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僕らはいつだってソレを脱がせたい
sailorfuku no naisho
コラージュ風の印象的表紙に、最初「服」というものにこだわったシバリの短編集なのかな?などと思いましたら、どの作品も学生から社会人まで「好き」という気持ちについての色々な表現がなされたまんべんない作品の短編集だったのだと気付かされました。
読後の印象は、とても良いのです。
【セーラー服のないしょ】
上位成績者の田井中に懐いてくるのは、男子なのにセーラー服を着た女装をする学校の変わり者で問題児の東雲。
東雲の奇行の理由が解った時、いつも彼をうっとうしいと思っていた田井中が彼を理解する人になっていて、東雲は彼に惚れるという話。
自分の事ばかりで他には興味がない、勉強の為にこの学校に入った田井中が東雲の為に人肌脱ぐのは、とっさのこととはいいその後の様子からツンデレが見てとれる。
東雲の女装理由は、家の事があるとはいい傲慢な親のせいではあるとはいい、ただの反抗でしかなく得策ではないとはいえ、嘘から出た誠。瓢箪から駒的恋愛だったというオチにちょっとビックリ。
なぜなら過去の中井田との絡みから好意はあるものだと思っていたから(笑)
ただこの女装、スカートの下からパンツちらりなのだが、それは縞の布製トランクスなのか!?と一瞬心もとない下半身にヒヤヒヤしたものでしたw
実はこの話が表題にはなっているが、女装理由があまりにアレ過ぎて、この短編集の中では一番イマイチ?と思った作品だったのです(汗)
【シャツを脱いだら】
バイト先の同僚美大生に片思いしている学生が、絵のモデルを頼まれる。
モデル最後の日、お礼は・・・と言われ「あなたを下さい!」
報われるお話。
主人公の表情の変化に注目しました。
【いたいけな学生服】
女子と付き合うのも面倒くさい、何か面白い事がないかと退屈している大学生がゲームセンターの格闘ゲームで知り合った高校生。
すっかりゲームの面白さにハマり、高校生との時間が楽しいと思っていたのだが、彼の家に上がった時、ついチャラいノリで彼を押し倒して拒否され逆ギレしてしまいそれっきりに・・・
初めてしった本当の恋の始まりに気がつかない不器用な大学生。
高校生が子供っぽい感じがするので、色ごと展開に違和感があるのだが、男っぽいのに妙に色っぽさが見えてかわいかったりとか♪
【アフタースーツ】
社会人モノ。
課長と部下はつきあっているのだが、それは誰にも秘密。
互いしか知らない互いの姿、どんなに互いが好きか、ノロケ合戦のようなドロアマバカップルでした♪
【ハコニワライフ】
互いが付き合っていることを秘密にしている二人はつきあって6年。
彼等は時々一目から隠れて数日間部屋に引きこもり二人きりの時を過ごす。
日頃は他人のフリをして、その時だけエッチ三昧のただれた日々という関係は、尋常じゃないとは思うのだが、ちょっとどこか歪んでいると思う。
そこに唐突に片方が社会人になったら、もうこういう生活は送れないから別れようと海外へ留学してしまう。
超ビックリな付き合い方と、一方的な関係に、驚きが隠せないのだが、置いて行かれた片方は、自分の夢を叶えながら彼を追いかけると言う話。
夢物語のようであり、ここまでしなくてはならない理由もわけわからんが、究極のヘタレを見た気がします。
この関係性が気に入る、気に入らない、は置いておいて、物語として設定としてぶっとんではいるがユニークだとは思いました。
どれも展開途中においてネガティブも見せるが結果としてはポジティブ。
結末への展開過程が、突飛な事が特徴でしょう。
それを不自然といってしまうにはとても惜しいのです。
かえってそれが作者さんの特徴というか、独自性なのでは?と思われるのです。
深夜にやっているアニメを連想させるようなカワイイ絵柄。
(アニメに詳しくないおばさん発言ですみません…)
絵、そのものは自分的にはそんなイメージで、
裸になっても乳首は描かれていないし、内容も現実味がないものが多くて、
全体的にリアルとはかけ離れた感じの印象を受ける本でした。
でも短編集の最後の話はなかなか引き込んでくれる内容で、
素直に読めてよかったな~と。
その最後のお話は「ハコニワライフ」
付き合って6年の大学生CPの、
なかなか切なく、でも最後は温かい気持ちになるストーリー。
箱庭のような、
現実を遮断したふたりだけの空間で、エッチ三昧の1週間を送るふたりの様子と、
なぜそんなことをするようになったのか?
そして未来は…?という内容。
外国に旅行に行くと周りに嘘をついて、
恋人とふたりで家に引きこもって~って、できるものならしたいかも☆
でもその関係の土台には、
ふたりが付き合っていることは「絶対に秘密」という約束がある。
高校時代から大学生になるまでの6年間、
若いふたりが触れたい時に触れられず、
誰にも知られずに関係を続けるのにはきっと多大なる我慢と愛があって、
だからこその決断……
再読すると、
その決意を胸に秘めてハコニワにやって来た攻めの表情や、激しいSEXが切ない。
1週間が終わった後の、
すべてを知った受けの動揺とその後の決意、そして未来……
物語として、素敵だなぁと思いました。
あとは、表紙にも描かれていますが、
表題作でセーラー服を着たメインキャラが、
スカートの中からトランクスをガッツリ覗かせているのが印象的だったかなw
なかなかハートにグッとくる作品が集まっていた印象でしょうか。
表題の作品はセーラー服で登校するクラスメイトとお人よしの同級生の話。
共に意味は違えど高校デビューしている二人、片方は中学時代は人に頼まれると
嫌と言えずに、何でも協力してしまうようなお人よしでその為に成績まで落とすような
優しい生徒だったけど、高校からは中学時代の知り合いもいないと言う事で
自分の事を優先させようと勉強に打ち込み、逆に一人でいる事を選ぶ。
方や、中学時代からいつも一人でポツンとしていて、実家が金持ちだと噂され、
妬み半分羨ましがられているが、どこか暗いイメージのあった優等生。
それが高校入学と共に奇行に走り、トランクスをパンチらで見せながらセーラー服を
来て学校に登校するようになり、イメージも180度変わった能天気な明るさを
出しながら透にワンコみたいに絡んでくる。
茉莉が女装で登校してくる本当の訳、家族の問題とゲイのフリで家から逃れようと
していた茉莉が透と嘘から出た真で相愛になる話。
個人的には「ハコニワライフ」が1番好きでしたね。
誰にも秘密の関係で、愛し合う時は1週間二人で食糧を蓄えてベッタリ二人だけの
世界で1週間過ごすことを出会いから付き合うようになって6年間続けてる。
そんな二人が大学を卒業する時期に近づいた、いつもの1週間の逢瀬。
受けである圭太の夢を知ることになったあさひが思わぬ決断をする。
相手を心底思うが故の切ない決断が、胸に染み入る内容で、その後の二人の再会に
ああ~良かったと思える未来を見据えたラブで素敵なストーリーでした。
ここまでの評者連の好評価も評者にとってはもっともな事。
率直に言えばケチの付け所を探すのが難しい感じがします。
収録作総てに光があれば闇もあります。
その陰影の魅せ加減を綺麗にさばかれる作家さんですね。
作品自体も前半三作の初出が電子媒体とはとても思えない程。
それだけ基を丁寧に創られる作家さんなのでしょう。
帯のコピーとカバーの裏の粗筋紹介も含め、短編映画を
オムニバスで観ている様な気持ちになります。
後味も含めて各話を完成させるのは読者であると、
そっと背中を押されているかの様に。