪ビッチと呼ばれる美貌の闘牛士理央とかつて理央を弄んで捨てた男レジェスの物語。

スペインには行ったことがないのですが、読み始めからあちらの国の乾いた熱を感じさせるような出だしでした。

難聴で記憶喪失が付き人で思い人という始まりでそれだけでワクワクものでした。

やがて理央が引かれるレジェスという男がどういう人物であるかわかっていくのですが、決して理央に優しくするわけでもなく聖人君子でもありません。

はっきりいって悪くて黒い男。

でも闘牛に関する腕も哲学的な考えも一級で、理央が惹かれていくのも頷けます。

また理央の性悪ビッチを周りから言われているのに実はレジェスに一途で、レジェスが記憶喪失になっていらいずっと禁欲生活をしているという下りは本当に萌えツボでした。

また、悪夢にうなされてしまう理央に難聴であっても寝室にやってくるレジェスのシーンではこの二人は本当に深いところで繋がれりあっているんだなと感じました。

理央を守るために勇士を見せるラストシーンのレジェスの姿は圧巻です。

4

BLにうってつけの素材

マタドールシリーズとして「愛のマタドール」が先に発刊されていますが、前作を読んでいなくても読めそうだったので、こちらから読みました。

いやもう、眼からウロコの衝撃でした。
闘牛が、スポットの当て方次第で、こんなにも官能的な雰囲気を醸し出すものだとは。
獣と人間との一対一の死闘。マタドール(正闘牛士)の華麗なコスチューム、牛を刺し貫く剣、牛を仕留めた後の心身の昂ぶり、殺したばかりの牛の血の匂いが残るマタドールの指先…官能は官能でも、男女の恋愛ではなく男同士の禁断の恋が似合う世界。
萌えのネタが、ザクザク掘り出せそう。
読者にそういう感覚を抱かせるのも、やはり作者の素材選びのセンスと、見せ方のテクニックの賜物だと思います。

メインディッシュは、日系スペイン人の美しきマタドール・理央(受け)が、闘牛場に入る前の身支度をするシーン。
全裸になった理央に付き人のレジェス(攻め)がマタドールの衣裳を着せていく、ただそれだけのシーンなのですが、これがエロい。
レジェスは以前は天才的マタドールとして活躍していた男。当時は理央の恋人でもありました。が、闘牛で負った怪我が元で聴覚と記憶を失い、何も思いだせないまま、今は理央ともマタドールとその付き人という関係です。
淡々と理央の肌に触れ、衣裳を着せていくレジェスの指先や肌にかかる吐息に、理央はかつて恋人同士だった頃のレジェスとのセックスを重ね合わせて感じてしまう…
もう理央の心理描写だけで、エロスがダダ洩れ。
付き人の前で全裸になり、着替えは全て付き人に任せるという闘牛士の習慣を、こんなエロチックなBLのワンシーンに変換した作者の腐魂、すばらしすぎます!!
濡れ場も複数回ありますが、個人的にはここが一番萌えました。

「次に生れてくるなら黒い牛がいい。どう猛で美しい獣、おまえに殺されるためだけに、この世に誕生したような」
英雄的マタドールだった頃のレジェスが、理央を抱きながら言ったこのセリフも好きです。
BL的恋愛観では、愛ある殺意は至上の愛で、時に「殺す」は攻めの受けに対する行為の意味を含むこともあり…闘牛場で牛に殺されるのが最高の死に方、という闘牛士の理想(これが事実なのか作者のフィクションなのかは分かりませんが)とBL的恋愛観を巧みにオーバーラップさせた名ゼリフだと思います。
できればこのセリフは受けの理央のものであってほしかったのですが(やはり「刺し殺される」のは受けですからw)、理央が「自分こそがそうなりたい」と思う場面があるので、私はこのセリフは理央に重ね合わせながら読みました。

日々死と背中合わせの場所にいるマタドールだけに、恋愛にも刹那の煌きが加わって、何か格別な美しさがあります。やっぱり戦士ものはこれがイイ。
ただ、回想シーンが思いのほか長く、現在進行形の二人の関係が進展していく一番読みたい部分が短かすぎたことや、終盤が慌ただしすぎてクライマックスがいまひとつ盛り上がらなかったことなど、個人的には物足りない感覚も残りました。
アイデアは神!でもストーリー構成は…でもでも、萌えたし?!
ということで、迷いに迷いましたが、萌×2で。

闘牛の世界、まだまだ読み足りない思いです。より一層(萌えが)パワーアップしたマタドールシリーズの続巻を期待しています。

7

一途なの

スペインの闘牛を舞台にした、愛と魂の継承の物語。
闘牛と闘牛士への熱い愛と敬意に満ちた物語世界は、乾いたヒマワリと蒼穹と、血の臭いと濃厚なセックスの臭い。

あぁ、やっぱり好きだわ、、、華藤えれな。
華藤さんが描く闘牛の世界は本当に特別で格別な陶酔感。
これはやっぱり、作者様の愛の熱さ深さなのかしら。
闘牛の魅力を伝導しつつ、しっかり成長物語とラブロマンスもエロも取り込んで、涙腺のお掃除もバッチリ。
登場するスペインの、街も荒野も闘牛場も、自分では見たことのない景色のはずなのに、本当にその光景が目の前に広がるよう。
こんなに物語り世界に入る込めるのって、もちろんそれは、作者様の情熱あってこそなのだろうけど、それ以上に、私としては華藤さんの文体がとっても私自身のリズムに合っていて、読んでいて本当に気持ちいい。
他のマタドールの本も発掘して読み直したくなった。

12

光と影と……

次に生まれてくるなら黒い牛になって
お前に殺されたい――

前作「愛のマタドール」同様、美麗な葛西さんの挿絵にウットリし
迫力の闘牛シーンに魅せられる本作。
前作は「神父問題」が気になってしまったというのもあるのだが、
内容的な好みとしては、本作の方がずっと好きだった。

主人公の理央がいい。
ビッチと呼ばれ、華奢な肢体で色物と言われる派手な闘牛をする彼の
心の中の一途な真実。

理央を闘牛の道に引き込み、生きる全てであったかつてのスター・レジェス。
事故で記憶と聴力を亡くした彼を、付き人として側においているが
レジェスはかつての傲慢な帝王ではいまやない。
もう二度と取り戻せないかつてのレジェスを忘れられないとともに、
言葉も失った穏やかで優しい今のレジェスにも惹かれていく想い。

マタドールは、全裸で付き人の前に立ち、衣装を一つずつ着せて貰うという。
闘牛の度に、絢爛豪華な衣装をレジェスに着付けてもらう理央。
この「裸のマタドール」というタイトルは、
そのエロティックで濃密で特別な関係を表すものだろう。

最後がバタバタと説明調になってしまったことや、
いささか納得のいかないところもあって、手放しで絶賛できないのだが
闘牛の世界は美しく、愛は切なく健気で、好みの作品だった。


11

闘牛の奥深い哲学をあらためて知りました。

前作、『愛のマタドール』がとても良かったので、
新刊チェックで今作のタイトルを目にした時から、
前作の関連作だと思い、ぜひとも購入したいと思っていました。
発売にあたって特典ペーパーが付くということで、予約して購入しました。

前作の『愛のマタドール』では独特の空気感が強烈に漂ってきた
印象のある作品でしたが、前作を読んだ時と比べて今作は随分と
優しい感じの雰囲気が、読んでいて伝わってきました。

前作で登場したユベールさんやフリオ神父が登場してきて、
懐かしい感じがしました。
また、理央くんとユベールさんの父親同士の関係に、
意外な接点があったことに驚きました。
理央くんとユベールさんが二人とも父親と同じ道を歩まなくて
本当に良かったと思いました。

あとがきに書かれている作品の要約と同じように、
まさに理央くんの成長物語だと思いました。
一途で健気な理央くんが成長していく姿が、
読んでいて微笑ましく思いました。

昔のレジェスさんも、現在のレジェスさんも、
理央くんに対する愛情が伝わってきて、好感を持ちました。

あとがきには、華藤先生は17年近くも闘牛を取材しているということで、
闘牛に対する情熱や思い入れがあらためて十分に伝わってきました。
先生のように専門家 並みに詳しくなると、専門分野に関する説明文が
非常に難しい文章になってしまう傾向があるように思いますが、
前作でも今作でも難しいと感じてしまう部分は一切なく、
全くの初心者でも解かりやすく伝えられる文章表現が
とても素晴らしいと思いました。

前作のユベールさんの闘牛に対する考え方といい、
今回のレジェスさんの闘牛に対する考え方といい、
闘牛には奥深い美学や哲学などがあることを実感しました。
華藤先生の闘牛の作品を読んでいると、闘牛の世界に興味が湧いてきました。
華藤先生の作品を読んでいても、それでもやはり実際に闘牛を
生でもテレビを通しても見たいとは思えませんが、
闘牛の歴史や思想などはもっと色々と知りたいと思いました。

今回の評価は、あまり迷うことなく「萌×2」です。
あとがきによると、闘牛についてまだまだ書いていないことが
たくさんあるそうなので、闘牛に関する作品はぜひ華藤先生の
作品で読みたいと思いました。
今後も関連作品が出るかどうか分からないとのことですが、
もし次の作品が出版されるなら、今度はどんな闘牛士の話なのか、
気長に楽しみに待っていようと思います。

8

闘牛の世界へトリップ

シリーズと言っても差し支えが内容に感じる闘牛を舞台にした3作目、
今までの2作と今回も単独で読んでも面白いのですが、3冊合わせて読むと更に
面白さが限りなく膨らみ壮大なイメージになります。
生と死、光と影、苛烈すぎる愛の深さを感じさせるのがこの作品を含めた3作品。
今回の作品では前作2作のキャラも出ていて、スピンオフな感じもありとても面白い。

普通のラブものとは一線を画しているけれど、闘牛の世界、戦う男の生き様や
愛の示し方に圧倒される感じで、読んでいるとギラギラした熱を感じさせる地を
イメージしながら、いつの間にか闘牛の世界感へトリップするような気がするのです。
三者三様のストーリーで、今回の作品が個人的に1番切なさといじらしさが感じられて
好きでしたね、たった一人にだけビッチで、それも周りにはどれだけ遊んでいるとか
男を咥えこんでいるなんて噂されようとも、繊細な心をすっぽり隠し蓮っ葉な態度で
愛する者の為に闘牛をしている。

内容的には受けになる理央の片思い的な感じに思えるところから始まる。
理央視点で描かれているので、記憶を失くす前のレジェスとの関係は誤解と擦れ違いと
言ってもいいような流れではありますが、その誤解もすれ違いも理央を深く愛する故に
結果的にはレジェスがそんな風に仕向けているように感じられます。
命をかけた情熱と深い愛情、見え隠れする生と死、華藤さんの作品で闘牛に興味が出ました。
闘牛の熱い魂が作品から溢れ出ているようで、とても惹きこまれます。
また、この世界感を是非味わいたいと思わせる作品で素晴らしいストーリーでした。

19

死と生への情熱

臨場感あふれる闘牛シーン、闘牛士たちの死生観、愛などを通して
長生きすること、穏やかに愛することでは
手に入らない独特の幸福、愛の形が描かれたような作品でした。
闘牛に限らず、刹那に生きる人、一芸に殉ずる人には
なかなか真似できない分抗いがたい魅力を感じてしまいます。

記憶喪失モノとしては
記憶を失い別人となった相手を愛せるか?という普遍的なテーマですが
葛藤する理由を、彼らのアイデンティティともいえる闘牛に絡めたことで
一味違った作品となった気がします。


なぜ理央が、現在の優しい付き人レジェスを愛せないのか。
それは過去に愛した傲慢な闘牛士レジェスへの未練のせいだけでなく
現在の自分の闘牛スタイルに対する迷いも大きかったように思えます。

自分が闘牛士を志した全ての理由であったレジェス。
彼を失った悲しみのため、レジェスの正統派の闘牛を受け継ぐのではなく
タレント性を重視したイロモノ闘牛しか披露しません。
レジェスの闘牛―牛の生命力を存分に引き出し、自らも命を晒して闘った上で敬意をもって殺す―は、昔のレジェスの死を引きずる理央にとってあまりに重く、無意識に逃げているようです。

しかし、知人のアベルの言葉で、
自分が闘牛士としての高みを目指すことがレジェスの願いだったのではないかと気付く。
遺されたものを受け止め、真摯に闘牛と向き合うことを誓う理央。
そして、記憶のないレジェスも同じ魂の持ち主として愛する決心をして闘牛場に臨みます。
この理央の成長と、何年もレジェスだけを想い続けた健気さが報われる瞬間は
ご都合主義とはいえやはりカタルシス!!!
ただの恋人ではなく、互いの才能に惚れ込み、命をゆだねる同志のような関係は
萌えもあるけどそれ以上にアツイものを感じました。

そのほか、下着をつけずじかに衣装をつける闘牛士の危うい魅力、
全裸の理央にレジェスが触れるシーンの艶っぽさ、
ビッチを演じているがレジェスだけが知る理央の素顔など・・・
タイトルにちなみ"裸"に、奥ゆかしい色気というか萌えがありました♪

理央の母親のことやレジェスの記憶の件など
気になる部分もありますが、ほとばしる闘牛愛とドラマティックな展開の前には
細かいツッコミは野暮?みたいな気になってきます。
ただ、記憶のないレジェスが本来どんな性格だったのかは・・・
「わからない」にはちょっと脱力してしまいましたw
これはペーパーのレジェス視点により少し分かりますが、大事なとこなので本編に入れといて欲しかったな~という唯一の不満点でしたv

11

命の闘牛

華藤さんのマタドールシリーズ。
生と死に立ち向かう闘牛という世界に身を置く男たちの抱える愛の形とその世界。
また今回も、その世界にどっぷりとつかりました。
時間軸が同じなので『神に弄ばれた恋』『愛のマタドール』の主人公達や登場人物がリンクしますが、まったく単発でもOKになっています。
この本には作者さんの好きと萌えが詰まっていて、大げさな表現かもしれないのですが自分がその世界にいるような作品との一体感をもたらしてくれるのです。
そして、彼等の関係と心が心を掴んではなさない。

男娼上がりのビッチと言われながらも実は過去愛した人だけを思い、5年間誰とも関係を持っていない日系アルゼンチン人のマタドール理央(ロサリオ)
彼の付き人は、5年前の闘牛中の事故で記憶と聴覚と何もかも失くした英雄と言われた元マタドール・レジェス。
闘牛の時の哲学的で牛と真っ向から対峙する冷静そうなその姿とは正反対のように、闘牛後に熱を発散するように傲慢に激しく理央を求める関係だった二人。
理央はまだレジェスを愛しているのだが、実は彼は愛する人をそばに置きながら葛藤しているのです。
マタドールだった時の昔の自分には傲慢だったレジェスと、現在の優しくおだやかなレジェと、どちらも同じレジェスなのに現在のレジェスに愛を告白してしまうと昔の彼を否定してしまうことになる。
レジェスが記憶を失なっているだけに、現実を知ったら自分から離れてしまうのではないかという不安があり、それにこだわり続けている理央。

作中牧場主のアベル(神に弄ばれ~の主人公)が確信をついた鋭い観察を理央に述べている。
記憶は失っても本質は変わっていない。
二人だけの時の昔の傲慢なレジェスをアベルは知らないが、闘牛を通して見ているその本質が本当の姿だよと暗にしめしているようなのです。
それは後に全てが解るレジェスの抱えていたもの、どうして彼が理央に惹かれて行ったのか激しく彼を求めたのか、その理由を知るにつけ、そして物語の中で回想される過去の物語をはじめ、そんな色々を見て行くと裏付けられていることがわかります。

理央の生い立ちや、レジェスのマタドールとしての姿。
現在のビッチを振舞い、イロモノ的な闘牛をする理央の姿。
どれもこれもが、闘牛士という存在前提があってこその悲哀と苦しみを伴っておりそれが胸に響くのです。
確かに本の帯にある「命がけのエクスタシー」は間違いありません。
今回は生きていることを実感するための交わりでもあるのかもしれませんが、自分を刻みつけるための命を与える為の交わりでもあったと思うからです。
ラストクライマックス展開、怪我をした傷口が開いて危機一髪になった理央を助けに入るレジェスのシーンが、イラストともども一番の盛り上がりでした。
レジェスの記憶についてがちょっとひっかからなくも~ですが、全体の雰囲気に呑まれてしまっておりそのつっかかりは些細なことでしょうか。

初めて知ったのは、闘牛士の衣装の付け方と順番です。
全裸でストッキングから全て付き人が身につけさせる。
その描写はほんの少しではあったのですが、そこに何か感情があった時は実にエロティックな行為に映るのですね。新しい発見でした♪

華藤さん流のドラマティックはどうしてこんなに魅了するのでしょうか。
いっぱい伝えたいことがあるのに伝えられないもどかしさ、そのくらい素敵でした。
そして今回の葛西リカコさんのこのカバーイラストもとても素敵で・・・

19

この作品が収納されている本棚

レビューランキング

小説



人気シリーズ

  • 買う