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11gatsu no gymnasium
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
萩尾望都の初期作品。1971年に雑誌「少女コミック」「別冊少女コミック」に掲載された7編を収録した短編集です。
「11月のギムナジウム」
『トーマの心臓』のプロトタイプ。
ヒュールリン・ギムナジウムに転入したエーリク・ニューリッツは髪と目の色を除いて瓜二つな少年と出会います。エーリクの分身の名はトーマ・シューベル。トーマは砂糖菓子と呼ばれ、みんなから愛されるギムナジウムのアイドルでした。
「秋の旅」
ヨハン少年は池のほとりにある薔薇に囲まれた家を訪ねました。その家には小説家モリッツ・クライン先生とその家族が暮らしていました。小説家の娘のルイーゼと言葉を交わすヨハン。彼ががこの家を訪れた理由とは…。
「塔のある家」
お城のような塔がある家に引越したカートン一家。一人娘のマチルダは塔の家で3人の妖精ーデデ、フォーラ、ビビと出会います。塔に住む妖精たちと幸福な時を過ごすマチルダでしたが、友達の少年との別れや母の死を乗り越え大人になるに従って塔へ足が向かなくなります。やがてマチルダは塔のある家を捨てて都会へ出ていきますが…。
「もうひとつの恋」
結婚式を明日に控えた少女ジョイはオートバイの事故で死んでしまいます。どうしても愛するワイルド氏と結婚したいジョイは双子の弟ビッキーの体を乗っ取ってしまいます。式の途中で意識が回復したビッキー。死神の采配をきっかけに幽霊のジョイと双子の弟ビッキー、ジョイの結婚相手のワイルド、ビッキーのガールフレンドであるマリーの4人が大騒動を引き起こします。
「かわいそうなママ」
エスタ・ボストン夫人が窓から落ちて亡くなりました。葬式から4日後の午後、夫人の大学時代の友人マーティン・シーフレイクがボストン家の邸宅を訪れます。夫人の遺児ティモシーと言葉を重ねるうちに、シーフレイクは過去を回想しますが…。
「白き森白き少年の笛」
それは遠い日の少女だった頃の思い出。田舎に引越したマリアは遊び相手がおらず、淋しい日々を過ごしていました。ある日、森の奥で金髪の少年エディと出会います。エディと仲良くなったマリア。エディは11年前に描かれたエドワード・フォースターの肖像画にそっくりな顔立ちをしていました。
「セーラ・ヒルの聖夜」
冬休みをセーラ・ヒルのエアおばあさんの家で過ごすこととなった少女キャロン・ダーリングはそっくりな顔立ちをした少年クリス・ライバーに出会います。同じ赤毛を持つ二人。二人の出生に関わる秘密とは…。
私が萩尾作品で読むのは『ポーの一族』に続いて2作目。シリアスな作品もコメディタッチな作品も、限られたページ数で上手くまとめらていました。起承転結も落としどころも過不足なく、読後には余韻に浸れます。『ポーの一族』でも思ったのですが、萩尾先生は構成力がありますね。特に「グレン・スミスの日記」のような生の一瞬の煌めきを切り取って再構成し、一人の人生を炙り出す作品がよいです。本短編集では少女の成長を描いた「塔のある家」がその構成に当てはまりました。すべてが輝いていた少女時代。都会でひっそりと生きる大人時代。二つの場面の対比がよかったです。
ただし欠点は読みなれていないからかもしれませんが、登場人物みんな同じ顔に見えることですかね。キャラクターは個性が無く、物語を動かす駒でしかありません。勿論キャラ重視の作品ではなく、ストーリー重視の作品集ですから、それでいいのですけれど。
そんな中、キャラクターが立っていたのが「11月のギムナジウム」に登場するオスカー。主人公と同じギムナジウムに通う少年です。現代風に言うとチャラ男でしょうか。飄々としていて、噂ではトーマと同じクラスになるために落第したという。刺されたふりをしてエーリクをからかったり、他人に見られていることを知りながらトーマにキスしたり…。いろいろやらかします。最後には多く語りはしませんが、優しさも見せています。この本の登場人物の中では一番好きでした。
ネットの感想では「11月のギムナジウム」の本編バージョンである『トーマの心臓』ではオスカーは性格が異なるそうです。だから『トーマの心臓』を読む気になれません。