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houkago no fujun
先に続編の「おはようからおやすみまで」を読みました。
あの作品を読んだときはこのCPがそこまで魅力的に思えなくて、こちらも読まなくてもいいかと思ったりしたのですが、「関わったからには全部知りたい!」病なのでやっぱり買ってしまいました。
結果、読んでよかったです。うっかりこのCPの魅力が全く分からないまま死ぬところでした。危なかった。
運動部でわいわいグループに属する沢木と、地味なクラスメイト・水谷。
放課後の教室で水谷が罰ゲームでノートを写していると、そこに沢木がやってきて…。
「お前みたいな奴、俺は好きだよ」
なるほど。そうだったのか。
この作品の沢木も水谷も好きだなあ。一生懸命で、相手のことをちゃんと考えて、言葉できちんと伝えようとしているのが「真剣に恋している」感で溢れていて好感が持てました。
告白されたときの水谷の言葉は全部「至極ごもっとも!」でした。からかわれてる、もしかしたら罰ゲーム、いじめ!?と思うのは当然だし、受け流すという高等手段はよほど仲良くないとできないことだし、このシチュエーションではこの反応以外にあり得ないというしっくり感。
その後の流された感じは水谷の気持ちが見えないし、地味という設定に合わない感じがしましたが、初めて水谷が「好きだ」と言ったシーンはグッときました。このためにわざとここまで言わせなかったのか!と思わせる心憎い演出でした。
「体から」と言うけれど、この年頃ってそれ以外に気持ちの伝え方を知らないんですよね。
処世術という経験や技術がないから、言葉だけで全部を伝えることはできない。でも全部分かってほしい。そのもどかしさを埋めるために抱きしめて「自分のものだ!」と全身で伝えようとする感じ。
でも延長線上にある「気持ち良さ」だけにハマったり、体をつなげればこころもつながるという勘違いからの怠慢が出てくると本末転倒になってしまうところ、この2人は「言葉で伝える」「顔を見て伝える」というのを大切にしていたところに痺れました。
ただ水谷が「自分は男しか好きにならない」と自認した辺りは、流れから少し浮いていたような。
沢木はたしかに性格上わいわいタイプだけど、それまでに彼女がいたという記述はないんですよね。フェ◯の話も聞いていただけ。修学旅行でも女子に告白されただけ。それなのに「お前は女を好きになれる」という水谷の発言は唐突すぎて、「この台詞を言わせたかったのかな?」という風に受け取れてしまいました。
そのあとの「自己犠牲のつもりが相手を傷付けている」と気付く流れは良かったのですが、なんだろう。何が引っかかるのかな。たぶんストレートに「男同士は世間的に肩身がせまいよ」という切り口でいってほしかっただけかも。この作品の流れで紋切り型の「女を好きになれる」を出すのは乱暴すぎた気がしました。
沢木が水谷を好きになったエピソードが自然ですごく説得力があっただけに、個人的にはそこだけが残念でした。
この素敵なCPが1年後にはあんな風になってしまうとは、慢心ってこわいですね。
割と身体からはじまる男子高校生同士のラブ。まぁね〜、性欲で生きてるみたいな年頃だしね〜…。
沢木くんが水谷くんに惹かれていった過程は後半で語られることもあって分かるのですが、水谷くんが沢木くんを好きになった理由、彼でなければ!という理由がちょっと弱いかもしれません。
いきなりキスされて押し切られました! 気持ちよかったからその後も関係を続けました! みたいな感じですもんね。(グイグイ押しまくられる内に絆されて…ということなんでしょうけど)
だけど水谷くんみたいな子は(しかも自分の性的嗜好に気付き、コンプレックスに思っている)あれくらいグイグイ押しまくられないと一歩を踏み出せなかったりするかもしれないので、よいコンビなのかもしれません。
チョット盛る場所には配慮した方がいいかなとは思いますが…(笑)
以前、祥伝社で出されていたほうにレビューが沢山ありますね。
私が読んだのはこちらの新装版ですので、こちらにレビューします。
沢木(攻め)が1ページ目で登場するんですが、最初、モブだと思ってしまいました・・・・。あまりにもフツー過ぎて。
ぱっと見てこれクラスメイトかしら?と思ったんだけど、会話が2ページ以降も続いているので、どうやら違うらしい・・これが今回の攻めらしいと気付いた次第(汗)
その沢木は一人でノートを写している水谷(受け)に声を掛けて色々話しかけるついでに「お前みたいな奴、俺は好きだよ。」と告白します。
ついでじゃなくて決意のうえかもしれないんだけど、あまりにもサラッとしているので、読んでいた私自身もこれ、告白なのかしら??と戸惑った次第で、当然水谷(受け)も信用しないんです。
しかし、そのまま勢いでキスまでしてしまう。そしてその後の初Hまでの展開スピードも早いと思う。そこに至るまでの葛藤はほとんど無いに等しいのが男子高校生らしいとも言うべきか。
途中まで受けの水谷が暗めの内向的な性格ということもあり、なんだか気乗りがしないまま読み進めていました。
沢木のどこが好きなのかも良くわからないし、沢木に強引に迫られてただ流されるまま好きになったみたいな主体性のないところにモヤモヤ。
沢木がいつから水谷のことが気になっていたかという話をしていた時、ところで水谷はいつから俺のことが好き?と聞かれて「えー・・・忘れた」と答えるんです。
しっかり覚えているのに照れ隠しをしているのか、本当に忘れたのか。
どっちなのかは判らないけど、忘れたに私は一票。
そして回想で当て馬の修ちゃんがいきなり抱きついて好きと言ったとき、びっくりはしたけど嫌悪感はなかったし・・・とあって、修ちゃんが沢木のように強引に迫ったら今頃は修ちゃんと付き合ってたんかい・・とも思ったり。
この時点では「中立」くらいでした。
しかし水谷自身、自分がゲイである事に薄々気付いて、認めたくはないけど認めざるを得ない自分と葛藤しており、そんな自分に後ろめたさや劣等感も抱えていて、ただでさえ内向的な水谷としては積極的に自分の好きなものを選びにいくという事すら難しいんじゃないかと思ったんです。恋愛においては完全に受け身。
(もっとも水谷がもしノンケだったとしても、沢木みたいにはっきりと俺が好きなんだからいいだろ、みたいな言い切れる強さは持っていなくて、また別の事でグルグル悩んでいそう。ゲイ、ゲイじゃ無いは別として、かなりメンドくさい性格なんだと思う。)
自分に自信のない水谷だから積極的に迫ってきた沢木に絆されていつのまにかなんとなく好きになったというのも、彼ならありなんじゃないかなと思います。
そしてまだまだ己の殻が固くて閉じこもってしまいがちで、マイナス思考傾向のちょっと常人では持て余しぎみの水谷には、「いつかじじいになって勃たなくなっても好き」「超絶好き」とまで言ってくれる沢木こそがふさわしく、彼がいてくれて本当に良かったわ。
水谷もよーやく素直に「こんなに好きになっちゃったのが、お前で良かった」って言ってるしね。
というわけで最初の勢い&流されカップルから、とても良いカップルになったと思います。